日本経済新聞の文化面の名物コラム、「私の履歴書」に、
明日から、トヨタ自動車名誉会長の豊田章一郎さんが登場します。
章一郎さんは、トヨタ創業者の豊田佐吉の孫で、
せんだってのドラマ「LEADERS リーダーズ」の主人公のモデル、
豊田喜一郎の息子にあたります。
そして、現社長の章男さんの実父にあたります。
章一郎さんの略歴は、まず、
1952年にトヨタ自動車前身のトヨタ自動車工業に取締役として入社。
81年にトヨタ自動車販売の社長に就任。
82年からは、トヨタ自動車工業と自動車販売が合併して誕生した、
トヨタ自動車の初代社長に就任します。
92年に会長に退くまで、10年間にわたってトヨタトップを務めました。
私は、章一郎さんは、トヨタのグローバル時代の基礎をつくったと思います。
三代目社長だった石田退三さんの時代は、
1950(昭和25)年の労働争議が集結したばかりで、
石田さんは、トヨタは「三河の田舎侍」でいいのだと公言していました。
東京に出ていくなんて、考えられなかった。
しかし、四代目社長の豊田英二さんを経て、
五代目社長の章一郎さんの時代になると、82年の工販合併、
そして同年に“東京本社”を構え、この頃からトヨタの社風は
「田舎侍」を完全に抜け出し、国際化の歩みを始めました。
そして、章一郎さんは、94年に経団連会長を務めました。
トヨタは、これを機に日本を代表する企業へ、
また、グローバル企業へと変身します。
しかし、章一郎さんご本人は、大変謙虚な方です。
私は、章一郎さんにインタビューしたとき、こんなセリフを聞きました。
「私は、先人がつくりあげたトヨタのおいしいところを食べただけです」
じつに謙遜な方です。
真偽のほどは定かではありませんが、
「私の履歴書」の執筆をめぐっては、
「郷土の大先輩の平岩外四さんを差し置いて、私が書くわけにはいかない」
といって、断っていたとか聞きます。
平岩さんは、同じく愛知県出身で、東電社長、会長を務め、
章一郎さんの前に経団連会長を務めていた人物です。
ちなみに、その平岩さんは、2007年に亡くなっています。
章一郎さんが、「私の履歴書」の執筆を決断された背景には、
何か理由があると思います。以下は、あくまで私の推論です。
息子の章男さんは、トヨタ社長に就任して5年近くが経ちます。
この間、リーマン・ショック後の大赤字、米国での品質問題、
3.11によるサプライチェーンの寸断など、難局を乗り越え、
社長業が完全に板についてきました。
章一郎さんが、安心して過去を振り返る心境になったことは、
容易に想像されます。
これから、どんなエピソードが語られるのか、楽しみです。
今日の日本経済新聞の3面に、
「農水産業、技術に活路」――と題する記事が大きく載っていました。
日本の農業は、世界的に見ても高い技術やノウハウをもちます。
加えて、近年注目されているのが、「植物工場」です。
「植物工場」は、気象条件の悪い地域でも、
一年を通して安定生産が可能です。
さらに、無農薬栽培のため、安全のニーズも満たせます。
「植物工場」の技術を、丸ごと海外輸出し、現地生産や販売を行ったり、
現地企業と提携して、ロイヤルティーを受け取るなど、
さまざまなビジネスチャンスが考えられるのです。
上記の記事冒頭で、かいわれ大根やスプラウト、
豆苗などの生産販売を手掛ける、村上農園が紹介されていました。
村上農園については、何度かこのブログでも書いていますが、
広島に本社を構える中小企業で、発芽野菜のパイオニアです。
戦前から紅タデの栽培を行っていましたが、
かいわれ大根、豆苗とラインナップを増やし、
ブロッコリースプラウト、ブロッコリー スーパースプラウトで、
「機能性野菜」と呼ばれる新市場を創出しました。
いまや、全国九か所に、
最先端の「植物工場」を含む生産センターをもちます。
さらに、オランダで、いわゆる“つまもの野菜”を手掛ける
コッパート・クレス社と技術提携をし、
東南アジア、ロシアなどへの海外展開を視野に入れています。
実際、社長の村上清貴さんは、
中国や東南アジア、欧米など、世界中を飛び歩いているといいます。
村上農園については、来月5日に、
拙著『年商50億を稼ぐ村上農園の「脳業」革命』(潮出版社)
を上梓します。
衰退産業のレッテルを貼られて久しい日本の農業を、
いかに立ち直らせるのか。
村上農園の挑戦から、多くの可能性が見えてきます。
ぜひ、ご一読ください。
先週末に、トヨタをモデルにしたTBSテレビの大型ドラマ
「LEADERS リーダーズ」が放映されました。
知らない会社ではないので、久々にテレビドラマを見ました。
気になることがあったので、その感想を述べてみます。
愛知自動車のモデルは、もちろんトヨタ自動車ですが、
西国銀行のモデルは住友銀行、佐一郎は喜一郎、
洋一郎は章一郎さんがモデルなど、ちょっと知識があれば、
すぐにわかるつくり方になっていましたよね。
日銀総裁の財部登は、一万田尚登さんかな、とかね。
原案は本所次郎の『小説日銀管理』と『トヨタ自動車75年史』とか。
「トヨタ自動車の全面協力」となっていましたから、
どんなドラマになっているのか、興味がありました。
女性がからむあたりは、ドラマですからご愛嬌ですが、
正直、ストーリーより描写が気になって仕方がなかった。
例えば、一つひとつの動きや表情が、かなり誇張されて描かれていました。
顔のアップのシーンが多い。
ショットの使い方など、シーンの組み立て方が、
いちいち、劇画チック。いや、劇画の描写法そのもの。
演出は、あの「半沢直樹」と同じ人なのだそうですから、
こういう撮り方が、いまは視聴者にウケるんでしょうか。
それにしても、どうも劇画チックなシーンばかりが目につきました。
昔とは、ドラマのつくり方というか、
見せ方が変わってきているなという感想です。
集団シーンなどは、CGで描いているので、劇画になるのはわかりますが、
いちいち絵が気になりましたよ。
ほかにも、工場の作業員は、わざとらしく、みんな顔にスミをぬっている。
主人公の手が映るシーンでも、やはりわざとらしいスミが目につく。
いいたいことはよくわかります。でも、一視聴者としては
なんだか白髪三千丈というか、春画手法というか、気になりましたね。
名古屋市内の街並みが中国の町にそっくり。
また、居酒屋の天井が妙に高い……など、ストーリー云々以前に、
細かい点が目につきましたね。
やっぱり、上海の映画村で撮ったようですね。
どうしてこうも、テレビドラマが劇画チックに、
わざとらしくカリカチュアされた表現になったのか。
愚考するに、ネット動画が普及したり、
テレビ番組をスマホやタブレットの小さい画面で見るなど、
視聴者の映像との付き合い方が変わってきているからではないか。
つまり、テレビドラマは、ネットと競合するなかで、
テレビならではの特色を打ち出し、
小さい画面でも楽しんでもらえるよう、試行錯誤をしているのかな。
テレビドラマはいま、迷っているのではないか。
素人目ですが、そんな感想を持ちました。
サムスンをどう評価するか。
今日の日本経済新聞に、「日本企業、際立つ回復力」として、
「主要業種の13年度の利益比較」と題する表が載っていました。
自動車についていえば、1位のトヨタは、
13年度経常損益が2兆5300億円です。
2位のフォルクスワーゲン1兆1457億円と
2倍以上の大差をつけました。
一方、記事には一言も出てきませんが、
電機の1位はサムスン電子、同経常損益が3兆3761億円です。
自動車を売るトヨタより、家電を売るサムスン電子のほうが
収益をあげているというのは、考えてみれば、驚くべきことです。
おそらく、現在、サムスン電子は製造業では世界一の
稼ぎ頭ではないでしょうかね。
ちなみに電機2位の米GE(ゼネラル・エレクトリック)は、
同1兆5767億円です。
日本のマスコミの報道を見ていると、
ときに、サムスンはいまにもダメになりそうな記事がよくあります。
1月にサムスン電子が業績予想を発表したあとには、
市場予想を下回ったというだけで、
「スマホの低価格化でサムスンの経営悪化」とか
「サムスンの収益悪化で韓国経済崩壊」とか
「独り勝ちサムスンが沈み始めた」といった論調です。
ちなみに、日本企業の収益力が回復しているといいますが、
13年度のサムスン電子の経常損益は、前年比31%増です。
トヨタの80%増や三菱電機の3.4倍などにはかないませんが、
日立の29%増やパナソニックの黒字転換と比較しても、
収益力が落ちているとはいえません。
むしろ、韓国経済がいまひとつの状態で、
ポスコや現代自動車の経常損益が
前年比マイナスなのに比べれば大健闘といえるでしょう。
日本のメディアは、サムスン叩きに熱心です。
サムスンを叩いておけば、読者がついてくるからです。
実際、近頃、編集者と話していると、“チュウカン”といって、
中国と韓国を批判しておけば、はずれなく売れるという。
サムスン叩きも、その一環というわけです。
読者は、サムスンがダメになるという記事を読めば、安心なのでしょう。
サムスンを正しく評価し、日本企業と何が違うのか分析し、
取り入れるべきところは取り入れる。
それができない限り、日本企業との差は開くばかりだと思うのですが。