片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

メダルの数は国家のグローバル度?

2010-11-30 16:51:37 | 社会・経済

昨日にも触れましたが、今回の広州アジア大会では、
金メダルの数は、
中国が199個と、2位の韓国の76個の2倍以上と、
圧倒的な大差で1位になりました。
なぜ、中国はこんなに強いのでしょうか。
もちろん、国土が広く、10億人以上も国民がいるのですから、
スポーツの才能に秀でた人の、
絶対数が多いというのは一つでしょう。
しかし、
それだけではありません。

28日の産経新聞によれば、
外国人コーチを積極的に招き入れていることが、勝因の一つのようです。
自転車競技はフランス人監督で、10種目中5種目が金メダル。
陸上の競歩はイタリア人監督で、男女競歩3種目が金メダル。
シンクロナイズドスイミングでは、日本人の井村雅代氏が監督で、
三冠を手にしています。
今回だけではなく、
北京五輪では、38人もの外国人コーチを招き、
金メダル数は、米国を抜いて世界一となりました。

外国人に教育を委ねる手法に対し、
国内の指導者の間には
不満もあるといいます。
ただし、本当に勝ちたいのなら、
優秀な監督、コーチを世界から呼び寄せるのは、
グローバル時代の現在には、当然のことです。
日本のスポーツ界は、グローバル時代に
乗り遅れている
のではないでしょうか。

それどころか、井村さんのような
異色の優秀なコーチは、
日本の
古い体質が支配するスポーツの“業界団体”では、
受け入れられないそうです。
先輩、後輩による、
古い秩序が残るスポーツ団体は、
おおよそ排他的、閉鎖的だといいます。
そこに巣食うボスたちは、
秩序を乱し、
自分たち既得権をおかすものを徹底的に排除する
のです。
これでは、ビジネスの世界と同様にグローバル化が激しいスポーツ界では、
日本人選手は勝ち残れないのは当然です。

ビジネス界では、スポーツ界に比べ、
海外からトップマネジメントを呼び寄せることは、珍しくありません。
日産
カルロス・ゴーン社長、
ソニー
ハワード・ストリンガー会長を見れば、
そのことに
納得できるハズです。
しかし、
日本人は全般に内向き志向で、
海外に目を向けなくなっているといえます。
経済だけでなく、
メダルの数にも、
国家のグローバル度が表れている
のは間違いありません。


韓国取材旅行ノート⑤

2010-11-29 15:21:00 | 社会・経済

たかがスポーツ、されどスポーツです。

11月12日から行われていた
広州アジア大会が、昨日閉幕しました。
日本の結果は、
「金メダル60個以上でアジア2位」を目指したはずが、
金メダル48個でアジア3位。
ちなみに、1位中国は金199個、2位の韓国は76個です。
中国と韓国には、
大きく水をあけられました。
旅行日程は、広州アジア大会と期間がかぶっていたのですが、
旅行中に、
同大会に関する報道を、よく目にしました。

まず、
サムスンの李健熙(イゴンヒ)会長と、
息子の李在鎔(イジュヨン)氏が、
そろって
広州アジア大会の観戦に出かけ、帰国したという新聞記事です。
サムスンは、韓国のGDPの20%を稼ぐという巨大企業ですが、
スポンサーとして、韓国のスポーツ界に巨額の出資をしています。
だからこそ、サムスンのトップ二人も、
わざわざ広州まで、観戦に出かけたのでしょう。
日本とは、
アジア大会に対する関心の度合いが違います。

また、滞在中、テレビで野球の中継を見かけました。
今頃、何だろうと思っていましたら、
アジア大会の野球中継でした。
韓国は、野球でもしっかり金メダルを獲得しています。
全員がプロの選手だといいます。
準決勝で台湾に敗れ、
銅に終わった日本は、アマチュアの選手たちです。
闘う前から、取り組む姿勢において違っています。

韓国の選手が、必死にメダルをとりにいくのは、
メダルを獲得すると、さまざまな特典があるからです。
例えば、男性であれば、
兵役を免除されます。
また、性別に関わらず、
多額の年金の支給を約束されます。
それだけでも、
モチベーションが変わってくるのは間違いありません。
韓国は、
国をあげて、国策として
スポーツ強化に取り組んでいる
ということです。

その点、
日本は、メダルをとったからといって大きな特典はありません。
頑張って闘う理由がありません。
平和で、豊か
ですから。
でも、
スポーツだからこそ、勝ちにこだわっていい
という考え方もあるのではないでしょうか。


韓国取材旅行ノート④

2010-11-26 16:50:00 | 社会・経済

日本少子高齢化、人口減少に伴って、
移民の受け入れが議論されています。
少子高齢化、人口減少が進むのは、
韓国も同じです。
ただし、韓国は、すでに
移民を容認する「社会統合政策」を掲げ、
積極的に移民を受け入れています。

日本では、厚生労働省の「外国人雇用状況の届け出状況」によれば、
在日外国人労働者の数は、09年時点で約56万人です。
ただし、
不法滞在なども含めると、100万人近いといわれています。
しかし、このまま移民を受け入れなければ、
人口減少に歯止めがかからず、
2050年には総人口8000万人になると推測されています。

では、
韓国はどうでしょうか。
ご存じの通り、
韓国の人口は約4900万人と日本の半分未満です。
しかし、登録されている
在外国民は、07年時点で100万人です。
不法滞在も含めると300万人近いという数字もあります。
移民対策は進んでいるというか、受け入れているといっていいでしょう。

意外と知られていませんが、
韓国・仁川の工業地帯では、
東南アジア系、アフリカ系、モンゴル系など、
移民が非常に多いといいます。
工場で働いている労働者の多くは移民で、すでに、メーカーは、
移民なくして、工場を稼働できない状況になっていると聞きました。

もちろん、
移民増加に伴って韓国人の就職率が低下するなど、
さまざまな問題が起きてはいます。
しかし、
移民に対して早々に門戸を開放し、受け入れていることは、
韓国の、
急速な経済発展の力になっていると思います。
何より、
人口が減少を続けては、経済の持続的な発展は難しいですからね。
日本は、韓国の移民政策の行方を見守りつつ、
学ぶべきところは、学ぶべきではないでしょうか。


韓国取材旅行ノート③

2010-11-24 21:02:12 | 社会・経済

韓国で取材中、ソウル大学の教授から、こんな小咄を聞きました。
以下、紹介します。

水槽に、一つの魚のエサがあります。
そこに
大きな魚と、小さな魚がいます。
魚を、
日韓米になぞらえた場合、エサの食べ方が違ってきます。
どうなるでしょうか。
米国であれば、大きな魚が全部食べます。
韓国
であれば、スピードの速い方が食べます。
日本
はどうでしょうか。そのエサをシェアするというのです。

断るまでもなく、
米国は「大きな魚」が食べるというのはわかりますよね。
米国人は、BIGで強いものが大好きです。
国土は広大で、も、スーパーマーケットも、
ピザも、ハンバーガーも、
すべて
BIGな「アメリカンサイズ」です。
声の大きな者が勝ち、弱肉強食です。
「大きいこと」価値があります。
したがって、
エサも「大きな魚」が食べます。
わかりやすいし、はっきりしています。
しかし、
弱者には、決してやさしくない社会かもしれません。

韓国はどうでしょう。韓国では、「速いこと」に価値があります。
韓国人はせっかちで、口癖のように
パリパリ(パルリパルリ)」といいます。
「パリパリ」とは、
「はやくはやく」の意味で、
行動を
急かす言葉です。
確かに、
コンビニの会計や、
タクシーやバスの運転も「パリパリ」
です。

企業における
経営も同じで、サムスンに代表される、
韓国企業の即断即決のスピード経営は、
「パリパリ経営」だといわれています。
エサも、「速い方」が食べるのです。
スピーディで軽快ですが、
ゆっくり、のんびりいきたい人には、向かないかもしれません。

問題は日本です。シェアするというのです。
思い当たる節があるのではないでしょうか。
日本人は「平等」が大好きです。
何事も平和に、穏便にことを進めるためです。
一方、
なんでもシェアして、
どちらにも花を持たせる判断をしがちです。
例えば、国際的な競争力のある
“ハブ港”をつくろうと、
政府は、今年8月、
「国際コンテナ戦略港湾」を指定しました。
ところが、指定されたのは、
京浜港(東京、川崎、横浜)と、
阪神港(大阪、神戸)
です。一つを選べません。
一か所に集中するべき
ときにも、シェアしてしまう、
悪平等主義というのは、日本人の、よくないところでしょう。

まあ、
日韓米、どこの国も一長一短です。
それぞれの国の特徴をいい当てていて、おもしろい。
どれが
いい、悪いとは、一概にいえません。
足りないものをねだるのは、ないものねだりになるでしょう。
それにしても、
日本の悪平等主義国際的に有名で、
揶揄されていることに、我々は気付き、
深刻に受け止めるべき
ではないかと思います。