■花冠月例句会■

俳句雑誌「花冠」の月例ネット句会のためのブログ 管理 高橋句美子・西村友宏

◆第12回(立夏)フェイスブック句会入賞発表◆

2012-05-06 16:09:52 | 日記
■立夏句会入賞発表■
■入賞発表/2012年5月7日■

【金賞】
★夏来るその青空を仰ぎおり/多田有花
詠まれているのは、青空のみ。「夏来る」青空は、それまでの空とはっきりと違っている。青空を仰ぎ、空に夏が来たことを実感する。それのみを詠んで確実な句。(高橋正子)

【銀賞】
★若葉風自転車きらり輪が廻る/藤田洋子
若葉風に吹かれ、自転車の銀輪がきらりと輝いて廻る。初夏の解放感と若々しさの溢れた句。(高橋正子)

【銅賞】
★柿若葉見上げる先の明るさよ/平田 弘
柿若葉は、黄緑色で、やわらかく明るい。見上げていると、その先の空も何もが明るい。やわらかな明るさに心が広がる思いだ。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★若葉風自転車きらり輪が廻る/藤田洋子
自転車が躍動的に動いて若葉風に呼応している様子が見えます。「自転車きらり」が素敵です。(松尾節子)

★代田見せ列島下る新幹線/高橋正子
下りの新幹線の窓に代田が広がり、満々と水を張った田に​、日本の良さ・安らぎを覚えます。(藤田裕子)

★葉桜の揺らめく影に歩をすすむ/黒谷光子
今年の桜はあっという間に開きあっという間に散って はやふさふさと葉桜です。「揺らめく影」に葉桜の豊かな 茂りとそこにあたる日差しの強さ、輝き、風のにおいまでも感じられます。(多田 有花)

★蕗群れて引けば香し野の斜面/小川和子
野の斜面に群生している蕗、緑の大きな葉が一面に広がり、その一本を引き抜くと山菜の香が漂ってきました。今年も蕗を食することができる喜びが感じられました。 (藤田裕子)

★鯉のぼり風待つときは空を見る/矢野文彦
風の無い時、鯉のぼりの尾は垂れ上を向いています。空を見ながら風を待っている鯉のぼりと、風を待っている作者と重なるようです。 (藤田裕子)

★柿若葉見上げる先の明るさよ/平田 弘
★菖蒲の根元あかく染まりて力あり/高橋正子

【高橋正子特選/7句】
★コンビニの灯があかあかと夏来る/高橋信之
夏に入ってからは遅く迄人の出入りが多くなり、店内は活気づいたかの様に煌々と明かりが灯っています。人の集まるコンビニがいち早く夏が来た事を実感させてくれます。(佃 康水)

★ゲンゲ田に吾影伸ばし夕日浴ぶ/祝 恵子
夕日が差し込むゲンゲ田がなつかしく、やさしく詠まれている。(高橋正子)

★奥利根の雪間に立ちし幟かな/小口泰與
「奥利根」が効いて生活が見える。五月の幟が立つころも、雪が残っているが、幟は色鮮やかにはためき、初夏を知らせている。(高橋正子)

★朝風を腹いっぱいに鯉幟/高橋秀之
朝風を腹いっぱいに孕んだ鯉幟が勇ましく、しかもしなやかに泳ぐ様が目に浮かぶ。(高橋正子)

★山の湯や束ねて浮ぶ菖蒲風呂/佃 康水
「束ねて浮かぶ」が写実的で​鄙の旅情を誘います。(河野啓一)

★児の作りし鯉のぼりの目空の色/藤田裕子
小さな子供達の作った鯉のぼりの目の色が空の色って大らかでいいですね。青空に泳ぐ鯉のぼりを想像し気持は既に空に泳いで居る様です。(佃 康水)

★夏来るその青空を仰ぎおり/多田有花
立夏の日になると思わず大きな空へと目が向きます。青空に確と夏の来た事を実感すると共に俳人としても画家としても心みなぎるものが有ったのではないでしょうか。(佃 康水)

【入選/17句】
★新茶汲むみどりの色香注ぎ分けて/河野啓一
新茶の色や香りを感じられ、注ぎ分ける所作まで見えてきて清々しい気持ちになります。(黒谷光子)

★木々の芽の伸びて輝く子どもの日/井上治代
木々はすべて若葉となり、その新鮮でみずみずしい木々の健やかさ​に、子どもの日へのあたたかな思いが感じとれます。(藤田洋子)

★街燈に透かすさみどり新樹冷ゆ/桑本栄太郎
夜の新樹を詠んだ新鮮さ。夜に冷えた若葉が清い。(安藤智久)

★森の辺に色重ねたる新樹かな/河野啓一
森の中に入れば沢山の樹木の色がそれぞれの色の新樹となり、競う​ように茂りだしてきた、初夏の景色です。(祝 恵子)

★空青し人住むところ柿若葉/多田有花
柿若葉が目にまぶしい季節になりました。そういえば、柿の木は街路樹にはなりませんね。「人住むところ」にあってこその柿の木であることに気づかされます。(小川和子)

★引つ詰めて立ててときめく祭髪/川名麻澄
立夏を過ぎると彼方此方の神社で夏祭りが始まる・・。粋でいなせな、はっちゃき娘のお神輿かつぎが想われ、「山本一力」描くところの江戸っ子の夏祭りが彷彿され、爽やかである。「祭髪」が効いている。(桑本 栄太郎)

★希望という芽吹き見上げて森を行く/古田敬二
木々の芽吹きは希望そのものだと思います。清澄な空気の森を歩いていくと、体の中の細胞一つ一つが活性化して、力が湧いてくるようです。(井上治代)

★夏に入り緑の炎空に向き/迫田和代 
立夏に入って一気に若葉青葉が燃え始めました。緑に燃える木立を炎に例えられ夏の勢いを表​現された力強い句です。(佃 康水)

★飾られて洋間に似合う花菖蒲/下地鉄
花菖蒲と洋間の組み合わせが新鮮に感じられます。よく考えてみれ​ば、重厚な造りの洋間にも菖蒲の花のあでやかな美しさは輝いて見​えるはずでした。(小西 宏)

★湯殿より父の呼ぶ声しょうぶの湯/桑本栄太郎
端午の節句の菖蒲湯。一緒にお風呂に入ろうと息子を呼ぶお父さん。幸せに溢れた声をおかけになられているのでしょう。 (高橋秀之)
しょうぶの湯にゆっくり入られているお父様を見守るお姿が浮かんできます。声が聞こえるぐらいの場所に控えておられる優しさを感じました。 (藤田裕子)

★葉桜の木陰を求め土手道を/迫田和代
桜が満開だったのもつかの間、あっと言う間に青々とした葉桜の季節になれました。青々としたみどりが木陰を作る葉桜に季節の移ろいだけでなく時の速さも感じます。 (高橋秀之)

★子の握る砂より零る黄の小蟹/小西 宏
海辺の砂浜で遊んでいるこどもが掬った砂の中に小さな蟹がいたのでしょう。零れた蟹をみてビックリしたのか、喜んでいるのか、こどもさんの表情が微笑ましく浮かんできます。 (高橋秀之)

★新しきジーンズを履き薫風の中へ/松尾節子
新調したジーンズをはいて颯爽と五月の街へ繰り出す。 破調ですが、勢いがいい句だと思います。(古田敬二)
新しいジーンズ、インディゴブルーに指が染まるようなジーンズでしょうか、それともストーンウォッシュされて適度に古びた雰囲気のものでしょうか、いずれにせよ、気持ちもあらたに薫風の中へ出て行かれます。(多田有花)

★湯の宿の屋根の重なり若葉山/安藤智久
一読して、井上靖の『しろばんば』の世界を思い出しました。天城や湯ヶ島の情景、そこに広がる若葉の連なり、それを眺めなが入る露天の湯、いいでしょう。(多田有花)

★立夏して海風そよぐ磯馴松/下地 鉄
夏になった、それだけであらゆる風景が新たな輝きを持つものです。明るくすべてがはっきりと見えるような思い、強い潮風に耐えて並ぶ松の形にもそれを感じておられます。 (多田有花)

★幼子の瞳きらきらカラー咲く/渋谷洋介
きっぱりと、清潔な白色のカラーの花が目に浮かぶが、それにも負けない幼子のきれいな瞳の輝きは、人を魅了する。(高橋正子)
花茎を伸ばし咲く花も茎も純白で清々しいですね。幼い子の澄んだ瞳と対比し一段とカラーの美しさが強調され目に見えるようです。(佃 康水)

★新緑やセコイヤ越しの朝の空/上島祥子
新緑のメタセコイヤが朝の空を得て、一層やわらかに目に映る。
セコイヤはメタセコイヤですか?先日牛小屋の直ぐそばにメタセコイヤの新樹が網の目の様に涼しく林立していました。その隙間の朝の空はより清々しく感じられた事でしょう。(佃 康水)

★鶯のすぐそばになき昼餉かな/古田敬二
鶯の声をすぐ傍に聞きながらとる昼餉。ゆっくりとした、のどかな時間があって、自然からいただく幸せというのもだろう。(高橋正子)
新緑に囲まれて鶯の鳴き交わす声を聞きながらの昼餉、丘の上か小高い山か或いは畑を耕しての昼餉か想像が広がります。いずれにしても自然一杯の中での昼餉さぞ美味しく戴かれたことでしょう。(佃 康水)

■選者詠/高橋信之
★牡丹の香の流れ来るそこへと歩く
何処へ向かって歩くのか。その問いに「牡丹の香の流れ来るそこ」​と明言できる、清かな志。決して強くはない牡丹の香を感じ、たん​たんと歩む道は、深遠な世界を進むようでもあります。その先に在​る、花の王たる牡丹。美しい夏が待っています。(川名ますみ)

★コンビニの灯があかあかと夏来る
夏に入ってからは遅く迄人の出入りが多くなり、店内は活気づいたかの様に煌々と明かりが灯っています。人の集まるコンビニがいち早く夏が来た事を実感させてくれます。(佃 康水)

★菖蒲湯の菖蒲が匂う安らぎに

■選者詠/高橋正子
★かまくらの牡丹に風も日も古し
史跡や社寺に富む鎌倉に咲く牡丹は白、紅、真紅、黄色、絞りなど​花の王様と呼ばれるように豊麗な花を咲かせる。古い都の景に素晴​らしく似合う花ですね。栄華の歴史を垣間見る事が出来ました。(小口泰與)

★菖蒲の根元あかく染まりて力あり
「根元あかく」は、生命の根源を見せてくれる「力あり」で嬉しい。赤子、草木の芽の赤く、などの「赤」も嬉しい赤だ。(高橋信之)

★代田見せ列島下る新幹線
下りの新幹線の窓に代田が広がり、満々と水を張った田に​、日本の良さ・安らぎを覚えます。(藤田裕子)


■互選高点句
●最高点(7点)
★若葉風自転車きらり輪が廻る/藤田洋子

●次点(5点/同点2句)
★空青し人住むところ柿若葉/多田有花
★山の湯や束ねて浮ぶ菖蒲風呂/佃 康水

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

▼コメントの無い句には、コメントをお願いします。

コメント (23)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする