■2021年1月月例ネット句会■
■入賞発表/2021年1月11日
【金賞】
★夫の忌の晴れて海へとアロエ咲く/柳原美知子
夫の忌が晴れやかに詠まれている。共に暮らした日の晴れやかな思い出があるのだろう。アロエは比較的寒さに強く、花の開花は真冬になる。霜や雪で枯れることのない温暖な海岸地方で花が見られることが多い。この句のアロエも海と取り合わされて、エキゾチックな雰囲気が句を明るく、元気にしている。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
★澄み渡る冬空と海呉にあり/高橋秀之
呉は元軍港で有名なところ。呉へはローカル線が海岸沿いを走る。戦争とは遠くなった呉は、今澄み渡る冬空と海のある街となっている。(髙橋正子)
★青空に透ける蠟梅香しき/廣田洋一
青空に黄色い蠟梅が馥郁と香りを放って咲いている。蠟梅が咲くところでは、普通に見かけられるきれいな風景だが、それを素直に「香しき」と捉えて、誰をも納得させている。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
★そこにだけ日当たり来る冬薔薇/古田敬二
冬薔薇が咲くそこだけに日が当たっている。庭の陰影の中に、日差しに浮き上った冬薔薇が、貴重なあたたかい存在になっている。(髙橋正子)
★初詣真青な空と五色幕/髙橋句美子
初詣に行くと、真っ青な空のもとに、五色幕が張り巡らされ、新年の特別な日と、はっきり知らされる。五色幕の五つの色は、仏教の五行思想を表しているとのこと。仏教寺院であることを表し、釈迦如来の説いた教えを広く宣べて流布させることを表している。初詣に改まる気持ち。(髙橋正子)
★曇り空山の向こうは大雪か/多田有花
曇り空の分厚さに、山を越えた向こうは大雪になっているだろうかと想像する。天気予報で寒気団の来襲が伝えられていたときであろうが、大雪に降られた日本海沿岸の色の消えた雪景色が思い浮かぶ。(髙橋正子)
【高橋信之特選/7句】
★そこにだけ日当たり来る冬薔薇/古田敬二
冬の弱い日差しだが、薔薇の花に焦点をあてたように日が当たる。浮かび上がった花はさらに美しくなる。庭の冬薔薇でしょうか。きれいですね。 (吉田晃)
★澄み渡る冬空と海呉にあり/高橋秀之
★青空に透ける蠟梅香しき/廣田洋一
★寒晴の空にさみどり辛夷の芽/髙橋正子
★アルプスの雪嶺見ゆまで坂のぼり/髙橋正子
★初詣真青な空と五色幕/髙橋句美子
★夫の忌の晴れて海へとアロエ咲く/柳原美知子
【高橋正子選/7句】
★雪の予報窓よりオリオン見て眠る/柳原美知子
明日は雪の予報。でも、今宵はオリオンが見て取れる星空。ほんとうに明日は雪なんだろうかと思いながら眠りにつく。幸せを感じる一夜です。 (高橋秀之)
ラジオの天気予報ではこれから雪に変わり明日は積もるらしい。今はまだ晴れている夜空に広がるオリオン座。窓からそのオリオン座が良く見える。さあ、眠るとしよう。 (古田敬二)
★そこにだけ日当たり来る冬薔薇/古田敬二
★澄み渡る冬空と海呉にあり/高橋秀之
16.青空に透ける蠟梅香しき/廣田洋一
31.初詣真青な空と五色幕/髙橋句美子
34.夫の忌の晴れて海へとアロエ咲く/柳原美知子
37.曇り空山の向こうは大雪か/多田有花
【入選/16句】
★まな板をまずは洗いて初厨/古田敬二
元日の朝、いそいそと厨に入り、お節料理を並べ始める。然し、蒲鉾や鳴門巻やらをまず切らねばならず、その為にはまな板を洗わねばならない。元日の楽しい家事の始まりである。(廣田洋一)
★暁闇の妻たたき居り七日粥/桑本栄太郎
まだ暗い朝、奥様の七日粥の支度の音を聞きながら、楽しんでおられます。 (祝恵子)
★七草粥ぐつぐつ湯気も二人分/祝 恵子
新婚家庭とも、子どもが巣立った後の落ち着いた熟年夫婦とも、ほんのりと幸せな気分が伝わってくる句です。 (多田有花)
★参拝の最後尾には初雀/西村友宏
静かな参拝の中、初雀の声が聞こえ、ふっくらとした可愛らしい姿が参拝者の後にならんでいるかのように社の土の上に見え、ほほえましい光景が
眼に浮かびます。詠者の温かい視線が感じられます。 (柳原美知子)
★大寒の夜道しいんと耳に手を/髙橋句美子
大寒は二十四節気のひとつで、一般的には一番寒い時で、夜道はいつそう寒く耳や手に痺れが来るほどの寒さになります。あまりの寒さに耳に手を
当てて暖を取る景が見えてきます。 (小口泰與)
★美しき炎見るため焚火する/多田有花
寒い季節の焚火は暖を取るばかりではなく、その炎はとても美しいものです。又炎を眺めて居れば、いろいろな思い出もよみがえり、非日常の心情
に浸ることが出来ます。(桑本栄太郎)
★冬草や石垣高き峡の家/吉田 晃
奈良県の十津川村の情景をイメージしました。山が迫ったほとんど平地のないところに階段のように石垣を作って家を建てています。日本の原風景
のひとつと感じます。 (多田有花)
★駅伝の順位見ながら寝正月/西村友宏
今年の駅伝はドラマ続出でしたね。こういうお正月だという男性は多いかもしれません。そして、それが至福かも。 (多田有花)
★隠れつつ飼い猫つき来る初詣/柳原美知子
猫のしぐさが目に見えるようです。しなやかに物陰に隠れながらも飼い主の姿をしっかり見て、後をついてきます。可愛いですね。 (多田有花)
★音階の如き霰やとたん屋根/小口泰與
とたん屋根に降る霰の音に耳を澄ませ、音階にみたてて楽しむほっこりとしたひと時。厳寒の季節にも喜びを見出されていて、心惹かれます。(柳原
美知子)
★花八手遊びし子らは遠くいて/吉田 晃
コロナ禍で、離れ住む子供たちも故郷に帰れず、遊ぶ子供の姿もあまり見かけない静かな新年。さびしい村に咲く花八手の白さが際立ちます。(柳原
美知子)
★笹鳴や巨人になりし吾子の影/小口泰與
★夕映えの沼へ水脈描く小白鳥/小口泰與
★煮大根の甘き湯気立つ十二月/ 吉田 晃
★初氷ゴツゴツ手ごたえ割ってゆく/祝 恵子
★窓という窓を鳴らして寒波来る/多田有花
■選者詠/高橋信之
★寒き夜のコーヒー豆を挽きつぶす
コーヒー豆を挽く音が想像され、寒さが際立ちます。温かいコーヒーを楽しみにしている様子も感じられます。 (髙橋句美子)
★窓外の枯野に遊ぶ子らの声
★暖かき色をしているコーヒーは
■選者詠/高橋正子
★アルプスの雪嶺見ゆまで坂のぼり
アルプスの雪嶺に向かい、長い坂道を寒晴れの空へと登る期待感と爽快感が伝わってきます。身近に迫るアルプスの雪嶺はさぞかし素晴らしかった
ことでしょう。(柳原美知子)
★寒晴の空にさみどり辛夷の芽
★寒禽の重さかさかさ枝が揺れ
■互選高点句
●最高点(6点)
★青空に透ける蠟梅香しき/廣田洋一
※コメントの無い句に、コメントをよろしくお願いいたします。