片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

格安ジーンズの終末は?

2009-10-30 19:12:31 | 社会・経済

ジーンズの価格破壊が進んでいます。
口火を切ったのは、今年3月、ファーストリテイリング(FR)が展開する、
「ユニクロ」の姉妹店、
「ジー・ユー」の「¥990ジーンズ」でした。
「まあまあの商品を最低価格で」販売する「ジー・ユー」にとって、
「¥990ジーンズ」は、ある意味、ブランド力です。
3ケタでジーンズが買える!という衝撃は大きく、
普段着としては十分な品質とともに、消費者から圧倒的な支持を集めて
大ヒットになりました。


これに追随したのが、今年5月のセブン&アイホールデイングス
「ザ・プライス」で発売された
880円のジーンズです。
さらに、
8月にはイオン、
9月にはダイエーが880円のジーンズ
を発売。
10月には
西友が850円、
ドン・キホーテが690円のジーンズ
を売り出しました。
「ジー・ユー」のように、ブランド力につながったかは別として、
各社とも、格安ジーンズの売上は好調なようです。

どうして、これほどまでにジーンズを安くつくれるかといえば、
生産地の問題があります。
当初、
中国で生産していたジーンズを、
より賃金の安い
カンボジアへうつしたり、
さらに安い
バングラディシュでつくることにより、コストを下げています。
また、日本人向けに、あらかじめ、また下を短くつくっておけば、
生地が少なくて済み、
原材料費も抑えられるなど、
ジーンズは、
値下げ幅が大きいという理由もあるようです。

ジーンズは、季節にとらわれずに
通年売れて、
若者から中高年まで、
幅広い年齢層が購入します。
業績不振の大手デパートなどにとって、
集客用の目玉商品にもってこいです。
各社は、客足が離れることを懸念し、
集客用のツールとして、
競って、より安いジーンズを発売しているのです。
ジーンズ目的に集まった消費者に、
ほかの商品を買ってもらいたいわけです。
しかし、集客用にジーンズを安くするならば、
いったいどこまで安くなるのでしょうか。
まさか、ポケットティッシュのように、
ジーンズが道端で、
無料配布
される日がやってくることはないでしょうが、
そんなことさえ考えてしまうほど、ジーンズは安くなりました。

いくら客寄せとはいえ、これ以上ジーンズを安くしても、
もう消費者は驚かないのではないでしょうか。ムダです。
「安物買いの銭失い」
という格言がありますが、
これ以上の安売りは、
デフレの連鎖を招くだけですね。


マイケル・ジャクソンの衝撃!

2009-10-29 19:00:49 | 社会・経済

ドキュメンタリー映画「マイケル・ジャクソンTHIS IS IT
昨日28日から、
2週間限定で、世界同時公開されています。
TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた
プレミア上映を見に行ってきました。

会場は、レッドカーペットが敷かれ、
ライオネル・リッチー、デーブ・スペクター、
クリスタル・ケイ、曙、黒木メイサなどの著名人の顔が見えるなど、
華やかなムードで盛り上がっていました。

映画は、
素晴らしく、感動しました。
私は、マイケルについて詳しく知っていたわけではありませんし、
ファンであったわけではありませんが、
映画が始まった瞬間に、引き込まれました。
例えば、
King of Popマイケルはどのようにして生まれるのか。
そのプロセスが克明に描かれています。
また、あの
ダンスパフォーマンスは、
なんと表現したらいいのでしょうか。
もう、手の動き、足の運びには
神が宿っているとしかいいようがありません。
ドキュメンタリー映画だからこそ、ステージとは違って、
細部がよくわかります。

「誰も見たことのない彼に逢える」というキャッチコピーの通り、
生前の彼が隠し通していた、
プライベートの素顔や肉声が登場します。
その人柄の素晴らしさにも驚かされます。
なぜ彼が、世界中からこれほど絶大な支持を集めたのか、
わかった気がしました。
いや、わかるのです。

一般に、マイケルといえば、
悪いイメージしかないのではないでしょうか。
実際、幼児虐待裁判で、雨も降っていないのに、(本当は日除けか?)
黒い傘をさし、能面のような無表情な姿で、
TVに映し出される彼が思い出されます。
気味の悪いロボットのような印象を持った人も
多かったのではないでしょうか。
ファンは別として、決していいイメージを持たれていませんでした。
しかし、あの
黒い傘のマイケルは、虚像、そして、
つくられた姿であることが、よくわかります。
スターの、
表と裏の、落差の激しさは知っているつもりでしたが、
マイケルの場合、それは、もう中途半端ではありません。
そこに、マイケルというスターの
闇の深さが感じられました。

さて、世界中にファンを持ち、活躍してきたマイケルが、
生前、所属していたのは、
ソニー・ミュージックです。
今回の映画も、
ソニーピクチャーズによって制作されています。
よく知られるように、ソニーは、
メーカーでありながら、
映画、音楽、ゲーム事業を抱える異色の企業です。
戦後の創業から、
「夢のある商品をつくる」
というDNAを脈々と受け継ぎ、
高いブランド力をもって、世界から評価を得てきました。

ところが、最近のソニーは、アナログからデジタルへの移行に手間取り、
出遅れた結果、ブランド力はやせ細り、
サムスンなど、
新しい企業の勢力におされている感があります。

しかし、そうはいっても、
音楽事業や、ハリウッド映画など、
巨大な設備や、莫大な資金を必要とする事業を動かし、
スーパースターたちに、
華やかな舞台を用意できる企業
といえば、
世界においても、やはり
ソニーしかないでしょう。

ソニーは、それだけの
ブランド力技術力をもち、
世界に存在感をもつ企業なのだからこそ、
音楽や映画やゲーム事業をもつメーカーとしての
メリットを、
存分に発揮し、
世界中に支持されるような活躍が期待されるのです。

マイケルは、
「見たことのないステージ」
「感じたことのない瞬間」
創り出そう、
より素晴らしいステージを届けよう、

バックダンサーや、コンサートを支えるスタッフたちに呼びかけます。
同じように、エンターテインメントの
次なるステージを創出し、
人々に、驚きや興奮の瞬間を提供するのは
ソニーにしかできないはずです。
ソニーは、人々を
未知の世界へと連れて行ってくれる、
革新的なアイディアや商品を生みだす可能性をもっていることを、
改めて確認させてくれるのが、この映画だと思います。


日本の緩慢なる“自殺”

2009-10-28 16:53:47 | 自動車関連

先週、東京モーターショーの報道公開日に行ってきました。
寂しいといったものではありませんでした。
昔に比べ、
熱気はないうえ、ガラガラでした。

デトロイト、ジュネーブ、パリ、フランクフルト、上海と並び、
世界5大自動車ショーに数えられる東京モーターショーですが、
いまや、このなかでは、
出展企業数は最下位です。
今回の出展企業数は110社前後と、
過去最低です。
07年の241社に比べても半減しました。
海外からの参加企業にいたっては、たったの3社です。

モーターショーが大盛況だった、90年代の前半から、
リーマン・ショックの去年まで、
日本には高度な
“技術力”があり、市場にも活気がありました。
当時の日本は、
世界から見て魅力あふれる“市場”だったのです。
結果、
が集まり、モノが集まり、当然、技術も、おカネも、
海外から、日本にどんどん、
集まってきていました。
活気も、熱気もありました。

ところが、東京モーターショーが寂しい限りだったのに対し、
今年の4月に行われた
上海モーターショーは、
約1500社が出展し、大盛況でした。
東京モーターショーに海外からの注目が集まらないということは、
日本は魅力のある市場ではなくなったということです。
そうすると、
人やモノや技術は、集まってこなくなるのです。
「世界同時不況のあおりを受けただけ」
「次回は参加企業が帰ってくる」と思ったら、大間違いです。

日本には世界に誇る
「環境技術」があるはずです。
ところが、
「技術力」はあっても
いまや、
中国の市場に比べて、「市場力」がありません。
つまり、中国のように、元気ハツラツの「国力」がありません。
だから魅力もない。
日本は、モーターショーの衰退に、
もっと
危機感をもたなくてはいけません。
このままでは、日本は
緩慢なる“自殺”に追い込まれてしまいます。


大量消費社会の“負の遺産”万引き

2009-10-27 18:37:44 | 社会・経済

24日の毎日新聞に、東京都内の年間の万引き被害額
670億円にのぼる、という記事が載っていました。
これは、
振り込め詐欺の被害額の10倍以上になるらしく、
視庁は、被害届などの書類や手続きを簡素化するなど、
被害店の負担を軽減して被害の届け出を徹底し、
被害の抑止に繋げる対策などを進め
ています。

一方、スーパーのトイレにストックしてある
トイレットペーパーが盗まれるという話も聞きます。
これは、商品ではありませんが、
盗むわけですから、
もちろん犯罪です。
近頃、スーパーのトイレに、
「トイレットペーパーを持ち帰らないで下さい」
「監視を強化しています」「見つけたらただちに通報します」
などの張り紙がしてあるのを見ることがあります。
大学でも、似たような被害があるそうです。

トイレットペーパーがなくなるといえば、
思い出すのは
1973年のオイルショックです。
当時、石油を使ってつくられるトイレットペーパーが無くなるという噂になり、
消費者が大量に買い求めて、
トイレットペーパーが品薄になりました。
そのとき、店のトイレに
ストックすると盗まれるため、
スーパーやデパートでは、
トイレにトイレットペーパーを置かなくなりました。

しかし、現在の日本では、
トイレットペーパーは品切れにはなりません。
それでも、トイレットペーパーを盗む人がいます。
日本は、開発途上国と違い、
飢餓に苦しんでいる人もいません。
それでも、コンビニの食品や、
デパートの物品などの
万引きはなくなりません。
しかも、中学・高校生だけでなく、大人の万引きが増えています。

これだけ
豊かな日本において、
万引きペーパー泥棒も、一向になくならない。
教育が悪いのか。管理体制が甘いのか。モラルの欠如なのか。
不況が、万引きを助長しているという話もあります。
それらは、確かに、
万引き増加の一因かもしれません。
しかし、私は、じつは
もっと根深い問題が潜んでいると思うのです。

例えば、
貧しい国の万引きと、日本の万引きは、種類が違います。
貧しい国の万引きは、まさに生活苦からきています。
そして、盗もうとしても、
盗むモノ自体が少ないことに加え、
貴重なモノを盗むことに対して、
精神的なプレッシャーがかかりますし
盗んだことに対する
罪悪感は強くなります。
まさに、
万引きも命がけです。

現在の
日本は、物質的に豊かです。
スーパーにいけば、さまざまな
モノが、
溢れんばかりに山積みにされています。
その
商品の山を前にして
「これだけあるのだから、一つぐらい」とうい心理が、
深いところで働いているのではないか。
もっといえば、
「どうせ、売れ残れば廃棄されるのだ」
「捨てられるモノをもらっただけだ」
という心理もあるかもしれません。
皮肉なことに、生活苦からではなく、
豊かだからこそ、盗むのです。
溢れているモノを盗むのですから、
罪悪感も湧きにくいのです。

その意味で、取り締まりが強化されても、モラル教育を徹底しても、
これほどまでに
“モノ”に溢れた社会では、
万引きはなくならないのではないかと思います。
「万引き」は、いわば、
大量生産、大量消費社会が生んだ“負の遺産”そのものだと思います。


デジタル時代の読書

2009-10-26 18:50:04 | 社会・経済

10月27日から始まる読書週間を前に、
各紙で「読書」に関する特集が組まれています。
昨日の読売新聞には、読売新聞社が実施した
「読書」についての全国世論調査の結果が載っていました。
それによれば「
この一か月間、何冊ぐらい本を読みましたか
という質問に対し、
読んでいない」と答えた人は、全体の53%です。

理由としては、複数回答で、
「時間がなかった」51%
「読みたい本がなかった」21%
「本以外で知識や情報を得られる」
「読まなくても困らない」各18%
などです。

しかし、「時間がなかった」といいますが、
読みたい本があれば、時間をつくって読むでしょう。
「読みたい本がなかった」といいますが、
あらゆるジャンルの本があるのです。
読みたい本がないということは、
興味のあるものがない
ということでしょう。

インターネットが普及し、
「本以外で知識や情報を得られる」ようになりました。
一見、「読まなくても困らない」かもしれません。
しかし、学者や作家など、
特定の人物によって書かれたものや、
特定の分野について、詳しく書かれたものを読もうと思えば、
本に勝る媒体はありません。
詳しく何かを「知りたい」と思わないから、
「読まなくても困らない」
のです。

テレビはついていれば見ますが、
本は、
自発的に「読もう」と思わなければ読みません。
知りたい分野について書かれた本を
探し
お金を払って手に入れなくてはいけません。
読みきろうと思えば、
時間もかかりますし、
集中力や忍耐力も必要です。
労力をかけても「勉強したい」「教養をつけたい」人だけが、本を読みます。
「読書」は、いわば「自己投資」であり、「自主学習」です。

近頃の電車のなかでは、文庫本や週刊誌に代わって、
携帯電話やポータブルゲーム機ばかりが目につきます。
それを見て、「日本人は本を読まなくなった」
と嘆いていても仕方ありません。
ここで、ハタと考えました。
その
携帯電話やポータブルゲーム機が
“本”になればいい
わけです。
米国では、
アマゾン・ドット・コムの「Kindle」や、
ソニーの「Reader Daily Editionなど、
電子ブックの普及も進んでいます。

この際、これまでの
「紙至上主義」を
捨て去るべき
なのかもしれません。
救世主「電子ブック」というわけです。
これも、時代の流れではないでしょうか。
ただ、それには、
著作権など、
いろいろ解決しなければいけない問題もあるでしょうが、
「電子ブック」向けの
コンテンツの充実を図らなければいけないでしょうね。