■4月月例ネット句会/入賞発表
■2022年4月月例ネット句会■
■入賞発表/2022年4月11日
【金賞】
04.客船に舞いこむ桜陽が照らす/高橋秀之
客船は岸に近いところを航行しているのだろう。桜の花びらが舞い込み、それが陽に照らされて生き生きとしている。踏まれてしまいそうな花びらが、陽を受けて存在感を再びとりもどしている。桜はこれまで、潔さ、儚さ、幽玄の美などが詠まれ、描かれてきた。この句は、存在感のある力つよさがある。これまでの桜の詠み方とは違ってリアリティが増している。そこを評価したい。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
15.稜線の影やわらかき芽立時/多田有花
山々の木々が芽吹き、稜線の境目が影のようにやわらかになって、まさに春の山。水彩画の技法のような詠みぶりがこの句を画のようにしあげている。(髙橋正子)
16.谷水の音へ辛夷のひらき初む/柳原美知子
谷の辛夷は里の辛夷に少し遅れて咲く始める。谷水が流れる音に耳をそばだてているような辛夷の開き初めの姿が可憐でもあり、またすがすがしくていい。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
14.雲動く桜の色も動きけり/多田有花
流れ動く雲から目を桜に移すと、花の雲も動くように思える。「桜の色も動きけり」は抽象的だが、それが却って花の雲を思わせていて上手い。(髙橋正子)
30.手作りて桜餅を父母に/髙橋句美子
父母に手作りの桜餅をあげた、ということだが、「手作り」「桜餅」「父母」とやわらかく、ふっくらした言葉が続いて、自然体のさらりと句になっている。自然体でさらりと詠むことは、意外とむずかしい。(髙橋正子)
34.きゃべつの葉水に浸ければ飛花の浮く/川名ますみ
きゃべつを水に浸して洗おうとすると、桜の花びらが浮いてきた。驚きとともに、きゃべつが育った桜の咲く景色のよい畑が思い浮かぶ。
「飛花」は、散り飛ぶ花のことで、きゃべつにくっついたのは、「飛花」ではなく、「落花」と言うべきかと言う意見があるかと思うが、この句の「飛花」は、「飛んできた花」の意味。言葉は正確に使わなければいけないが、杓子定規ではいけない。句に添って生き生きとした言葉であるべきと思う。(髙橋正子)
【髙橋信之特選/7句】
04.客船に舞いこむ桜陽が照らす/高橋秀之
川沿いの桜でしょうか。風に吹かれてきらきらと光りながら客船の中に舞い、目を楽しませてくれます。心地よい春の日差しを受け、青空と波を眺めながらの明るい船旅が想像されます。 (柳原美知子)
10.五地蔵の背後に散るよ寺桜/祝 恵子
五地蔵を見守るかのように立つ寺院の桜。満開の桜に明るく照らされて、今は静かに背後に散り刻をきざんでいます。惜春のおもいとともに、新たな季節の予感に包まれ、地蔵への優しい眼差しが感じられます。 (柳原美知子)
26.八重桜街ゆく人の衣を軽く/髙橋正子
四月の初めあたりまでは、ときに暖房が欲しいような日もありますが、八重桜が咲くころになるとぐんと暖かくなります。人々も上着を脱ぎ軽装となって強くなった日差しの中を行き交います。足取りも思わず軽くなる季節の雰囲気をよくとらえられています。(多田有花)
八重桜という季語と「衣を軽く」という表現ですっかり春めいた街並みや情景が鮮明に浮かびます。(西村友宏)
14.雲動く桜の色も動きけり/多田有花
15.稜線の影やわらかき芽立時/多田有花
16.谷水の音へ辛夷のひらき初む/柳原美知子
30.手作りて桜餅を父母に/髙橋句美子
【髙橋正子特選/7句】
04.客船に舞いこむ桜陽が照らす/高橋秀之
川沿いの桜でしょうか。風に吹かれてきらきらと光りながら客船の中に舞い、目を楽しませてくれます。心地よい春の日差しを受け、青空と波を眺めながらの明るい船旅が想像されます。 (柳原美知子)
08.白蝶の我が背を抜いてゆくはやさ/吉田 晃
お散歩中でしょうか。ご自身の背をすばやく追い抜いてゆく白蝶に、はっとする瞬間。春が来て、また過ぎてゆく季節の「はやさ」を、小さな蝶に見て取られたのでしょう。(川名ますみ)
21.新品の鉛筆光る新学期/西村友宏
大人になると鉛筆を使うことも稀になりますが、小学生の頃は1学期の新学期に新品の鉛筆をおろしてもらうのが嬉しかったのを思い出します。きっと今の小学生も同じだと思います。(高橋秀之)
28.山菜の若芽の渦巻き足下に/髙橋句美子
山菜採りに行っているのでしょうか。足下に若芽の山菜を見つけ、これからまさに採ろうとしている様子が目に浮かびます。 (高橋秀之)
34.きゃべつの葉水に浸ければ飛花の浮く/川名ますみ
澄んだ目で見ておられるように感じ、鑑賞していて緊張感が溶けていくようです。 (吉田晃)
14.雲動く桜の色も動きけり/多田有花
16.谷水の音へ辛夷のひらき初む/柳原美知子
【入選/12句】
03.綿菓子のふわっと膨れ花月夜/小口泰與
綿菓子のふわっとした感じと花月夜がよく呼応し、幻想的な美しい朧夜が想像されます。 (柳原美知子)
09.物干に明るい風の吹く四月/吉田 晃
四月も初旬を過ぎると名残の寒さもすっかり消えます。気が付けば桜も散ってすでに晩春。風にはかすかに夏の気配も感じられ始めます。 (多田有花)
12.土筆提げ今日の成果の指の灰汁/祝 恵子
土筆摘みの醍醐味を詠まれています。わからないものには何が楽しいのかわからないのですが、好きな人にはこたえられない今日の成果なんですね。 (多田有花)
17.夕つばめ河口より来て瀬音切り/柳原美知子
つばめの速い動きが感じられ躍動感があります。 (髙橋句美子)
18.金色(こんじき)の瀬戸海はるか花の影/柳原美知子
夕暮れ時でしょうか、満開の桜の下、遠くに金色に染まったの瀬戸内海が見えます。値千金のひとときですね。 (多田有花)
19.せせらぎのゆったり響く春の川/西村友宏
足を止めてゆったりと川の音を聞いていると、日常の事が忘れられ、眠くなってゆくようです。 (祝恵子)
32.亡き母の着物想いぬ紫木蓮/桑本栄太郎
着物がお似合いだった在りし日のお母様。特にお気に入りだった艶やかな紫木蓮の着物姿がまなうらに浮かび、さまざまなことを思い出す春昼です。 (柳原美知子)
36.花びらを巻いて届きし春きゃべつ/川名ますみ
届いた春キャベツに花びらが付いている。春の訪れを二重に感じるお届けものです。 (高橋秀之)
02うら若き牡丹の新芽ほぐれけり/小口泰與
07.田舎味噌麦の匂いの蜆汁/吉田 晃
09.物干に明るい風の吹く四月/吉田 晃
13.見上げれば雲と桜と青空と/多田有花
39.満開に早や舞い落ちる桜かな/友田 修
■選者詠/髙橋信之
24.花祭り妻が居る日よ今日があり/髙橋信之
お釈迦様の生誕を祝う花祭りに奥様と行かれ、改めておふたりで過ごされた来し方を振り返り、奥様への感謝の念を強くされました。花祭りの輝きに溢れたかけがえのない今日の日です。 (柳原美知子)
22.窓開けて近くに見えてチューリップ
23.さくら咲き寺の庭のひろびろと
■選者詠/髙橋正子
26.八重桜街ゆく人の衣を軽く/髙橋正子
四月の初めあたりまでは、ときに暖房が欲しいような日もありますが、八重桜が咲くころになるとぐんと暖かくなります。人々も上着を脱ぎ軽装となって強くなった日差しの中を行き交います。足取りも思わず軽くなる季節の雰囲気をよくとらえられています。(多田有花)
八重桜という季語と「衣を軽く」という表現ですっかり春めいた街並みや情景が鮮明に浮かびます。(西村友宏)
27.花は葉にここより老いの正念場/髙橋正子
爛漫と咲きほこった万朶の花の散り際のあわただしさがひとしお愛惜される。花が散り青葉に変わる桜の木、人生もまた歴史を繰り返す。いよいよ作者としては素晴らしい人生の為の最終章の生きざまの正念場である。素晴らしき人生の為に。 (小口泰與)
25.大空にたんぽぽ無心の黄の花を
■互選高点句
●最高点(6点)
04.客船に舞いこむ桜陽が照らす/高橋秀之
集計:髙橋正子
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