■3月月例ネット句会/入賞発表
■2023年3月例ネット句会■
■入賞発表/2023年3月13日
【金賞】
37.うららかに東京駅舎人流れ/髙橋句美子
日本の玄関口、東京駅。その丸の内駅舎は2012年に復元保存され、創建当時の姿になっている。日本の近代化の数々の歴史を経験し、日本を代表するビジネス街とともに発展してきた。その駅舎は今、日差しを浴びてうららかに、ビシネス街へ向かう人々も春の流れの一つとなっている。「東京駅」でなく、「東京駅舎」としたところ、「うららかに」の季語が効いて、駘蕩とした首都の春が詠まれている。。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
19.春寒し掛けた布団をさらに寄せ/吉田 晃
春はいまだ寒い。布団をかけていながらも、首すじあたりに寒さが忍び入る。掛けている布団をさらに寄せて体温を逃さないように。春とは名ばかりである。(髙橋正子)
25.旅立ちの春改札に手を振りぬ/多田有花
この句は十七字音ではあるが、五・七・五となっていない。「旅立ちの春/改札に手を振りぬ」となり、切り方に自由さがある。従って音律がないわけではないが、独特の音律となっている。つまりは意味が重視されている。旅立って行く者をホームではなく、改札で手を振って見送った。若々しい明るい見送りがいい。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
04.ひと畝の早やも咲きたる茎立菜/桑本栄太郎
しなやかなリズムの句で、一気に読みくだせるよさがある。小さい菜園ではこのような光景が見られる。あっという間に茎立つ菜に、進む春のはやさに、驚きがある。(髙橋正子)
13.朧月書斎の窓の磨硝子/廣田洋一
「朧月」と「磨硝子」の取り合せで大正ロマンのような情感のある句になっている。場所は書斎と明示され、これもいろいろ読み手の想像で楽しく鑑賞できる良さがある。(髙橋正子)
24.菜の花の帯の2本を抜き水へ/祝 恵子
店で売られている菜の花は、茎を半分に折って帯で巻かれている。解けば少し萎れた感じがする。料理するには水に放し、水を吸わせてから使う。「菜の花」と「水」の取り合せが生き生きと、春らしい。(髙橋正子)
【髙橋信之特選/7句】
のちほど。
【髙橋正子特選/7句】
07.湖へ径まっすぐやつくつくし/小口泰與
湖の水面のきらめき、まっすぐに伸びる径の両側につんつんと日差しを浴びて育つ土筆。うららかな光と風に包まれて至福の春のひとときが感じられます。 (柳原美知子)
19.春寒し掛けた布団をさらに寄せ/吉田 晃
朝の何気ない日常から、まだまだ寒い春の気候や様子がよく伝わってきます。(西村友宏)
25.旅立ちの春改札に手を振りぬ/多田有花
この季節は色々な旅立ちがある。新しい社会へ向けて旅立ち、巣立ってゆくのであるか、その分岐点が「改札」なのだ。見送る人と巣立つ人、改札口には様々なドラマがある。手を振る初々しい姿が想像される。 (吉田 晃)
37.うららかに東京駅舎人流れ/髙橋句美子
春の陽光の差す明るい季節となり、東京駅舎を歩く人たちの足取りも軽くなったよう。都会の日々の生活の中にも季節の変化を感じ、豊かな感性で楽しさを見つけられているのは素敵です。 (柳原美知子)
04.ひと畝の早やも咲きたる茎立菜/桑本栄太郎
13.朧月書斎の窓の磨硝子/廣田洋一
24.菜の花の帯の2本を抜き水へ/祝 恵子
【入選/17句】
01.白梅を通う人みな麗しき/弓削和人
梅は早春の寒気の中で咲き始めます。白梅の花の白さには凛とした気品を感じます。そこへ観梅に訪れた人もみな背筋を伸ばして凛とした雰囲気です。(多田有花)
03.春の湖白鳥翔てりと聞くばかり/弓削和人
いつの間にか白鳥がいなくなった湖。静かに春の日差しに煌めいている。北国へ渡っていったとは聞くけれど、見届けたかった。白鳥へのやさしい思いとさびしさがうかがえます。 (柳原美知子)
05.歩みゆく人立ち止まる初音かな/桑本栄太郎
初音を聞いたときの人の動きがよくわかります。「あれ?もしや」と動作をとめて耳を澄まします。そしてもう一声聞こえてくるのを待ちます。ときめくとはこういう感覚か、と思います。 (多田有花)
10.おはようの朝の挨拶受験の日/高橋秀之
受験生の緊張した受験当日の朝、挨拶の第一声により、親しき友達でもライバルになるし、また受験を共に戦う戦友にも似た景が想像されます。 (弓削和人)
12.今日は右明日は左春の風/高橋秀之
春の風は気まぐれです。そよ吹くやわらかいものが翌日には驚くような冷たいものに変わったりします。吹く方向も、南、北と変わり移り気な人の心によくたとえられます。(多田有花)
16.藍色の空に滲むは春満月/友田 修
夕暮れ時が遅くなりすでに夜にも寒さを感じなくなったころ、藍色の空に満月が昇ってきました。湿気を帯びた春の空気に月の輪郭が滲んでいます。春らしいゆったりとした伸びやかな雰囲気が伝わってきます。 (多田有花)
20.麦味噌の汁にたっぷり春野菜/吉田 晃
美味しそうです。麦みそは伝統的に中国・四国・九州といった暖かい地方で良く作られたあっさりとした甘口の味噌。冬の身体を温める類の汁物とは異なり春の野菜の味を堪能するための味噌汁です。 (多田有花)
21.絵馬古き堂訪う人の梅見かな/吉田 晃
江戸時代からの絵馬が残るような歴史あるお堂。そこの梅園もまた歴史があります。紅梅、白梅咲きそろう中を参拝を兼ねて梅見に訪れる人々の姿は古い時代からずっと続いているのでしょう。(多田有花)
22.かわいいね屈む親子のチューリップ/祝 恵子
永かった冬の寒さも和らぎ、漸く春を迎えました。花壇であろうか?それとも鉢植えのチューリップであろうか?愛らしい花が咲き、親子で屈み眺めている幼子が想われます。 (桑本栄太郎)
道端か、野原か通りがけにチューリップを見つけた親子が、可愛いねと言って屈んで愛でる様が良く見える。春らしい句。 (廣田洋一)
27.花の香の部屋に溢れて春の朝/多田有花
室内に活けている花の香でしょうか。溢れるという表現に花の多さを感じます。 (高橋秀之)
28.紅白梅樹影踏んでは香を吸って/柳原美知子
観梅の風景を見事に詠まれています。紅白梅の花の美しさ、梅の香り、日差しでできた梅の影、そこでのひとときの楽しさそれらをすべてが感じられます。 (多田有花)
35.寝そべって河津桜と川の音/西村友宏
「寝そべって」からうららかな春の温かさが感じられ、その上、青い空さえ想像できます。川の音を聞きながら河津桜を寝そべって眺めるおだやかな休日のゆっくりとした時間を感じます。 (友田 修)
川の流れと早咲きの河津桜、寝そべって音を聞く、それに菜の花があれば最高ですね。 (祝 恵子)
39.蝋梅の透けし青空屋根を越え/髙橋句美子
蝋梅を透かしているように広がる青空の雄大さが屋根を超えての下の句から感じられます。 (高橋秀之)
08.全山を震わす声や昼蛙/小口泰與
12.今日は右明日は左春の風/高橋秀之
14.観音の柔和な顔や玉縄桜/廣田洋一
15.池巡る橋桁覆ふ春の泥/廣田洋一
30.雛分け愛猫座してすまし顔/柳原美知子
■選者詠/髙橋信之
のちほど。
■選者詠/髙橋正子
31.吹く風に花を浮かせて黄水仙
深緑色の葉の間から香りのよい黄色の花を開く水仙が風に吹かれて花を浮かせるように咲いている。素晴らしい景です。 (小口泰與)
風が吹く。黄水仙の花が揺れ、浮き上がる。自然のなかのふとした情景がうららかな春の様子を伝えてくれます。 (高橋秀之)
32.春の坂旅のかばんを引き上る
春の旅行が楽しげで、鞄の重さもうれしさに変わりそうな雰囲気です。 (髙橋句美子)
33.高空の曇りて濁る花こぶし
■互選高点句
●最高点句(6点)
25.旅立ちの春改札に手を振りぬ/多田有花
集計:髙橋正子
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