■2021年2月月例ネット句会■
■入賞発表/2021年2月15日
【金賞】
★芽ぐむ木の窓の明るい喫茶店/吉田 晃
明るく、期待感を感じさせる句。窓を通して見える景色に透明感があって、窓の内側の喫茶店のほの暗さが落ち着く。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
★鋤かれゆく春田のひかり鳥を呼び/柳原美知子
田があたらしく息づく春。鋤かれた田の土はひかり、土にみみずなど見つけた鳥がそれを啄みに降りて来る。春田のたのしい季節。(髙橋正子)
★晴れた日の階段あがれば桜咲く/髙橋句美子
晴れた麗らかな日、階段を上っていくと、思わぬことに桜が咲いている。その驚きを詠んだ晴れやかな句。表現が散文のようであるが、リズムがあって、景色に詩情があるところが散文と異なる。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
★陽に向かい尖るこぶしの蕾かな/古田敬二
今こぶしの蕾は、咲く前の力を集約するように尖って、太陽に向かい、銀の蕾を輝かせている。この蕾が咲くときが楽しみだ。(髙橋正子)
★春浅し海を渡りて荷は届く/祝 恵子
遠くから荷物が届くこと。そのことに楽しさがある。夢がある。春浅い海に思うことはさまざま。その海を越えて来た荷物を受け取った時のうれしさが、静かに伝わる。(髙橋正子)
★早春の庭で縄跳び兄妹/多田有花
コロナ禍で外で思い切り遊べないが、兄と妹が庭で縄跳びをする仲の良さがほほえましい。「早春」の季節の淡さがいい。(髙橋正子)
【高橋信之特選/7句】
★芽ぐむ木の窓の明るい喫茶店/吉田 晃
若々しい風景が春の訪れを感じさせます。(高橋句美子)
★蝋梅の放つ光の艶やかに/吉田 晃
蝋梅の色が澄んだ空に生える情景がうかびました。放つ光という表現が綺麗です。(西村友宏)
★鋤かれゆく春田のひかり鳥を呼び/柳原美知子
春耕をしてるのであろう。土が鋤かれる度に春の日に黒く光り、その後ろに鳥も集まって来る。春ののどかな景色である。 (廣田洋一)
田の土を鋤くと眠っていた虫が掘り起こされ、それを狙って鳥たちが集まる。気の早い鳥は、田が鋤かれるのを待っている。春田がひかるのは、掘り起こされた虫が逃げ惑っている姿。待っていた春がようやくやってきた。 (吉田晃)
★五分咲きの梅の真白さ生きいきと/髙橋正子
五分咲きの白梅ならではのみずみずしさが生き生きとに表されていて、真白く青空へと膨らむ蕾と芳香が想像されます。(柳原美知子)
★春浅し海を渡りて荷は届く/祝 恵子
★早春の庭で縄跳び兄妹/多田有花
★晴れた日の階段あがれば桜咲く/髙橋句美子
【高橋正子選/7句】
★陽に向かい尖るこぶしの蕾かな/古田敬二
日ごと春めいてきています。こぶしの蕾も咲くときを待って日差しを浴びています。明るい春の朝です。 (多田有花)
★ブランコの幼子空へ飛び出しそう
ブランコをこぐ生き生きとした幼子の姿と瑞々しい春の空がクローズアップされ、光に満ちた明るい季節の到来が感じられます。 (柳原美知子)
★芽ぐむ木の窓の明るい喫茶店/吉田 晃
★早春の庭で縄跳び兄妹/多田有花
★鋤かれゆく春田のひかり鳥を呼び/柳原美知子
★晴れた日の階段あがれば桜咲く/髙橋句美子
★春灯の点りし部屋に帰り来ぬ/髙橋信之
【入選/13句】
★薄氷や砕けばメダカ逃げ惑う/祝 恵子
早春に時には寒い朝もあり、蹲に薄氷が張ることがあります。興味深くそっと氷を砕けば、中に居るメダカが驚き逃げ惑っています。狭い蹲の中でもすっかり春の訪れです。(桑本栄太郎)
★夜明けすぐ鳥の鳴き声春立てる/高橋秀之
夜明けの静けさの中に響く鳥の声の明るさに立春が実感され、今日をうれしく迎えられます。(柳原美知子)
★けん先へすっと玉入り春きざす/多田有花
ケン玉入れに挑戦。うまい具合に穴にスーと入った。思えばもうすぐ春だ。 (古田敬二)
★春耕や声掛け合ひて老夫婦/廣田洋一
春の日差しの中、ご夫婦で支え合いながら畑仕事に精を出されている姿は微笑ましくもあり、また長年の地道な土づくりの労働に驚嘆の念も覚えます。詠者の温かい視線が感じられます。(柳原美知子)
★風花や紅茶に砂糖さらさらと/西村友宏
紅茶の準備をしつつ窓の外を見れば風花がふわふわと舞っている。砂糖はさらさらと。一時の幸せですね。 (祝恵子)
★水底の光りきらめく蘆の角/桑本栄太郎
★鳥減りて沼の寂しき二月かな/小口泰與
★柔らかき土中へ馬鈴薯そっと植え/古田敬二
★春空の日差しにきらり航空機/高橋秀之
★白き梅枝の先まで膨らみぬ/廣田洋一
★雪解谷轟く岸に雪だるま/柳原美知子
★立春の土手は絵本の1ページ/柳原美知子
★剪定のあとの青空鳥の影/髙橋句美子
★道すがら一人静かに梅見かな/西村友宏
★木漏れ日に雀戯る春の土/西村友宏
★土鍋炊く静かなリズム寒灯下/川名ますみ
■選者詠/高橋信之
★寺苑ひろびろとして春の空
ひろびろとした寺苑、ひろびろとした春の空。ひらがなが柔らかく、あたたかな雰囲気を醸し出す、春の訪れです。(高橋秀之)
★春灯の点りし部屋に帰り来ぬ
春の灯火であり、朧夜には一種の安心感と生活感のある部屋に帰り来た安堵感が溢れている素敵な景です。(小口泰與)
★枯芝に朝陽が射してくる寺苑
■選者詠/高橋正子
★五分咲きの梅の真白さ生きいきと
五分咲きの白梅ならではのみずみずしさが生き生きとに表されていて、真白く青空へと膨らむ蕾と芳香が想像されます。(柳原美知子)
★電線に連雀番い二月かな
★野梅の香マスク通してつんと来ぬ
■互選高点句
●最高点(同点2句/6点)
★鋤かれゆく春田のひかり鳥を呼び/柳原美知子
★五分咲きの梅の真白さ生きいきと/髙橋正子