片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

東京モーターショーに見る日本経済の復活

2011-11-30 20:21:05 | 自動車関連

リーマン・ショック後の体たらくに比べると、薄日が射してきたというか、
トンネルの出口がかすかに見えてきた気がしました。

12月3日から一般公開される、
東京モーターショーの報道公開にいってきました。
振り返れば、今年は、
日本の自動車産業にとって受難の年でした。
東日本大震災、歴史的円高をはじめとする六重苦、
タイの大洪水
などです。
それらを乗り越えた後のモーターショーという意味で、
今回のモーターショーは、特別だと思います。
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※ホンダブースに登場したアシモは、伊東社長にジュースを渡すパフォーマンスを見せる


東京モーターショーは、2年に1度開催されますが、
前回、2009年に千葉の幕張メッセで行われたモーターショーは、
リーマン・ショックの影響を大きく受け、
出展企業数は過去最低でした。
主要海外メーカーからの出展は皆無といってよかった。
ところが、上海モーターショーにはほとんどの欧米メーカーが出展し、
日中の差が歴然としていました。
海外からの報道陣も少なかったし、
肝心の入場者数も少なく、寂しいものでした。
悲惨な状態でした。
当時、このブログでも、「危機感をもたないといけない」と書きました。

ところが、今回は、
気合の入ったモーターショーになっています。
まず、会場を24年ぶりに
都内の東京ビッグサイトに戻しました。
さらに、
開催時間を2時間延ばして、ナイター券を用意しています。
出展企業も、前回の109社から
171社まで回復しました。
今回はベンツ、BMW,ホルクス・ワーゲンなど、
欧州メーカーはほぼ勢ぞろいしています。
ただし、
米国メーカーの出展は一社もありません。
前回に比べて、明らかに活気がありました。
海外メディアの姿も目立ちました。
特徴をいえば、各企業、
省エネ技術に加えて、スマートフォンとの連携など、
ITを駆使した技術を搭載したものが多いことです。
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※ホルクス・ワーゲンのブース。海外企業の出展は回復基調


トヨタ社長の豊田章男氏のブリーフィングを聞きましたが、
これが、
非常に印象的でした。
普通、出展企業の基調講演は、自社の車の説明などが中心ですが、
今回、豊田氏は、まったく自社の車の話には触れませんでした。
強調したのは、トヨタが掲げる
ReBORN」、再生のメッセージです。

「トヨタは、
東北からも、タイからも、決して退くことはありません。
地域の人たちと力を合わせて、復旧・復興の原動力になりたい。
そう思うのは、トヨタが世界各地で、モノづくりを通じて培った、
現場力、人材力、技術力に、自信と誇りをもっているからだ。
たとえ、モノづくりを取り巻く環境がどんなに厳しくなったとしても、

いくつもの試練が私たちに降りかかってきたとしても、
モノづくりの底力を信じ、未来のクルマ社会の実現に向けた歩みを、
一歩一歩確実に進めていく」
と、豊田氏は強く語りました。
極めてメッセージ性の高いスピーチでした。
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※「ReBORN」を掲げるトヨタ・ブースは盛況だった


今回、トヨタは、東京モーターショーの前夜祭を開催するなど、
モーターショー全体を盛りたてようと、一生懸命でした。
講演の強烈なメッセージからは、日本経済を支える基幹産業である、
我が国自動車メーカーの
トップメーカーとしての自負でしょうか。
リーダーとしての自負でしょうか。
自動車産業を背負っているという、
トヨタの自負が感じられました。

背景には、
現状の日本自動車産業に対する
危機感
があることは間違いないと思います。
歴史的円高や二つの災害によるサプライチェーンの寸断など、
我が国の
自動車産業をめぐる環境はまさしく危機的状況にあります。
その意味で、東京モーターショーの成功は、
日本車のブランド力につながり、
日本経済の盛り上がりにつながり、「ReBORN」の実現につながります。
受難の時代を超え、
日本自動車産業は復活することができるのか。
今回の東京モーターショーが成功するかどうか
かかっているような気がしました。

その意味で、少し薄日が射してきたのかなという印象を受けました。


スマートグリッドは日本を救うか⑤

2011-11-29 21:35:48 | 社会・経済

⑤スマートグリッドを日本の基幹産業に

自動車や家電のスマートグリッドの取り組みの例を見てきましたが、
スマートグリッドは、それ以外にも、
電池、住宅、電力事業者、
不動産、金融、ガスや水道
などのインフラ、
通信技術、IT……と、分野が多岐にわたります。
また、自動車や家電などの
デバイスや素材を考えれば、裾野も広い。
普及すれば、大きな経済効果が期待されます。
今後20年に4000兆円近い巨大市場という統計もあります。

しかし、それだけに、
コンペティターは世界中にいます。
米国をはじめ、英国、フランス、ドイツなどの欧州先進国も、
それぞれ、スマートメーターの導入など、
さまざまなスマートグリッドの実証実験を進めています。
いまや、
世界中が一大商機というので、
スマートグリッド市場を狙っているといっていいでしょう。

例えば、米国でいえば、
IBMやGEです。
日経産業新聞によれば、
IBMは、2008年には、
すでにITを活用した「スマートシティ」に近い構想を描き、
取り組みを進めてきました。現在、
リオデジャネイロで、
交通機関や水道、電力などのインフラの管理に加え、
災害の発生を気象予測システムから予測するシステムを運営しています。

また、
GEは、過去一年間に、エネルギー、省エネなどの分野で、
20社以上にのぼるベンチャー企業と、投資などで関係をつくりました。
グーグルも、丸紅などと共に大西洋沖の洋上風力発電所と
米東部を結ぶ
海底送電網建設をはじめ、
フォードと組んでプラグインハイブリッド車の走行システムを共同開発するなど、
スマートグリッド市場への参入を始めています。
日本企業は、こうした企業と競争しわたりあっていかなくてはいけません。
国際的な企業の提携や買収も、どんどん進んでいくでしょう。
例えば、
東芝は、今年に入ってスイスの電力計世界最大手
ランディス・ギアを買収
して注目を集めました。

当然、
開発競争は現在進行形で進んでいますが、
日本には、自動車や家電はもちろん、
ITに関しても、いまのところ、世界的に競争力のある技術があります。
スマートグリッドは、
日本にとってビッグチャンスなのです。
スマートシティの構想を、
インフラやシステムごと輸出できれば、
日本の基幹産業となり得るほど、大きな可能性があると思います。


スマートグリッドは日本を救うか④

2011-11-25 19:44:08 | 社会・経済

④企業の取り組み――パナソニックのソリューションビジネス

スマートグリッドがビジネスチャンスなのは、
昨日紹介したトヨタなど、自動車メーカーだけではありません。

電機メーカーにとっても、大きなチャンスです。

たとえば、
パナソニックは、創業100周年を迎える2018年に向け、
「エレクトロニクスNo.1の
『環境革新企業』」を掲げていますが、
今年5月、
神奈川県藤沢市において、
Fujisawa サスティナブル・スマートタウン」の建設を始めました。
世界初のスマートタウンの建設です。
パナソニックをはじめ、藤沢市、アクセンチュア、オリックス、
日本設計、住友信託銀行、東京ガス、パナホーム、
三井不動産、三井物産が、この取り組みに参加しています。

パナソニックは、もともと「
家まるごと『CO2±0(ゼロ)』」として、
「省エネ」「蓄エネ」「創エネ」に加え、それらをつなぐ「エネマネ」という、
4つの切り口から
「エナジーソリューション」を推進してきました。
「家まるごと」を、「施設まるごと、街まるごと」にまで広げ、

街全体のエネルギー利用の先進モデル構築に、
藤沢市で着手したわけです。

具体的には、
1000世帯規模の新しい街づくりを進め、
2013年度の街びらきを目指しています。
「創エネ」機器の太陽光発電、家庭用燃料電池など、
「蓄エネ」機器の蓄電池、ヒートポンプ給湯器など、「省エネ」の機器、
さらに、消費電力などを表示する宅内ディスプレイ、
それらすべてをコントロールして最適なエネルギー管理を行うシステムを、
街の住宅に導入します。「店舗まるごと」「公共まるごと」などとして、

お店や公園などの設備も、省エネ制御する予定です。
さらに、照明や監視カメラなどの
セキュリティサービス
行政機関と医療機関の連携などの
ヘルスケアサービスなども検討します。

パナソニックで面白いのは、藤沢市の取り組みだけではありません。

愛知県春日井市にある、
パナソニックエコシステムズの
春日井工場において、
エコな工場を運営するノウハウを、ビジネスにしようとしています。
具体的には、
薬液リサイクル事業や、省エネ支援、
水、空気、電気などの
インフラのソリューション
を提供するビジネスです。

実際に工場見学をしましたが、
パナソニックエコシステムズグループの、
空清技術、バイオ技術、触媒技術、調湿技術、熱交技術、
ファン技術などの
環境技術を活用した商品や、
ソリューションを、グローバルに展開していく構想で、
その体制が整ったことから、記者発表になったわけです。

商品に加えて、春日井工場が蓄積してきたノウハウを、
世界の工場に輸出する意気込みが感じられ、
熱の入ったお披露目でした。

スマートシティの構想は、いずれ、
オフィスや工場など、
ビジネス分野も含むようになると考えられます。
日本は、
環境先進国と同時に、モノづくり大国です。
「環境に優しい工場」は、ある意味、日本を象徴する技術といえます。
環境負荷低減、電力不足解消、コスト削減などの観点から、
新興国を中心に、今後、必要不可欠なノウハウなのは間違いありません。


スマートグリッドは日本を救うか③

2011-11-24 19:10:18 | 社会・経済

③企業の取り組み――トヨタによる六ヶ所村の実証実験

昨日は、経済産業省が進める、
「次世代エネルギー・社会システム実証地域」の例をあげましたが、
スマートグリッドの取り組みは官主導のものだけではありません。
例えば、
トヨタ自動車は、経産省のプロジェクトに先駆け、
2010年9月より、青森県上北郡
六ヶ所村において、
日本風力開発、パナソニック電工、日立製作所と組み、
2年間を予定して、
スマートグリッドの実証実験を行っています。

六ヶ所村スマートグリッドでは、電力を供給するのは、
二又風力発電所という
日本最大の風力発電設備が中心です。
34基で51メガワットの発電能力があります。
私は、
風力発電機を目の前で初めて見ました。
風車の高さは、
確か100メートル近くあります。
迫力がありましたね。
それだけに、人家に近いところには建てられない、
風が豊富でなければいけないなど、
立地に条件があり、
風力発電には限界があるように思いました。
これに、
太陽光発電の100キロワットが加わります。

また、地域には
HUB蓄電池が設けられていて、余剰電量を蓄電します。
その現場も見ましたが、蓄電池システムはまだ高価で、
技術的にも発展途上
の印象でした。
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)用の
充電スタンドもあります。

電力を使う側は、
スマートハウス6棟です。
シャープ製の
太陽光発電パネル、デンソー製の「エコキュート」
同じくデンソー製の
住宅用蓄電池、トヨタ製のPHVが備えられ、
電力を
“見える化”する、PC-HEMS/HEMSモニタがあります。
もう、“見える化”あたりの
きめ細かいデータの収集・分析などの対応力は、
日本企業の得意のところといっていいでしょう。

さて、この実証実験で
面白いと思ったのは、
実際に、日本風力開発、パナソニック、
トヨタの社員とその家族が生活
していることです。
夫婦2人暮らし、実験担当者1人暮らし、夫婦2人に子1人、
夫婦2人に子2人など、
さまざまな家族構成です。
一年を通して、人が生活することによって得られた、
時間ごとの電力需要量の変化など、
詳細なデータは、
今後のスマートグリッドの研究、開発に

大いに役立つことは、容易に想像できました。
トヨタにとっては“宝の山”でしょう。


ちなみに、電力の供給側と需要側、つまり、
電力供給事業者と、住宅、車、それらを使う人をつなぎ、

需給調整するのが、コンピュータ上に設けられた
トヨタのスマートセンターです。
エネルギー消費を統合的にコントロールする、
トヨタの
独自システムです。
蓄電池の電力を使うのか、もしくは、貯めるのかなどを判断し、

電力を賢く管理・調節するというわけです。

一見、
スマートグリッドは、
まだまだ先のこと
のように思われていましたが、
そうか、
ここまで実証実験が行われているのか……と、
あらためて感じました。
前述したと思いますが、福島の原発事故後、

節電が呼び掛けられている折から、
スマートグリッドは一気に進むだろうと実感させられた次第です。
それから、スマートシティの構想では、

EV、PHVが大きな役割を果たすだろうということもよくわかりました。
つまり、
スマートグリッドやスマートシティの構想は、
自動車メーカーにとっても、
大きな飛躍のチャンス
であることは、間違いありません。