片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

たった一人の反乱は成功するか?

2010-03-11 14:41:26 | 名古屋論

名古屋出身の私としては、やはり、名古屋ニュースが気になります。
このところ、
河村たかし名古屋市長の話が
全国ニュースになっています。

河村市長が、市政の
大改革を推し進めているからです。
例えば、3月7日の朝日新聞のオピニオン面には、
大きなインタビューが掲載されていました。
参考までに、市長のキャリアはというと、
民主党衆議院議員を93年から5期連続当選。
そして、
昨年4月に名古屋市長選に立候補し、
戦後最多票を得て当選しています。

河村市長は、就任後、初っ端から、
外郭団体に天下っていた市元幹部に退職勧告したほか、
徳山ダム導水路建設事業に「待った」をかけたり、
名古屋城再建計画を見直すなど、
話題を集める政策を、次々と実施しました。
この程度の改革であれば、まあ、ああそうか……ということでしょう。
ところが、画期的なことを断行しようとしているのです。
いや、したというべきか。
公約として掲げた、
市民税、法人市民税の10%減税を、
昨年12月の市議会で可決に持ち込み、
今年6月からの実施にこぎつけたのです。

さらに、河村市長がいま取り組む改革は、これまた
大胆不敵です。
市議会の議員報酬を、1510万円から820万円に半減
さらに、
議員定数も75から38に半減するというのです。
国会での議員定数の削減はかけ声ばかりとは違って、
河村市長はどうやら本気で実行しようとしているのです。

また、今月半ばから、小学校区ごとに、
市内8か所で
「地域委員会」をスタートします。
選挙で選ばれた、10人ほどの
無報酬の市民が、
約1000万円の
予算の使い道を決めるのです。
河村市長は、名古屋市を舞台に、
地方自治の大改革を目論んでいるのです。
自治体の新しい形を模索する、
壮大な実験といっていいでしょう。

こうした河村市長の案に、もちろん、
議会は猛反発です。
議会を敵に回しているわけですから、
もう、
たった一人の反乱ですね。
人目を引く振る舞いに
「パフォーマンスが過ぎる」という批判もあります。
しかし、河村市長は、すでに特例条例で
自らの年収を2400万円から800万円に下げています。
先にあげたように、
市民税10%減も実現しています。
減税実現に半信半疑だった市民は、
河村市長の“本気”を感じているのではないでしょうか。
パフォーマンスだけではないようです。
“実現力”があります。

こうした
“河村改革”が、今後も順調に進むかどうかはわかりません。
しかし、市民の支持を得て、成功すれば、
他の自治体や、国家にも、
大きな大きな影響を与える
ことは間違いないでしょう。
河村市長は、“ドン・キ・ホーテ”か、真の改革者か。
じつに月並みな表現で申しわけありませんが、
当分、
河村市長の動向から目が離せませんね。


名古屋発はトヨタだけではない

2009-07-15 16:16:45 | 名古屋論
今日も名古屋ネタです。
どうしても名古屋ネタに目がいくのをお許し下さい。

ニューヨークの近代美術館(MoMA)といえば、
「モダンアートの殿堂」と呼ばれ、世界中から人々が集まります。
私も、何度も足を運びました。
その際、必ず寄るのが、ミュージアムショップです。
ユニークで洗練された商品が、世界中から集められて並んでいます。
そのミュージアムショップで、いま、日本発の商品が、
三本の指に入るヒット商品になっているといいます。

売れているのは、「ラーメンフォーク」です。
08年5月から、「Ramen Spoon / Fork」として、1本14ドルで販売され、
大ヒット商品になっているというのです。
昨年度は、12万本売れたそうです。
じつは、この「ラーメンフォーク」、昨日のガンダムに引き続き、名古屋出身。
名古屋の方は、ご存じでしょう。「スガキヤ」においてある、あれです。

「ラーメンフォーク」は、いわゆる「先割れスプーン」ではなく
普通のスプーンの先から飛び出る形で、フォークの歯がはえています。
一見、奇妙な形のこの食器を、現在の形にデザインしたのは、高橋正実さん。
7月11日の朝日新聞の「ひと」欄で紹介されていました。

そもそも、スガキヤが「ラーメンフォーク」を店舗で使いはじめたのは、
1978年ということです。
「ラーメンフォーク」は、れんげがわりに使われるだけでした。
2006年、創業60周年を機に、使い易いようにデザインを一新することになり、
依頼をうけた高橋さんによって、歯の本数や位置など、改良が加えられました。
それが、MoMAの担当者の目にとまり、
現在、MoMAでヒットしているという経緯です。

名古屋から生まれたアイディアが、
世界の舞台で認められるというのは、元気の出る話ではないですか。
名古屋発の世界的商品は、トヨタだけではないという話です。



地方育ちのガンダムに東京を救えるか

2009-07-14 17:23:32 | 名古屋論
東京・お台場の潮風公園に、高さ18メートルの
等身大のガンダムがお目見えし、話題を集めています。
人気アニメ「機動戦士ガンダム」のテレビ放映30周年を記念してつくられ、
8月31日まで、一般公開ということです。

ご存じでしょうか。じつはガンダムは名古屋出身です。
1979年4月7日に名古屋TVから全国に向けて放送されたのがはじまりです。

それから、ガンダムといえば、「ガンプラ」です。
「ガンプラ」とは、ご存じの通り、ガンダムのプラモデルです。
つくっているのは、キャラクター商品の製造・販売を行うバンダイです。
私は、昨年、バンダイの社長、上野和典さんにインタビューしました。
「ガンプラ」は、30年以上たった現在でも根強い人気商品だそうで、
近年では、初代のガンダム世代が、父親の世代となり、
親子で「ガンプラ」をつくる姿も見られると話していました。

バンダイには、アンパンマン、ウルトラマン、たまごっち、仮面ライダーなど、
さまざまなヒット商品がありますが、それらキャラクター商品の9割は、
いまや、中国の工場へ委託して生産しているそうです。
しかし、ガンプラに代表される、複雑な金型が必要なプラスチックのおもちゃだけは、
一切外部委託はせず、静岡市内の自社工場でつくっています。
ガンダムは、ご存じのように、白、赤、青、黄色の4色ですが、
4色のプラスチックを同時に成型できる技術は、日本にしかないのです。

つまり、いまのガンプラは、静岡市内で産湯につかる。
ガンダム自身は、名古屋育ちというわけです。

今回の「等身大ガンダム」のコンセプトは、
緑あふれる都市再生と、魅力あふれるまちづくりです。
地方育ちのガンダムが、東京の再生を応援するというストーリーです。
公開当日の10日、会場では、選挙啓発グッズを配布したり、
今後は、イベント収益の一部を「緑の東京募金」に還元したり、
オリンピック・パラリンピック招致のPR活動にも、使われるようです。

この際、ガンダムに、東京どころか“世直し”をお願いしたいものですな。



名古屋の“夢”

2009-06-10 20:32:32 | 名古屋論

昨日、一昨日と名古屋に出張に行っていたので、
ついでに名古屋論を一つ。

やや旧聞に属しますが、5月29日の朝日新聞夕刊「窓」欄と、
同日の東京新聞夕刊「けいざい潮流」欄に、
それぞれ、名古屋の話題が出ていました。

名古屋市ではいま、4月の市長選に当選した、
民主党の河村たかし前衆議院議員が、
市民税の10%減税等、「庶民革命」を掲げるなど、
話題を集めています。

朝日新聞の「窓」欄では、河村市長の改革について、
外郭団体に天下っていた市元幹部に退職勧告したり、
徳山ダム導水路建設事業に「待った」をかけたことなどをあげ、
政権交代による「破壊」の力を、高く評価しています。

一方、東京新聞の「けいざい潮流」欄では、
市民税10%減税と、名古屋城本丸御殿の復元事業ストップを例にあげ、
「百年の計なき縮小再生産」――と、批判的です。

そもそも、この名古屋城本丸御殿の復元計画とは、
名古屋市が、総事業費約150億円をかけ、
名古屋城本丸御殿を、
残っている図面に基づいて復元するというものです。
1945年5月の空襲により、
国宝であった名古屋城天守閣と本丸御殿は焼失しました。
焼失前と同等の文化的価値をもち、広く市民が活用でき、
世界的な市民の財産となるように、本丸御殿を復元するというのが、
松原武久前市長が打ち出した計画の方針です。
平成18年度の基本設計から、復元工事完了予定の29年度まで
計画には10年以上の長期スケジュールが組まれています。
じつに壮大な事業ではありませんか。

「けいざい潮流」にもある通り、この本丸御殿復元事業は、
完成すれば、名古屋観光の目玉となるでしょう。
長期的な視点で見れば、投入費用は回収できるに違いなく、
名古屋の観光産業は活気づき、市の財政も潤うでしょう。

市政運営には、長期、短期、両方の視点が必要です。
いま大変だからといって、短期的な成果ばかりを重視し
市民税10%の達成のために何もかもリセットして、
名古屋市の持続的発展は期待できるのでしょうか。

だいいち、この計画には「夢」があります。
「尾張名古屋は城で持つ」といわれるように、
名古屋城は市民の誇りです。
一名古屋人としても、本丸御殿の復元計画には大賛成なのですが……。