片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

日本のソフトパワーの実力について

2012-11-29 18:24:28 | 国際・政治

最近、日本の漫画やアニメ、食文化に対する評価が高い。
でも、それだけでは少し寂しくないですかね。

「ソフトパワー 日本は6位」という記事が
新聞に出ていました。
英国の情報誌「モノクル」12月号によると、
国際社会における文化の魅力や社会的価値観の
影響力などを示すソフトパワー・ランキングで
日本は、昨年より順位を1つあげて、
アジアで最高位を保ったというのです。

日本が順位をあげた背景として、
同誌では、漫画、アニメ、建築での魅力のほか、
ファッションや食の国際競争力の強さが、
あげられています。
「クールジャパン」の力が大きい
というわけです。

漫画、アニメが評価されたのは、
喜ぶべきことに間違いありませんが、
浮かれてはいられません。
なぜなら、日本が海外から期待されている
ソフトパワーとは、漫画、アニメだけとは
思えないからです。

アメリカの国際政治学者、ジョセフ・S・ナイ氏は、
著書『ソフト・パワー』(日本経済新聞社)において、
ソフトパワーとは、
「自国が望む結果を他国も望むようにする
力であり、他国を無理やり従わせるのではなく、
味方につける力」
と定義しています。
ソフトパワーに対して、ハードパワーはどうか。
こちらは、軍事力による威嚇や経済力など、
腕ずくで他国を変えようとする力をいいます。

しかし、漫画やアニメ、ファッションなどにくらべて、
肝心のその力が弱い。
たとえば、ビジネスでいえば、ソフトパワーとは、
ズバリ、ブランド、品質、サービス、文化です。
日本には、日本にしかできない高い品質、
日本にしかできないサービスなど、たくさんあります。
実際、日本は、モノづくりでは、世界で屈指の国で、
家電製品に象徴されるように、
これまで他国の追随を許しませんでした。
しかし、モノづくりでのソフトパワー部分には
ややカゲリが生まれました。
デザインが弱いのは、その象徴ですな。

それから、政治のソフトパワーも弱い。
ちょうど総選挙が真近な折から、
まあ、ムリな注文かもしれませんが、
政治の世界で存在感があり、尊敬される、
日本独自のソフトパワーが
国際的に評価されるようにならなければいけませんな。
日本は戦後、奇跡の高度成長を遂げ、
国際的に高く評価されました。

しかし、今日、日本人が“トラスト・ミー”といっても、
世界からは相手にされませんものね。


超小型EV、可愛いだけじゃない

2012-11-27 17:44:59 | トヨタ

いよいよ、超小型EVが公道を走る
日がやってきそうです。

現在、超小型EVは、軽自動車扱いとされ、
公道を走行する際には、軽自動車と同様の保険加入や
関係諸税の納税が必要とされています。
しかし、国土交通省が、来年1月をめどに、
超小型EVの認定制度を新設することから、
普及に弾みがつきそうです。

国土交通省は、自治体などが区域などを定めて
申請すれば、公道実験を認めることを決め、
地域の実情に合わせた活用策や安全性を検証、
高齢化や人口減などに対応する町づくりの
一環として、超小型車の可能性を探る計画です。

セブン・イレブンは、トヨタが7月に販売した、
1人乗りの「コムス」を宅配車両として
採用することを決めています。
ホンダは、すでにこのブログでも書いたように、
子供2人を乗せることを想定した、
マイクロコミューターのプロトタイプを発表し、
さいたま市で走行実験に取り組んでいます。

Trimming16

スズキとダイハツも、昨年の東京モーターショーで

超小型車の試作車を展示しました。

日産は、ルノーの超小型EV「トゥイジー」を
ベースにした超小型モビリティを使って、
さまざまな実験をしています。
たとえば、横浜市内では、訪問診療や看護、
地域防災の足として、活用しているほか、
青森県奥入瀬では、観光地の足として、
実証実験を展開しています。
つまり、超小型EVは、考えられている以上に
大きな可能性を秘めているといえます。

超小型EVの最大の特徴は、
なんといっても手軽なことです。

その手軽さを最大限生かしていくことが、
超小型EV市場を育てるカギでしょうね。
たとえば、子育て中の母親が子供を保育施設に
送り届けるための利用が考えられます。
しばしば、町中で、電動自転車の前と後ろに
二人の子供を乗せて走る母親の姿を目にしますが、
雨の日は、母親も子供もしんどそうですね。
超小型EVは、完全に雨を防げるわけでは
ありませんが、自転車よりはいいはずです。

高齢社会における移動手段としての期待も高まります。
いまの日本にとって大切なのは、健康寿命を
のばすことだといわれますが、そのためには、
高齢者がいきいきと毎日を過ごすことのできる
環境を整備する必要があります。
つまり、高齢者の移動制約を解き放ち、
外出機会を増やしていくことが大切になります。
自動車の運転はちょっと…という人でも、
超小型EVなら運転できる人は少なくないはずです。
超小型EVは高齢者の移動手段として、
今後、大いに活躍が期待できるのです。

ヨーロッパでは、すでにフランスなどで、
1人乗りや2人乗りのシティコミューターEVが
販売され、かなり人気のようです。
ルノーの超小型EV「トゥイジー」は、1カ月で
1400台を販売したといわれます。
超小型EVは、可愛いだけじゃなく、
地域の生活に欠かせなくなりつつあります。
車離れの若者を意識しているのか、デザインも斬新です。
可愛くて、一見、玩具みたいにも見える、
超小型EVですが、その市場は
決して小さくないのではないでしょうか。


ホンダの開発・設計のグローバル化は当然だ

2012-11-26 16:47:53 | ホンダ

製造業の空洞化は、着実に進んでいます。
それは、否定しようがありません。

ホンダは、2016年ごろに発売する
主力セダン「シビック」と「アコード」の
次期型車から、設計開発業務を北米に移す、
と、本日付けの日本経済新聞が報じました。
あらためて指摘するまでもなく、
「シビック」と「アコード」は、
ホンダの世界販売の3分の1を占める主力車です。
生産だけでなく、開発も含めて現地化する意味は、
極めて大きいといえます。
まさに、空洞化といっていいでしょう。

次期型シビックの開発を手掛けるのは、
ホンダの米子会社、ホンダR&Dアメリカズです。
車体や内装の設計、調達部品の選定、
量産体制づくりまでを米国の技術者を中心に行うそうです。
次期型アコードも同拠点で近く開発を
進めるといいます。

ホンダはこれまで、本田技術研究所に開発の権限を
集め、約9000人の技術者が開発にあたってきました。
しかし、主力車種が小型車に移るなかで、
「シビック」、「アコード」は、国内で開発するよりも、

むしろ、市場に近い北米で開発し、
現地のニーズに即した商品をつくることが求められていました。

日経新聞によると、今後は、本田技術研究所から
海外向けの車の開発業務を徐々に切り出し、
先進技術を各地に提供する役割を強化するといいます。
国内の9000人の技術者については、
燃料電池車など環境対応車や次世代技術の開発に
振り向け、国際競争を勝ち抜く体制を築くそうです。

よい製品であれば売れるという、これまでの考え方は、
もはや通用しません。
各市場の専用モデルを開発しなければ、
現地の要求を満たすことはできなくなっているのです。
その意味で、開発機能までを含めた、
海外展開はもはや避けることはできません。
つまり、グローバル化です。
ところが、多くの日本の製造業は、販売機能と生産機能は
海外展開してきましたが、開発部門のグローバル化は
遅れていました。

その要因として、次のような理由があげられてきました。
設計部門でいえば、多様な分野の専門家による
協働作業で成り立っており、知識の共有化が進まない。

いわゆる暗黙知の部分が大きく、簡単には海外に
移転できないというのです。

また、製造部門は、コンカレントエンジニアリングといって、
設計から製造にいたるさまざまな業務を同時並行的に処理する
手法が浸透していることも、海外移転をむずかしくする要因です。
コンカレントエンジニアリングが普及すると、

必然的に他部門との調整業務が増えます。
開発機能のグローバル化はますます困難といわれてきました。

しかし、そうした理由は、もはや通用しません。
グローバル化の大波は、そんな内向きの論理を
吹き飛ばしてしまうからです。
それこそ、円高と高コスト社会の日本で
何もかも手がけていたら、
メーカーはたちまちアウトです。

ホンダ社長の伊東孝紳さんは、
「日本がヘッドクォーターになって、
成功物語をほかの地域に移植するというモデルは、
本当の意味でのグローバル化ではありません。
もはや事業の中心は日本ではありません」
といっています。
製造業の本当の意味でのグローバル化に向けて、
ホンダは、大きく動き出したといえます。
当然ですね。


日本の町づくりに自信を持とう!

2012-11-22 19:27:28 | 社会・経済

日本の私鉄の住宅地開発ノウハウに対して、
世界から熱い視線が注がれています。

日本の私鉄は、沿線の価値向上を通して、
鉄道経営を安定的かつ自立的に行ってきました。
意外に知られていませんが、
世界で政府の補助金なしで運営されている
鉄道は、日本の私鉄だけです。
たとえば、阪急の売上高に占める
鉄道収入の割合は、およそ30%です。
いかに、非鉄道分野が多いかがわかりますね。
つまり、経営を支える中核的事業として、
ディベロッパー分野を抜きに語ることはできないのです。

ご存知のように、その先駆者は、
阪急電鉄創業者の小林一三です。
小林は、路線敷設にあたって、
宅地開発を合わせて計画しました。

また、商業施設や文化施設の建設のほか、
沿線の西宮に関西学院を、
宝塚市に小林聖心女子学院の誘致し、
沿線のイメージ向上につなげました。
公共交通網と宅地をセットにした開発は、
日本の私鉄がもつ独自のノウハウといえます。

東急電鉄も、長年にわたって、
東急多摩田園都市の開発ノウハウを
蓄積してきたことで知られます。
東急多摩田園都市は、ブランド住宅街として
いまも人気がありますよね。
また、日吉駅の慶応義塾大学、
上大岡駅の東京工業大学など、
学園誘致ノウハウを築いてきました。

ここに、新興国が目をつけたわけですね。
新興国の中間層の人々のあこがれは、
高い品質の住宅、おしゃれで快適な町です。
ちょうど、日本のサラリーマンが高度成長期に
郊外のおしゃれな家を手に入れ、モダンライフを謳歌した
ように、新興国の人々もまた、ブランド住宅地に住み、
おしゃれな生活を楽しみたいと考えているのです。

それから、新興国は、今後、発展にしたがって、
都市への人口集中が予想されます。
このことは、エネルギー問題、環境問題、
交通渋滞などが深刻化することを意味します。
つまり、新興国の喫緊の課題は、
都市化に伴って発生する問題を解決に導きつつ、
快適で住みやすい都市をつくることです。

考えてみれば、日本は、公害や過密都市、
オイルショックといった課題を克服してきました。
その課題解決力は、現在の日本の町づくりに
少なからず、反映されています。
世界は、そこを学びたいと考えているのです。

それだけではありません。
日本は現在、ITによって都市を支えるインフラを連携し、
限られた資源を有効に活用して、
環境負荷を最小限に抑えつつ、
便利で快適な生活を実現する取り組みを進めています。
いわゆるスマートシティです。

日本が進めているスマートシティは、
環境負荷の低減にとどまらず、
快適さ、便利さ、楽しさ、安心・安全といった
町の価値を向上させる要素をもっています。
そこに、世界の熱い目が注がれているのです。
とりわけ、日本は、先進国の中でも
町の安心・安全が確保されていることで知られます。
また、生活者目線でつくられた快適で便利な生活
も高く評価されています。

東急電鉄は、ベトナムのホーチミン市近郊で、
住宅地の開発とバス路線の整備を行う計画です。
総戸数413戸の高級高層マンションを
2013年春に販売開始する予定です。
東急電鉄によると、プロジェクトのスタートにあたり、
ベトナムの関係者が東急沿線の町を
見学に訪れたといいます。

世界各国が直面する都市問題の解決策にこそ、
日本の生きる道があります。
日本は、いま、自信喪失に陥っていますが、
少しは自信をもっていいのではないでしょうか。