これから、ベア論議が活発になると思われます。
そこで、少しばかり考察してみました。
アベノミクス効果で、日本の景気は光がさしはじめています。
以前、このブログにも書きましたが、
安倍晋三さんは、アベノミクスによって、
①企業の業績が改善し ②投資が拡大し
③雇用・所得が増加し ④消費が拡大する。
その結果、①企業の業績が改善する、という好循環を目指しています。
③雇用・所得の増加のために、企業がベアを行うかが注目されています。
私は、以前述べた通り、これは、トヨタの出方次第だろうと考えています。
政府からの賃上げ要請を受けて、経団連は、
来春の労使交渉での賃上げを、企業に働きかける方針です。
直近、政府は、自動車業界が「6重苦」として挙げていた要素を、
一つずつ、解決に導いてきました。
「円高」を修正し、「CO2削減目標」を下げます。
「自由貿易協定への参加の遅れ」は、TPP締結に向けて動いています。
「法人税率」も下げる方向ですよね。
あとは、「電力不足」の払拭と、「労働規制」の緩和です。
これだけ政府が動いていれば、企業は、ある程度、
ベア要請を飲まざるを得なくなってきますわね。
所得増が一過性では、好循環は生まれません。
継続的に所得が増すことが望ましい。
したがって、まさしくベース・アップですよね。
ただし、ベアを安易に行うと、企業は痛い目を見ることになります。
ある企業の幹部は、こういっていましたよ。
「生産性向上と乖離したベース・アップが続いた結果、
気が付いたら、日本のレイバーコストは世界一になっていた」
経営者からすれば、おっしゃる通りに、いささか不本意だったといえます。
企業の競争力に関わってきますからね。
ベアには、生産性向上が欠かせないというのが、経営者の立場です。
つまり、ベアをする以上、同時に、
企業の収益力を高めないといけないというわけですよ。
しかし、生産性向上が得意な製造業の現場においても、
現在、これは一筋縄でいかない、なかなか難しい課題です。
というのは、非正規労働者が増加しているからです。
90年には約2割でしたが、現在、4割近いといわれています。
例えば、トヨタでは、現場に期間工が増えるなど、
雇用形態が多様化すると、現場の班長たちは疲弊するといわれています。
できれば、期間工に、改善活動に参加してほしいという話も聞きますが、
これは、現実的に考えると、いろいろと難しいようです。
現在の企業の収益改善は、円安効果など外部要因や、
株高、リストラなどの効果によるところが大きい。
必ずしも、生産性をあげ、稼ぐ力がついているわけではありません。
つまり、企業の実力があがっているわけではない。
だから、安易にベアを行うと、
いたずらにレイバーコストだけが高くなってしまう。
ここに、経営者のベアに対するためらいの一つの原因がありますね。
ポイントは、ベアをスムーズに実現するため、
労使で生産性向上について、
しっかりと話し合うことではないでしょうかね。
パナソニックの構造改革は、いよいよ最終段階に入りつつあります。
問題は、家電です。
報道されているように、パナソニックは、
イスラエルの企業に半導体の国内主力3工場を売却します。
社長の津賀一宏さんは、16年3月期までに、
赤字事業をすべて解消するという方針を打ち出しており、
すでに、プラズマテレビや、
個人向けスマートフォンから撤退を決めています。
今回の半導体工場売却も、赤字事業解消の方針を貫くための一策です。
パナソニックは、B2Cビジネスから、
B2Bビジネスへと大きく舵を切りつつあります。
今後、注力するのは、車載用電池などの「自動車分野」と、
もともとパナソニック電工がもっていた、
住宅や電気設備などの「住宅分野」です。
この2つは、19年3月期までに、それぞれ、
売上高2兆円にする目標を掲げています。
つまり、ダイナミックな事業戦略の転換です。
「自動車分野」についていえば、米自動車ベンチャーの
テスラ・モーターズから、リチウムイオン電池を大量受注しています。
これもあって、すでに1.7兆円までは見えているといい、
残りの3000億円は、M&Aや提携など
「非連続な成長」によって確保する方針です。
「住宅分野」も、1.7兆円までは見えているといいます。
パナソニックのルーツは、「家電事業」です。
パナソニックといえば、松下電器以来、
洗濯機、冷蔵庫、エアコンに代表される、白物家電が主力商品でした。
アイロンや電子レンジ、炊飯器など、
生活に密着した生活家電で、「家電王国」をつくりあげてきました。
現在も、売上高の3分の1を占めています。
実際、どの家庭にも、松下の家電製品が一つはあったものですよね。
パナソニックのDNAは、まさしく生活家電にあるといっていいと思います。
津賀さんは、この家電事業も、「19年3月期に2兆円」を目指します。
ところが、その道筋がなかなか見えてこないのですね。
B2Bにいくとはいっても、現実問題として、
B2Cの家電を切り捨てることはできないわけですよ。
家電事業を語るうえで、避けて通れないというか、
ポイントは、全国に展開される販売網
「パナソニックショップ(旧ナショナルショップ)」なんですよ。
「町の電気屋さん」として親しまれ、
全盛期の1980年代には、これらの系列店が、全国に約5万店ありました。
全国津々浦々までいきわたった販売網は、大げさではなく、
日本人にとって、生活家電の「インフラ」でしたよ。
ただ、「パナソニックショップ」は、
大型電気店の出現、急成長の影響を受け、次第に姿を消していき、
2010年現在、約1万8000店舗にまで数を減らしています。
とはいえ、「パナソニックショップ」は、
依然、高齢者にとっては頼りになる存在です。
強力な流通チャネルであることは間違いありません。
かりにも、家電事業が復活しなければ、
「パナソニックショップ」は、生きのびていけません。
家電の復活なくてし、パナの復活はないのです。
ところが、その立て直しの道筋は、いまだ見えないのが現状なんですね。
パナソニックが、車載や住宅に注力し、赤字事業の処理に奔走するうち、
間隙を突いて、三洋電機の白物家電事業を買収した中国のハイアールや、
国内のアイリスオーヤマなどが、家電の世界に攻め込んできています。
いまや、再建に向けて走り出したパナソニックにとって
家電事業は、最大の弱点になりつつあります。
この克服は、簡単ではありませんね。
どうするか。津賀さんの手腕が問われます。
切磋琢磨とは、このことをいうのでしょう。
自動車業界の話です。
トヨタは、HV(ハイブリッド車)「アクア」を一部改良し、
燃費を37.0㎞/?として、燃費世界一の座を奪還しました。
ホンダの新型「フィット」の36.4㎞/?を抜いたわけです。
じつは、その新型「フィット」は、
「アクア」が保持していた35.4㎞/?を抜いて、
世界ナンバーワンの座を奪ったという経緯があります。
“倍返し”ではありませんが、トヨタは再びホンダを抜き返したのです。
この熾烈な燃費話のウラには、因縁話があるんですね。
ホンダは、“世界初のHV”量産車発売をめざし、
「インサイト」を開発していました。
ところが、トヨタ「プリウス」に先を越された。
1997年のことです。
苦い苦い記憶で、これは、ホンダにとって痛恨の極みでした。
話はまだ続きます。09年には、2月に発売した2代目「インサイト」が
同年4月に、ハイブリッド車として初めて、
国内の月間販売台数1位を獲得しました。
すると、直後の5月に発売される新型「プリウス」は、
約30万円の大幅値下げで対抗。
翌5月に月間販売台数首位を奪還しました。
もはや、「よきライバル」という綺麗ごとでは、
すまされないレベルです。
ただし、おもしろいのは、両者とも技術者に話を聞くと、
「小さな数字をめぐる競争に、意味はない」なんてことをいって、
表面上、燃費競争を重視していないようなフリをすることです。
「よくいうよ」ですが、それはそれでいいと思います。
切磋琢磨すればいいのですから。
多分、いまごろ、抜き去られたホンダ技術者は、
「いまにみていろ」と、切歯扼腕しているのは間違いない。
そして、ほんの数か月前には、トヨタ社内がそうだったはずです。
「燃費世界一」へのこだわりは、
両社とも、並々ならぬものがありますからね。
ホンダの負けず嫌いの企業風土は有名ですが、
トヨタにも、世界一の自動車メーカーの意地があります。
規模では劣るとはいえ、ホンダは、
世界一のトヨタに真っ向勝負を挑み続け、技術を磨きます。
一方のトヨタも、ホンダが頑張るからこそ、
ホンダに負けてたまるかと、意地を見せます。
トヨタあってのホンダであり、ホンダあってのトヨタなのです。
これは、軽自動車市場における、スズキとダイハツも同じでしょう。
軽の世界でも、その競争は激しい。
昨年9月、ダイハツが燃費30.0㎞/?の「ミライース」を発売すると、
スズキは2か月後の同11月、
燃費30.2㎞/?の「アルトエコ」を発売して、
軽ナンバーワンの燃費を実現しました。
さらに、「アルトエコ」は、今年2月、33㎞/?まで燃費を向上させると、
ダイハツの「ミライース」は、33.4㎞/?に。
すると、さらにスズキの「アルトエコ」は、35.0㎞/?を達成した。
このように、軽の世界は、ダイハツとスズキの意地の張り合いです。
まさに、スズキあってのダイハツ。ダイハツあってのスズキです。
かりにも、ホンダが存在しなかったとしたら、
現在のトヨタは、ないのではないでしょうか。
トヨタの内部は、弛緩してしまうと思いますよ。
同じように、トヨタが存在しなかったら、
ホンダの頑張りもないでしょう。
身近にいる強力なライバルとの熾烈な競争、切磋琢磨こそが、
日本自動車産業の強さの秘密の一つであることは、間違いありません。
東京モーターショーは、連日大にぎわいです。そこで一言。
過去2回の東京モーターショーは、09年はリーマン・ショック後、
11年は大震災後で、盛り上がりに欠けました。
米ビッグ・スリーはもとより、欧米メーカーの参加も極端に少なくなり、
まるで灯が消えたような状態でした。
実際、あんなさびれたイベントは見たことがないというほど、
惨憺たる状態でしたよ。
90年代初頭の超にぎやかなモーターショーを知っている身としてはね。
しかし、今回のモーターショーは、
ようやく国内市場も世界市場も活気づき、
自動車メーカーの業績も回復中の開催とあって、
各社、久し振りに力が入っています。
報道公開日だった20日には、
トヨタ社長で自工会会長の豊田章男さんが、
ホンダのブースを訪れ、自ら二輪車にまたがって見せる場面もありました。
率先して、場を盛り上げようとしているのが、
痛いほど伝わってきました。
業界をあげて一生懸命な様子が伺えましたよね。
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報道されているように、今回のモーターショーが掲げたテーマは、
「世界にまだない未来を競え。」です。その言葉通り、
FCV(燃料電池車)やEV(電気自動車)などの環境技術、
自動運転の技術など、夢のある未来の技術が、たくさん発信されています。
さて、モーターショーの盛り上がりは別として、
自動車業界の足元はどうなんでしょうか。
二輪車でいえば、自工会の二輪特別委員会は、
2020年に国内二輪車販売の「100万台復活」を目指しています。
ちなみに、昨年の国内販売台数は、44万2407台です。
ピークの1982年約328万台が、ウソのようです。
人口減少が進む国内で、市場を2倍にするのは、
たやすいことではありませんね。
四輪は、ピークの90年には約777万台あった国内販売が、
リーマン・ショック後は約400万台にまで落ち、
やっと12年に約536万台(登録車は約339万台)にまで回復しました。
ちなみに、国内生産台数は、8社合計で約943万台です。
回復したとはいえ、残念ながらメーカーは、やっとこそっとこの状態です。
現在の雇用を維持するためには、トヨタは国内で300万台、
ホンダ、日産は100万台の生産を確保する覚悟だといっています。
現状は、トヨタが約349万台、ホンダが約103万台、
日産が約115万台ですから、まあ、ギリギリですよね。
今後、消費増税の影響は、少なからず出るのは間違いありませんし、
いま元気な軽自動車も、軽自動車税の増税問題がくすぶっています。
国内市場の活性化は、やはり、簡単ではありません。
東京モーターショーの盛り上がりに、
水を差すつもりは、まったくありません。
ただ、国内市場の活性化には、未来の技術に夢をもちつつも、
環境技術は日本が世界一などとおごることなく、
直近の足元の課題を一つひとつ解決していく。
とにかく、自動車メーカーは、
ゆめゆめ油断はないと思いますが、地味な取り組みが欠かせない。
世界は広いですからね。
日本の輸入車市場では、欧州メーカーの車が人気がありますよね。
ベンツのほか、アウディ、そしてVW(フォルクスワーゲン)の小型車は、
根強いファンがいます。
これら欧州メーカーは、日本メーカーの最大のライバルです。
VWに、“塩”が送られました。どういうことか?
東京モーターショー一般公開初日の23日、
今年のもっとも優れた自動車に贈られる
「日本カー・オブ・ザ・イヤー」が発表されました。
受賞したのは、VWグループジャパンの「ゴルフ」です。
輸入車初の快挙となりました。
※東京モーターショーにて、リアルスポーツモデルの「ゴルフGTI」
VWグループの2012年の世界販売台数は907万台と、
トヨタ、ゼネラル・モーターズに次ぐ3位です。
ヨーロッパ市場はもちろん、中国を中心とする新興国市場に早くから参入し、
販売台数を伸ばしています。
直近、日本の自動車市場は活気づいてきましたが、
じつは、日本メーカーだけでなく、輸入車の販売台数も伸びています。
なかでも、VWは、小型車「ゴルフ」「up!」などを投入して、
斬り込んでいます。
その意味で、「ゴルフ」の受賞は、VWの思惑通りというか、
してやったり……ではないでしょうか。
「ゴルフ」は、21.0km/lと、輸入車のなかでは燃費がよく、
操作性のよさ、高級車並みの上質感、安全性能が高いことなどが
高く評価されたんです。
私が注目したいのは、受賞の一因として、
モジュール(部品統合)化の開発手法が評価されたことですね。
モジュール化は、車づくりの在り方を変える、大きな潮流です。
そのモジュール化で、ドイツメーカー、
なかんずくVWが、いちばん進んでいます。
日本には「モノづくり神話」がありますが、
日本車メーカーは、決して油断できないのです。
VWは、欧州の景気が回復次第、また、日本市場の成功を足掛かりにして、
世界経済の成長センターで、
日本メーカーの牙城ともいうべき東南アジア市場に
一気に攻め込むのは確実ですね。
つまり、中国での成功に続いて、アジア市場へ本格的に参入する算段ですよ。
東南アジアを舞台に、日本車メーカーとVWは、
ガチンコ勝負になるのは、間違いありませんよね。