どの産業分野に限らず、
国際標準規格を制するものが、世界の市場を制する――といわれています。
ところが、日本企業はそこが不得意です。どうするか。
日本自動車工業会のなかに「国際標準検討会」が設けられました。
汎用性の高い部品や半導体などの仕様を、統一するといいます。
断るまでもありませんが、コストを削減し、
グローバル市場における競争力を高めるのが狙いです。
参加するのは、国内の自動車8社、トラック4社、
さらに二輪車のヤマハ発動機と、川崎重工業の2社を合わせた、
全14社、オールジャパンといっていいでしょう。
しかし、二輪四輪にかかわらず、部品は商品の競争力に関係してきます。
また、仕様の統一が進めば、部品メーカーにも、少なからぬ影響が出るでしょう。
汎用性のあるものだけとはいえ、ライバル関係をこえて、
各社が連携、協力し、部品を統一する動きに出るのは、
やむにやまれぬ理由があるからに、ほかなりません。
危機感です。
私は、これまで、世界の自動車戦争は、
いまや日本車対独車にしぼられると書いてきましたが、
今回の動きも、じつは、独勢との標準規格戦争において、
後れをとっているという危機感があるからです。
独勢は、国際標準となる規格をつくるのが得意中の得意ですが、
日本は、苦手中の苦手ですからね。
日本は、基礎研究から製品化まで自社で行う、「垂直統合モデル」が主流です。
つまり、各社、ケーレツのもとで部品を生産し、その仕様はマチマチでした。
これに対して、欧州は、役割分担が明確な「水平分業モデル」が主流です。
さらに、欧州では、企業間で、いくつものコンソーシアムをつくって、
燃費向上や安全性能などの共通課題に取り組み、
知恵とお金を出し合って、一気に研究開発を進めています。
これに対抗しようと、日本も、ついに立ち上がりました。
先日も、国内自動車8社と日本自動車研究会が連携して、
「AICE(自動車用内燃機関技術研究組合)」を立ち上げました。
産官学が連携して、自動車用内燃機関の基礎、応用研究を行います。
報道によれば、「国際基準検討会」は、部品などの統一に関して、
鋼板、鋼材、樹脂素材など、素材までさかのぼって進めるとしています。
当然、標準化を目指すといっても、共通化が不可能な部品もあるわけで、
その場合、素材を統一するというのです。
日産のモジュール化の取り組み
「CMF(コモン・モジュール・ファミリー)」で、
日産とルノーの部品統一にあたり、
それが困難な部品については、素材を統一しました。それと同じですね。
かりに部品の仕様の統一がムリでも、
素材に関して14社が連携するとなれば、大きな効果が見込めますからね。
「国際標準検討会」によって、思惑通りに
部品の統一化が進むかどうかわかりません。
したがって、日本車メーカーの競争力がどれほど高まるのかも、未知数です。
しかし、各社が危機感をもち、グローバル競争を勝ち抜くために、
“大同団結”する必要性を感じていることは、
前向きにとらえていいでしょうね。