片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

パナソニック社長交代、若い経営者のカジ取りに注目

2012-02-29 20:51:55 | 社会・経済

ソニーに続き、パナソニックのトップが交代します。
ソニー次期社長の平井一夫氏は51歳と若い経営者ですが、
パナソニック次期社長の津賀一宏氏も、55歳です。
電機メーカーに、
若い社長の誕生です。
若さを生かした、
スピーディな経営のかじ取りを行えるか。
注目されます。

現社長で、次期会長に就く
大坪文雄氏は、在任中、
「松下電器産業」から
「パナソニック」への名称変更
さらに、
パナソニック電工、三洋電機の完全子会社化を実現しました。
本人が、今日、東京で開かれた記者会見の席上でも、
「将来に向けて
布石を打ったという意味では大いに満足している」
と語っています。

三洋の蓄電池や太陽光パネルの技術、また、
パナソニック電工の電材や重電の技術があったからこそ、
パナソニックは、テレビや白物などの
単品の商品の生産販売から、
エネルギーマネジメントやスマートハウス構想などの
ソリューションビジネスへ、大きく事業戦略のカジを切り、
「環境革新企業」というビジョンを描くことができたのは、
間違いないでしょう。

津賀氏は、通信関連ソフトの開発など、技術畑の出身で、
近年は、プラズマパネル工場を、3つから1つに集約するなど、
テレビ事業の再建に取り組んでいました。
テレビ事業を再建できるかどうかが、
今後のパナソニックの明暗を分ける、
という論もありますが、私は
違うと思います。
家電の単品をつくって輸出で稼ぐビジネスモデルは、もはや古い。
今後、津賀氏に求められるのは、新路線のソリューションビジネスを、
大胆かつ、スピーディに進めることでしょう。

これに比較しても、
心配なのはソニーです。
いまだ
「テレビは重要な商品。中核で有り続ける」といっています。
パナソニックの3年間の赤字に対し、
8年も赤字が続いているのに、です。
「来年こそ黒字化」という言葉は、すでに耳タコです。
ここまでくれば、「オオカミ少年」どころか
「オオカミ老年」でしょう。
ソニーは4月に、
中期的な経営ビジョンを発表する予定のようですが、
そこで、
どのような将来像を描くか。
これまた、注目されます。


エルピーダ破綻、大型破綻はいつ起きてもおかしくない!

2012-02-28 18:25:18 | 社会・経済

やっぱりと思いました。
数日前でしたが、どこの新聞だったか忘れましたが、
最近、
エルピーダメモリの坂本幸雄社長の姿が見えない
という記事がありました。
ヘンな話だなと思った記憶があります。
そうしたら、
やっぱり……です。
水面下
で、危機を回避すべく走り回っていたのでしょう。

エルピーダメモリ
会社更生法を申請しました。
09年に
公的資金注入を受けるなど、厳しい経営が続いていました。
台湾のメーカー、東芝、米半導体大手マイクロン・テクノロジーなどと、
提携交渉を行い、格闘を続けてきましたが、成立せず、
万策尽き、ついに立ち行かなくなったのです。

エルピーダは、もともと、1988年、
日立製作所とNECDRAM製造部門が統合してできた会社、
「NEC日立メモリ」が前身です。
当時、両社の事業統合は、
弱小連合だといわれました。
その後、エルピーダメモリと社名を変え、
三菱電機のDRAM事業を譲り受けるなどして、現在に至っています。

私は、03年と07年の2度にわたり、
02年より社長に就任し、現在も在任中の
坂本幸雄氏にお会いし、インタビューをしています。
坂本氏は、半導体関連の企業の立て直しをいくつも成功させた、
持ち前の鋭い経営手腕で、一時は、エルピーダも、
世界シェアトップのサムスン電子の背中が
見えるところまで
建て直していました。
実際、07年に会ったとき、「もうすぐサムスンの背中が見える」
といっていました。

しかし、過酷な環境変化に襲われます。
08年のリーマン・ショック後の需要の急減
また、昨年来の
歴史的円高などです。
一方で、トップシェアの
サムスンは、ウォン安で利益を伸ばしました。
日本の半導体は、ただでさえ
製品開発力が低下しているところに、
東日本大震災やタイの大洪水の影響を受け、
いよいよ
厳しい立場に追い込まれていきました。
天の利、地の利に恵まれなかった面も、少なからずあると思います。

ただ、もともと、インタビューしたときに聞いた話でも、
エルピーダの経営には親会社の
“腰”が入っていない印象を受けました。
坂本氏は、こんな話をしていました。
「エルピーダにきて2、3カ月後、日立の部長クラスの方がやってきて、
『エルピーダをつぶしたい』といってきた。
『それは日立社長の庄山悦彦さんの意見ですか』と聞いたら
『日立としてはそう考えている』といわれた。
『それなら庄山さんに、いいにきてもらいたい』と返したら、
何もいってこなくなった」――。

装置産業である半導体は、設備投資に膨大なコストがかかります。
以前も書きましたが、
半導体工場を一つつくるのには、
いまや2000億円もの設備投資が必要だと聞きます。
さらに、
シリコンサイクルと呼ばれる需要の波があり、
投資のタイミングが難しい。
需要が下がると、日本勢は投資を抑えますが、
韓国勢は、やがて盛り返すはずのシリコンサイクルの波を読み、
需要が下がったときに
逆張りで投資をして、
半導体事業を成功させてきたというのが定説です。
韓国では、「日本が投資を控えたら、逆に投資のチャンスだ」
といわれてきたのです。
サムスンやLGはオーナー企業だけに、
リスクを賭けて設備投資ができたわけです。

これが、
韓国に戦略で負けたといわれる実態なのです。
日本で
唯一のDRAMメーカー、エルピーダの破綻です。
これは、何を意味しているのか。

先日、システムLSIを生産する
ルネサスエレクトロニクスと、
富士通、パナソニックの事業統合交渉
の話もありました。
もはや、
LSIもDRAMと同様、危機に直面しています。
東日本大震災で、ルネサスエレクトロニクスの工場は
ダメージを受け、
自動車向けのLSIの出荷がストップして、
日本のみならず
世界中の自動車メーカーの工場は、
一時、生産をストップ
しました。
今日、我が国製造業は、
歴史的円高、高い法人税など
“六重苦”に象徴されるように、経営環境は悪化の一方で、
エルピーダのような大型破綻が
起こっても不思議ではないほど危機的状況
にあります。


日本流コーポレートガバナンスを築け!

2012-02-27 20:44:17 | 社会・経済

大王製紙オリンパスの事件を機に、
コーポレートガバナンスの強化として、
社外取締役設置義務付けの案が出ています。
果たして、どうでしょうか。

社外取締役といえば、26日の日本経済新聞に、
「社外役員 変化求める」として、ソニー取締役会議長の
小林陽太郎氏のインタビュー記事が掲載されています。
そのなかで、彼はこう語っています。
社外取締役が多ければいいというわけでもない。
ソニーの場合、取締役会で
社内の経営情報が足りないと感じることがあった。ソニーは今後、
社内の取締役をもっと増やした方がいいかもしれない」
私は、後段の「社内の取締役をもっと増やした方がいい」という発言に同感です。

ご存知のように、ソニーは、2003年、
日本企業の先頭を切って
「委員会設置会社
(当時は委員会等設置会社)に経営体制を移行しました。
委員会設置会社は、
指名委員会、監査委員会、報酬委員会をもち、
それぞれの委員会の
過半数は
社外取締役が務める
と決まっています。
現在、ソニーの取締役会は、
15人中13人が社外取締役です。
いかにも、社外取締役が多い印象です。
ちなみに、
オリンパスの場合、15人の取締役のうち、
社外取締役は3人
です。

社外取締役を否定するわけではありません。
ソニーのような
巨大な組織には、外部の目は必要でしょう。
ただし、社外取締役は、コーポレートガバナンスの
万能薬ではありません。
ましてや、有名企業や大企業の会長を社外取締役として
麗々しく並べても、ガバナンスが効くとは限りません。
東京電力
も、委員会設置会社へ移行し
取締役の過半数を社外取締役とする計画ですが、
果たして、それだけで、
同じ失敗を絶対に繰り返さないといえるのか。
私は、
社外取締役を増やせば、
コーポレートガバナンスが保たれる
というのは、幻想だと思います。

かつての
日本企業には、「メインバンク」と「組合」という
お目付け役が、曲がりなりにもいました。
しかし、
旧日本型経営が崩壊する過程で、
組合の力が衰え、メインバンクもその余裕がなくなり、
役割は果たせなく
なりました。
日本のコーポレートガバナンスが、実質、働かなくなりました。
そこで導入されたのが、米国流のコーポレートガバナンスで、
「委員会等設置会社」すなわち社外取締役です。
しかし、それが
うまく機能しているかといえば、
オリンパスの事件を見るまでもなく、
疑問です。

その点、よく知られているように、ドイツでは、
経営協議会といって、労働者代表が、資本家や経営者と一緒に
経営について協議する機関
を設けることが義務化されていて、
コーポレートガバナンスに一役かっています。
日本も独自の、
日本流のコーポレートガバナンスを築かないといけない。
知恵をしぼる必要があります。

例えば
株主総会をどう活発化するか。
コンプライアンスの徹底
ステークホルダーへの気働き情報開示の強化など、
企業は真剣に取り組むべきです。さすれば、間接的とはいえ、
コーポレートガバナンスが強化されるハズです。
つまり、やるべきことを、
一つひとつ積み上げていくことではないでしょうか。
今後、
もっともっと、議論がなされてしかるべきだと思います。


円高傾向に一服感、安心しても大丈夫?

2012-02-24 18:36:55 | 自動車関連

「円高」は耳タコでした。
ところが、久しぶりに
「円安よ、コンニチハ」です。

今月22日に、昨年8月以来、
すなわち、
約半年ぶりに、円が対ドルで80円台を回復しました。
今日も、80円台半ばで取引され、現在80円60銭ほどです。
まだまだ
「歴史的円高」には違いありませんが、
80という数字を見るのも久々ですし、
ちょっと一服した感があります。
市場も好感し、日経平均株価の終値は、
こちらも昨年
8月以来の高値で9600円台です。

円安傾向で、自動車や電機を中心に、
輸出産業に収益改善効果期待できます。とくに、自動車ですね。
相場が1円動くと年間の利益がいくら増減するかを示す
「為替感応度」でいうと、対ドルのみで計算しても、
トヨタ370億円、日産200億円、ホンダ150億円です。

今日の日刊自動車新聞に試算が載っていましたが、
各社の第3四半期決算発表時点から、
円安が5円進んだとして単純計算すると、
第4四半期だけで、トヨタは463億円、日産は250億円、
ホンダは188億円
利益が上乗せされることになります。
まったく、1円、10円のコストダウンに精を出す
自動車メーカーの涙ぐましい努力はなんなのか、といいたくなります。

ただ、
まだまだ安心できないのが現実です。
日産社長のカルロス・ゴーン氏は
「理想は1ドル100円」と語っています。
富士重工業の吉永泰之社長も、
製造業は非常に厳しい緊張して経営している」と述べています。
為替の動きに一喜一憂せず、
地道に経営体質の強化を続けなければ
実際、
今後の為替がどうなっていくか不透明です。

しかし、それでもやはり、
80円台回復に、
製造業は「ホッとしている」
のが正直なところでしょう。
今週末は、
輸出関連企業の経営者たちは、
いつもより、少しは
機嫌よく休めるのではないでしょうか。


マンモス復活のロマンへ!ナデシコ開花

2012-02-23 20:14:32 | 社会・経済

新聞を読んでいて、久々に明るい気持ちになりました。
日本の
女子サッカーではない、ナデシコの話です。

シベリアの永久凍土で見つかった、約3万年前の種から、
ナデシコ科の「スガワラビランジ」が開花しました。
ロシアの研究チームの成果です。
新聞に掲載された写真を見ると、
5弁の花弁をもつ、可憐な真っ白の花です。
3万年前から眠っていた種が、この花をつけたかと思うと、
なんとも
ロマンチックではありませんか!

ロシアの同研究チームは、北東シベリアの永久凍土の調査で、
リスが食料貯蔵用に開けたらしい穴から
この
ナデシコの種を発見し、養分となる部位と一緒に培養しました。
さらに、鉢にうつして花を咲かせ、
人工授粉で種も採取したといいます。
3万年前の種の、復活です。
そういえば、日本でも
“大賀ハス”がありますね。
縄文時代の古代ハスの種を発見し、みごと開花に成功しました。
大賀一郎博士が有名ですよね。

近頃、新聞の社会面に並ぶのは、
殺伐としたニュースばかりです。
都会の
「餓死」「衰弱死」、事件、事故と、暗い話が多い。
景気に至っては、回復する兆しも見られない。
少子高齢化だ、歴史的円高だ、東日本大震災だ、タイの洪水だ……と、
もう、
右を見ても左を見ても、暗いニュースばかり。
そのなかで、ナデシコ開花のニュースは、新聞紙上でも、
ぽつんと咲いた、明るいニュースの花ではないでしょうか。
悠久の歴史に思いを馳せ、しばし、日常の暗さを忘れさせてくれますわね。

じつは、私は、
マンモスファンです。
シベリアの
永久凍土と聞けば、マンモスを思わずにはいられません。
2005
年の
愛知万博で展示された
「ユキガルマンモス」は、並んで見学しましたし、
08
年に丸ビルで開催された
「奇跡のマンモス『リューバ』展」も見にいきました。
3万数千年前に絶滅されたとされる
マンモスが、
現代に蘇るようなことがあれば、
こんな
ロマンの溢れることはありません。

現在、ロシア、近畿大学、岐阜県の共同研究をはじめ、
マンモス復活のプロジェクトは複数進行中です。
永久凍土中に冷凍された
マンモスの精子を取り出し、
雌ゾウの卵子と受精させ、50%雑種のマンモスをつくる方法です。
しかし、なかなか、
精子が得られるような
良好なマンモスがみつからない
ようです。
そこで、マンモスの死体から
DNAが保存された細胞を取り出し、
体細胞クローン技術による方法での“復元”も考えられています。
かりにも成功すれば、
世界中の人々を驚かせることは間違いありません。

今回の
ナデシコ開花のニュースは、
マンモスファンにとって、
マンモス復活に希望を与えてくれるものでした。
日常の暗さ、煩わしさを離れ、
生命の不思議とマンモス復活を思う。
たまには、
そんな時間がないと、やってられないですよね。
そう思いませんか。