■2018年8月月例ネット句会■
■入賞発表/2018年8月13日
【金賞】
28.列車窓大暑の海をひき寄せて/柳原美知子
「海をひき寄せて」が圧倒的だ。海岸線を走る列車の窓に、大暑の海が引き寄せられる。暑さの中の涼しい海。作者の存在感が強い。(高橋正子)
【銀賞/2句】
12.透き通る硝子の皿に水茄子漬け/高橋秀之
水茄子は泉州の名産。柔らかで瑞々しい水茄子は、漬け上がりの色も美しい。硝子の皿に盛られ、食卓を涼やかにしている。(高橋正子)
32.月影を乱して入れり露天風呂/廣田洋一
月影の露天風呂。月夜の露天風呂の静けさ。そこをあえて乱して入るのだ。「乱して」がいい。(高橋正子)
【銅賞/3句】
02.香り立つうすき白さや稲の花/桑本栄太郎
稲の花は、白くちらちらとして、儚げである。それを「うすき白さ」といった。「香り立つ」が、稔りの秋を予感させる。(高橋正子)
08.立秋の朝日が差しぬ前山に/多田有花
さっぱりとくっきりとした句だ。いつも見る前の山に朝日が差した。立秋となって、朝日が爽やかなった。一日のことで変わる。(高橋正子)
33.病窓の青深々と秋の空/廣田洋一
病窓から見えるものは空。今日の空は深々と青く、秋の空である。心境が思える句だ。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
12.透き通る硝子の皿に水茄子漬け/高橋秀之
水茄子だけでも、みずみずしく感じるが、更にガラスの皿の冷たさが伝わってくる。(髙橋句美子)
28.列車窓大暑の海をひき寄せて/柳原美知子
列車窓大暑の海をひき寄せて海岸線を走る列車の窓いっぱいに7月23日頃の赤々とした夏の暑さの頂上にある太陽をひき寄せている、真夏の景が素晴らしいですね。(小口泰與)
32.月影を乱して入れり露天風呂/廣田洋一
旅先のくつろぎのひとときでしょうか。 空の月と地の湯。そこはかとない旅情を感じます。(河野啓一)
33.病窓の青深々と秋の空/廣田洋一
立秋の日。病院の窓から見上げた空は良く晴れ上がり、秋の到来を告げていた。快癒に向かう気配も感じられ心軽やかな気分にさせてくる青空だった。 (古田敬二)
35.蓮の花抽き出て風に吹かるるよ/高橋正子
咲いたばかりの清楚な蓮の花が仄かに香り、薄緑の茎とともに風に吹かれている水辺。一陣の涼風が心身を吹き抜けるようです。(柳原美知子)
02.香り立つうすき白さや稲の花/桑本栄太郎
08.立秋の朝日が差しぬ前山に/多田有花
【高橋正子特選/7句】
24.新涼と思えば故郷山と川/古田敬二
暑さの中にふと涼しさが混じり始めるころです。季節の変化を受けて、幼い頃に駆け回られた山や川の情景が浮かんできます。 (多田有花)
08.立秋の朝日が差しぬ前山に/多田有花
12.透き通る硝子の皿に水茄子漬け/高橋秀之
20.夏休み目の中輝く小学生/高橋成哉
28.列車窓大暑の海をひき寄せて/柳原美知子
32.月影を乱して入れり露天風呂/廣田洋一
33.病窓の青深々と秋の空/廣田洋一
【入選/15句】
01.祈る事数多ありたる八月に/桑本栄太郎
8月は、原爆忌、お盆、日航機墜落忌と冥福を祈る日が多い。その事を、数多ありたる、と簡潔に詠んだのが上手い。 (廣田洋一)
同感です。広島と長崎の原爆忌、今日は日航機墜落事故から33年。お盆に終戦記念日、偶然とはいえ、慰霊と鎮魂の月です。(多田有花)
15.秋立ちて幼子庭を二歩三歩/河野啓一
今年は連日全国的な猛暑日が続き、熱中症の危険より命を守る為、不要不急の外出は避けてるよう言われて殆どの老人子供達は家で過ごす事が多かったようである。そのような状況下、立秋を迎え急激に涼しくなり、幼子も戸外を歩き始めました。猛暑の間でも成長を続ける命があり、涼しくなった喜びも溢れている。 (桑本栄太郎)
17.畑より前籠に西瓜押してくる/祝 恵子
畑から取りたての西瓜を自転車の前籠に入れ、傷つけないように汗をかきながらゆっくりと押して持ってきてくれた友。瑞々しい西瓜の輝きと温かい絆に、元気をいただきます。 (柳原美知子)
22.供花ならむ右手に鬼灯左杖/古田敬二
情景が見えてきます。傍にはお孫さんがご一緒かも。(祝恵子)
04.一瞬の黙や花火の打ち上がり/小口泰與
夏祭りにつき物の華やかな大輪の打ち上げ花火。その中に一瞬の黙を聞かれたところが素敵です。 (多田有花)
05.とんぼうや乱れて薄き山の雲/小口泰與
蜻蛉の飛ぶ空となり、山の雲にも秋の到来が実感されます。しんとした山の空気まで感じられるようです。(柳原美知子)
18.立秋や島へと土産大空へ/祝 恵子
ご主人がたしか離島のご出身とうかがっています。その島へお土産をたくさん持って帰郷されるところ。飛行機が離陸した瞬間を詠まれていますね。 (多田有花)
37.交差点浴衣の人人すれ違う/髙橋句美子
夏祭り、夜店など浴衣の人々がすれ違う交差点は、非日常の華やいだ雰囲気です。ひとときの日本の夏の風物詩に心やすらぐ思いです。(柳原美知子)
03.長子とう吾に家なき草田男忌/桑本栄太郎
09.秋立つ日燕の姿探しけり/多田有花
10.不揃いの合奏鈴虫鳴き始め/高橋秀之
21.ビジネス街隙間に見える夏夜空/高橋成哉
30.五穀米炊いて仏に秋暑し/柳原美知子
31.秋立ちぬ靴音高く追ひ抜かれ/廣田洋一
39.夏晴れて紅茶を淹れる昼下がり/髙橋句美子
■選者詠/高橋信之
27.日が昇る妻が育てし帚木に
奥様が育てられた帚木、こんもりと生長した帚木に日が昇り、柔らかい緑に染まると、一日の始まりが喜びをもって感じられます。共に歩まれた日々が思われます。(柳原美知子)
25.日が昇る今日の始り帚木に
26.帚木をやさしく包む朝の陽よ
■選者詠/高橋正子
34.蓮は実に金魚ついっと泳ぎ出づ
35.蓮の花抽き出て風に吹かるるよ
36.寺の道青いちぢくの青匂い
■互選高点句
●最高点(5点/同点2句)
12.透き通る硝子の皿に水茄子漬け/高橋秀之
32.月影を乱して入れり露天風呂/廣田洋一
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
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