片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

書評をいただきました

2013-04-11 21:26:21 | 書評

昨日10日の日経新聞夕刊にて、
福井県立大学地域経済研究所所長の中沢孝夫先生から、
拙著『「スマート革命」で成長する日本経済』(PHP研究所)の
書評をいただきました。
書評のタイトルは「制御技術で新しい地域づくり」です。
四つ星を獲得いたしました。


元気と、勇気の出る小説

2011-08-15 20:03:30 | 書評

たて続けに、三冊の本を読んだ。
津村節子著「紅梅」
池井戸潤著「下町ロケット」
北方謙三著「史記・武帝紀<五>」
である。

いずれも大変興味深く読んだが、
このうち、「下町ロケット」は、直木賞受賞作品である。
東京・大田区の中小企業が、大企業のさまざまな妨害を受けながら、
ついにロケットエンジンの中枢部品であるバルブを受注し、
そしてロケットの打ち上げが成功するまでの物語だ。
香り高い情報小説といっていいだろう。
今回の大震災で、多くの部品メーカーが被害に遭ったが、
彼らを元気付けるようなストーリーだ。
作者は主人公にこんなセリフを吐かせている。

<「俺はな、仕事っていうのは、
二階建ての家みたいなもんだと思う。
一階部分は、飯を食うためだ。
必要な金を稼ぎ、生活していくために働く。
だけど、それだけじゃあ窮屈だ。
だから仕事には夢がなきゃならないと思う。
それが二階部分だ。
夢だけ追っかけても飯は食っていけないし、
飯だけ食えても夢がなきゃつまらない。
お前だって、ウチの会社でこうしてやろうとか、そんな夢、あったはずだ。
それはどこ行っちまったんだ」>

何度かの危機を乗り越えながら、夢を追い続け、
ついにロケット打ち上げに成功する姿は、
震災によるエネルギー不足や円高などで、
海外へ生産拠点を移さざるを得ない、
苦悩する中小企業にとっては、
元気と勇気の出る小説だ。
直木賞もさることながら、
それが多くの読者に読まれている背景ではないか。

働くとは、
仕事とは、
夢とは、
生きるとは。
現代の人々がもつ問いかけに
答えを出してくれる一冊である。

 


書評「リーマン・ショック・コンフィデンシャル」

2010-09-01 15:34:47 | 書評

先月、共同通信からの依頼で
「リーマン・ショック・コンフィデンシャル」
(アンドリュー・ロス・ソーキン著、加賀山卓朗訳、早川書房・上下各2100円
書評を書きました。
「怪紳士らの生々しい実像」として、
北國新聞(15日付)、秋田魁新報(15日付)、
福島民報(14日付)などに掲載されました。

以下に全文を掲載します。どうぞ、ご笑覧ください。

        ※

日本経済に壊滅的な影響を与えた、2008年のリーマン・ショックからおよそ2年。いまだにその真相は明らかではない。いったい何が、どう間違って、未曾有の金融危機は発生したのか。
本書は、ニューヨーク・タイムズのトップ記者による、リーマン・ショックのドキュメンタリーである。当時のヘンリー・ポールソン財務長官やニューヨーク連邦準備銀行のティモシー・ガイトナー総裁のほか、リーマン・ブラザーズのリチャード・ファルド最高経営責任者(CEO)ら、ウォール街にうごめく金融機関のトップたちの動向が克明に描写されている。
文書記録のほか、メール、社内資料、発表資料、覚書に加え、情報源秘匿を条件にした当事者への徹底的なインタビューなどをもとに、臨場感あふれるドキュメントに仕立てている。リーマン・ショックの背景を解説した書や、金融資本主義を批判した書とは異なり、人間の欲望や感情など内面にまで踏み込んで描写しているのが特徴だ。
迫りくる大恐慌の危機を前にして、なお己の欲望を捨てられず、生き残りを目指して権謀術数を巡らし、駆け引きをするウォール街の紳士たち。
「私の目の黒いうちはこの会社は売らない」「もし私が死んだあとで売られたら、墓から手をのばして阻止してやる」と豪語した、強気一辺倒のリーマン・ブラザーズのファルドは、次第に追い詰められていく。
万策尽きて、リーマンは、ついに終末を迎える。「(ファルドは)もう何日も眠っていない。ネクタイはほどけ、シャツはしわだらけだった。彼はベッドに腰をおろした。『終わりだ』悲しい声で言った。『完全に終わった』」
ウォール街は、強欲資本主義の総本山といわれる。世界をどん底に陥れた超肉食系の金融ビジネスに携わる怪紳士たちの、生々しいまでの実像を知るには、本書はもってこいである。