■花冠月例句会■

俳句雑誌「花冠」の月例ネット句会のためのブログ 管理 高橋句美子・西村友宏

■第17回(15夜)フェイスブック句会入賞発表■

2012-09-30 21:43:48 | 日記

■第17回フェイスブック句会■
■入賞発表/2012年9月30日■

【金賞】
★耕せし畝照らしけり満月光/古田敬二
「耕し」は、美しいまでの人間の作業。昼間丁寧に耕された畝を満月が照らす。照らされた畑の畝が生むそれぞれの影もまた美しい。(高橋正子)

【銀賞】
★直と立つ嵐の前の曼珠沙華/矢野文彦
曼珠沙華は、葉もなく茎がすっと伸びている。嵐の前には、その茎が「直と立つ」。それは台風を待つ作者の神妙な心理でもあろう。(高橋正子)

【銅賞】
★家々は灯りに集い無月かな/黒谷光子
満月のでない夜の暗さに、家々は灯りともし集っている。ましてや、今夜の十五夜は台風17号の来襲で、台風が過ぎるのを待たねばならない。そういうときこそ、灯りに集う家族のほのぼのとした温かさに和む。(高橋正子)

★水滴に秋の日かがやきミント摘む/高橋句美子
ミントの葉に如露の水か、水滴が付いて、それを静かな秋の日が輝かせている。そのきれいな水滴の付いたミントの葉を摘むゆっくりとそして爽やかな時間が若々しく詠まれている。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★家々は灯りに集い無月かな/黒谷 光子
生憎のお天気で月も姿を現しません。その空の下で、家々の灯かりは静かに寄り添い瞬いています。名月に思いを残しながら、人々との繋がりを優しく見守る作者の優しさ。(小西 宏)
残念ながら名月は望めない夜。しかし十五夜は十五夜。特別な夜だ。それぞれの家の灯りの下に十五夜の団欒が見える。(安藤 智久)

★騎馬戦の勝者は白組天高し/祝 恵子
ガッツポーズの拳の先に、広がる空が勝者のために在るようだ。(増田 泰造)

★宵待ちに流れ積み来る野分雲/小西 宏
十五夜の宵を待っているが、台風の接近に伴って野分雲がどんどん流れて、月が見えない夜空になっていく。流れ積み来るに残念に思う気持ちが感じられます。 (高橋秀之)

★うす雲の北へ北へと月待てば/高橋正子
列島を通過する台風の中での今宵の十五夜。「北へ北へ」と流れる雲の動きに、今日の夜空がありありと目に浮かびます。そのうす雲の流れる一刻に、十五夜の月を待ち望むお気持ちが込められているようです。 (藤田洋子)

★虫の音に風に包まれ月仰ぐ/藤田裕子
澄んだ虫の音も秋の夜風も快く、月を仰ぐひととき。そのひとときに身を置く作者の充実さが伝わり、心豊かな日本の秋を感じさせていただきました。 (藤田洋子)

★水滴に秋の日かがやきミント摘む/高橋句美子
★直と立つ嵐の前の曼珠沙華/矢野 文彦
★耕せし畝照らしけり満月光/古田 敬二

【高橋正子特選/8句】
★山の陰山に映りて澄み渡る/安藤 智久
山々が連なっている様子が目に浮かぶ。夏とは違う秋の山の静けさ、清々しさを感じる。(高橋 句美子)

★レモンの輪一つ新涼のティーカップ/藤田 洋子
ティーカップに添えられた輪切りのレモン、涼しくなったこの時季、一層爽やかさを覚えます。 (藤田裕子)
新涼の日の爽やかな気分が嬉しいです。テイーカップの中に浮かべた薄切りのレモンが目に浮ぶようです。(河野啓一)

★水滴に秋の日かがやきミント摘む/高橋句美子
雨上がりの朝、ミントを摘む楽しさ。微かにミントの香りがして、爽やかな秋の一日が思われます。以前ミントを庭に植えた記憶が甦りました。(河野啓一)

★虫の音に風に包まれ月仰ぐ/藤田裕子
澄んだ虫の音も秋の夜風も快く、月を仰ぐひととき。そのひとときに身を置く作者の充実さが伝わり、心豊かな日本の秋を感じさせていただきました。 (藤田洋子)

★幾筋の日矢の射したる花野かな/小口 泰與
雲を抜けて射す日矢が花野を輝かせる。広やかで美しい景色に日本の秋を思う。(高橋正子)

★秋の蝶にわかに風の攫ひけり/古賀一弘
気ままな秋風に蝶が攫われるように飛ぶ。透明感のある句だが、秋のさみしさ、命のあわれをふっと感じる。(高橋正子)

★家々は灯りに集い無月かな/黒谷 光子
★耕せし畝照らしけり満月光/古田 敬二

【入選/10句】
★濡れそぼつ夜道灯りに萩の花/桑本 栄太郎
雨で濡れている夜道を照らす明かりが道端の萩の花も照らし出し、くっきりと浮かび上がらせています。秋もいよいよ深まってきた感が醸し出されています。(高橋 秀之)

★相模湾暮れて刻々月高し/小川 和子
高台から湾全体を眺めておられるのでしょうか。昇っていく月の速さは地球が回転していく速さです。のびやかな大きな景色を目にし、昇っていく月の速さを堪能されている印象を受けます。(多田 有花)
相模湾を見下ろす丘で月の出を待っているのでしょうか。早い日暮れになると東の空に月が昇ってくる。刻々とその位置が変わる。おだやかな海の向こうに上がる月が見える句。(古田 敬二)

★高潮の波の飛沫きて無月かな/佃 康水
西日本から東日本の太平洋沿岸には台風の影響で高潮になり、岸に打ち付ける波の飛沫も高く打ちあがります。楽しみにしていた十五夜の月の変わりに高潮の飛沫を見る作者の気持ちは残念だったことでしょう。 (高橋秀之)

★なだらかな播磨の山の良夜かな/多田 有花
それまでの強風・大雨に変わりなだらかな播磨の山と透き通る良夜。台風が過ぎ、播磨の山の稜線もはっきりと見えたことでしょう。 (高橋秀之)
「だらかな」がよく効いて、リズムもよく、読んでほのぼのとした良夜が思われます。(小川 和子)

★壇ノ浦何か侘びしい秋の潮/迫田 和代
壇ノ浦と言えば源平最後の合戦が繰り広げられ、平家は敗れ滅んだと言い伝えられています。その事と連想し何か寂しい秋の潮と詠まれた気持が良く伝わります。(佃 康水)
秋の潮をみると何となく、壇ノ浦の悲しい物語が胸の内に浮かんでくるのでしょうか。 (祝恵子)

★風強し木々は唸りて月の雨/高橋 秀之
久々の強い雨風が木々を唸らして通り過ぎて行きましたね。 (祝恵子)

★颱風の宵の句会の淡々と/川名ますみ
日本列島は少なからず雨、風の台風に見舞われましたが、私達俳友の仲間は冷静に受け止め淡々と句会に参加させて頂きました。何に対しても冷静に受け止める事の大切さを学んだ様に思います。(佃 康水)

★ロシアより帰郷の子に先ず炊く新米/柳原美知子 
ロシア公演を終えられ帰郷された息子さんに、新米で労われた温かいお気持ちが滲みでています。(藤田裕子)

★月今宵甍の波も銀の色/河野 啓一
満月に照らされた屋根の甍が銀色に輝き、いつも見る色合いと違って、とても幻想的で美しく見えます。 (藤田裕子)

★狭庭にも片明り射す今日の月/増田 泰造
我が家の庭にも満月の明りが差し込んでくれています。満月に拝みたくなるような、有難いお気持ちになられたことと思います。 (藤田裕子)


■選者詠/高橋信之
★竹の一山大きく揺れて台風来る
暴風に煽られる竹林、その一山を大きく揺さぶるほどの凄さに、来る台風への驚きと緊張感が走ります。荒々しくも壮大な風景に、自然の脅威、自然の絶大なるエネルギーを感じずにはいられません。(藤田洋子)

★森を歩く新涼の土の匂い
残暑が長かった今年でした。それでもお彼岸を過ぎ、季節ははっきり変わりました。自然の中へ入るとそれがいっそうはっきりわかります。「土の匂い」は自然全体が発する新しい季節の匂いです。 (多田有花)

★無月という静けさの中に居る

■選者詠/高橋正子
★うす雲の北へ北へと月待てば
昨日の句会の時間経過を思いました。夕刻に台風が知多半島周辺に上陸。空模様を気にしながら句会のことを思っておられる様子が伝わってきます。 (多田有花)

★古書街をもどり無月の書に浸る
横浜は台風の影響で無月となったようですね。台風は台風で、無月は無月でそれを受け止め本に親しむひとときとされる。静かで落ち着いた生活を思います。 (多田有花)

★芒の穂むこうの闇のつややかに

■互選高点句
●最高点(7点)
★家々は灯りに集い無月かな/黒谷光子

●次点(6点)
★古書街をもどり無月の書に浸る/高橋正子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

▼コメントのない句にコメントをお願いします。

コメント (17)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

■第16回(結婚祝い)フェイスブック句会入賞発表■

2012-09-08 13:21:46 | 日記
■第16回フェイスブック句会■
■入賞発表/2012年9月9日■

【金賞】
★朝の田に光こぼしつ赤とんぼ/柳原美知子
朝の赤とんぼは、ことにきらきらと輝いている。「光こぼし」は的確な描写。朝の田の清々しさと、生き生きと飛ぶ赤とんぼが目に明らかだ。(高橋正子)

【銀賞】
★窓越しの鳴き澄む虫と夜を分つ/藤田 洋子
「夜を分かつ」によって、窓の外の虫音と内とが繋がって、しっとりと落ち着いた虫の夜となっている。「鳴き澄む」虫の声が透徹している。(高橋正子)

【銅賞】
★虫の音を聞くころとなり新所帯/多田 有花
結婚後の新生活も虫の音を聞くころになると落ち着いてきた。虫の音は、静かで落ち着いた生活の中でこそ聞きたい。時の経過がさりげなく表現されている。(高橋正子)

★メガネを外し決勝戦の土俵へと/安藤 智久
優勝を懸けた決勝戦の相撲。メガネがあっては、邪魔となる。「メガネを外して」はアマチュア相撲らしくユーモアがある。決勝戦の結果は如何に。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★虫の音を聞くころとなり新所帯/多田 有花
新所帯に虫の音、いいですね。新しい家庭もゆっくりと落ち着いて​きて、ふと気がつけば、そこにはもう虫の音が届く季節になってい​る。初々しさを保ちながらも、自然や世間に囲まれて豊かで静かな​暮らしが育っていく。(小西 宏)

★小鳥来る二人の未来幸あれと/河野 啓一
若い夫婦の未来は限りなく明るく希望に満ちています。小鳥の鳴き​声もお二人をお祝いしているようです。(井上 治代)

★まっすぐに伸びる狗尾草の影/高橋 秀之
「まっすぐに」伸びた狗尾草、その影のありようが、秋の初めの季節感を定かにとらえていると思います。爽やかな秋の風も感じさせてくれます。(藤田洋子)

★新涼や若き夫婦に空広し/井上 治代
毎年巡り来る秋の広い空も、若き新夫婦にとっては格別なことでしょう。秋の初めの涼しさも、また、二人の門出を感じさせてくれます。 (高橋秀之)

★朝の田に光こぼしつ赤とんぼ/柳原美知子
朝の田なればこそ、赤とんぼがいっそう鮮やかに目に映ります。澄んだ朝の空気に、「光こぼしつ」軽やかに飛ぶ赤とんぼの、繊細で清らかないのちを感じさせていただきました。(藤田洋子)
ほんのりと色づいた稲穂の波にホバーリングする赤とんぼの爽やかな息遣い。朝の清新な気とそこに零れる秋の色合いと。 (小西 宏)

★わけ合える二人にいよよ天高し/佃 康水
二年前でしたか、智久さまの「かき氷分け合う海の眩しさに」の御​句から、まばゆいまでに優しいお二人の姿を想いました。それから​、幾つかの季節を経て今、ご結婚をお祝いする句会。「わけ合える​二人」が、澄み渡る秋空のもと、なお清らかに想われます。 (川名ますみ)
喜びも悲しみもわけ合い、二人三脚でこれから歩んでいかれますお二人に、秋空は温かく祝福し前途に希望をもたらし高く高く広がっています。 (藤田裕子)

★山葵田の幾百枚が新涼に/高橋 正子
今迄は残暑の中の涼しさは有ったものの一時の涼しさを感じるもの。新涼は本格的な涼しさで、心地良い嬉しさが有る。人生の中でかけがえの無い奥様を迎えられ、幾百枚の山葵田のお仕事にも気合の入る喜びが有り、山葵田もこの新涼に活き活きと見えて参ります。 (佃 康水)

★メガネを外し決勝戦の土俵へと/安藤 智久
優勝を懸けた決勝戦の相撲。メガネがあっては、邪魔となる。「メガネを外して」はアマチュア相撲らしくユーモアがある。決勝戦の結果は如何に。(高橋正子)

【高橋正子特選/8句】
★堂裏の寸土を満たし花茗荷/黒谷 光子
ここでは茗荷の子と思われるが、秋めいて朝夕涼しくなれば茗荷の​花は咲いて来る。澄まし汁、薬味、漬物にと用途は多く主婦にとっ​ては嬉しい季節の一品である。「寸土を満たす」との措辞に、日々​の生活の中にも季節の移ろいの発見と、狭い国土を豊かに利用して​来た日本古来の喜びが此処にはある。美しい日本語である。(桑本 栄太郎)

★窓越しの鳴き澄む虫と夜を分つ/藤田 洋子
夜長に、好きな読書や趣味などしながら、ふと窓越から聞こえくる​虫。「夜を分かつ」虫の音を生活の中にも取り入れていて、素敵な​句です。(祝 恵子)
「夜を分つ」に余韻を残すとともに、きっぱりとした決断も感じられます。「鳴き澄む虫」に心傾けながら「窓越し」に心を交わす清清しさ。 (小西 宏)
秋の夜は夏と違い窓を開けているので、窓越しに鳴く虫の音も澄んだ声で聞こえてきます。そんな虫の音と夜を過ごす、秋の風情はのどかな楽しいひとときです。 (高橋秀之)

★虫の音を聞くころとなり新所帯/多田 有花
これまでは一人で住んでいた住まいが、新婚夫婦の住まいとなり虫の音も二人で聞くようになりました。新所帯となり虫の音も楽しく聞こえることでしょう。 (高橋秀之)

★峠まで来し秋蝶の高みへと/小川 和子
ちょっとした山を歩くと、こんなところまでと思う高みにまで蝶が飛んできています。そして更にも登り続けるる気配。秋の日を思えば、蝶にとっては大冒険であったでしょうのに。ようやく登ってきた自分自身ともども、感慨ひとしおです。 (小西 宏)

★秋の虹朝輝かせ婚祝う/藤田 裕子
お二人の結婚を祝い大きな虹がかかりました。虹は未来へのかけ橋となり、朝空に輝いています。大いなる自然に抱かれている幸せに感謝したいと思います。 (井上治代)

★邯鄲や塵箱さへも真っ新よ/小口 泰與
新所帯の道具はどれも新しいものばかり。邯鄲さえ祝ってくれているようです。(祝恵子)

★メガネを外し決勝戦の土俵へと/安藤 智久
優勝を懸けた決勝戦の相撲。メガネがあっては、邪魔となる。「メガネを外して」はアマチュア相撲らしくユーモアがある。決勝戦の結果は如何に。(高橋正子)

★秋水の途ぎれぬ流れ山葵田へ/高橋 信之
山葵田へと注がれる、曇りのない秋の水がことさら清く澄み通り、清爽の感を覚えます。美しく秋気澄む山葵田に心洗われ、お二人への心を込めた祝句と思います。(藤田洋子)

【入選/18句】
★虫の音の重なり合うて夜の更ける/黒谷 光子
虫の音色にはそれぞれ風情があり、鳴いている所・時・数によって​も趣が違う。その虫の鳴き競う音色を聞いていると夜の更けるのも​忘れてしまうほどですね。趣があり素敵な句だと思います。(小口 泰與)

★また一つ木槿咲く朝婚祝う/藤田 洋子
夏の頃から次々と花を咲かせて楽しませてくれる木槿。一日花です​から、毎朝新しい花が咲きますね。「また一つ」「咲く朝」に、ご​結婚されたお二方へのやさしい祝意が、静かに温かく伝わってきます。(小川 和子)

★鉦叩静かな夜の仏間にて/祝 恵子
夜もだいぶ更けてきた頃、仏間に居ますと、どこからか鉦叩の声が聞こえてきました。リズムよく音を生み出し、聞いていて楽しくなります。 (藤田裕子)

★清流のふたりの散策沢桔梗/桑本 栄太郎
さらさらと流れる川のほとりを二人で散策するのは楽しく、岸辺の沢桔梗も可憐な花を咲かせています。ゆったりとした時間が流れていき、幸せなひとときです。(井上治代)

★ゆく路は富士も山葵も水も澄み/川名 ますみ
秋の澄んだ空気が、富士も山葵を、そして水までもが澄んできれい​に見えます。秋になり気持ちのよい季節を迎えた喜びが周りのもの​が澄んで見えることで心地よく感じられます。(高橋 秀之)
新生活の始まったお二人はこれから長い道程を歩んで行かれますが、日本一の富士山も彼のご職業である山葵田もそしていのちに一番大事な水も美しく澄み渡っている。新婚夫婦へのお祝いと応援のお気持が良く現われて居る様に思います。 (佃 康水)

★水の秋スカイツリーの影映し/渋谷洋介
満々と水をたたえた川にスカイツリーの影が映り、秋風が爽やかに感じられます。隅田川でしょうか、大きな景が浮かんでまいります。 (藤田裕子)
涼しげな風と共に、川岸や川船などからもスカイツリーを眺め、水面には影をうつしています。名所が増えましたね。(祝恵子)

★彩雲のやがて暮れゆき虫の声/小西 宏
美しい色の雲も夕暮れになると、しだいに闇に包まれてゆきます。すると、どこからか虫の声が聞こえはじめ、美しい音楽を奏でてくれます。心安らぐ情景です。(井上治代)

★初秋や檜の樋の水美味し/古田 敬二
秋の山から流れ来た清水を受けてある檜の樋、飲めば一息つける美味さである。(祝恵子)

★この良き日総て明るい虹の橋/迫田 和代
ご結婚と言うこの良き日、目に映るもの総てが明るく見えて来る。七色の美しい虹の橋をお二人で渡りたい気持でしょう。これからのご多幸を句友の皆さんと共にお祈り申上げたい句です。 (佃 康水)

★サイロ立つ丘一面に朝の露/佃 康水
サイロ立つ牧場の朝の清々しさに、丘一面の草に宿る露の美しさ、​格別の秋のさやけさに心澄む思いがしました。(藤田 洋子)

★野に光る鍬の切っ先秋アカネ/古田 敬二 
土を打つ鍬の切っ先も光り辺り​には赤とんぼも飛んでいます。蕪や大根を撒く時期になりましたが​、畑仕事をとても楽しんでしていらっしゃる様子が伝わります。赤​とんぼも応援しているようです。(黒谷 光子)

★竹林の古びし句碑やつづれさせ/渋谷洋介
薄暗い竹林に古い句碑がある。その措辞だけでも、何となく侘び​,寂びを感じますが、こおろぎの鳴く声に更に秋の風情が高まりま​す。日中はまだまだ残暑が続きますが、もう秋ですね。(佃 康水)

★秋の虹消えゆく沖へ出漁す/柳原美知子 
夜明けの虹が大きく孤を描いて空​に消えて行く頃、エンジンの音を響かせ漁船が沖へ出て行く。勇壮​で大きな景が目に浮かんできます。(河野 啓一)

★虫の夜につぎつぎ祝いの句の届く/安藤 智久
昨夜の様子そのままですね。「俳句は挨拶」という言葉が思い出さ​れます。その場の情景を的確に詠まれると同時に、素晴らしいお祝いの挨拶​句になっています。(多田 有花)

★虫の音の重なり合うて夜の更ける/黒谷 光子
虫の音色にはそれぞれ風情があり、鳴いている所・時・数によって​も趣が違う。その虫の鳴き競う音色を聞いていると夜の更けるのも​忘れてしまうほどですね。趣があり素敵な句だと思います。(小口 泰與)

★秋の星瞬く点を結んでみる/高橋句美子
都会で秋でも見える星座といえば、北斗七星やカシオペア、上手くいけばはくちょう座。そんな秋の星座を見つけて星と星を結んで形を作り、星座と確認する。静かな夜の思索のひと時を思わせる句である。(古田敬二)


■選者詠/高橋信之
★酔芙蓉に空一枚の透きいて青し
淡紅色の酔芙蓉、その上に広がる​真っ青な空、澄んだ空気が感じられ爽やかな光景が浮かんでまいり​ます。(藤田裕子)

★秋水の途ぎれぬ流れ山葵田へ
山葵田へと注がれる、曇りのない秋の水がことさら清く澄み通り、清爽の感を覚えます。美しく秋気澄む山葵田に心洗われ、お二人への心を込めた祝句と思います。(藤田洋子)

★秋蝉鳴く朝日の低く差し来れば
夜が明けると蝉の声が聞こえます。しかし、秋の深まりとともにしだいに細くなっています。そこに差す朝日の角度もまさに秋そのもの、空気にはさわやかさが加わっています。(多田有花)

■選者詠/高橋正子
★山葵田の幾百枚が新涼に
今迄は残暑の中の涼しさは有ったものの一時の涼しさを感じるもの。新涼は本格的な涼しさで、心地良い嬉しさが有る。人生の中でかけがえの無い奥様を迎えられ、幾百枚の山葵田のお仕事にも気合の入る喜びが有り、山葵田もこの新涼に活き活きと見えて参ります。 (佃 康水)

★一段と空澄み咲きつぐ秋海棠/高橋正子
涼しさが増し、空が高くなり始める頃です。可憐な秋海棠の花がうつむきながら咲くのもこのころ、空の青さにピンクが映えます。(多田有花)

★深まれる秋の真中の酔芙蓉/高橋正子
酔芙蓉は芙蓉の一種です。咲き始めは真っ白ですが、時間の経過と共にしだいに紅色を帯びてきます。その様子がお酒に酔っているようだとして、酔芙蓉の名になりました。アルコールに弱い人が多い日本ならではの名づけと思います。この花が咲き始めると、秋は本番です。(多田有花)


■互選高点句
●最高点(7点)
★秋水の途ぎれぬ流れ山葵田へ/高橋 信之

●次点(6点)
★ゆく路は富士も山葵も水も澄み/川名 ますみ

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
コメント (21)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする