■7月月例ネット句会/入賞発表■
■2021年7月月例ネット句会■
■入賞発表/2021年7月12日
【金賞】
10.風群れて青田を翔けてゆく軽さ/吉田 晃
「群れて」「翔けて」そして「軽さ」と風の風景が巧みに捉えられている。大きく広がる青田の風の景色の躍動感がいい。(髙橋正子)
【銀賞】
13.海峡へ夏潮水脈をきらめかす/柳原美知子
海峡へと流れる夏潮の水脈の動きが見て取れるようだ。夏潮らしく水脈がきらめいている。「きらめく」に集約された感覚がいい。(髙橋正子)
12.早苗田の水に畦行く人の影/吉田 晃
静かな観察が、早苗田の水の平らな柔らかさをよく表すことに成功している。早苗田の畦を行く人は、ただ「影」とのみ表現され、これもうまい。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
17.取り置きし朝顔の種水につけ/祝 恵子
去年の採種した朝顔。今年も蒔く準備として、発芽しやすいように種を水に浸けた。水に沈んだ種が、可愛らしくも思えるリアルさがいい。(髙橋正子)
20.青々と大空広がる梅雨晴れ間/高橋秀之
人となりを表すような大柄な句。梅雨の晴れ間は、どっしりとして、大きく広がる。単刀直入な表現が爽快。(髙橋正子)
23.木の葉揺れ一天暗く夕立来/廣田洋一
夕立が今、まさに来る様子がそのまま、リアルに表現されて、緊迫感がある。「一天暗く」に、講談の調子にあるような迫力がある。(髙橋正子)
【高橋信之特選/7句】
10.風群れて青田を翔けてゆく軽さ/吉田 晃
風がまるで少年少女のようです。笑いさんざめきながら何のくったくもなく駆けていく。青田を波打たせ通って行く風の心地よさが感じられます。(多田有花)
青々した田んぼに吹く様を「翔けて」「軽さ」と表現することで、より晴れやかな気持ちの良い光景が浮かびました。(西村友宏)
13.海峡へ夏潮水脈をきらめかす/柳原美知子
豊後水道を思い起こす。船が引く水脈が夏の光にきらめきながら九州へ伸びている。夏の海峡の逞しさが強く感じられワクワクさせてくれます。(吉田晃)
水脈のきらきらと美しい情景が夏らしいです。(髙橋句美子)
17.取り置きし朝顔の種水につけ/祝 恵子
「取り置きし」というのがいいです。朝顔を愛おしく思われる優しさが溢れています。 (多田有花)
23.木の葉揺れ一天暗く夕立来/廣田洋一
夕立の来る前、空は暗くなり風が吹き付けて来ます。木の葉がざわざわと揺れ、天が暗くなることで、すぐそこまで夕立が近づいている感触が伝わります。 (高橋秀之)
夕立がやってくる一瞬の様相を見事にとらえられています。風と空の急激な変化です。 (多田有花)
12.早苗田の水に畦行く人の影/吉田 晃
20.青々と大空広がる梅雨晴れ間/高橋秀之
31.朝焼けて草の匂いの芳しき/髙橋正子
【高橋正子選/7句】
09.ひまわりやつのる豪雨にうなだれて/多田有花
向日葵も大分おおきくなってきた。そんな時に梅雨前線が動かぬ為に、狭い地域に豪雨が襲うこととなった。その雨に向日葵もうなだれてしまった。そう言う景色をうまく詠んだと思います。(廣田洋一)
10.風群れて青田を翔けてゆく軽さ/吉田 晃
12.早苗田の水に畦行く人の影/吉田 晃
13.海峡へ夏潮水脈をきらめかす/柳原美知子
15.花南瓜濡れて咲く地を子ら登校/柳原美知子
17.取り置きし朝顔の種水につけ/祝 恵子
23.木の葉揺れ一天暗く夕立来/廣田洋一
【入選/14句】
01.糸鳴りの響く渓谷大山女/小口泰與
万緑の渓谷での山女釣りの楽しさが伝わってきます。道糸が引っ張られる音が響き、さぞかし大きな山女が釣れたことでしょう。 (柳原美知子)
大山女魚の抵抗に竿が大きくしなり、それに耐えて糸鳴りを起こす。今は疎遠になってしまったあのヒュンヒュンという糸鳴りが何とも懐かしいですね。 (吉田晃)
02.D五一の汽笛の走る夏の川/小口泰與
蒸気機関車が川沿いを走っているのか、広々とした情景が浮かんできます。蒸気機関車の走る区間も少なくなりました。貴重な瞬間です。(高橋秀之)
06.たそがれの闇に香るやまんだらげ/桑本栄太郎
喘息の薬にもなるというマンダラゲ。蒸し暑い夏の闇に香るという。曼陀羅華とは奇怪な名前ですが、ダチュラというと可愛らしく聞こえます。そんな可愛らしい香りがしたのでしょう。 (吉田晃)
08.梅雨深し雨音が夜明け連れてくる/多田有花
雨音に目覚める日々の梅雨の深さがよく表されています。豪雨の被害がこれ以上出ないことをお祈り致します。(柳原美知子)
夜中の雨が朝になっても止まない。夜明けは早いがからっとしない。まだまだ梅雨明けは来ない。そんな朝がしばらく続くのですね。 (吉田晃)
11.山門に阿吽の眼風青葉/吉田 晃
何処の寺の山門でしょう?山門に阿吽像のあるほどの名刹のようですが、かっと見開く阿吽像に青葉風が吹き以下にも爽やかな光景が想われます。 (桑本栄太郎)
14.棚田みな青田となりて空に澄む/柳原美知子
山峡の棚田は苗が伸び青青つらなる田の美しさを見事に詠いあげました。空に澄むが素敵な表現ですね。(小口泰與)
16.お待たせとメダカへ順に餌をやり/祝 恵子
人影を見ると餌をもらおうと寄ってくるメダカの群れ。きっといくつかの水槽があるのでしょう。順番に餌をやり、寄ってくるメダカを見ている様子がほほえましい一コマです。(髙橋秀之)
26.キッチンに母娘の小声梅雨の月/川名ますみ
何ともほほ笑ましい台所での母娘の話、小声がいいですね。 (祝恵子)
25.日々草今日咲くつぼみやわらかに/川名ますみ
初夏から晩秋まで次々と咲いて長く楽しませてくれる日々草。日々の開花を楽しみにつぼみを観察されている様子が伝わってきます。 (多田有花)
28.朝顔の蕾かぞえて夕支度/西村友宏
夕方の朝顔をみて、「明日の朝はいくつ花が開くのかな」と楽しみに夕飯の支度をする。これも夏の楽しみ方の一つかもしれないです。(高橋秀之)
39.紫陽花の色移りゆき淡くなる/髙橋句美子
七変化とも言われる紫陽花の色の移り変わりは、見ていて飽きないですね。淡くなって咲き終わる紫陽花の名残りを惜しむ気持が感じられます。 (柳原美知子)
18.やっと咲くカサブランカは香を放ち/祝 恵子
21.全身で感じる薫風背伸びする/高橋秀之
27.梅雨晴間ひかる舗道を踏みしめる/川名ますみ
■選者詠/高橋信之
34.扇風機見ていて西瓜食べたくなる
35.団扇あおぐことを仕事としている
36.西瓜食らうことを今日の仕事とし
■選者詠/高橋正子
32.寝そびれて遠きしじまの梅雨の星
普段あまり仰ぐことのない明け方の梅雨空。その深い静けさとはるかな星のひそかな輝きが、寝そびれて疲れた心身を癒してくれました。しっとりとした
梅雨の星空に心惹かれます。 (柳原美知子)
31.朝焼けて草の匂いの芳しき
33.みどりからみどりへ蝉の羽音す
■互選高点句
●最高点(7点)
10.風群れて青田を翔けてゆく軽さ/吉田 晃