さていよいよ登山開始だ。
今日のルートは基本的に番組と同じコースを取る。
だがまず、登山口まで行かないと行けない。
我々が今いるのは「漁師料理かなや」という店だ。
まずは港まで戻ろう。
このお店は港や駅まで送迎してくれるはずである。それを頼もうと
店員さんを探していると送迎の時刻表があった。
それによると送迎といえども随時行うのではなく時刻表に従うのだ。
そして利用者が申し出ないと運行しないとのこと。
時刻表をみると、なんと2時間に1本しか運行しない。ちょうど先ほど
出たところなので、あと1時間40分ほど待つ必要がある。
もちろんそんなに待ってる程暇人ではないのでタクシーを呼ぶことに。
海龍さんが先ほど利用したタクシー会社に連絡する。
しかし「はあ・・・そうなんですか・・・」となにやら怪しい雰囲気。
電話を切った海龍さんは「タクシーみんな出払ってて来れないって」
という悪い知らせを伝えてきた。
まだ鋸山に到着もしてないうちからトラブルの連続。
だからといって前に進まないわけには行かない。
我々は結局、港まで歩いて引き返すことにした。
海沿いの国道をてくてくと歩く。2km足らずの距離で平地なので
疲れるというほどの事でもないのだが、先ほど久里浜でも2km
くらい歩いているわけで、こういうちょっとした疲労が後になって
大きく響いてくるわけである。
15分ほどで無事港に到着。まずは地図を確認する。
「薬局」の角を回って車力道コースを登り石切場に出る。
その後日本寺に入って地獄のぞきに到達。
帰りはロープウェーで降りてくるという行程。所要時間は2~3時間の見込みだ。
コンビニで食料(といってもチョコレートくらい)と飲み物を購入。
まずは番組同様、住宅街を歩く。
途中に観光案内所があって玄関のところに「ご自由にお使いください」と
竹杖が用意されている。海龍さんは自前の登山用杖を持ってきている。
杖を持ってない俺とクマさんの2人は借りてみることにした。
案内所の人が出てきて、ここは16時には閉まるからそれより遅くなったら
杖を玄関のそばに置いて欲しいという。
まだ13時だしそんなに遅くなることは無いだろう。それにこんな小さな
山なら杖なんて要らないと思う。ジャガイモンだってみんな杖とか
使ってないしね。
ようやく登山道の入口に到着。
他にも何人か山に入る人がいたのだがみんな別々のコースに分かれて
しまったので車力道コースを目指すパーティーは我々だけである。
登山道に入ったといってもしばらくは民家もあるので舗装道路が続く。
このあたりはかなり急な坂道で登るのは大変だ。
番組では一行に向かって犬が吼えるシーンだが、今日もその犬がいて
我々を威嚇する。この辺に住んでる犬なのだろう。
なお番組中ではこの坂を歩きながら、麻琴はズボンが失敗だということに
気づく場面だ。
この急坂ですでにクマさんがお疲れモードとなる。登りきったところで少し
休憩をする。すぐ隣は高速道路が通っていて車の音がうるさい。
まだ登山の雰囲気じゃないね。
ようやく山の中に入って少し歩くと番組にも登場した車力道コースの
案内板がある。
昔女性たちが車に切り出した石を積んで山を下ったコースなのだ。
この看板を境に、車力道コースは一気に山登りとなるのだ。
古い石が敷いてある険しい上り坂が続く。足場の石が崩れかけて
不安定な場所も多い。木が生い茂って暗くなり、なかなかの登山道だ。
つい10分前まで舗装道路だったとは思えない。
登り始めて10分でジャガイモンチームは休憩を取る。
我々もほぼ同じくらいの時間で同コースを走破。
同じ場所で休憩を取ることにした。
ジャガイモンがここで休憩をとったので同じ場所で休憩を取るわけだが
ここは本当に休憩が必要だった。
わずか10分程度の登りだったがけっこうキツい。
クマさんはすでにかなり疲れている。
休憩中の我々を家族連れや年配の人が追い越していく。
登りなれてる人はこんなところで休憩などしないのだろう。
気を取り直して再び山に入る。
相変わらず足場が良くないので杖をついて歩く。
グラっと来た時に杖があると安心感が違う。この杖は登るには必需品だ。
バカにして悪かったと思う。
たまに視界が開けると海が見えたり港がみえたりしてだんだんと
高度が上がっていくのが分かる。
狭い山道を登っていくと突然巨大な崖が現れる。
崖ではなく石を切り出した後だ。
つまり人口の崖。これが鋸山といわれる所以なのだ。
番組内でも麻琴たちが真剣に見上げていた。
さらに進むと今度は遺跡のような場所に出る。
下のほうには水が溜まって池になっている。
番組の中で川元さんが見つけた、岩の壁に掘り込まれた仏像が
すぐに分かった。こういう物を見ると登山の疲れも忘れることが
出来るのか、海龍さんや草野球さんはせっせと写真を撮る。
狭い山道を進む。
ずっと上りだった道だがこの部分だけは横に進むので上り下りが
連続している。そうやって進んでいくといよいよ石切場に到着。
ジャガイモンの中でせいこう氏が「ここはミュージッククリップが撮れるね」
と言ってたが本当にちょっとした野外ステージみたいな場所だ。
何か本当にイベントでもやったことがあるのかもしれない。
この場所は昭和の終わりごろまで作業していた場所のようだ。
ここで問題が起きた。
クマさんダウン。
実はこの石切場は行き止まりで、この先に展望台がある。
クマさんを置いて海龍さんと2人で展望台へ行ってみた。
今日は景色がいいので遠くまで良く見える。
これは頂上へ行くのが楽しみだ。
番組ではこの先のコースが良くわからなかったのでちょっと迷ったが
来た道を少し引き返して日本寺へ向かったようだ。
この道も細い階段が延々と続く道なので難儀する。
降りてくる人がいるとちょとよけてやり過ごしたりするが、
クマさんにとっては休み休み登れるので助かるだろう。
間もなく日本寺の看板が見えてきた。
番組ではあっさりと通過するが、ここでは実はお金を取られる。
拝観料600円を払わなければならないのだ。
別にお参りに来たわけでもないのだが、この先のエリアに入る
入場料のようなものだろう。
そして中に入るとすぐさま目に飛び込んでくるのが
百尺観音だ。
昭和41年に完成した岩に掘られた観音像で戦争の犠牲者と
交通事故による犠牲者を供養するもの。
ここまで来れば地獄のぞきはすぐ上に見える。
目測で、7~8階建てのビルくらいの高度差があるが、その程度
ならたいしたことはない。
しかも有料エリアにはいったことで階段がコンクリートで整備されて
いるので上りやすい。意外とあっさりと頂上のエリアに到着した。
クマさんも遅れて到着。あとでクマさんに聞くと、ここの階段上りが
一番大変だったらしい。人によって印象は変わるものなんだな。
とりあえず地獄のぞき到着おめでとう!
見ているだけで迫力があるのだが、あそこまで行かねばなるまい。
少し休んでから地獄のぞきへ向かう。
番組は地獄のぞきで締めのコメントなどをやっていたが、今日は
休日なので観光客が大勢いる。
登山客に加え、ロープウェーや車で来た人が大勢いるからだ。
というわけで順番待ちの列に並ぶことになる。
結構な時間、並ぶことになる。
やっと順番が回ってきた。
岩をよじ登るようにして地獄のぞきへ向かう。
先端は下り坂になっている。柵がなければそのまま下って一気に
落下だろう。おそらく昔は柵なんて無かっただろうし、そういう人も
いたのではないか?と想像してしまう。
まずは下をみる。
下に見えるのは百尺観音の前の広場。
たんに高いだけでなく、今乗っている岩はただの出っ張りでしかない
と知っているのでどうも落ち着かない。さっさと退散することにした。
ただここからの眺めは最高である。
徳に今日は数日前の台風のおかげなのか空気が澄んでいて
空も快晴だ。思いっきり遠くまで見えるのだ。
横須賀、木更津方面が見えるのだが、その先の東京湾の奥には
横浜、そして東京のビル街も霞んで見えている。
本当に東京の近くの山なんだなと実感した。
別の展望台からみえる反対側の景色。
房総半島がずーと先まで続いている。
千葉県というのは本当にデカい県なのだ。特に房総は。
浦安とか船橋とか幕張くらいで千葉県を知ったつもりになってはいけない。
とりあえず、目的は達成した。あとは帰るだけ。
階段を下りて百尺観音まで戻った後、来た時とは反対側の
駐車場へと向かう。こちらが日本寺のもう一つのゲートだ。
ほとんどの観光客はここから車で帰る。我々はロープウェーを目指す。
ここからロープウェーまでは、これまた結構な上りが続く。
クマさんを「もう少しだから」と励ましつつ先へ進む。
ロープウェーを降りた場所から港まで2km近くあることは黙っていよう。
なんとか、ロープウェー山頂駅にたどり着いた。やれやれである。
実は山に入ってからトイレという物が無かった。この駅にはトイレが
あるので助かった。
自動販売機で冷たい飲み物を買って飲んだら、ようやく人心地つく。
さあ帰ろう。片道500円。3分で下に降りれる。
文明というのは凄い。
海龍さんが切符を買おうとすると信じられない言葉が。
「今日はロープウェー、動かないです」
なんと、ロープウェーは故障により止まっているのだ。
そして切符も売らないとのこと。つまり復旧する目処が立たないのだ。
どうやら待っていれば動くというようなものではないらしい。
ではどうしたらいいのだろうか?
ロープウェーの人に訪ねると「歩いて降りてください」との事。
歩いてって簡単に言うけど、
高低差 223m 線路長 680m (鋸山ロープウエーHPより)
もあるんだから歩けといわれても困る。
動かないロープウェイ
だったら代わりの手段。たとえばバスなどで代替輸送するとかして
欲しいがそんなことは無理だとの一点張り。
足止めされた人のなかにはご老人もいて、さすがにその人には
何か配慮があったようだが、我々のように自力で動ける大人たちは
歩いて山を下るしかないのだ。
しかし自力で動けない人もいる。
クマさんである。
さきほどからベンチに横たわって動けないのだ。
考えられる方法としては先ほどの駐車場まで戻り、車を手配して
降りることだ。海龍さんが今日3度目電話をタクシー会社にかける。
繋がらない。
かけ直す。
繋がらない。
繰り返すうちにようやく繋がった。
しかしまたもや、乗車拒否だった。
空車がない事と、山に登るには有料道路を通らねばならないからだ
とのこと。千葉の山の中でもはや文明は当てにならない。
座していても仕方がない。
このままここにいても何も解決しないのだ。
いま16時で、日没時間も考えなければならない。
2時間も3時間も時間を使うことはできないのだ。
俺や海龍さんならおそらく無事に下に降りれるだろう。
しかしクマさんをどうするか?
そう思っていた時、救いの神が現れた。
海龍「あれ?クマさん猫が居るよ!子猫」
クマ「どれどれ?」
最初は海龍さんがクマさんを元気付けるために嘘を言っているのかと
思った(笑)。しかしクマさんが寝ているベンチの下には、
本当に子猫がいた。それも数匹まとまって。
クマさんのターンがやってきた。
ベンチから跳ね起きて「ネコだネコだ」と大喜びである。
なんと売店にいって食べ物を買い、子猫に与えようとする始末だ。
いつまでも子猫と遊びたがるクマさんを強引に急かし立てて
下山道を降りることにした。
途中まではロープウェーの職員さんが案内してくれる。
ちょっと聞いた限りではこんな運休は初めての事。
もちろん職員さんも夜までには歩いて降りるのだ。
途中まで送ってくれたお姉さんはビジネススーツ姿。
山の中の登山道でビジネススーツの女の子が歩いてる姿は
かなりシュールな光景だ。彼女が降りる頃には暗くなりかけだろうし
スカート穿いたまま降りられるのか心配だ。
ロープウェー職員さんは途中までしか案内してくれないので
そこから先は我々だけで降りる。
降りるというと楽そうに思えるかもしれないが、ここの下りは
ほぼずーとずっと階段なのだ。
しかもコンクリートではなく登山道的なの階段。
足場は不安定だし段は一定じゃないし滑りやすい。
1段1段慎重に降りていかないと危ない。
杖を突いてバランスをとらないと大変だ。もし今日、杖が無かったら
相当な体力を消耗して今ごろまだ山の中にいたかもしれない。
何気なく借りた杖だったが命の杖となった。
永遠に続くかのように思われた下りがようやくおわり、道路に出た。
久しぶりのアスファルトの感触。
下りのペースは各自に任せたのでバラバラになったが、
ロープウェーの山麓側の駅付近で無事に集合した。
「帰ってこれたね」と喜ぶ。
「生還した」というと大げさだが「帰ってこれた」という感じはする。
わずか300mの山でこんなに緊張感のある登山を楽しめるとは
意外だった。鋸山を舐めてはいけない。
夕暮れの町をあるいて、先ほど杖を借りた案内所に行く。
すでに営業時間が終わっていて閉まっていた。
玄関の脇に、感謝をこめて杖を置いていく。
ありがとうございました。
港について出航間近のフェリーの飛び乗った。
船名は「くりはま丸」。
ジャガイモンで麻琴たちが乗ってた船である。
だがそんなことはもうどうでもいい。
鋸山を征服したという満足感と疲労感でいっぱいだった。
(終わり)
今日のルートは基本的に番組と同じコースを取る。
だがまず、登山口まで行かないと行けない。
我々が今いるのは「漁師料理かなや」という店だ。
まずは港まで戻ろう。
このお店は港や駅まで送迎してくれるはずである。それを頼もうと
店員さんを探していると送迎の時刻表があった。
それによると送迎といえども随時行うのではなく時刻表に従うのだ。
そして利用者が申し出ないと運行しないとのこと。
時刻表をみると、なんと2時間に1本しか運行しない。ちょうど先ほど
出たところなので、あと1時間40分ほど待つ必要がある。
もちろんそんなに待ってる程暇人ではないのでタクシーを呼ぶことに。
海龍さんが先ほど利用したタクシー会社に連絡する。
しかし「はあ・・・そうなんですか・・・」となにやら怪しい雰囲気。
電話を切った海龍さんは「タクシーみんな出払ってて来れないって」
という悪い知らせを伝えてきた。
まだ鋸山に到着もしてないうちからトラブルの連続。
だからといって前に進まないわけには行かない。
我々は結局、港まで歩いて引き返すことにした。
海沿いの国道をてくてくと歩く。2km足らずの距離で平地なので
疲れるというほどの事でもないのだが、先ほど久里浜でも2km
くらい歩いているわけで、こういうちょっとした疲労が後になって
大きく響いてくるわけである。
15分ほどで無事港に到着。まずは地図を確認する。
「薬局」の角を回って車力道コースを登り石切場に出る。
その後日本寺に入って地獄のぞきに到達。
帰りはロープウェーで降りてくるという行程。所要時間は2~3時間の見込みだ。
コンビニで食料(といってもチョコレートくらい)と飲み物を購入。
まずは番組同様、住宅街を歩く。
途中に観光案内所があって玄関のところに「ご自由にお使いください」と
竹杖が用意されている。海龍さんは自前の登山用杖を持ってきている。
杖を持ってない俺とクマさんの2人は借りてみることにした。
案内所の人が出てきて、ここは16時には閉まるからそれより遅くなったら
杖を玄関のそばに置いて欲しいという。
まだ13時だしそんなに遅くなることは無いだろう。それにこんな小さな
山なら杖なんて要らないと思う。ジャガイモンだってみんな杖とか
使ってないしね。
ようやく登山道の入口に到着。
他にも何人か山に入る人がいたのだがみんな別々のコースに分かれて
しまったので車力道コースを目指すパーティーは我々だけである。
登山道に入ったといってもしばらくは民家もあるので舗装道路が続く。
このあたりはかなり急な坂道で登るのは大変だ。
番組では一行に向かって犬が吼えるシーンだが、今日もその犬がいて
我々を威嚇する。この辺に住んでる犬なのだろう。
なお番組中ではこの坂を歩きながら、麻琴はズボンが失敗だということに
気づく場面だ。
この急坂ですでにクマさんがお疲れモードとなる。登りきったところで少し
休憩をする。すぐ隣は高速道路が通っていて車の音がうるさい。
まだ登山の雰囲気じゃないね。
ようやく山の中に入って少し歩くと番組にも登場した車力道コースの
案内板がある。
昔女性たちが車に切り出した石を積んで山を下ったコースなのだ。
この看板を境に、車力道コースは一気に山登りとなるのだ。
古い石が敷いてある険しい上り坂が続く。足場の石が崩れかけて
不安定な場所も多い。木が生い茂って暗くなり、なかなかの登山道だ。
つい10分前まで舗装道路だったとは思えない。
登り始めて10分でジャガイモンチームは休憩を取る。
我々もほぼ同じくらいの時間で同コースを走破。
同じ場所で休憩を取ることにした。
ジャガイモンがここで休憩をとったので同じ場所で休憩を取るわけだが
ここは本当に休憩が必要だった。
わずか10分程度の登りだったがけっこうキツい。
クマさんはすでにかなり疲れている。
休憩中の我々を家族連れや年配の人が追い越していく。
登りなれてる人はこんなところで休憩などしないのだろう。
気を取り直して再び山に入る。
相変わらず足場が良くないので杖をついて歩く。
グラっと来た時に杖があると安心感が違う。この杖は登るには必需品だ。
バカにして悪かったと思う。
たまに視界が開けると海が見えたり港がみえたりしてだんだんと
高度が上がっていくのが分かる。
狭い山道を登っていくと突然巨大な崖が現れる。
崖ではなく石を切り出した後だ。
つまり人口の崖。これが鋸山といわれる所以なのだ。
番組内でも麻琴たちが真剣に見上げていた。
さらに進むと今度は遺跡のような場所に出る。
下のほうには水が溜まって池になっている。
番組の中で川元さんが見つけた、岩の壁に掘り込まれた仏像が
すぐに分かった。こういう物を見ると登山の疲れも忘れることが
出来るのか、海龍さんや草野球さんはせっせと写真を撮る。
狭い山道を進む。
ずっと上りだった道だがこの部分だけは横に進むので上り下りが
連続している。そうやって進んでいくといよいよ石切場に到着。
ジャガイモンの中でせいこう氏が「ここはミュージッククリップが撮れるね」
と言ってたが本当にちょっとした野外ステージみたいな場所だ。
何か本当にイベントでもやったことがあるのかもしれない。
この場所は昭和の終わりごろまで作業していた場所のようだ。
ここで問題が起きた。
クマさんダウン。
実はこの石切場は行き止まりで、この先に展望台がある。
クマさんを置いて海龍さんと2人で展望台へ行ってみた。
今日は景色がいいので遠くまで良く見える。
これは頂上へ行くのが楽しみだ。
番組ではこの先のコースが良くわからなかったのでちょっと迷ったが
来た道を少し引き返して日本寺へ向かったようだ。
この道も細い階段が延々と続く道なので難儀する。
降りてくる人がいるとちょとよけてやり過ごしたりするが、
クマさんにとっては休み休み登れるので助かるだろう。
間もなく日本寺の看板が見えてきた。
番組ではあっさりと通過するが、ここでは実はお金を取られる。
拝観料600円を払わなければならないのだ。
別にお参りに来たわけでもないのだが、この先のエリアに入る
入場料のようなものだろう。
そして中に入るとすぐさま目に飛び込んでくるのが
百尺観音だ。
昭和41年に完成した岩に掘られた観音像で戦争の犠牲者と
交通事故による犠牲者を供養するもの。
ここまで来れば地獄のぞきはすぐ上に見える。
目測で、7~8階建てのビルくらいの高度差があるが、その程度
ならたいしたことはない。
しかも有料エリアにはいったことで階段がコンクリートで整備されて
いるので上りやすい。意外とあっさりと頂上のエリアに到着した。
クマさんも遅れて到着。あとでクマさんに聞くと、ここの階段上りが
一番大変だったらしい。人によって印象は変わるものなんだな。
とりあえず地獄のぞき到着おめでとう!
見ているだけで迫力があるのだが、あそこまで行かねばなるまい。
少し休んでから地獄のぞきへ向かう。
番組は地獄のぞきで締めのコメントなどをやっていたが、今日は
休日なので観光客が大勢いる。
登山客に加え、ロープウェーや車で来た人が大勢いるからだ。
というわけで順番待ちの列に並ぶことになる。
結構な時間、並ぶことになる。
やっと順番が回ってきた。
岩をよじ登るようにして地獄のぞきへ向かう。
先端は下り坂になっている。柵がなければそのまま下って一気に
落下だろう。おそらく昔は柵なんて無かっただろうし、そういう人も
いたのではないか?と想像してしまう。
まずは下をみる。
下に見えるのは百尺観音の前の広場。
たんに高いだけでなく、今乗っている岩はただの出っ張りでしかない
と知っているのでどうも落ち着かない。さっさと退散することにした。
ただここからの眺めは最高である。
徳に今日は数日前の台風のおかげなのか空気が澄んでいて
空も快晴だ。思いっきり遠くまで見えるのだ。
横須賀、木更津方面が見えるのだが、その先の東京湾の奥には
横浜、そして東京のビル街も霞んで見えている。
本当に東京の近くの山なんだなと実感した。
別の展望台からみえる反対側の景色。
房総半島がずーと先まで続いている。
千葉県というのは本当にデカい県なのだ。特に房総は。
浦安とか船橋とか幕張くらいで千葉県を知ったつもりになってはいけない。
とりあえず、目的は達成した。あとは帰るだけ。
階段を下りて百尺観音まで戻った後、来た時とは反対側の
駐車場へと向かう。こちらが日本寺のもう一つのゲートだ。
ほとんどの観光客はここから車で帰る。我々はロープウェーを目指す。
ここからロープウェーまでは、これまた結構な上りが続く。
クマさんを「もう少しだから」と励ましつつ先へ進む。
ロープウェーを降りた場所から港まで2km近くあることは黙っていよう。
なんとか、ロープウェー山頂駅にたどり着いた。やれやれである。
実は山に入ってからトイレという物が無かった。この駅にはトイレが
あるので助かった。
自動販売機で冷たい飲み物を買って飲んだら、ようやく人心地つく。
さあ帰ろう。片道500円。3分で下に降りれる。
文明というのは凄い。
海龍さんが切符を買おうとすると信じられない言葉が。
「今日はロープウェー、動かないです」
なんと、ロープウェーは故障により止まっているのだ。
そして切符も売らないとのこと。つまり復旧する目処が立たないのだ。
どうやら待っていれば動くというようなものではないらしい。
ではどうしたらいいのだろうか?
ロープウェーの人に訪ねると「歩いて降りてください」との事。
歩いてって簡単に言うけど、
高低差 223m 線路長 680m (鋸山ロープウエーHPより)
もあるんだから歩けといわれても困る。
動かないロープウェイ
だったら代わりの手段。たとえばバスなどで代替輸送するとかして
欲しいがそんなことは無理だとの一点張り。
足止めされた人のなかにはご老人もいて、さすがにその人には
何か配慮があったようだが、我々のように自力で動ける大人たちは
歩いて山を下るしかないのだ。
しかし自力で動けない人もいる。
クマさんである。
さきほどからベンチに横たわって動けないのだ。
考えられる方法としては先ほどの駐車場まで戻り、車を手配して
降りることだ。海龍さんが今日3度目電話をタクシー会社にかける。
繋がらない。
かけ直す。
繋がらない。
繰り返すうちにようやく繋がった。
しかしまたもや、乗車拒否だった。
空車がない事と、山に登るには有料道路を通らねばならないからだ
とのこと。千葉の山の中でもはや文明は当てにならない。
座していても仕方がない。
このままここにいても何も解決しないのだ。
いま16時で、日没時間も考えなければならない。
2時間も3時間も時間を使うことはできないのだ。
俺や海龍さんならおそらく無事に下に降りれるだろう。
しかしクマさんをどうするか?
そう思っていた時、救いの神が現れた。
海龍「あれ?クマさん猫が居るよ!子猫」
クマ「どれどれ?」
最初は海龍さんがクマさんを元気付けるために嘘を言っているのかと
思った(笑)。しかしクマさんが寝ているベンチの下には、
本当に子猫がいた。それも数匹まとまって。
クマさんのターンがやってきた。
ベンチから跳ね起きて「ネコだネコだ」と大喜びである。
なんと売店にいって食べ物を買い、子猫に与えようとする始末だ。
いつまでも子猫と遊びたがるクマさんを強引に急かし立てて
下山道を降りることにした。
途中まではロープウェーの職員さんが案内してくれる。
ちょっと聞いた限りではこんな運休は初めての事。
もちろん職員さんも夜までには歩いて降りるのだ。
途中まで送ってくれたお姉さんはビジネススーツ姿。
山の中の登山道でビジネススーツの女の子が歩いてる姿は
かなりシュールな光景だ。彼女が降りる頃には暗くなりかけだろうし
スカート穿いたまま降りられるのか心配だ。
ロープウェー職員さんは途中までしか案内してくれないので
そこから先は我々だけで降りる。
降りるというと楽そうに思えるかもしれないが、ここの下りは
ほぼずーとずっと階段なのだ。
しかもコンクリートではなく登山道的なの階段。
足場は不安定だし段は一定じゃないし滑りやすい。
1段1段慎重に降りていかないと危ない。
杖を突いてバランスをとらないと大変だ。もし今日、杖が無かったら
相当な体力を消耗して今ごろまだ山の中にいたかもしれない。
何気なく借りた杖だったが命の杖となった。
永遠に続くかのように思われた下りがようやくおわり、道路に出た。
久しぶりのアスファルトの感触。
下りのペースは各自に任せたのでバラバラになったが、
ロープウェーの山麓側の駅付近で無事に集合した。
「帰ってこれたね」と喜ぶ。
「生還した」というと大げさだが「帰ってこれた」という感じはする。
わずか300mの山でこんなに緊張感のある登山を楽しめるとは
意外だった。鋸山を舐めてはいけない。
夕暮れの町をあるいて、先ほど杖を借りた案内所に行く。
すでに営業時間が終わっていて閉まっていた。
玄関の脇に、感謝をこめて杖を置いていく。
ありがとうございました。
港について出航間近のフェリーの飛び乗った。
船名は「くりはま丸」。
ジャガイモンで麻琴たちが乗ってた船である。
だがそんなことはもうどうでもいい。
鋸山を征服したという満足感と疲労感でいっぱいだった。
(終わり)