■2019年3月月例ネット句会■
■入賞発表/2019年3月11日
【金賞】
★遅き日や暮れて賑わう一輪車/桑本栄太郎
春になると、日暮れの遅さを感じるようになる。放課後、広場などに小学生が集まってきて、一輪車を賑やかに楽しんでいる。華麗に乗りこなす子もいれば、初歩の子もいる。日が伸びてくれば子どもたちの外での生活が楽しくなる。(高橋正子)
【銀賞/2句】
★ふくらんで蕾赤あかチューリップ/高橋句美子
チューリップの代表と言える赤いチューリップの花。つぎつぎ蕾がふくらんで、どれも赤い色。並ぶと「赤あかと」になり、咲いた時の光景が目に浮かぶ。誰もがよく知る花を生き生きと詠むことができた。(高橋正子)
★荒行を終へたる僧や春衣/廣田洋一
僧の荒行は、天台宗や日蓮宗では、非常に過酷な修行があると聞く。それほどでなくても、荒行を修めて今や春衣を軽やかに纏っている僧は、よくわからないが、悟りの境地へ近づいて、心身軽やかなのではと想像する。「春衣」がいい。(高橋正子)
【銅賞/3句】
★紅梅にこたえて青し肥後の空/多田有花
肥後熊本の空は、南国だけに、青空の青も濃く力強いと想像できる。紅梅の色にこたえ、紅梅を引き立て見事に生かしている。「肥後の空」なれば、こその明るい紅梅だ。(高橋正子)
★白雲の流れミモザの黄の真上/柳原美知子
早春の花のミモザは、ミモザ色と言われる柔らかな黄色の小さな花が集まって咲く。ふわふわした感じのミモザの花は、白い雲とよく似合う。取り合わせの妙、洒落た配色に、早春の心も弾む。(高橋正子)
★卒業歌響く学び舎鳩が舞う/西村友宏
卒業式が行われ、卒業の歌が響く中、学び舎の空に鳩が放され、卒業が祝われる。中村草田男の句に「校塔に鳩多き日や卒業す」があるが、作者は初心者で、この句を知らないと思うが、今もこういう光景があって、昭和の時代にもどったような気持になった。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
★青き踏む雀ちりぢりわが先を/高橋正子
下萌えの瑞々しい緑を踏み歩く心地よさ、虫を啄みながら嬉々として先を歩く雀たちの様子が目に浮かびます。一斉に飛び立つ雀を仰げば青空に囀りが聞こえてきます。(柳原美知子)
★遅き日や暮れて賑わう一輪車/桑本栄太郎
車の通りがほとんどない路地で子供たちが一輪車で遊んでいるのを見ることがあります。夕暮れ時が遅くなってきたこれからの季節、子どもたちの楽しい声が響きます。 (多田有花)
★荒行を終へたる僧や春衣/廣田洋一
★卒業歌響く学び舎鳩が舞う/西村友宏
★ふくらんで蕾赤あかチューリップ/高橋句美子
★青き踏む薬袋を提げていて/高橋正子
★白雲の流れミモザの黄の真上/柳原美知子
【高橋正子特選/7句】
★空き缶の音弾ませる春の風/西村友宏
春の風と言う春風駘蕩たるのどかな春の風に空き缶のリズム的に転がって行く素敵な景を堪能させて頂きました。有難う御座います。 (小口泰與)
★遅き日や暮れて賑わう一輪車/桑本栄太郎
★紅梅にこたえて青し肥後の空/多田有花
★荒行を終へたる僧や春衣/廣田洋一
★卒業歌響く学び舎鳩が舞う/西村友宏
★ふくらんで蕾赤あかチューリップ/高橋句美子
★白雲の流れミモザの黄の真上/柳原美知子
【入選/12句】
★古草の雨に明るき今朝の土手/桑本栄太郎
春の特徴はなんといってもその明るさ。雨でも風でも明るいものです。土手に降る雨さえも春の明るさに輝きます。 (多田有花)
★残照のらせん階段春の猫/小口泰與
恋猫の泣き声にらせん階段を見上げると、残照の中にらせんの曲線と丸みのある猫のフォルムが浮かび上がります。写真を見るように美しい情景ですね。 (柳原美知子)
★春の園そぞろ歩きの人あまた/多田有花
明るい日差しの中、花々が咲き香る春の公園には、だれもが誘われるようにそぞろ歩きし、しばしの安らぎのひと時を楽しみます。春爛漫を迎えた美しい園が目に浮かびます。 (柳原美知子)
★春風が涙の跡をそっと撫で/高橋秀之
涙を流した理由は知らないが、春風がやさしくあたり、涙の跡を撫でて行った優しさがよく分かる。さぞかし癒されたことでしょう。(廣田洋一)
★日を合わす桜だよりを眺めつつ/高橋秀之
日毎に暖かくなり、あちこちの桜の開花予想も出始めました。句を一読して、お花見の期日の相談と分かりますが、桜の開花は気温と場所によって遅速があり、丁度良いお花見の時季への心弾む相談です。(桑本栄太郎)
★顔洗い眠気眼の春の朝/西村友宏
正に今の時期の朝の気持ちです。理屈抜きで共感します。(高橋秀之)
★砂糖淡く色とりどりの雛あられ/高橋句美子
雛あられは優しく淡い色彩です。それだけでも楽しい気分になりますが、雛人形、緋毛氈、白酒などとの色の取り合わせもいいものです。 (多田有花)
★梅の香の日差しをくぐり身も軽く/柳原美知子
明るい日差しが降り注ぐ梅林でしょうか。梅の香りに満ちたその日差しのなかを行けば、身も心も軽やかになる思いです。 (多田有花)
★山茱萸の花や虚空の星の数/小口泰與
★白鷺の見つめる先の水温む/多田有花
★新幹線ふたりで見る窓春の富士/高橋秀之
★潮引いて舟底あらわ春の河口/柳原美知子
■選者詠/高橋信之
★春過ぎゆくや寺苑の樹々の生きいきと
★夏へ移る草木の静かなる寺苑
★空を見て地と見て夏近きと思う
■選者詠/高橋正子
★下萌えを括るごとくにロープ柵/高橋正子
★青き踏む薬袋を提げていて/高橋正子
★青き踏む雀ちりぢりわが先を/高橋正子
■互選高点句
●最高点(6点)
★青き踏む雀ちりぢりわが先を/高橋正子
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
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