goo blog サービス終了のお知らせ 

片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

ソニー、15年度に4000億円は信用できるか?

2014-05-23 16:41:56 | ソニー

昨日、ソニーの2014年度の経営方針説明会の席上、
社長の平井一夫さんは、謝罪の言葉を述べました。
「エレクトロニクス事業で黒字化を果たせず忸怩たる思い」
「期待に応えられず申し訳なく思う」

ソニーは、14年3月期に1284億円の赤字でした。
今期も引き続き、500億円の赤字が残るといいます。
それでも、今期中に構造改革をやりきり、
15年度には、4000億円の営業利益をあげると、
タンカというほど威勢はよくありませんが、目標を掲げました。
このコミットメントについては、厳しい見方が少なくありません。

昨年度、ソニーは、業績見通しを3回も下方修正しています。
さらにいえば、テレビの黒字化は、次こそ、次こそといいながら、
すでに昨年度で10年連続の赤字でした。

テレビ事業の黒字化に関しては、初めのころ、記者会見の席上、発表者が、
「オオカミ少年といわれますが……」と申し訳なさそうに語っていたものですが、
近年はそんな様子もなく、発表者は悪びれもしない。
社内でも、黒字化できないことに対して、危機感が薄まり、
当たり前になっているのではないでしょうか。

こんな様子ですから、いきなり15年度に4000億円といわれても、
「本当にできるのか」と、誰もが疑問に思うのは当然でしょう。
昨年度1350万台販売したテレビを、
今年度は1600万台売るといいますが、
中韓メーカーの低価格商品が次々と登場するなかで、
高付加価値が売りのソニーの4Kテレビが、それほど売れるものかどうか。

パナソニックには、車載や住宅といったB2B事業があり、
東芝には、電力・社会インフラなどの重電事業があります。
しかし、ソニーは、そうした逃げ道がない。
ソニーが掲げる3つのコア事業である、
モバイル、ゲーム、イメージングは、いずれも競争の激しい分野です。
アップル、サムスンのスマホや、マイクロソフトのゲーム、
ソーシャルゲームの台頭などに、どう立ち向かっていくのか。
いま一つ、これなら勝てる、と思える
戦略および武器が見当たりません。

本当に、エレクトロニクス事業を黒字化できるのか。
15年度に4000億円の利益をあげることができるのか。
ソニーが、これまで失い続けてきた信頼を取り戻すには、
これらを実現し、結果を出す以外に方法がないのは、断るまでもないでしょう。

 


津賀パナソニックと平井ソニーの比較

2014-04-23 18:11:37 | ソニー

ソニーとパナソニックの業績の差が顕著です。
ここにきて、ソニーとパナソニックの立ち位置が、
完全に逆転しつつあるのではないかと感じます。

ソニー社長の平井一夫さんと、パナソニック社長の津賀一宏さんは、
ともに2012年に社長になりました。しかし、就任から2年目の13年度、
ソニーが1100億円の赤字見通しなのに対し、
パナソニックは1000億円の黒字見通しです。

事業や製品ごとの細かな話は、ここでは触れません。
ただ、近年のソニーには、経営戦略全体に元気がない。
先進性、ベンチャー・スピリットが失われているように感じます。

その点、パナソニックは、近年、リスクをとって、
積極果敢な経営戦略をとっています。
B2CからB2Bへの事業戦略の転換面がそれです。
活気を取り戻しているように見えます。

以下は、一度書いたことです。
パナソニックは、米テスラ・モーターズと組み、
米南西部に、車載用として世界最大規模の電池工場をつくります。
テスラのEVの電池は、すべてパナソニックが提供する計画です。
この工場の投資総額は、5100億円です。このうち、パナソニックは、
総額1000億円以上を投資します。この決断は、
正直、大きなリスクを伴います。
しかし、津賀さんは、その決断を下しました。

そもそも、テスラといえば、電気自動車(EV)のベンチャー企業です。
会長兼CEOを務めるのは、現在42歳で、
次期ビル・ゲイツとか、次期スティーブ・ジョブズとかいわれ、
いま、世界中でもっとも注目を集めるビジネス・パースンとされる、
イーロン・マスク氏です。

マスク氏の頭のなかは、EVどころか、
CEOならびにCTOを務めるスペースX社のロケットや、
会長を務めるソーラー・シティ社の太陽光発電、
さらには、時速1200キロ以上で走る高速輸送機関、
「ハイパーループ」構想などでいっぱいです。
しかし、津賀さんのほか、トヨタの豊田章男さんとも、
一緒にビジネスをしています。

一昔前なら、米ベンチャー企業と一緒にビジネスができるのは、
パナソニックではなく、ソニーだったと思います。
ソニー自体が、戦後、業界後発のベンチャー企業として誕生し、
「モルモット精神」を誇りとして発展した企業だからです。

日本経済新聞の報道によれば、津賀さんは、
ホンダ社長の伊東孝紳さんと長年の付き合いがあり、
社内では「ホンダに学べ」と説いているといいます。
これも、本来なら、津賀さんが説くことではなく、
ソニーの平井さんが説くことだったのではないか。

どういうことかというと、
本田宗一郎が創業したホンダに、企業カラーが一番似ているのは、ソニーでした。
ホンダとソニーは、ともに、業界後発ながら、
つねに新しいことに挑戦し、大手に挑み続けてきました。
実際、これまで、両社は比較して論じられてきました。
ところが、いまや、ベンチャー・スピリットをもっているのは、
ソニーより、パナソニックだということです。
津賀さんと伊東さんの関係は、その証ではないでしょうか。

そう考えると、平井ソニーは、一体全体、どこへいくんでしょうかねぇ。

 


ソニーの4K対応テレビ、ポイントは若年層?

2014-04-15 17:59:01 | ソニー

今日、ソニーが、4K対応テレビ「ブラビア」の新商品を発表しました。

※新型(左・X8500B)と、従来型(右・W900A

ご存じのように、ソニーのテレビ事業の赤字は、
14年3月期で10年連続です。
いまや、主力事業からも外れ、今年7月には分社化されます。

しかし、テレビはテレビです。高額商品ですし、ブランドの顔です。
かつてとは、役割は変わりつつありますが、
多くの人が、いまだ毎日使う家電商品の一つでしょう。
ソニーが手放せない、大切な商品には違いありません。

今回の新型「ブラビア」の特徴は、
映像、音をさらに進化させた、「圧倒的な臨場感」。
そして、使いやすさや快適さを向上させる、「快速設計」です。
確かに、映像も、音も、従来品に比べれば、きれいでしたね。
しかし、正直、音、映像、スピードとも、
いくら進化したとしても、ことあらたまって、
目新しさがあるわけではありませんわね。
ポイントは、いかに価値を訴求するかにかかっているのではないでしょうか。

これまで、4Kテレビについて、このブログでも何度か書いてきました。
コンテンツ不足もあり、鳴り物入りで投入しても、
3Dテレビやブルーレイのように、鳴かず飛ばずになりかねない。
さらに、若年層には高価なので、シニアをターゲットにして
売り込むべきだと指摘してきました。

※会場に展示された4K対応「ブラビア」

ただ、今日のプレゼンテーションでは、一つ、
じつに面白いデータが紹介されました。
ソニー調べの4K対応テレビ購入層調査の結果です。
昨年8月には、購入者の69%を40代以上が占め、
20代、30代は31%に過ぎませんでしたが、
今年1月の調査では、20代、30代が44%まで伸びているというのです。
つまり、若年層に支持が広がっていることが、
4Kテレビの市場が順調に伸びている背景に存在するというんですね。

なぜ、若い世代が、高価な4Kテレビを購入しているのか。
この理由は、よく調べてみる必要があると思います。
まだ配信されるコンテンツが揃わない状況のなかで、
考えられるのは、自分で撮った写真や動画を、
4Kテレビで楽しみたいというニーズでしょうかね。
町でも、高価な一眼レフをもっている若者をよく見かけますし、
子どものいる家庭となれば、子どもの成長を動画で記録するニーズは、
間違いなくあるでしょうからね。

4Kテレビが、今後、さらに普及していくのかどうかは、
まだまだ未知数です。
ただ、データを信じるとするならば、若年層でしょうかね。
若年層の支持をどれだけ集めることができるか、
ということではないでしょうかね。

 


ソニーはこのまま沈没するのか!

2014-02-07 19:55:34 | ソニー

 

ソニーは、今期1100億円の赤字が見込まれている。
NEC
も赤字が見込まれていますが、赤字額は150億円です。
現状は、ソニーの“一人負け”です。

ソニーの社長の平井一夫さんは、昨日の決算記者会見で、
パソコン事業の売却、テレビ事業の分社化を発表しました。
率直な感想を述べると“遅いなァ”ですよ。
厳しくいえば、
なぜ、こんなにも、経営スピードがのろいのか
というのが実感です。

スマホやタブレットの普及で、パソコン事業が厳しいことは、
以前から、わかりきっていたことです。
パソコンについていえば、
2代前の社長の出井さんが始めた事業などと、
しがらみがあるとはいえ、
やっと整理の運びですからね。

また、テレビ事業の不振に至っては、もう、何をかいわんです。
今期で赤字10年目ですからねェ。
何をいまさら、と思いを持ったのは、私だけではないでしょう。
分社化して経営のスピードを上げるといいますが、
浮上する保証はありませんよね。

平井さんは、「事業そのものは、選択と集中により、
進むべき方向に進んでいる」といいますが、
なんだか、この文句も、
前の記者会見でも、聞いたような気がします。

じつは、ソニー決算発表を聞きながら、
いつの間にか、電機業界と自動車業界の
比較をしている自分に気づきました。
むろん、電機産業と自動車産業の単純比較ができないことは、
承知のうえです。
それでもやはり、比べてみずには、いられません。
なぜ、これほど明暗がハッキリと起こったのか。

例えば、商品開発力です。
自動車メーカーは、顧客ニーズに沿う形で、
安全や環境対応の技術進化が著しい。
HV
はトヨタとホンダ、電気自動車は日産と、
日本の自動車メーカーが先頭を走っています。
電機メーカーは、どうでしょう。
これといって、目立った「新商品」や「新技術」はありません。
ブルーレイも3Dも空振りでした。
とりわけ、イノベーションで売ってきたソニーは、
目ぼしい商品がありませんよね。

それから、グローバル化への対応です。
インド、アフリカなど将来性の期待される新興国市場で、
販売店を開拓し、現地に根ざし、
地べたを這いずりまわって営業、販売しているのは、
電機メーカーより、自動車メーカーです。

モノづくり力も違います。
自動車業界には、いま、
設計、開発、生産段階のいずれにおいても、
モジュール化の波が起こっています。
クルマづくりが根底からくつがえる大変革です。
自動車メーカーは、原価低減に余念がありません。
電機業界は、キヤノンの無人工場の取り組みなど、
一部に画期的な取り組みがありますが、
韓国や中国メーカーに勝つような、
目立った生産革命は見られません。

私がいいたいのは、
なぜ、ソニーは、もっと手を早く打たなかったのか、ということです。
世の中、アベノミクスもあって円安効果もあって、自動車をはじめ、
各業界とも元気を取り戻しつつあります。
にもかかわらず、ソニーは、昨日、平井さんが発表したように、
いまだに五千人の人員削減をはじめ、
26年度に構造改革費用として、
約二百億円を見込まなければいけないのか。
赤字になって、いくら手を売っても遅いんですよ。

まあ、世界のテレビ市場を席巻してきた、わが国の電気メーカー、
なかんずくソニーには、驕りと油断、
そして、ソニーの人がよくいう“4文字(SONY)”、
すなわち、“ブランド神話”の過信があったんでしょう。
このままいったら、本当に沈没します。<o:p></o:p>

それにしては、社内に危機感が薄いんですよね。

長年にわたってソニーを見てきた者として、
いまこそ、“頑張れソニー!”とエールを送りたいところですが、
その気になれないのですよ。でも“頑張れ!”<o:p></o:p>


ソニーはなぜ“投機的”か

2014-01-29 17:55:59 | ソニー

ソニーもマイクロソフトも、一世を風靡した会社です。
ところが、このうち、なぜソニーが、
もがき苦しんでいるのでしょうか。

27日、格付け会社のムーディーズ・ジャパンは、
ソニーの格付けを1段階引き下げました。
“投機的”とされる水準ですから、市場は警戒しています。
なぜ、ソニーは、格付け会社や市場の期待を得られないのか。

それを考えるとき、マイクロソフトが参考になります。
米マイクロソフトは、13年の10月から12月期決算において、
売上高が245億1900万ドルと、四半期ベースの過去最高を更新しました。
牽引しているのは、ゲーム機、タブレット端末などのハードウェア、
さらに、企業向けオンラインサービスだといいます。
かつて、マイクロソフトの代名詞ともいえるほどだった、
OS(基本ソフト)の「ウィンドウズ」など、
ソフトウェアを中心とした事業モデルから、
大きく転換しつつあるといわれているんですね。

実際、アップルの「i-Phone」や「i-Pad」などの端末の普及で、
マイクロソフトの「ウィンドウズ」は存在感が薄れつつありましたよね。
CEO
のスティーブ・バルマーさんは、「デバイスとサービスへの移行」を掲げ、
戦略的に、事業モデルの転換を図っています。
あれだけ世界的大成功を果たした「ウィンドウズ」を、
あっさりと、中核から外したわけです。これは、大いなる“決断”です。
今回の好決算は、その効果が表れ始めたということでしょうか。

事業モデルの転換といえば、
90年代に、米IBMは、ハードウェアメーカーの事業モデルから、
ソフトウェアやサービスを提供する事業モデルへと、
大転換に成功しました。つまり、ダイナミックな事業戦略を断行しました。
このほか、日本企業では、富士フイルムが、
写真関連事業中心の事業モデルから、医薬品や化粧品など、
異業種に参入し、挑戦している例があげられます。

日立や東芝などが、近年、やや元気を取り戻しているのは、
重電メーカーから、社会インフラ事業への事業モデルの転換が
功を奏しているからです。
ごく最近でいえば、パナソニックは、
2年連続の巨額赤字にあえいではいますが、
B2C
ビジネス中心から、B2Bビジネス中心へと、
事業モデルを転換し、立て直しを図ろうとしています。

こうした例に比べて、ソニーは、医療やB2B事業にも手は出しているものの、
事業モデルの転換といえるほど、大きな改革の意思は、みられません。
ようやく、テレビは主力事業から外れましたが、
いまだに、主力3事業はモバイル、イメージング、ゲームと、
変わり映えしません。

もちろん、ソニーの低迷の理由は、さまざまな要因が絡み合って複雑です。
単純に、一概にいえることではありません。
しかしながら、なかなか市場の期待を得られない背景の一つには、
過去の成功に背を向け、リスクをかけてでも、
新たな事業モデルを築き上げようとする、挑戦の姿勢が感じられないことが、
あげられるのではないでしょうかね。