■2020年月例ネット句会金賞作品/第1席発表■
2020年月例ネット句会も欠かすことなく行うことができました。ご参加ありがとう
ございました。1年のまとめとして、月例句会金賞12句の中から、好きな句をひとり
3句ずつ選んでいただきました。選には8名の方が参加されました。
結果は、8月の金賞句「朝顔のつぼみの先に明日の色/川名ますみ」が最高点の6点句と
なりました。ますみさん、おめでとうございます。明日へと希望を繋いでくれる句が
みんなの気持ちを集めて、最高点句となったことは、喜ばしく、ウィズコロナの時代
も元気を出して日々暮らしていける気持ちになりました。
新型コロナウィルスの感染が広がるなかも、日々の生活のなかに、希望や喜びや意外な
ことへの驚きなどを見つけ、句にされ、それを読んだ人の心にも明るさと元気をもたら
してくれたのは、花冠俳句のよいところではないかと思いました。日本の各地におられ
る花冠のお仲間の皆さんと長年ともに句を作って来てよかったと思っています。
お住まいの町やそれぞれの暮らしの楽しさなどを俳句を通して教えてもらえるのもネッ
ト句会ならではの楽しさと思っています。
〇月例ネット句会の金賞・銀賞・銅賞に入賞の皆様に信之先生と私の俳句はがきを送らせ
ていただきます。年明けごろ郵送したいと思います。ご笑納ください。
〇また、金賞第1席(6点/1名)、金賞次席(3点/2名)の方々には、信之先生の色紙
を送らせて頂く予定です。これも年明けごろとなります。
皆さま、ご健康に気を付けられて、よいお年をお迎えください。
2020年12月30日 主宰/高橋正子
【金賞第1席】
[8月](6点)
★朝顔のつぼみの先に明日の色/川名ますみ
「明日の色」は、実際に明日朝開く朝顔の色でもあるし、未来の色でもある。この二つのことを思うと、朝顔のつぼみに期待と希望を抱く。「つぼみ」が漢字の「蕾」でなく、平仮名であることがいい。(高橋正子)
つぼみというのはいいものです。これから開く希望、未来、そういうものを連想させます。それらを「明日の色」とまとめられているのがいいです。 (多田有花)
今日は咲かない。今日は蕾のままで明日を待つ。明日を楽しみに待つ。そう思わせてくれる良さがいいですね。(吉田 晃)
早朝に開く朝顔、そのつぼみの先の色を想像し、朝一番の喜びを期待すると、今日の終わりを穏やかに迎えられることでしょう。その日々の積み重ねに未来があるような気がします。(柳原美知子)
明日の色というのがすごく気に入りました。朝顔は明るい色の花が多いですが、それが明日の色というと明るい未来をそこに感じます。 (高橋秀之)
何色の朝顔か。明日の朝咲く色がわずかに見える。「明日の色」と詠んだところが簡素でよい。 (古田敬二)
【金賞次席以下/高点句順】
[4月](3点)
★菜の花の背後はいつも青い空/多田有花
菜の花は、いつも青空を背景に咲いている。実際は、そうとは限らないが、一番印象的なのが、青い空を背景に咲くとき。菜の花の黄色、空の青は、明快な色彩の中にも春らしい柔らかさがあって、誰もが好きな景色だ。(高橋正子)
4月ともなれば桜や菜の花が咲き、空はいつも青空となって来ます。菜の花の黄色と青空がお互いに引き立て合って、春を謳歌しています。 (桑本栄太郎)
春になりました。大地には満面の菜の花の黄色、大空には澄み渡った青い空。何百年、何千年と繰り返してきた悠久の自然がそこにあると感じます。 (高橋秀之)
[12月](3点)
★峡の日を集めあかあか冬苺/柳原美知子
「冬苺」は、クリスマスシーズンの今店頭にでているものではない。山峡の日当たりのよいところに自生し、9月から10月ごろ白い花を咲かせ、冬に小さな赤い粒が集まった実が赤く熟れるもの。枯れがすすむなかに、宝石のようにきらめく冬苺に愛らしさとあたたかさを感じる。大切なものへの慈しみの心。(髙橋正子)
冬苺は、最も日が短くなるころ、それほど日も当たらないような場所につややかな赤い実をつけます。まるで小さな宝石を見るような思いがします。 (多田有花)
峡の田舎。日当たりの一番いい場所に苺のハウスがある。天気のいい日はビニールを上げて峡に集まる日を入れる。甘い赤が想像されます。(吉田晃)
[3月]
★突堤に若布刈るなり少年ら/多田有花
春になると若布が海岸や突堤に寄せてくる。海岸で採れなければ、突堤まで出てゆく。少年たちが若布を刈っている珍しい光景だ。家業の手伝いか、ただ楽しみの若布刈りか。少年たちは春を呼び込んでいる。(高橋正子)
若さ明るさそしてふるさとが見えていて強さも感じられます。(吉田 晃)
早春の潮の香、海の色、少年たちの生き生きした声、新たな季節の生命力が感じられ、心惹かれます。(柳原美知子)
[5月]
★風を待つヨットに海のきらきらと/多田有花
はつらつと、明るさに満ちた快い句。きらきらと輝く海へこれから乗り出そうと風を待つヨット。「風を待つヨット」に明らかな思いがあってよい。(高橋正子)
初夏の海は、太陽の光を映してきらきらとしています。帆走を待つヨットにその反射光がきらきらと差し込みます。さぁ、これから気持ちのいい海を走るぞという躍動感が伝わってきます。 (高橋秀之)
[7月]
★四肢伸ばす風よく通る夏座敷/多田有花
すっきりと曇りのない快い俳句。風がよくとおる座敷は、夏には何よりも嬉しいところ。四肢を伸ばし、全身を伸ばせば、心身ともにくつろげる。自然の風にくつろげる夏座敷は、日本の良さ。(高橋正子)
広い座敷に寝転んで四肢を伸ばす。汗ばんだ体もよく入ってくる風に涼しくなる。うらやましい句である。 (古田敬二)
[11月]
★立冬や靴音高く人が行く/古田敬二
立冬は、「秋が極まり冬の気配が立ち始める日」と説明される。立冬と聞けば、人はなんとなく無口になり、冬服の人もいる。空気が乾燥し、靴音が高く響く。「人が行く」の「人」は肌身ある人というより、客観的な「人」の意識。今日から冬が始まる景色をすっきりと詠んだ。(高橋正子)
一瞬コンクリートの舗道をハイヒールで歩くでご婦人が想われます。11月の立冬を迎える頃ともなれば日毎に空気も乾燥し、ものの音が研ぎ澄まされて来ます。立冬に相応しい景色です。 (桑本栄太郎)
[2月]
★山際のほんのり赤く春立ちぬ/桑本栄太郎
山際は空が山と接するところ。その空がほんのり赤く染まり春立つ日となった。ほんのり赤い山際がやわらかく、『枕草子』の「春はあけぼの」を思い起こさせるような句だ。京都に住まう作者ならではの句だ。(高橋正子)
春になるのはうれしいものです。日の光が日ごと強さを増し、梅が咲き始めます。正子先生のお言葉にもあるように、御句からは『枕草子』の冒頭が思い起こされます。春はあけぼの、の気持ちです。 (多田有花)
[6月]
★卯の花の白こぼれ咲く谷の水/柳原美知子
卯の花は古くから日本の詩歌などに詠まれ、初夏の風物詩となっている。山野の路傍、崖地など日当たりの良い場所に生育する。この句の卯の花は、谷水の湧くところに咲いている。白い花び
真っ白な卯の花は初夏を彩る清楚な花であり、野辺や谷間の何処へ行っても咲き初めます。何処か遠くに不如帰のなき声も聞こえているようです。 (桑本栄太郎)
[9月]
★水抜かれ風に真白き稲の花/吉田晃
稲の生育には、水の管理が大切とされるが、出穂後は、特にこまめな水の管理が必要と言われる。この句では、水を抜かれた田。稲の花の咲きはじめはやや黄色みを帯びているが、咲いてしまうと、白い花と言える。風に小さくちらちらと震える花は綺麗な白。稲の花言葉は、「神聖」ということだが、それにふさわしい。日本人の命を支えてきた稲の神聖さを思う。(高橋正子)
風にそよぐ稲田に真白い稲の花が咲いているのを見るとうれしいものです。水路の水音も心地よく日本の原風景を感じ、今年の豊作を祈る気持ちになります。(柳原美知子)
[10月]
★山の水たっぷり流し甘藷洗う/柳原美知子
甘藷を洗うのに山の水をたっぷりと使った。ふんだんな山の水に甘藷はつやつやとしてきて、充実の太り具合を見せてくれる。山の水も、甘藷も生きがいいのだ。(高橋正子)
今年の甘藷はよくできた。さっそく家に帰って、さて何にするか、勢いよく流れる山からの水で洗いながら考える。 (古田敬二)
[1月]
★寒梅の日暮れても紅失わず/小口泰與
寒中とは言え、日差しが少しずつ明るくなっている。日暮れても寒紅梅の紅が残り、いきいきと紅を発している。暮れ残る紅に春の気配がのぞくのである。(高橋正子)