■2016年子規忌ネット句会■
■入賞発表/2016年9月20日
【金賞】
★子規の忌の汽笛を曳けり予讃線/藤田洋子
子規は、松山の三津浜港から上京や帰郷している。子規の時代は予讃線はまだ開通していないが、高松・宇和島間の瀬戸内沿岸を走る列車の汽笛が長く響くのを聞けば、思いは子規へと届く。子規は松山人の誇りである。(高橋正子)
【銀賞2句】
★野にボール弾み歓声子規忌来る/河野啓一
子規は野球の用語を日本語に翻訳したり、野球を楽しんでいた。子規の幼名は処之助(ところのすけ)で、のちに升(のぼる)と改めた。「野ボール」「野球」もそれに因む。図らずも野にボールが弾んで、歓声が上がっている。元気な折の子規を思い出す。(高橋正子)
★高々と無月の池を魚の跳ぶ/佃 康水
真実味のある句。無月の池を魚が跳び、水音が跳ねる。無月の闇の強さ、跳ぶ魚の力強さに、作者の前向きな力に訴えるものがある。(高橋正子)
【銅賞3句】
★道後へと旅す日ありき獺祭忌/小川和子
子規忌は獺祭忌とも呼ばれる。子規と言えば、多くの人は道後を思い出す。子規の育った松山道後へ旅をしたことが、懐かしく偲ばれる。子規への親しみが湧くというもの。(高橋正子)
★夕月夜赤子抱く娘の傍らに/藤田洋子
夕月のかかる夜、赤子を抱く娘の傍に、その母がいる。母と娘、その赤子の円居が幸せで、切ないまでに、やさしく、温かい詩情ある句だ。(高橋正子)
★辛夷の実孫それぞれの自己主張/谷口博望 (満天星)
辛夷の実は、その名の言われになったように、ごつごつと、握りこぶしのようだ。夏が過ぎ、充実の秋になり、孫それぞれを観察していると、それぞれ、個性があって、頑なまでに、自己主張がある。それも愉快で、頼もしいことだろう。(高橋正子)
【高橋信之特選/8句】
★野にボール弾み歓声子規忌来る/河野啓一
正岡子規のあまり知られていない一面に野球に大変親しみ、自ら選手として活躍を行い、明治の導入時のルールの「打者」「走者」「四球」「飛球」などの野球用語も彼が翻訳を行い、普及に努めたといわれている。子規忌の9月19日の頃の爽やかな季節が思われる。 (桑本栄太郎)
野球が大好きだったという子規。のぼるという本名にかけて「のぼーる」と号したとか。忌日の俳句でありながら明るく楽しく、子規らしさも溢れており斬新です。 (多田有花)
★青年に声を掛け居り秋の畑/桑本栄太郎
畑の若い人に思わず声をかけたくなるような収穫期の情景が想像されます。稔りの秋の作物は何だったのでしょうか。 (河野啓一)
★辛夷の実孫それぞれの自己主張/谷口博望 (満天星)
辛夷の実はそれぞれ、面白い形をしています。お孫さんに目を向けられ、一人ひとりの個性があり、実とお孫さんを自己主張ととらえられたのが面白いですね。 (祝恵子)
★子規の忌の汽笛を曳けり予讃線/藤田洋子
雨模様の静かな子規忌、故郷の鉄路より子規を偲ぶかのように汽笛が尾を曳き、秋の深まりを感じさせてくれます。(柳原美知子)
★夕月夜赤子抱く娘の傍らに/藤田洋子
夕月夜は宵の間だけ月の有る夜と聞いていますがとても詩情がありますね。夕月夜のもと、赤子を抱いている我が子と共に、幸せな時間を共有され、さぞかし至福なひと時を過ごされたことでしょう。親と子そしてお孫さんとの温かいご家庭に胸が熱くなります。 (佃 康水)
★天心の月に時計が十一時/高橋正子
就寝前の良きひと時を得た。これも良き生活の「ひと時」であり、「天心の月」は美しく、誰もが共有し得る世界だ。(高橋信之)
★高々と無月の池を魚の跳ぶ/佃 康水
真実味のある句。無月の池を魚が跳び、水音が跳ねる。無月の闇の強さ、跳ぶ魚の力強さに、作者の前向きな力に訴えるものがある。(高橋正子)
★道後へと旅す日ありき獺祭忌/小川和子
子規忌は獺祭忌とも呼ばれる。子規と言えば、多くの人は道後を思い出す。子規の育った松山道後へ旅をしたことが、懐かしく偲ばれる。子規への親しみが湧くというもの。(高橋正子)
【高橋正子特選/8句】
★寝転んだ先に大きく秋の空/高橋秀之
大きな世界だ。日常で捉えることが出来たのがいい。(高橋信之)
★曼珠沙華ゆらす川風水の音/柳原美知子
風と水を捉えた。「曼珠沙華」が捉えたのであり、作者が捉えたのである。広々として深い俳句だ。(高橋信之)
★赤とんぼバンジージャンプで子ら跳ねる/祝恵子
バンジージャンプの子らに赤とんぼを添えた。作者の眼がいい。生き生きとして美しい世界だ。(高橋信之)
★夕月夜赤子抱く娘の傍らに/藤田洋子
宵に現れ夜半には没する月の夜、可愛い赤ん坊を抱く娘さんの傍らで静かに親子の幸せを感じている素敵なおばあさんの姿が感じられて素晴らしい句ですね。 (小口泰與)
★野にボール弾み歓声子規忌来る/河野啓一
子規は野球の用語を日本語に翻訳したり、野球を楽しんでいた。子規の幼名は処之助(ところのすけ)で、のちに升(のぼる)と改めた。「野ボール」「野球」もそれに因む。図らずも野にボールが弾んで、歓声が上がっている。元気な折の子規を思い出す。(高橋正子)
★子規の忌の汽笛を曳けり予讃線/藤田洋子
子規は、松山の三津浜港から上京や帰郷している。子規の時代は予讃線はまだ開通していないが、高松・宇和島間の瀬戸内沿岸を走る列車の汽笛が長く響くのを聞けば、思いは子規へと届く。子規は松山人の誇りである。(高橋正子)
★高々と無月の池を魚の跳ぶ/佃 康水
真実味のある句。無月の池を魚が跳び、水音が跳ねる。無月の闇の強さ、跳ぶ魚の力強さに、作者の前向きな力に訴えるものがある。(高橋正子)
★今日子規忌遠きところに住む子規よ/高橋信之
「子規忌」がこの句の主題であり、中七の「遠きところに」が作者の思いである。作者の詩心がそこにある。詩は作者のごく近くにあることも、また遠くにあることもある。(高橋信之)
【入選/5句】
★指さして城を教える秋の頂/多田有花
遠いところの風景を身近に引き寄せた。上五の「指さして」がいい。「秋」を絞りこんで詠んだのだ。(高橋信之)
★常夜灯がぽつぽつ灯る秋の夜/髙橋句美子
「秋の夜」を詠んで、「ぽつぽつ灯る」がいい。作者自身の言葉だ。(高橋信之)
★雨の萩雫受けては庭巡る/ 祝恵子
雨に濡れた萩も清々しく、萩に触れ萩に心を寄せる作者の姿に、しっとりと澄んだ秋の気配が感じられます。 (藤田洋子)
★波打ちて露地に溢るる枝垂れ萩/ 佃 康水
萩の花が咲きみちる季節ですね。路地をふさぐほどみごとに咲いた枝垂れ萩が圧巻です。 (小川和子)
★白波の仁王立ちなる野分かな/小口泰與
「仁王立ち」と言い切ったところがいい。作者の思いが無理なく言葉となった。(高橋信之)
■選者詠/高橋信之
★今日子規忌遠きところに住む子規よ
「子規忌」がこの句の主題であり、中七の「遠きところに」が作者の思いである。作者の詩心がそこにある。詩は作者のごく近くにあることも、また遠くにあることもある。(高橋信之)
★遠くの空仰ぐ今日子規忌なれば
作者は長く愛媛にお住まいでした。現在は松山を離れ、横浜に居を移しておられます。今日は子規の忌日、松山で過ごした日々が思い出され、それゆえの「遠くの空」です。さりげない言葉の中に作者のさまざまな思いが詰っています。 (多田有花)
「遠くの空」に込められた今日の「子規忌」なればこその感慨がひしひしと伝わります。作者の仰ぐ「遠くの空」に、明治の偉大な文人、子規へのはるかな思いを抱かせていただきました。(藤田洋子)
松山に生まれ、明治期を生きた子規ですが、明治も遠くなり、御句からは時空をこえた子規への思いが深く伝わってきます。(小川和子)
★散歩に出る一歩踏み出て秋高し
家から一歩足を踏み出すと自然と秋の澄み切った大空が目にとびこんできます。爽やかな風に包まれ、秋の深まりを楽しみながら散歩されるお姿が目に浮かぶようです。 (柳原美知子)
日頃から花冠俳句やその他の業務にご多用の中、気分転換にと散歩に出られました。その一歩に秋空の高く澄み切ったさまを瞬時にして感じとられたのでしょうか。作者の直観がそのまま清々しく伝わって参ります。(佃 康水)
■選者詠/高橋正子
★栗飯にぐっとすずしき夜がここに
栗ご飯が美味しい時期になり、暑かった夏の夜が終わり涼しい秋の夜の季節がここにあります。 (高橋秀之)
★天心の月に時計が十一時
就寝前の良きひと時を得た。これも良き生活の「ひと時」であり、「天心の月」は美しく、誰もが共有し得る世界だ。(高橋信之)
★糸瓜棚思い出ふかき昭和かな
「昭和」も思い出ふかき歳月となった。上五に置いた季語の「糸瓜棚」がいい。中七の「思い出」とも、また下五の「昭和」ともふかく関わって一句をなしている。(高橋信之)
■互選高点句
●最高点(6点)
★子規の忌の汽笛を曳けり予讃線/藤田洋子
子規は、松山の三津浜港から上京や帰郷している。子規の時代は予讃線はまだ開通していないが、高松・宇和島間の瀬戸内沿岸を走る列車の汽笛が長く響くのを聞けば、思いは子規へと届く。子規は松山人の誇りである。(高橋正子)
●次点(5点)
★高々と無月の池を魚の跳ぶ/佃 康水
真実味のある句。無月の池を魚が跳び、水音が跳ねる。無月の闇の強さ、跳ぶ魚の力強さに、作者の前向きな力に訴えるものがある。(高橋正子)
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)