■9月月例ネット句会/入賞発表
■2022年9月例ネット句会■
■入賞発表/2022年9月12日
【金賞】
6.ふるさとの最後のひとつ梨を剥く/桑本栄太郎
ふるさとから送られて来た梨が、とうとう最後のひとつになった。故郷の懐かしさ暖かさが詰まった梨をしみじみ、味わって食べる。栄太郎さんの故郷は梨の名産地の鳥取。なおさらのこと故郷がしのばれる。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
19.燕去り風は軽さを加えたり/多田有花
燕が去ってしまった空。すっかり秋になり、そよ吹く風にさらっと軽さを覚える。たしかに、軽くなった風が身を吹く。(髙橋正子)
24.峡の田を守る案山子の首手拭い/吉田 晃
峡に住む人たちは多くが老人となっている。案山子も人ひとりのように、首手拭いを巻いて、刈り入れの準備万端が整ったようである。豊かに稔った稲の匂いがしそう。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
07.吾が影を追い越しトンボの影も飛ぶ/祝 恵子
トンボが後ろから飛んできて、自分の影を追い越していった。追い越してゆくトンボの影も映って飛んでいる。影が生き生きと動いて、秋の楽しい日を思う。(髙橋正子)
12.ふと目覚めすこやかならむ母の秋/弓削和人
夜中、ふと目覚め、離れて暮らす母のことが気になった。母はすこやかにこの秋も暮らしているだろうと、思う。すこやかだろう母に安心もする。(髙橋正子)
34.海からの秋風の吹く大通り/髙橋句美子
どこの大通りだろう。海からの秋風が大通りを吹き抜ける。海も、大通りも、秋風も大きい。句の景色が大きく、風のようにも思える。(髙橋正子)
【髙橋信之特選/7句】
06.ふるさとの最後のひとつ梨を剥く/桑本栄太郎
毎年故郷から届く梨。丁寧に梱包された新鮮な梨の箱を開けたときのうれしさ。それをひとつずつ食べていき、ついに最後のひとつになった。今年の初秋もこれで終わり。感慨深いですね。 (多田有花)
24.峡の田を守る案山子の首手拭い/吉田晃
峡の間にある田の稲穂も黄金色となり、もう間もなく刈り入れの時季を迎える時季となった。彼方此方に立て掛けられている案山子も、稔りの秋を祝うように嬉しそうな表情である。「首手拭い」と措辞が効き、豊かな稔りが想われる。 (桑本栄太郎)
07.吾が影を追い越しトンボの影も飛ぶ/祝恵子
12.ふと目覚めすこやかならむ母の秋/弓削和人
25.名月のやすらう空の鉄色に/髙橋正子
34.海からの秋風の吹く大通り/髙橋句美子
36.梨届く段ボール畳む昼下がり/髙橋句美子
【髙橋正子特選/7句】
06.ふるさとの最後のひとつ梨を剥く/桑本栄太郎
ふるさとから届いた瑞々しい梨。懐かしい思い出に浸りながら味わってきたけれど、いよいよ最後のひとつとなった。名残り惜しい気持ちでゆっくりと皮を剥くひととき。望郷の思いが伝わってきます。(柳原美知子)
19.燕去り風は軽さを加えたり/多田有花
燕は9月、10月ごろ南方へ渡る。秋の風は定まった風位はない。色に配しては白、すなわち素風と言い、金風とも言う。素敵な柔らかい体に良い風が体に吹く。秋は素晴らしい季節です。 (小口泰與)
燕の空を切るような飛ぶスピード感に、秋風の軽さを感じました。 (髙橋句美子)
07.吾が影を追い越しトンボの影も飛ぶ/祝恵子
12.ふと目覚めすこやかならむ母の秋/弓削和人
23.石鎚は白露の峰となり聳え/吉田 晃
29.月見団子丸めていれば雨あがり/柳原美知子
34.海からの秋風の吹く大通り/髙橋句美子
【入選/20句】
01.流星や気散じの歩を湖辺まで/小口泰與
何気なく外気にあたる散歩の折に、流星が目の前を横切った。湖辺の方向に、流星を追うようにぶらりと歩き始める。ゆるやかな時間がながれ、秋の夜の景が目に浮かぶようです。また、湖面も穏やかで、流星を受け容れてくれているかのようです。 (弓削和人)
08.雨粒並ぶそれぞれに秋の色/祝恵子
雨粒がひとつひとつクローズアップされた写真のようです。透明な秋の色が目に浮かびます。(柳原美知子)
10.鶏頭の一群風にうねるかな/弓削和人
畑の一画に植えられている鶏頭でしょうか。鮮やかな赤さが目を引きます。風が吹けばその赤さが波打って一層鮮やかです。 (多田有花)
20.名月のいま山の端を離れたり/多田有花
月が、登って行く一瞬を捉えた。景色の良く見える句。(廣田洋一)
21.名月の名残見送る夜明けかな/多田有花
前夜はタイミングよく名月に出会えなかったのでしょうか。名残りの名月もさやかで、静かな夜明け、消えるまで見送ります。名月に寄せる思いが伝わってきます。(柳原美知子)
23.石鎚は白露の峰となり聳え/吉田 晃
四国へ行くと山の険しさに驚きます。四季折々、そのそびえる石鎚の元で繰り返されていく日々の暮らし。それが思われます。 (多田有花)
28.待宵の田わたる風に身の軽く/柳原美知子
明日は十五夜。いつの間にか夏の暑さは遠く、田の上を渡る風も軽く心地よいものとなっています。 (多田有花)
31.旧友と並んで歩く秋の夜/西村友宏
秋の夜の散歩はいろいろな感慨が蘇ります。並んで歩く旧友も同様なのか黙っています。 あるいはこの旧友は詠み手の心の中で並んで歩いているのかもしれない、とも思いました。(友田修)
33.読み終えて栞挟めば虫の声
秋の夜、ゆったりとした気持ちで本を読む。そして、今日はここまで、と読み終えて栞を挟んだ時に聞こえる虫の声。日本の情緒を感じます。 (高橋秀之)
知らず知らず読みふけっていた書物。ふと目をあげて一休みするために栞をはさめば、戸外からは虫の声。秋の一夜の景色が鮮やかです。(多田有花)
36.梨届く段ボール畳む昼下がり/髙橋句美子
送られた段ボールに詰まった瑞々しい梨を、一個ずつ丁寧に手にとって移し、段ボールを畳む嬉しい昼下がり。秋が実感されるひとときです。(柳原美知子)
02.市松の切子硝子や秋うらら/小口泰與
05.身に入むや現世哀しき事ばかり/桑本栄太郎
10.鶏頭の一群風にうねるかな/弓削和人
15.秋の虹新国王の城囲む/廣田洋一
16.旅先で大空みれば中秋の月/高橋秀之
17.目の前を行ったり来たり秋茜/高橋秀之
18.秋の風ふと爽やかに頬を撫で/高橋秀之
22.迎え火を焚く嬉しさよ茄子の牛/吉田晃
28.待宵の田わたる風に身の軽く/柳原美知子
32.弧を描く打球の先に光る月/西村友宏
33.読み終えて栞挟めば虫の声/西村友宏
35.秋晴れに雲一つなし海の青/髙橋句美子
37.秋桜の揺れる畑よ青き空/友田 修
38.重陽の雲間に見ゆる白き月/友田 修
■選者詠/髙橋信之
40.黒ぐろと葡萄の粒が露を噴く
瑞々しい葡萄の一粒を細かいとこまで丁寧に観察れていて、鮮明に様子が浮かびました。 (西村友宏)
42十五夜の盆にいびつな梨が載り
名月のお盆には勿論お団子もあり、そこにはいびつな梨もおかれている。いつもの十五夜のお供えです。お月様奇麗でしたね。 (祝恵子)
41.酢橘二個ころがり二個のみどり濃く
■選者詠/髙橋正子
26.精霊バッタ飛び発ち翅のみどり透く
精霊飛バッタには確かに、薄い翅と厚い翅があって、飛び発つ時でなければ薄い翅を見ることはできない。昔から見てきたはずなのに、言われて初めて気づく。この句を見ていると、臥風先生の「てんとう虫の背が割れ空へ一直線」が浮かんでくる。(吉田晃)
25.名月のやすらう空の鉄色に
曇り空に名月がゆったりと黒雲を照らして鉄色の輝きに染め昇ってゆく。曇り空にも味わい深く心やすらう名月です。(柳原美知子)
27.雹跡の疵梨剥くも野趣ふかし
■互選高点句
●最高点(同点2句/6点)
06.ふるさとの最後のひとつ梨を剥く/桑本栄太郎
19.燕去り風は軽さを加えたり/多田有花
集計:髙橋正子
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