■花冠月例句会■

俳句雑誌「花冠」の月例ネット句会のためのブログ 管理 高橋句美子・西村友宏

■8月ネット句会入賞発表■

2013-08-11 18:08:24 | 日記
■8月ネット句会■
■入賞発表/2013年8月11日■

【金賞】
★蜩の降りくる森の厚みかな/小西 宏
「森の厚み」に、ひぐらしの声の特質がとらえられている。ひぐらしは、森全体に響き、森全体が鳴くように思える。それが「森の厚み」として捉えられた。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★花舗の朝仕分けの花に秋立ちぬ/堀川喜代子
開店間際の花舗の朝。仕分けをする花にも、竜胆や女郎花などが混じっているのだろう。生き生きとさわやかな花となっている。(高橋正子)

★玄関の飛蝗大きな青空へ/高橋秀之
玄関にいた飛蝗が、いきなり飛び立った。それも一気に大きな青空へ。飛蝗の力強さ、大きな青空の爽快さが、明快に詠まれている。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★潮引いて海も遠のく月見草/迫田和代
潮が引くと浅瀬がぐんと現れる。海が遠のくのだ。そこに月見草が咲く。遠のく海と月見草の出会いがいい。(高橋正子)

★夏果つる空に円形観覧車/小川和子
夏が終わる。夏の間人々を楽しませた観覧車が空に円形を描いている。空に立つ円形観覧車が夏の果てを象徴している。(高橋正子)

★向日葵を籠いっぱいに活けあげる/井上治代
向日葵を活ける。それも籠いっぱいにあふれさせて。「活けあげる」の「あげる」に作者の心意気と思いがよく出ている。明るくはつらつとした向日葵である。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★花舗の朝仕分けの花に秋立ちぬ/堀川喜代子
立秋を迎えるとすぐにお盆です。お墓参り用の花も色々準備され、今までとは違った種類の花が入荷して居る花屋さんに秋の来た事を実感されたのでしょう。 (佃 康水)

★虫網を下段に構えヤンマ待つ/小西 宏
大型のオニヤンマを捕るために虫網を持つ子どもたち。「下段に」の細やかな描写が、虫捕りの子どもたちの様子を明るく生き生きと伝えてくれます。自然の中で子どもたちを見守る優しい眼差しを感じます。 (藤田洋子)

★朝の日へ咲き初む里の稲の花/佃 康水
朝の日差しの中、小さな白い稲の開花が心洗われるような清らかさです。稲の花咲く里にやがて訪れる実りの秋を思い、初秋の嬉しさが感じとれます。 (藤田洋子)

★酢の物の色どりどりをガラス器に/井上治代
連日の暑さの中ではさっぱりとした酢の物が何よりのご馳走です。それを更に色とりどりの新鮮野菜を取り混ぜ、また、ガラス器へ盛られた卓上は視覚的にも涼しく、食欲が増して参ります。廚に立つ者として共感の御句です。 (佃 康水)

★玄関の飛蝗大きな青空へ/高橋秀之
★蜩の降りくる森の厚みかな/小西 宏
★夏果つる空に円形観覧車/小川和子
★向日葵を籠いっぱいに活けあげる/井上治代

【高橋正子特選/8句】
★花舗の朝仕分けの花に秋立ちぬ/堀川喜代子
花舗の朝は仕分けで始まます。その花舗の仕分けはもっとも季節感が表れるところでしょう。花を見て立秋を感じるのは花舗ならではです。 (高橋秀之)

★本堂へ台しつらえて大西瓜/佃 康水
お寺には、季節ごとの自然からの賜物がお供えされていることが少なくありません。特別に台をしつらえてドンと置かれた大きな西瓜が、微笑ましさと共に初秋の恵みを伝えてくれています。(小西 宏)
お寺さんのお掃除でもあったのでしょうか、お手伝いの皆様に切り分けられた大きなスイカ。それも本堂にて、和やかな景が思われます。 (祝恵子)

★瀬戸大橋渡り連なる涼しき灯/藤田洋子
夜の瀬戸大橋を渡るヘッドライトの列が静かに、明るく繋がり、涼しさを伝えてくれています。(小西 宏)
瀬戸大橋に連なる外灯、海を渡ってくる涼しい風、しばしの間、暑さを忘れて初秋を感じられました。(藤田裕子)

★とんぼうの急に増えけり今朝の里/小口泰與
町中はまだ猛暑が続いておりますが、里の朝は、とんぼがたくさん飛び交っています。早く秋の訪れが待たれます。(藤田裕子)

★モビールの海の色して揺れ涼し/祝恵子
句意がはっきりして平明なので、読んで心が軽くなる。吊られたモビールが海の色をして揺れ、いかにも、涼しそうだ。(高橋正子)

★月見草空引き寄せて丘に咲く/高橋信之
月見草は丘の荒れ地などによく咲いている。そういう月見草は空の中にすっと伸びている。空を自分に引き寄せているのだ。(高橋正子)

★潮引いて海も遠のく月見草/迫田和代
潮が引き、また夕暮れて、海もますます遠く感じられます。そんな風情に、浜に咲く月見草のたおやかさが静かに残ります。(小西 宏)

★玄関の飛蝗大きな青空へ/高橋秀之

【入選/13句】
★夾竹桃上り急行通過せり/渋谷洋介
冷房の効いている電車の中さえ団扇で扇ぐ人がいるほどの酷暑。しかし、その鉄路のかたわらには夾竹桃の可憐な花が咲いています。猛暑の中で咲く花を揺らし急行列車が走って行きます。 (多田有花)

★関東を一瀉千里の夕立かな/古賀一弘
関東地方はこの夏大規模な夕立が何度もありました。一瀉千里という言葉に雲の上を駆け回る雷神の姿を、思い浮かべました。 (多田有花)

★青柿や白雲育つその下に/柳原美知子
暑い午後、入道雲が空にぐんぐん育ちます。その空の下、葉陰では柿の実がしだいに大きくなっています。猛暑の中に秋が育っているようです。 (多田有花)
逞しい夏雲がむくむくと伸び上がっている。その下に、すっきりと青い若い柿の実。白い動の中に色美しい静の緑が新鮮に浮き立ちます。(小西 宏)

★中庭に木槿の白を散らしたり/川名ますみ
花木を植えて四季を感じられる閑静な中庭に真っ白な木槿が散っている。散っている木槿に静かによせて来る初秋の風情と涼しさを感じます。 (佃 康水)
暑さ厳しさの残る今日、白木槿が散っている庭。明日も咲くであろう花を思う気持ちが「散らしたり」となるのでしょう。(祝恵子)
中庭に咲いている白木槿、そしてその白をふわりと散らした木槿、清楚な美しさを醸し出してくれます。(藤田裕子)

★蝉時雨のみ一村の昼下がり/黒谷光子
蝉時雨が激しく聞こえてくるにもかかわらず、「昼下がり」の「一村」の佇まいが静かです。(小西 宏)
暑い暑い夏の午後、村人も家に引きこもっています。ただ蝉だけが盛んに夏を謳歌。山間の村の情景が浮かんで来ます。 (古賀一弘)
暑さのためか人通りの少ない昼下がりの山の村には、ただ蝉時雨のみが響いています。すごく静かな中に蝉が鳴いている日本の夏という情景が浮かんできます。 (高橋秀之)

★みな帰る胸に花火の余韻抱き/多田有花
花火大会の帰りなのでしょう。帰途につく人々は華やかだった花火の余韻を大切に家路に向かわれたことでしょう。 (黒谷光子)

★雲の峰見上げる人の小ささや/迫田和代
雲の峰とそれを見上げる人との対比、見あげる人は自分そのものでしょう。 (祝恵子)

★秋を待つさやかに響く音にさえ/迫田和代
ここ数日の暑さの酷さは真夏以上です。秋を待ち望む気持ちはあらゆるものの中にその兆しを感じ取ろうとします。涼しげな音の響きに近づく秋を待ち望む心を託しておられます。 (多田有花)

★月見草しみじみ高く野辺暮るる/小川和子
暮れゆく中、野に立つ月見草の静かな佇まいが見えてきます。月見草へ寄せる作者の思いがしみじみと優しく伝わります。(藤田洋子)

★炎天へ踏み出す帽子の鍔広き/黒谷光子
連日のこの酷い猛暑。出来る事であれば外出も控えたい所であるが、所要が出来ればそうは言っておられず止むをえない所。心して勢いをつけ外出の時の心情が、大変良く表現されている。 (桑本栄太郎)

★提灯の明るさ増しゆく踊りの輪/藤田裕子
提灯の明るさとともに踊る人々も増え、踊りの輪も広がっていくようです。盆踊りの夜景も美しく、踊りに集う人々の温もりを感じる一夜です。 (藤田洋子)

★歓声や夜空に花火の開くたび/多田有花
花火大会は夏の風物詩。その花火が開くたびに起こる歓声。暑さを忘れさせてくれる光景です。 (高橋秀之)

★名札付け帰省みやげの調えり/桑本栄太郎
誰に何を渡そうか。忘れないように、間違えないようにお土産名名札をつけて準備を整える。帰省の度に繰り返されるであろう光景は、毎年の楽しみでもあるのでしょう。 (高橋秀之)


■選者詠/高橋信之
★天ひろびろ地がひろびろ稲の花咲く
天は青く広がり、その下の地上は稲の花が咲く田園が広がっています。青い空、緑の稲、白い稲の花、美しい光景がひろびろと見えてまいります。 (藤田裕子)
稲の花が咲く頃の濃く広い空、花咲く稲草の青々と靡く地の広さ、そして何より、稲の花を迎えた人々の喜び。 (小西 宏)

★暑き朝なれど確かな今日がある
どんな暑い朝であっても確実に季節はながれている。屹度立秋と思われるのですが、確かな今日がある 嬉しいですね。 (迫田和代)
八月になり暑い日が続きますが、暑い朝であっても、確実に今日という一日は始まります。当たり前のことかもしれませんんが、確かな今日がそこにあるというところに、今日という一日に感謝する気持ちが感じられます。 (高橋秀之)

★月見草空引き寄せて丘に咲く
月見草は丘の荒れ地などによく咲いている。そういう月見草は空の中にすっと伸びている。空を自分に引き寄せているのだ。(高橋正子)

■選者詠/高橋正子
★遠雷は遠雷のまま昼下がり
遠くに雷が聞こえます。夕立が来るかしらと思うものの、遠雷は遠雷のまま。何ごともなかった昼下がりですが、耳を澄まし、空を見上げ、肌や匂いで湿り気を察する、より自然に近づくひとときであったと存じます。 (川名ますみ)
猛暑に一雨ほしいが、遠雷のまま驟雨は来ず。 (渋谷洋介)

★風立ちて芙蓉の花のみな戦ぎ
初秋の頃の朝、淡紅色の花を開き夕方にはしぼむ、芙蓉の花が風に揺れてそよそよと音を立てている素敵な景ですね。 (小口泰與)

★炎昼の舗路をゆくとき修行めく
猛暑の中、汗だくになって照りかえす舗道を歩く行為は忍耐そのもの。まるで修行という発想が面白いですね。 (柳原美知子)


■互選高点句
●最高点(4点/同点7句)
★天ひろびろ地がひろびろ稲の花咲く/高橋信之
★暑き朝なれど確かな今日がある/高橋信之
★遠雷は遠雷のまま昼下がり/高橋正子
★玄関の飛蝗大きな青空へ/高橋秀之
★みな帰る胸に花火の余韻抱き/多田有花
★モビールの海の色して揺れ涼し/祝 恵子
★花舗の朝仕分けの花に秋立ちぬ/堀川喜代子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
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24 コメント

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コメント (藤田洋子)
2013-08-12 00:51:12
★虫網を下段に構えヤンマ待つ/小西 宏
大型のオニヤンマを捕るために虫網を持つ子どもたち。「下段に」の細やかな描写が、虫捕りの子どもたちの様子を明るく生き生きと伝えてくれます。自然の中で子どもたちを見守る優しい眼差しを感じます。

★朝の日へ咲き初む里の稲の花/佃 康水
朝の日差しの中、小さな白い稲の開花が心洗われるような清らかさです。稲の花咲く里にやがて訪れる実りの秋を思い、初秋の嬉しさが感じとれます。

★提灯の明るさ増しゆく踊りの輪/藤田裕子
提灯の明るさとともに踊る人々も増え、踊りの輪も広がっていくようです。盆踊りの夜景も美しく、踊りに集う人々の温もりを感じる一夜です。
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コメント (高橋秀之)
2013-08-12 05:40:32
★花舗の朝仕分けの花に秋立ちぬ/堀川喜代子
花舗の朝は仕分けで始まます。その花舗の仕分けはもっとも季節感が表れるところでしょう。花を見て立秋を感じるのは花舗ならではです。

★歓声や夜空に花火の開くたび/多田有花
 花火大会は夏の風物詩。その花火が開くたびに起こる歓声。暑さを忘れさせてくれる光景です。

★蝉時雨のみ一村の昼下がり/黒谷光子
 暑さのためか人通りの少ない昼下がりの山の村には、ただ蝉時雨のみが響いています。すごく静かな中に蝉が鳴いている日本の夏という情景が浮かんできます。
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コメント() (高橋秀之)
2013-08-12 05:45:17
★名札付け帰省みやげの調えり/桑本栄太郎
 誰に何を渡そうか。忘れないように、間違えないようにお土産名名札をつけて準備を整える。帰省の度に繰り返されるであろう光景は、毎年の楽しみでもあるのでしょう
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コメント(お詫び) (高橋秀之)
2013-08-12 05:47:25
すいません。間違って銀賞の句にまでコメントをしてしまいました。
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コメント (多田有花)
2013-08-12 07:52:55
★夾竹桃上り急行通過せり/渋谷洋介
冷房の効いている電車の中さえ団扇で扇ぐ人がいるほどの酷暑。しかし、その鉄路のかたわらには夾竹桃の可憐な花が咲いています。猛暑の中で咲く花を揺らし急行列車が走って行きます。

★関東を一瀉千里の夕立かな/古賀一弘
関東地方はこの夏大規模な夕立が何度もありました。一瀉千里という言葉に雲の上を駆け回る雷神の姿を、思い浮かべました。

★青柿や白雲育つその下に/柳原美知子
暑い午後、入道雲が空にぐんぐん育ちます。その空の下、葉陰では柿の実がしだいに大きくなっています。猛暑の中に秋が育っているようです。
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コメント (佃 康水)
2013-08-12 07:56:22
☆酢の物の色どりどりをガラス器に/井上治代
連日の暑さの中ではさっぱりとした酢の物が何よりのご馳走です。それを更に色とりどりの新鮮野菜を取り混ぜ、また、ガラス器へ盛られた卓上は視覚的にも涼しく、食欲が増して参ります。廚に立つ者として共感の御句です。
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コメント (佃 康水)
2013-08-12 08:12:56
☆中庭に木槿の白を散らしたり/川名ますみ

花木を植えて四季を感じられる閑静な中庭に真っ白な木槿が散っている。散っている木槿に静かによせて来る初秋の風情と涼しさを感じます。
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コメント (小西 宏)
2013-08-12 08:22:50
★潮引いて海も遠のく月見草/迫田和代
潮が引き、また夕暮れて、海もますます遠く感じられます。そんな風情に、浜に咲く月見草のたおやかさが静かに残ります。

★蝉時雨のみ一村の昼下がり/黒谷光子
蝉時雨が激しく聞こえてくるにもかかわらず、「昼下がり」の「一村」の佇まいが静かです。

★青柿や白雲育つその下に/柳原美知子
逞しい夏雲がむくむくと伸び上がっている。その下に、すっきりと青い若い柿の実。白い動の中に色美しい静の緑が新鮮に浮き立ちます。
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コメント (祝恵子)
2013-08-12 08:25:40
★本堂へ台しつらえて大西瓜/佃 康水
お寺さんのお掃除でもあったのでしょうか、お手伝いの皆様に切り分けられた大きなスイカ。それも本堂にて、和やかな景が思われます。


★中庭に木槿の白を散らしたり/川名ますみ
暑さ厳しさの残る今日、白木槿が散っている庭。明日も咲くであろう花を思う気持ちが「散らしたり」となるのでしょう。
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コメント2 (小西 宏)
2013-08-12 08:50:25
★本堂へ台しつらえて大西瓜/佃 康水
お寺には、季節ごとの自然からの賜物がお供えされていることが少なくありません。特別に台をしつらえてドンと置かれた大きな西瓜が、微笑ましさと共に初秋の恵みを伝えてくれています。

★瀬戸大橋渡り連なる涼しき灯/藤田洋子
夜の瀬戸大橋を渡るヘッドライトの列が静かに、明るく繋がり、涼しさを伝えてくれています。
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