■2020年10月月例ネット句会■
■入賞発表/2020年10月12日
【金賞】
16.山の水たっぷり流し甘藷洗う/柳原美知子
甘藷を洗うのに山の水をたっぷりと使った。ふんだんな山の水に甘藷はつやつやとしてきて、充実の太り具合を見せてくれる。山の水も、甘藷も生きがいいのだ。(高橋正子)
【銀賞/2句】
17.間引菜の緑とりどり今朝の皿/柳原美知子
野菜の種を蒔いたあと、芽生えれば間引き作業がある。いろいろ野菜を蒔いたので、葉の色が違う間引き菜がたくさんとれた。今朝のお菜の皿には、間引き菜のいろいろが緑の色を違えて並んでいる。間引き菜が食べれるわずかな時のうれしい食卓である。(高橋正子)
37.硝子器に挿せし木犀玄関へ/川名ますみ
木犀が硝子器に挿されると、そのいい匂いが、硝子のようにきらきらして来る。それを人を迎える玄関に置いた。その家も木犀の香に染まる。(高橋正子)
【銅賞/3句】
09.静けさやひとり歩きの星月夜/高橋秀之
ひとり歩けば、きれいな星月夜が身に沁みる。静けさがいっそう感じられる。昼間の喧噪の消えた家々の間の路地か、桟橋へつながる道か、場所は、好きなところでいい。(高橋正子)
10.新米炊く届きしばかりの炊飯器/祝 恵子
長年使った炊飯器も年季を終えて、炊飯器を新しくした。新米用というわけではないが、ちょうどうまく新米の時期になった。新しい炊飯器は、ほこらしげに新米を炊いてくれたことだろう。家族の笑顔が浮かぶ。(高橋正子)
15.軒下に日差し呼び込みつるし柿/多田有花
軒下につるし柿が吊るされると、軒下がぱっと明るくなる。軒下に日差しを呼び込んでいるように、思える。あたたかい句だ。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
10.新米炊く届きしばかりの炊飯器/祝 恵子
16.山の水たっぷり流し甘藷洗う/柳原美知子
17.間引菜の緑とりどり今朝の皿/柳原美知子
29.ぎす鳴けり草の平らを踏みおれば/高橋正子
30.赤ままを摘みて何せむ瓶に挿す/高橋正子
37.硝子器に挿せし木犀玄関へ/川名ますみ
38.木犀を挿してやさしい家になる/川名ますみ
【高橋正子特選/7句】
15.軒下に日差し呼び込みつるし柿/多田有花
軒下につるし柿を干せば明るい柿簾が出来、軒下がぱっと明るくなります。まさに秋の日差しを呼び込むようである。 (桑本栄太郎)
27.小鰯の干されて蒼き秋の浜/吉田晃
天高き快晴の秋の浜、鰯の背も青く、干されている鰯たちの姿が見えてくるようです。(多田有花)
31.銀杏の落ちしを避けてバスを待つ/髙橋句美子
イチョウの巨樹のそばにあるバス停、足元には銀杏がたくさん落ちています。それを踏まないように気を付けてバスを待っておられます。(多田有花)
09.静けさやひとり歩きの星月夜/高橋秀之
10.新米炊く届きしばかりの炊飯器/祝 恵子
16.山の水たっぷり流し甘藷洗う/柳原美知子
17.間引菜の緑とりどり今朝の皿/柳原美知子
【入選/10句】
34.高きにも地にも満開萩の花/古田敬二
満開の萩の花。白、紅、が咲き乱れていて、風も吹き抜け、幸せな一時なのでしょうね。 (祝恵子)
高きにも地にもというのがいいです。視点が多角的になって萩の特性がよく表れていると思います。 (高橋秀之)
08.一匹の秋刀魚をきれいに食べ尽くす/高橋秀之
今年はさんまが大変な不漁ときいています。秋の味覚の代表格であるのに寂しいことです。脂ののった旬のさんまはまことに美味。味わってきれいに食べつくされました。合掌。 (多田有花)
24.ひっそりと店畳みけり秋の雨/西村友宏
コロナの影響で客が来なくなった飲食店でしょうか。ひっそりと閉店する寂しさを季語が良く表わしている。(廣田洋一)
32.萩の花明るい紅を道かげに/髙橋句美子
萩は秋の七草に数えられている。紅紫色の可憐な花をひらき仲秋の頃ちりこぼれる。明るい紅を道の陰に散りひく景は素晴らしいですね。 (小口泰與)
12.ひとりごと言っては笑いいわし雲/祝 恵子
こういうこと、あるある、です。自分で自分を笑う、それも楽しいです。いわし雲の出る心地よい青空の下ならでは。(多田有花)
03.雨ながらもみづる庭となりしかな/桑本栄太郎
庭の木も紅葉が始まり、雨の中にしっとりと濡れた美しい色合いを見せてくれています。新たな季節を迎えられた喜びが感じられます。 (柳原美知子)
04.コスモスや空青青と山聳(そそ)る/小口泰與
真青な秋天の下にそよぐコスモスと稜線もくっきりと聳え立つ山。伸びやかで心地よい秋晴れの景です。 (柳原美知子)
19.霧深し車は車庫に留まれり/廣田洋一
21.庭の隅群れて明るき小菊かな/廣田洋一
23.秋風に襟を正して出勤す/西村友宏
■選者詠/高橋信之
41.陽が沈む秋の野の遠くに沈む
先ず、「秋の野の遠くに」で距離がわかるが、この「遠くに」に秋の夕暮れの寂しさが表現されている。そして、「沈む」の繰り返しによって一層秋の夕暮れの静かさ・寂しさが強調される。一方、夕陽の温かさも感じとることができる。深い句だと思う。 (吉田晃)
40.卓上に落ち来し光秋夕べ
42.夕食を終えてじみじみ秋灯し
■選者詠/高橋正子
28.コスモスの丈を掬いて大きな風
丈も伸び、ようやく咲きそろったとりどりの色のコスモスを吹く台風の風の吹きようが「丈を掬いて」によく表されています。横倒しになりそうでも折れないコスモスのしなやかさも感じられます。(柳原美知子)
29.ぎす鳴けり草の平らを踏みおれば
30.赤ままを摘みて何せむ瓶に挿す
■互選高点句
●最高点(5点)
17.間引菜の緑とりどり今朝の皿/柳原美知子