■2月月例ネット句会入賞発表■
2024年2月11日
【金賞】
07.ぐんぐんと岸の白梅ふくらめり/川名ますみ
岸の白梅には、陽がよくあたっているのだろう。「ぐんぐん」というほど、蕾がふくらみはじめている。どの蕾も、どの蕾もふくらむ勢いがあって、圧倒される。それ以上に作者が「ぐんぐん」と言えるほどに精神に元気があるのが、とてもいい。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
15.暖かな日差しの中の木椅子かな/廣田洋一
春暖かな日差しに木椅子が置かれている。誰が座るのだろう。もう座っているのかもしれない。穏やかな日差しに温まった木椅子。木の椅子が、象徴的に穏やかで明るく、落ち着いた心象を表している。(髙橋正子)
25.寒ごやし麦の吹かれている畝に/吉田 晃
寒のこやしは、根が動くまえに与えられる。麦の芽がすくすく育ってそよぐほどになっている。畝で吹かれているが、その畝の脇に寒ごやしをやるのだ。力強い句。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
10.投函の新聞かんと春浅し/弓削和人
人通りはないのだろう。新聞がポストに落とされて「かん」と音がする。もう、春がそこに来ているから「かん」と言う音がうれしく心に響くのだ。(髙橋正子)
16.曙の雲をまといて春の山/多田有花
清少納言の枕の草子をいうまでもなく、春の曙の雲は、美しいにちがいない。その雲を纏った春の山が座っているのだ。「春の曙」と言わないで、「春の山」と「春」の使い方がうまい。それによって、句に新鮮さがうまれている。(髙橋正子)
34.梅林の賑やかな小さな街/髙橋句美子
梅林のある小さな街。その街が今日は賑やかなのだ。観梅に訪れた人も混じって小さな街は賑わっている。梅見どきの賑わいが春の訪れを伝えている。(髙橋正子)
【髙橋正子特選/7句】
10.投函の新聞かんと春浅し/弓削和人
早朝、新聞受けに投函される新聞。その音は「かんと」響きました。まだ春の風色の揃わない、街の空気を鳴らしつつ、新聞が春を連れてくるようです。 (川名ますみ)
春になったものの、春色はまだ整わない.降雪もあり、木々の芽吹きも間がある頃、朝刊を待ち遠しく待っている。そこに待ち焦がれた新聞が配達された。(小口泰與)
15.暖かな日差しの中の木椅子かな/廣田洋一
春を最も最初に感じるのは日差しです。その暖かそうな日差しの中に置かれている木椅子。先ほどまで座っていた人の存在も感じられて暖かです。 (多田有花)
23.球音を聞きつつ見上ぐ城二月/ 柳原美知子
球音と言えばやはり野球部、近くに学校があるのでしょうか。選抜高校野球の話題もそろそろ聞こえてくる頃です。見あげておられるのは松山城ですね。 (多田有花)
25.寒ごやし麦の吹かれている畝に/吉田 晃
農作業の実感が伝わってきます。冷たい風が吹く中でおこなわれる施肥が春からの作物を育てます。 (多田有花)
34.梅林の賑やかな小さな街/髙橋句美子
下五の小さな街で梅林の賑やかさが強調されている。上手い詠み方。(廣田洋一)
07.ぐんぐんと岸の白梅ふくらめり/川名ますみ
16.曙の雲をまといて春の山/多田有花
【髙橋句美子特選/7句】
05.枝先の色づき来たる楓の芽/桑本栄太郎
周囲の木々の枝はまだ冬の姿のままです。しかし、よく見てみると枝先が少し色づいているのがわかります。少しずつ春が歩みを進めているようでうれしくなりますね。(多田有花)
06.あおぞらの風の田面や犬ふぐり/ 桑本栄太郎
この時期になるとまず目につくのがオオイヌノフグリの青い花です。早春の野や田のあぜで星が瞬くような美しい青色をみせてくれます。(多田有花)
08.雪に濡れさくらの枝のほの赤き/川名ますみ
先日の関東地方は思わぬ大雪に見舞われました。桜の枝にも積もった雪が翌日には溶けていきその下から桜の芽が見えてきました。桜はすでに花の準備を終え、気温と日差しがそれにふさわしくなるのを待っています。(多田有花)
17.梅が香に誘われ歩く散歩道/多田有花
真っ先に春を告げてくれる梅の花が咲き始めると、心も浮き立ち、思わずその香りを嗅ぎに出たくなりますね。浅春の日差しの中の至福の散歩です。(柳原美知子)
20.新芽出すホームの隅のプランター/高橋秀之
普段行き来するプラットホームの隅にあるプランターの草木にもいつの間にか新芽が出、春の息吹が感じられたうれしさ。良い一日となりそうです。(柳原美知子)
26.餅黴を削りつつ焼く二月来る/吉田 晃
大きな鏡餅は食べきるのにも時間がかかり、二月にもなると黴が生えてきます。それを削りながら焼いて、しっかりとした昔ながらの歯ごたえのある味を
楽しまれている。懐かしい光景です。(柳原美知子)
15.暖かな日差しの中の木椅子かな/廣田洋一
【入選/9句】
02.水底へ春の来ており賑賑し/小口泰與
川面が波立つ底をのぞくと、小魚の影や様々なもの
の影が揺らめき、賑やかに春を告げてくれています。万物の生命の生まれる春が実感されるようです。(柳原美知子)
12.まさおなる空にこぼるる寒椿/弓削和人
透徹した冬空の青さと零れ落ちる椿の真紅の美しさ、寒椿への愛惜の念が感じられ、心惹かれます。 (柳原美知子)
寒椿の明るい朱色が空の青さに映える美しい光景が目に浮かびました。「こぼれる」という表現も面白いを思いました。(西村友宏)
18.その歴史長き国なり建国日/多田有花
折りしも本日2月11日は、我が国日本の建国記念日です。建国以来本年は2683年目になるとも云われ、国家として世界で一番歴史の長い国ですね?もっと天皇家を尊び、国民も誇りを持ちましょう。 (桑本栄太郎)
24.しだれ梅塀歩く猫尾を振って/柳原美知子
民家の庭のしだれ梅であろうか。境界にある塀の上を猫が尾を振り振り(愛想を振り振り?)歩いていく。春の兆しを垣間見る一コマです。 (高橋秀之)
27.牡蠣鍋の牡蠣の一つをすくいけり
この句を見て、理屈抜きで牡蠣鍋を食べたいと思いました。立春を過ぎましたが、寒いがつつく今日この頃、牡蠣鍋は体が温まります。(高橋秀之)
29.春一番歯医者帰りの頬を打つ/西村友宏
歯医者帰りの頬。ちょうど数日前歯医者に行ったところなのでそれが普段と違う感覚であることを実感しているときにこの句を見ました。頬に受ける春一番の風も玲連とは違う感覚だったことでしょう。 (高橋秀之)
30.春夕べ商談まとまりホットココア/西村友宏
商談がまとまった帰り道。ホッと一息をホットココアでくつろぐ。コーヒーではなくココアというところに、充実と癒しの気持ちを感じます。 (高橋秀之)
21.見上げれば春の大空雲ひとつ/高橋秀之
22.星めぐりの歌の余韻に明日立春//柳原美知子
■選者詠/髙橋正子
31.椿活け夜は背ナよりしんと冷ゆ
信之先生ご健在の時から、高橋家は大きな花瓶に賑やかに花を飾ることはしない。一輪挿しに、時には野の花であったり、時には散歩で見かけた道の花であったりを何気なく飾っておられる。この椿もそうなのだろう。俳誌の仕事が一段落し椿が一輪、作業机に飾られていて、一息ついた今、二月の冷たさを感じておられるのだと想像する。 (吉田 晃)
33春の雪ことば真摯な葉書きかな/髙橋正子
春の雪が積もり、外出もままならない日に届いた葉書き。ただでさえ嬉しいのに、そこに書かれた真摯な言葉には更に感動が深まります。(柳原美知子)
32.春の雪積もりし量の屋根にあり
■選者詠/髙橋句美子
34.梅林の賑やかな小さな街
下五の小さな街で梅林の賑やかさが強調されている。上手い詠み方。(廣田洋一)
36.立春の風が高く流れゆく
今日から春、という気持ちが「高く流れる風」という言葉に現れています。(多田有花)
35.節分の豆を数えてカラカラと
互選高点句
●最高点句(5点/同点4句)
07.ぐんぐんと岸の白梅ふくらめり/川名ますみ
10.投函の新聞かんと春浅し/弓削和人
15.暖かな日差しの中の木椅子かな/廣田洋一
25.寒ごやし麦の吹かれている畝に/吉田 晃
集計:髙橋正子
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