■花冠月例句会■

俳句雑誌「花冠」の月例ネット句会のためのブログ 管理 高橋句美子・西村友宏

■第13回(紫陽花)フェイスブック句会入賞発表■

2012-06-03 22:31:36 | 日記
■紫陽花句会入賞発表■
■入賞発表/2012年6月4日■

【金賞】
★一枚の光り湛えて田が植わる/藤田洋子
田が静かに植えられていく様子が目に見えるようだ。水を湛えた田は、そのまま光りを湛えた田となる。(高橋正子)

【銀賞】
★かじか蛙鳴きいて金環食の時/安藤智久
金環日食という特別な時。澄んだ声でかじか蛙が鳴く山里も、天文の不思議に包まれる。金環日食のダイヤモンドのような白金の円環と、かじか蛙の澄んだ声がよく呼応している。(高橋正子)

【銅賞】
★潮騒の島を覆いて七変化/下地 鉄
島のどこも七変化がが咲きほこる。沖縄の地形を思えば、「島を覆う」ほど咲いている。島に響く潮騒に、七変化の色がますます生き生きとしてくる。(高橋正子)

★車窓から月のたゆとう大植田/佃 康水
米どころを列車で走っている時であろう。折しも月がかかり、たゆたっている大植田を目の当たりにすることができた。月のかかる植田がのびやかに詠まれている。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★芍薬の白はふっくら日の溶けし/高橋正子
「芍薬」の白が明るくふっくらとしている。「日の溶けし」であれば、なお明るくて優しい。(高橋信之)

★夏シャツの風のかたちに乾きけり/高橋亜紀彦
中七の「風のかたちに」にこの句の良さがあるが、この表現は比喩の一つと理解した。西洋の詩では好まれる技巧だが、俳句では好まれない。私がこの句を良しとしたのは、「夏シャツ」となった初夏の季節を捉えて実感のあるところで、「風のかたちに」の表現の奥に自然の姿を見た。(高橋信之)

★一枚の光り湛えて田が植わる/藤田洋子
水を張った田に、きれいな緑の幾条もの苗が伸びる。水面はきらきらと陽を返す。忙しい田植えの終わった後の静かな、平和な農村の​風景が見えました。(古田敬二)

★吊り忍八方に葉をしなやかに/黒谷光子
吊り忍の八方に垂れた葉が、実に清々しい涼感です。しなやかな葉が風に揺れ、より一層心地良いみどりの風を感じさせてくれます。(藤田洋子)

★平かに濁る代田やキセキレイ/安藤智久
代掻きで均された田の面。その濁りと対照的な、鮮やかなキセキレイです。水辺を好むキセキレイの存在に、田植えを待つばかりの代田が清らかに目に映ります。(藤田洋子)

★かじか蛙鳴きいて金環食の時/安藤智久
山の渓流などきれいな水に棲むかじか蛙。その美声を聞きながら、清澄な自然の中、世紀の金環日食の時を迎えられた感動が伝わります。(藤田洋子)

★夏つばめ舞う朝うれしき時もてり/藤田裕子
「うれしき」という感動を率直にそのまま述べた。初夏であり、朝である。「うれしき時」である。感動には、言葉の技巧の必要がない。それがいいのだ。(高橋信之)

★葦切(よしきり)に沼の葉青く尖り立つ/小西 宏
「葦切」と「沼の葉」のどれもが生きいきと今年の夏を迎えた。そこを「青く尖り」と見た感性がいい。(高橋信之)

【高橋正子特選/8句】
★車窓から月のたゆとう大植田/佃 康水
田園地帯を夜に車で走られたのでしょう。昼間は田植機が忙しく働いていた田に早苗が整然と植わりました。このころの水田はひととき大きな湖が出現したような光景を見せてくれます。そこに月がゆらめいているとなれば、さらに幻想的な光景だったことでしょう。(多田 有花)
今まさに田植えの最中のようですね。満々と水を湛えている田もあるでしょうし、すでに田植を終えたばかりで、早苗が水に姿を映しているところもあるでしょう。月光が車窓を追い、また田の水に写る月影が少しずつ位置を変えていくのでしょう。静かで新鮮な光景です。(小西 宏)

★潮騒の島を覆いて七変化/下地 鉄
ゆったりとした潮騒が耳にやさしい南の島には季節はひと足早くめぐりくるのでしょう。七変化とも呼ばれる紫陽花が色とりどりに島を覆い、目にも耳にも心地良さが伝わってくるようです。(小川和子)
沖縄は、海の近くは当然として、岸から離れたところでもちょっと高台に上れば潮騒を感じることができますね。今は梅雨の盛り、彩り豊かな紫陽花が海の見える丘一面を覆っていることでしょう。「潮騒の島」いっぱいの花が素敵です。(小西 宏)

★提灯を吹き消し蛍火の中へ/安藤智久
昔に習って、提灯を手に蛍狩りをされたのでしょうか。流れに近づくとそっと灯を消し、蛍の飛び交う暗闇に近づいていくのでしょうね。自然の豊かな場所での、とても羨ましい風景です。(小西 宏)

★郭公や頂上まではあとわずか/多田有花‏
登ってきて、あとわずかとなったところで、郭公の声を聞いた。山の緑にこだまする郭公の声に励まされ、自然を満喫する作者の姿が涼しげだ。(高橋正子)

★風当たり一際高く棕櫚の花/平田 弘
棕櫚の花は、葉が茂る天辺近くに咲く。一際高く立っている棕櫚は、風がよく当たって、棕櫚の葉をぱたぱたそよがせ、たくましい黄色い花を揺すらんほどである。この光景を何年も見ている私には、懐かしさが湧く。(高橋正子)

★一枚の光り湛えて田が植わる/藤田洋子
★植田静かに苗の影いくつも落とし/高橋信之
★かじか蛙鳴きいて金環食の時/安藤智久

【入選/22句】
★柿若葉卒寿に鍬のまだ軽し/小野寺 靖
九十歳になられても、まだまだお元気で軽々と鍬を使っておられるお姿、傍の柿若葉が美しく応援しているようです。(黒谷光子)
卒寿だが未だ元気、軽々と鍬を使って農作業、柿若葉のような若さ。季語が良く効いている。(古賀一弘)

★じゃんけんぽん鬼が追いたる青葉風/柳原美知子
涼しい青葉の下、鬼が入れ替わり風がついて走ります、元気な子供たちです。(祝 恵子)
子供たちも爽やかな初夏の戸外で遊ぶ光景が多くなって来ました。青葉若葉のもとで鬼ごっこをする、子供たちの元気な様子が見てとれます。上五の「じゃんけんぽん」との措辞がその情景をよく詠っています。(桑本栄太郎)

★約束の未来あるかにつばめの子/桑本栄太郎
東京地方ではつばめも雀もあまり見なくなってきた。この句のつばめは、約束の主は不明だが、(それでいいのだろう。)夢と希望に満ちている。佳句である。(高橋亜紀彦)
あちこちでつばめの巣をよくみかけます。大空を自由に飛びまわっ​ているつばめの子にとっては未来は輝やかしいものでしょう。私達​にとっても明るい未来が広がっていると信じたいものです。(井上 治代)
たまたまですが、今日、駅でつばめの子が巣で親鳥を待っている様子、そして親鳥がえさを与えている様子を見かけました。元気にえさをねだるつばめの子達は、本当に未来が約束されているかのように、力いっぱいの生命を感じさせてくれました。(高橋秀之)

★紫陽花に夜風のふれてまだ淡し/小川和子
6月の初めだと小花が多数あつまった毬のように花をつける紫陽花も咲き始めはまだ白でしだいに色が濃くなって行きますね。(小口泰與)
薄暑の頃、ようやく夜風が快いと感じられる季節となった。紫陽花に花の色はまだ淡く、優しく風に触れるばかりである。(小西 宏)

★沿線のあじさい花も葉もみどり/井上治代
花も葉もみどりの紫陽花の色が若々しく爽やかだ。車窓から眺めている人々の目にもその爽やかな初夏の色が映っているようです。(安藤智久)

★カラフルな日傘が動く街の道/迫田和代
夏の陽射しのもと、色とりどりの日傘を差した人々が通ってゆく光景に明るい夏の到来を感じました。(藤田裕子)

★瘤金のいつの時代に斑かな/山下一路
琉金(リュウキン)は、江戸時代半ばに琉球経由で中国より渡来したことにより、この名がある。色は赤、更紗模様。そして「斑(ぶち・まだら・はだら)」の模様がある。この「斑」の由来は中国に遡るが、「いつの時代に」とつぶやく作者の想いが詩情となって一句が生まれた。(高橋信之)

★おはようの挨拶緑の窓越しに/河野 啓一
緑美しい季節の心地よさの中、朝の挨拶も爽やかに明るい一日の始まりを感じます。(藤田 洋子)

★万緑の山河に向かい埋もれいる/藤田裕子
緑の大自然に向き合っていると、自らがその中に埋もれ一体化しているような感じになることがあります。共感の一句。(河野 啓一)

★六月の食器を洗う水の音/藤田洋子  
六月の水の音どんな音でしょうか、気になり、句がすっきりして好きです。(下地鉄)

★河骨の花立ち小魚ゆき来する/小川和子
河骨の太い茎が立ち上がってまん丸い形の黄の花が咲きます。その池に小魚がゆき来する全く同じ様子を見ていましたので、私も詠みたい景でした。すっと胸に響きました。(佃 康水)

★ささくれし指となりおりシソを摘む/祝 恵子
自らの手でシソを摘むのは簡単なようで結構な手間がかかる仕事なのでしょう。シソを摘む指がささくれてくることに人がその作業を丁寧にしている様子が伺え、暖かみが感じられます。(高橋秀之)

★大山蓮華レジに薫らせ種苗店/古田敬二
種苗店にはいろんな花が置いてあるなかで、レジ周りには仕入れたての大山蓮華がおいてあるのでしょうか。活きのよい大山蓮華の芳香がレジにくる人楽しませてくれる。そんな楽しみが読み手にも伝わってくる句です。(高橋秀之)

★虻が来て蜂が来て打つ窓薄暑/矢野文彦
窓に飛んでくる虫も増えた。虻が来て、蜂が来て、窓を打って人を驚かせる。うっすらと汗ばむ季節、虫たちを仲間に入れて、明るい初夏の生活である。(高橋正子)

★新樹の岸廃路のフェリー繋がれて/柳原美知子
航路が廃路となって、往時をしのぶフェリーが繋がれている。岸には、昔と変わらず新樹が輝いているのに、繋がれたフェリーに寂しさが隠せない。その対比に作者の心情が読める。(高橋正子)

★雨の中和紙の如くに薔薇くずる/小口泰與
作者は、無理をしないようにと思い、無理をしたのであろうか。「如く」は、俳句では嫌うのだが、敢えて使った。上五の「雨の中」の後の「切れ」にも無理がある。主題が「薔薇くずる」であれば、その無理にも意味がある。(高橋信之)

★麦酒など頼みて朝の七時半/野澤 裕
楽しい俳句である。生活を詠んで楽しい俳句である。(高橋信之)

★わが背より高き噴水水しぶき/高橋秀之
噴水も小さな噴水から、大噴水を呼ばれるものまでいろいろあらう。自分の背より高い噴水なら、しぶきが身にかかることもある。思わぬ涼しさを頂くのが楽しい。(高橋正子)

★賜りし銀の栞を短夜に/川名麻澄
瀟洒なデザインの銀の栞であろう、贈られた。本に挟んだ銀の栞をいとおしく思うのは、夜も深くならない、明け易い季節だからであろう。銀の栞にも短夜にも儚さがある。(高橋正子)

★黒鯛を釣るとて勇み舟に乗り/河野啓一
黒鯛は文字通り黒い鯛、チヌのことであるが、目出度さを尊ぶ桜色の鯛と違って、鯛と名がついても、色、形も無骨である。その黒鯛を釣るとなれば、勇ましさをもってせねば釣れぬ。釣果がたのしみだ。(高橋正子)

★風まとい自由に揺れる雪柳/上島祥子
雪柳は空気の動きに敏感な花です。いつもゆらゆら揺れている。その揺れが楽しい。それを「風まとい」と表現されました。(多田有花)

★鵜の宿の庭に散らばる羽毛かな/古賀一弘
鵜飼の宿に滞在されたのでしょう。そこには鵜の羽毛が落ちていた。篝火の下で見る鵜とは異なる日常生活の鵜の姿にふれられた感動です。 (多田有花)


■選者詠/高橋信之
★尼寺に喫茶店あり紫陽花咲く
尼寺の喫茶店。静かに咲く紫陽花に、尼僧らしい、抑えた華やぎを​感じます。今、人影はなくとも、何処かに彼女らのやわらかな表情​が窺える、すてきな景色です。(川名麻澄)

★植田静かに苗の影いくつも落とし
7-5-7の破調で独特のリズムを感じる印象的な御句です。植え終わったばかりの植田の静寂な様子が想われます。(河野啓一)

★吾が町の山の木苺熟れ美味し
今住んでいる町で思いがけず手にした採れたての熟れた木苺。その瑞々しい一粒一粒の甘さに故郷の山で遊んだ少年時代が蘇ります。心和むうれしいひとときです。(柳原美知子)
白く清楚な花の木苺も実を結び、青葉の山にあって、そのみずみずしい果実の愛らしさは季節の喜びそのものです。野趣に富んだ山の木苺を摘み、口中に広がる美味しさに、お暮らしになる「吾が町」への思いが感じ取れます。(藤田洋子)

■選者詠/高橋正子
★芍薬の白はふっくら日の溶けし
「芍薬」の白が明るくふっくらとしている。「日の溶けし」であれば、なお明るくて優しい。(高橋信之)

★山影の植田は山の影映す
昨日TVでそのとおりの風景を見たばかりです。不思議な落ち着きの感じられる情景を想います。(河野啓一)

★植田道子が落ちないように連れ通る
田植えが終わって間もない頃、満々と張られた田水は、子どもたちにとってはいささか危険を伴います。植田道を通り過ぎる子どもたちを見守る、温かく細やかな眼差しに、より一層、豊かな心安らぐ植田の風景が広がります。(藤田洋子)
植田道を歩くあどけない幼子とその手をしっかりと握る親の姿が水田にも映り、清々しく、ほのぼのとした植田の田園風景が眼に浮かぶようです。(柳原美知子)


■互選高点句
●最高点(8点)
★潮騒の島を覆いて七変化/下地 鉄

●次点(7点)
★一枚の光り湛えて田が植わる/藤田洋子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

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コメント (22)
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