■2018年7月月例ネット句会■
■入賞発表/2018年7月8日
【金賞】
03.石段へ薔薇の崩るる朝かな/小口泰與
石段へ薔薇の崩れた花びらが散っている朝。散ったのは暁か。石段の清潔さ、華やかな薔薇の儚さが、一層薔薇を美しく思わせる。(高橋正子)
【銀賞/2句】
06.隠岐やいま漁火せまる楸邨忌/桑本栄太郎
楸邨忌は、7月3日。楸邨は、隠岐に流された後鳥羽上皇に思いを重ねるため、昭和16年隠岐に遊んだ。36歳の時。そのときの句に「隠岐や今木の芽をかこむ怒濤かな」がある。この句を下敷きとした句で、類想句とも言えるが、楸邨の忌日に隠岐へ押しせまる漁火に、作者もまた、隠岐への強い思い、楸邨への思いを重ねたのである。(高橋正子)
07.大和路を各駅停車夏の旅/古田敬二
大和路を各駅停車の電車でゆっくりと、時間を巻き戻したように旅をする。日がいつまでも高い夏だからこその各駅停車の旅なのだ。(高橋正子)
【銅賞/3句】
25.焼き具合いかにと覗く初の鮎/祝恵子
今年初めて食べる鮎。焼く火の加減、焼き色にも、どうか上手く焼けますようにと、細心の注意を払う。みんなが初鮎の焼けるのを楽しみにわくわくしているのだ。(高橋正子)
14.テーブルに座ってまずは冷奴/高橋秀之
いかにも涼しそうな夏のテーブルの景が見える。座って先ず、冷奴の冷たさを喉に通す。これでひとまず落ち着いてゆっくり食事をいただくのだろう。さっぱりとした句だ。(高橋正子)
28.まるまると桃が売られる帰り道/髙橋句美子
帰り道は、仕事の帰り道か。店頭には、桃がまるまるとして売られている。手にそっと取りたいような瑞々しい桃だ。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
25.焼き具合いかにと覗く初の鮎/祝恵子
まだかな、まだかな、とそわそわしながら焼き具合を覗き込む気持ちが、初の鮎の感じを引き立ててます。(高橋秀之)
06.隠岐やいま漁火せまる楸邨忌/桑本栄太郎
壱岐は流人の島、漁火を後鳥羽上皇たちも眺めたことでしょう。7月3日は加藤楸邨の忌日。人間探求派として活躍し、金子兜太、森澄雄らを育てました。(多田有花)
03.石段へ薔薇の崩るる朝かな/小口泰與
12.眼科受診思い立ちたり半夏生/河野啓一
14.テーブルに座ってまずは冷奴/高橋秀之
34.夜濯ぎの干す衣に近く大き星/高橋正子
36.百合の巨花わが胸丈に匂うなり/高橋正子
【高橋正子特選/7句】
07.大和路を各駅停車夏の旅/古田敬二
時間の制約を受けず、気ままに巡る旅。大和路であれば見所も多いことと思います。いまごろなら日も長く、ゆったり旅することができるでしょう。(多田有花)
古都、古寺を巡る明るい夏の旅。各駅停車の旅に、ゆったりとした豊かな旅の充足感が感じとれます。(藤田洋子)
31.石鎚を容れて夕虹くっきりと/柳原美知子
夕べにくっきりと出た虹。その半円の虹の中にくっきりと見えた石鎚山。「容れて」がいいと思います。(古田敬二)
24.雨雲の切れて日の差しオクラ咲く/藤田洋子
豪雨も止み、雲間から差す日差しに咲いたばかりのみずみずしいオクラの花が明るく浮かび上がります。安堵の気持ちと植物の生命力に励まされる思いがします。(柳原美知子)
06.隠岐やいま漁火せまる楸邨忌/桑本栄太郎
14.テーブルに座ってまずは冷奴/高橋秀之
25.焼き具合いかにと覗く初の鮎/祝恵子
28.まるまると桃が売られる帰り道/髙橋句美子
【入選/12句】
15.無人駅ひとり佇み団扇風/高橋秀之
故郷の無人駅を思います。懐かしい人たちを、一人佇み昔のことを思い出しています。(祝恵子)
無人駅のひっそりとした静けさの中、柔らかい団扇の風が心地よく感じられます。 (髙橋句美子)
18.明易き夜を徹しての水防団/多田有花
先週からの梅雨豪雨では、水防団の活躍が目立った。防災や救助に夜を徹しての作業には敬服する。感謝の気持ちを込めた一句と思います。 (廣田洋一)
20.雨土のなだれるあはれ夏あざみ/廣田洋一
豪雨の度におこる土砂崩れ。今回もまた大雨特別警報の中、各地で多くの被害が出、胸が痛みます。一日も早い復旧をお祈りいたします。(柳原美知子)
26.向日葵は目立つ所へ店頭へ/祝 恵子
七月、梅雨はまだ続いていますが、店先では真夏の演出が始まっています。その象徴である向日葵が紫陽花に替わって店頭の目立つ場所に飾られ始めました。(多田有花)
27.雨に耐え百合の白さよ咲いており/祝恵子
風雨のなか気高く美しく咲き続ける日本の美が目に浮かびます。(河野啓一)
33.豪雨止み農夫青田を巡回す/柳原美知子
今回の梅雨の大雨は3日間も降り続け、がけ崩れ、河川の氾濫などの緊急避難指示が全国至る所に出され、沢山の被害を齎しました。危険な豪雨が一段落すれば、農夫は真っ先に田圃を見回ります。 (桑本栄太郎)
08.大和路の苗田の曲線美しく/古田敬二
日本の原風景である大和路の苗田の緑の中に浸り、奈良の時代に思いを馳せながらの心豊かな旅が思われます。(柳原美知子)
10.幼子の昼寝覚めたり額の花/河野啓一
昼寝の覚めた幼子に、淡く優しい額の花の彩りを思います。幼子と額の花へ向けられる温かな眼差しの情景です。(藤田洋子)
16.橋脚を滔々とうつ五月川/多田有花
大河の橋脚に次々と濁流が押し寄せ、梅雨の豪雨の怖さを感じます。五月川の迫力と臨場感が感じられます。(柳原美知子)
19.青天にきりりと着たる白浴衣/廣田洋一
青天と白浴衣の鮮やかな色彩に、「きりり」と羽織る浴衣も好ましく、美しく清々しい日本の夏を感じます。(藤田洋子)
01.青りんご煙る浅間と千曲川/小口泰與
23.梅雨雲のたちまち雨の来る迅さ/藤田洋子
■選者詠/高橋信之
★花合歓の光あふるる下に居る
梅雨が上がると、夕暮れの薄明かりの中で、細かい糸を無数に集めたような淡紅色の美しい花を開く合歓の花の下にいる至福の時間を充分に満喫している作者。素敵な景です。 (小口泰與)
★梅雨の灯を受けて広がる広皿よ
★炎天の建築現場のヘルメット
■選者詠/高橋正子
★夜濯ぎの干す衣に近く大き星
暑い季節なので洗濯の回数が増えます。昼間に着たものを夜に洗い、そのまま干します。洗濯物を干しながら見上げると夜空に大きな星たちが見えました。(多田有花)
★百合の巨花わが胸丈に匂うなり
すっくと高く茎を伸ばし花開く百合と、傍らに立つ作者の姿がありありと思われます。ひときわ強い芳香を放つ、百合の巨花の存在感です。(藤田洋子)
★今日の衣を今日夜濯ぎに風うれし
■互選高点句
●最高点(6点)
31.石鎚を容れて夕虹くっきりと/柳原美知子
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
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