神は、2度も試練を与えるのでしょうか。
連日報道されている通り、タイの洪水被害が拡大しています。
タイは、世界の製造業のアジア生産拠点であり、
多数の工業団地があります。
よく知られるように、日系企業も多く進出しています。
今日の各紙の報道では、被害を受けた日系企業は、400社を超えました。
被害は長引く懸念が強まっています。
国内の経営環境悪化によって、企業の海外進出が加速していますが、
海外進出してもなお、別の大きなリスクが潜んでいたのです。
1年に2度も、世界の製造業の生産拠点が大きな自然災害を受けるとは……。
東日本大震災では、被災地の東北に、
自動車や家電の基幹部品、素材の生産拠点が集中していたため、
一時、世界のあちこちで自動車、家
電の工場が操業停止に追い込まれました。
サプライチェーンの寸断です。
タイの洪水被害も、サプライチェーンの寸断が問題になっています。
部品メーカーが被害を受けて、
アセンブリメーカーの部品調達に支障が出たり、
逆に、アセンブリメーカーに被害が出て、
部品メーカーが、生産を停止するなどの被害が出ているのです。
サプライチェーンは、物流コストや効率を考えると、
工場を集積した方が有利です。「一極集中」のメリットです。
ところが、東北地方にも、タイの工業団地にもいえることですが、
自然災害によって、この「一極集中」のリスクが顕在化しました。
タイのチョンブリ県には、
AMATAコーポレーションPCL社の全面出資により、
2006年6月に開設された「オオタテクノパーク」があります。
大田区の中小企業向け賃貸集合工場です。
じつは、私は、もっか、この「オオタテクノパーク」を取材中です。
心配になって、関係者に連絡をとってみたところ、
浸水の被害は受けていないものの、
アセンブリメーカーの洪水被害による生産停止に伴い、
ある部品メーカーの生産がストップする被害が出ているそうです。
おそらく、タイ国内に限らず、世界規模で被害が出るでしょう。
政争から立ち直ったばかりのタイは、
これから成長しようというときに、大きな痛手です。
復旧・復興にあたっては、治水管理をはじめ、
現状、自動車に頼っている交通インフラなどの
レベルアップが求められます。
日系企業もまた、東日本大震災の打撃から
ようやく立ち直りかけたときに、
2発目のパンチを食らってしまいました。
しかしながら、グローバル競争が激化している今日、
ひるんでいるわけにはいきません。
2つの災害を奇貨として、
これまで以上の輝きを手にすることができるのか。
まさに日本企業の正念場です。