電機産業と自動車産業。
両者の明暗はいまや、はっきり分かれています。
自動車産業がリーマン・ショックおよび3.11から立ち直る気配なのに対して、
電機産業はいまだ、再生の兆しが見えてきません。
パナソニックが今日、発表した2012年度4-6月期の連結決算は、
最終損益が128億円の黒字でした。
四半期ベースの黒字転換は、2010年10-12月期以来、6四半期ぶりです。
黒字転換の要因には、
プラズマパネルの生産拠点だった尼崎工場を一部停止し、
固定費を圧縮したことや、
人員削減など構造改革に取り組んだことがあげられます。
リストラは、聖域といわれてきた門真のパナソニック本社にもおよんでいます。
2012年度中をメドに、本社従業員約7、000人を半減する計画といいます。
歴代トップが踏み込まなかった、本社従業員の削減に踏み切り、
今回、128億円の黒字を出したわけですが、
これで一安心とはいっていられません。
いよいよ、これからが本番です。
ここで、再生に向けたサプライズが欲しいところです。
しかし、残念ながら、今回の記者会見ではサプライズはありませんでした。
冷蔵庫や洗濯機などの“白物”は増収増益ですが、
これは、かねてから指摘されてきたことで、サプライズではありません。
やはり、問題はテレビ事業の赤字をどうするかです。
ここのところがはっきりと見えてこないと、
パナソニックが完全に再生したとはいえません。
それから、エコソリューションズ事業は、
売上高は3552億円で前年並みを確保していますが、減益です。
パナソニックは、三洋電機を傘下におさめることで、
三洋の保有する電池事業を生かし、両者のシナジー効果で
エネルギー事業の成長と経営体質の強化を図る計画だったはずです。
ところが、いまだにシナジー効果が出ているとはいえません。
太陽電池の新たな生産拠点として、
この12月にパナソニックエナジーマレーシアが稼働しますが、
時間が少しかかるということですかね。
まごまごしていると、中国との競争に巻き込まれます。
また、お隣の韓国では、サムスン電子が第2四半期決算で、
営業利益が6兆7、200ウォンとなり、過去最高利益となりましたが、
これは、スマートフォン「ギャラクシ―S」の販売が好調だったからです。
パナソニックはというと、スマートフォンには期待がもてそうにありません。
「たいへん厳しい事業です。苦戦しております」と、
常務取締役の河井英明さんは正直に語りました。
こちらは、多分、時間の問題ではないでしょう。
このほか、記者会見会場からは、
「オリンピック需要」についての質問が出ましたが、
「今年はむずかしい。日本も海外もオリンピック需要は見えない」
と、河井さんはいいます。
つまり、再建の道は依然、厳しいといえそうです。
いちだんの構造改革が必要なのでしょう。
社長の津賀一宏さんの手腕が問われるわけです。
一方、今日発表された、ホンダの2012年4-6月期の連結決算は、
純利益が前年同期にくらべ、約4.1倍の1.317億円でした。
その要因には、北米の販売の倍増、軽自動車「N‐BOX+」の貢献があります。
ホンダは、09年2月、伊東孝紳さんが社長に就任後、
軽自動車へと見事に戦略転換を図りました。
そして、今日の記者会見で取締役専務執行役員の池史彦さんが語ったように、
「顧客に受け入れられる軽をつくる」ことによって、その戦略を成功させました。
世界経済は、不透明感を増していますが、トンネルの先に、光が見えるかどうか。
企業の明暗は、ここでわかれるのではないでしょうか。
リストラだけでは光は見えてきません。
求められるのは、収益力の本格回復を牽引するサプライズです。