■2018年11月月例ネット句会■
■入賞発表/2018年11月12日
【金賞】
★石数多十一月の川の音/小口泰與
十一月が象徴的に詠まれている。石の沢山ある川。川の上流ということになるが、もの寂びた川の音が体に、また心に染み入る。(高橋正子)
【銀賞/2句】
★天高し鶴捧げ持つ少女像/多田有花
原爆の子の像。折り鶴を捧げて空へきりっと伸びる少女の像。天高しに平和を願う思いが日本の空に、そして世界の空に届くようだ。(高橋正子)
★幼な子の積み木遊びや菊の花/河野啓一
上品な香りのする句。菊の花の傍で、幼な子が積み木遊びをしている。幼子の笑み、ふっくらとした手指。ようやく積み上げた積み木。秋の日の日本の家庭の美しい光景だ。(高橋正子)
【銅賞/3句】
★街道の故郷へつづく夕紅葉/桑本栄太郎
街道は故郷へとつづく道。街道沿いの紅葉は暮れなずんで、いっそう郷愁をそそられる。(高橋正子)
★冬立てり晴れ間に港は煌めいて/高橋秀之
冬が始まる。雲が切れた晴れ間に港は思い切り煌めく。冬の港の煌めきははっとさせられほど印象に残る。(高橋正子)
★乳母車児が伸びをする冬日かな/廣田洋一
うららかな冬の日。乳母車で運ばれて行く嬰児が伸びをしている。嬰児さえもうららかな冬日を享受して、微笑ましい。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
★運動会駆け抜ける子の光る汗/西村友宏
運動会といえばかけっこかリレー!。目の前を駆け抜ける子どもたちは誰もが輝いていて汗も光って見えます。すごく躍動的で子らを思う親の気持ちが伝わってきます。 (高橋秀之)
★銀杏を拾って進む散歩道/西村友宏
普段の散歩道も銀杏を拾いながら歩くと秋の深まりが感じられ、楽しい散歩になるのではないでしょうか。 (高橋秀之)
★街道の故郷へつづく夕紅葉/桑本栄太郎
★石数多十一月の川の音/小口泰與
★幼な子の積み木遊びや菊の花/河野啓一
★乳母車児が伸びをする冬日かな/廣田洋一
★菊香る通路がありて夫見舞う/高橋正子
【高橋正子特選/7句】
★天高し鶴捧げ持つ少女像/多田有花
原爆忌を悼む全人類の願いを直截に言い切っておられるように思います。爽やかで大変印象的でした。 (河野啓一)
★伐採の目印ありぬ秋惜しむ/桑本栄太郎
樹を切る目印を見つけたのですね。秋の終り、樹の寿命、何のとなく寂しい気持ちになりますね。 (祝恵子)
★冬立てり晴れ間に港は煌めいて/高橋秀之
立冬の港に日が差し、波の煌めき、海の色にも新たな季節の訪れが感じられます。広々と静かな美しい初冬の海の景に心洗われるようです。 (柳原美知子)
今日から冬、とはいえ、暖かく晴れて、日差しが降り注ぎます。風も無く穏やかでゆったりとした波のきらめきが心地よく感じられます。 (多田有花)
★ふと入る柚子の香りの定食屋/高橋句美子
定食屋は、特徴のある材料が入ると外まで匂う。作者は、柚子の香りに釣られて入ってしまった。美味しい食事を頂いたことでしょう。 (廣田洋一)
★秋の虹二重を窓に新幹線/柳原美知子
新幹線の車窓ということは、どこかへご旅行でしょうか?二重の虹、それだけで心が躍りますね。 (多田有花)
★石数多十一月の川の音/小口泰與
★幼な子の積み木遊びや菊の花/河野啓一
【入選/13句】
★白無垢の姪に秋日と雅楽降る/柳原美知子
この晩秋は秋晴れの好天の日が続きました。白無垢姿の姪御さんに、秋の日差しが燦々と降り注ぎ、神殿の厳かな雅楽にも包まれて晴れ姿が浮き立つようです。皆様にご結婚の祝福を述べられた事でしょう。 (桑本栄太郎)
雲一つなく晴れた秋の日。白無垢に身を包んだ姪の結婚式。秋の陽と雅楽が姪を包むように響く。 (古田敬二)
★展示会新米おにぎりふるまわれ/祝 恵子
何かの食材か炊飯器などの機材の展示会なんでしょうか。いずれにしてもその場で振舞われる新米のおにぎりは、展示会をより一層盛り上げてくれたことでしょう。 (高橋秀之)
★逆光の水面きらめく秋の川/桑本栄太郎
秋晴れの川面の煌めきと真青な空、静かに澄んだ流れを包む田園風景が目に浮かびます。 (柳原美知子)
★かさかさと枯葉駆けたる峠かな/小口泰與
峠は枯葉の道となっている。風が来て枯葉をカサコソとと鳴らす。いよいよ冬の始まりである。 (古田敬二)
★山に入る山茶花散り敷くところから/古田敬二
山茶花が咲き始めました。咲いては散り、咲いては散りして、これから長い冬の間咲きつづけます。山に入っていく道の入口に散っている山茶花にこれから始まる冬へに思いが感じられます。 (多田有花)
★柿剥いてみずみずしさに笑みが出る/西村友宏
木から採ってきたばかりの柿。ほどよく熟れて剝いた時の甘い匂いと太陽をたっぷり吸いこんだ深い柿色に思わず笑みがこぼれます。 (柳原美知子)
★重なりて眠る子犬や枇杷の花/小口泰與
生まれてまだ日も浅い子犬でしょうか。それらが身を寄せ合って眠っています。窓の外には白い琵琶の花。初冬の暖かそうな風景です。 (多田有花)
★秋うらら元安川に鳥憩う/多田有花
広島の元安川は、8月6日の原爆投下のとき、放射線や熱線は爆風を受けて傷ついた多くの被爆者が飛び込んで川。うららかな秋日和に、鳥たちが憩う平和な景色が見られた。(高橋正子)
★何処より囃子も聞こえ鵙高鳴/祝 恵子
鵙の高鳴きに耳を取られておれば、どこかから祭りのお囃子が聞こえてくる。鵙の高音とお囃子に、今こそが秋のただなかだ。(高橋正子)
★食卓に並ぶ秋刀魚は子らの数/高橋秀之
食卓に子どもたちの数だけ並べられている秋刀魚。それは、そのまま長男次男三男の座る場所。健やかで楽しい家族の夕食が想像できる。ユーモラスな句。(高橋正子)
★小鳥来て熟柿をつつく朝かな/河野啓一
朝日が射す庭の熟柿に小鳥が来る。熟柿をつつく小鳥の可愛い姿に和まされる。(高橋正子)
★テラスにて一杯のカフェ小春かな/廣田洋一
テラスに小春日和の日が差す。一杯のカフェのおいしさに、幸せな気持ちが湧く。(高橋正子)
★馬匂う時代祭の武者寄り来/柳原美知子
京都の時代祭。武者の格好をした男が近寄ってくると馬の匂いがした。馬を引いていたのだろう。馬の匂いで、時代祭の武者が現実味を帯びて、面白い。(高橋正子)
■選者詠/高橋信之
★秋の午後散歩の自由を得て楽し
秋の清々しい時に病から退院を出来て自由に散歩が出来る嬉しさが見事に詠われていると思います。無事退院おめでとう御座います。 (小口泰與)
入院中の不自由さから逃れ出て散歩の自由を得た。病気の回復が認められた楽しさを満喫する。 (古田敬二)
★独り居て寺苑の秋天ひろびろと
いつものお寺さんだろうか、一人で来てみた。雲もなく広々とした秋天に無事退院できたこと感謝。 (古田敬二)
★胸開き両手を挙げる秋天へ
■選者詠/高橋正子
★菊香る通路がありて夫見舞う
夫の様子を案じながら、病室へと向かう通路に置かれた丹精のとりどりの菊。その芳香と清らかな輝きにひと時の安らぎを覚え、穏やかな気持ちで病室に向かわれたことでしょう。 (柳原美知子)
★薬局へ渡る道なり秋時雨
★学生も銀杏黄葉もどっと暮れ
■互選高点句
●最高点(5点)
★山に入る山茶花散り敷くところから/古田敬二
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
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