絵話塾だより

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2020年5月1日(金)文章たっぷりコース13回目の授業内容・高科正信先生

2020-05-04 16:13:55 | 文章たっぷりコース
今回も少人数で行いました。

在宅時間が長い中、皆さん何か特別なことをしておられますか?
高科先生は、この機会に紙モノを片付けておられるそうです。
今後は読まないであろう書物や、出版前の校正紙やゲラなど、
たくさんゴミを出したそうです。紙は重いので、収集の方はご苦労様です。



今日はまず、以前から学んでいる辰濃和男さんの『文章のみがき方』から
「小さな発見を重ねる」というテーマです。

高科先生が絶賛する向田邦子さんが、女性が働く時の心構えについて
「どんな小さなことでもいい。毎日何かしらを発見し、『へえ、なるほどなあ』と感心をして
面白がって働くと、努力も楽しみの方に組み込むことが出来るように思う」
と言っているのですが、これは文章を書く時にも大切な心構えになるそうです。
彼女は、「神は細部に宿りたもう」という言葉をよく引用していたように
日常の些細なことを見逃さずにすくい取り、魅力的な文章にする名手で
短い場面を切り取られたものが、脚本の中に丁寧に書き込まれているそうです。

その例として、飛行機事故で亡くなる前の最後のエッセイ集『女どき 男どき』から
山小屋に居る雑種犬がスキー客に豚汁の肉片をねだる「草津の犬」と
小学校の遠足の時、足の悪い同級生の母親からたくさん押しつけられた「ゆでたまご」
を読んでくださいました。



イチロー選手がボールを捉える「動体視力」に優れていたように、
彼女には情景を文章に換えていく「洞察視力」が優れていたのでしょう。
文章を書くうえで「洞察視力」は重要ですし、この力は鍛えれば鍛えるほど
強まっていくものなのです。

先生によれば、作家は作品の中でどうでもいいようなことに力を入れがちなのだとか。
テーマだけを書いていると息が詰まってくるので、そこを緩和させるためにも
脇役に焦点を当てて書くことがあるそうです。
そのおかげで、物語自体が膨らむことがあるのです。

向田さんはスチール製の「『う』の引き出し」を持っていたそうです。
『う』とは、うまいものの『う』。
食通の彼女はおいしい物を食べた時に、パンフレットやメモ書きをそこに入れる
言わば宝箱のようなものでした。

からっぽの引き出しを用意して、そこにいろんな物を入れていき
必要な時に取り出して見るということは、文章を書く時も役立つでしょう。

今はコロナ禍の活動自粛で、いつもより時間がゆっくり流れているので
私たちも立ち止まって考える時期かもしれません。
時間の流れがゆっくりになると、いろんなことが違って見えます。
今回を良い機会と捉えて、引き出しの中にさまざまなものを溜めていきましょう。

続いては朝日新聞のコラムから、生物学者の福岡伸一先生と
文化人類学者の松村圭一郎先生の文章を見ていきました。
普段は難しい論文を書いているであろう学者の方々が、
一般にも分かりやすい平易な言葉を使った短い文章の中で
しっかり伝えたいことを記しているのは、興味深いものでした。

実は福岡先生は、子どもの頃に加古里子(かこさとし)さんの『かわ』を読んで
科学者を目指したのだそうです。

そこで、『かわ』を読み聞かせてくださいました。



1962年に出版されたこの作品は、山奧の水源から水が流れてせせらぎから小川となり、
いろんな場所を流れて行くうちにどんどん大きくなって
最後は大海原に注ぐところまでを描いた “知識絵本” です。
子どもの頃この本に出会った人は、ものごとを不思議に思ったり
なぜそうなるのかを考える人に育っていくでしょう。

今日の最後は、その福岡先生と彼が尊敬する かこさとし さんの共著
『ちっちゃな科学 好奇心がおおきくなる読書&教育論』を紹介してもらいました。



本の中で、かこ さんは子どもの興味を持つ対象の多様性について語っています。
一口に昆虫が好き、と言っても、カブトムシだけではなくトンボやバッタに興味を持つ子もいます。
だから、かこ さんの絵本は細部に渡ってさまざまな描き込みがされています。
この世界は多様であり、自分はどこか端っこに存在している。
でも、端っこでも世界の中にいることには変わりない、ということを表すために
かこ さんは繰り返し大勢を描いていたのだそうです。

今日は、ざっくり「情景描写」について学びました。
そこで、今回の課題は「情景を描写する」です。
誰か、または何かが、ブランコに乗って、漕いでいる情景を
ありありと目に浮かぶように書いてください。
長さや内容は自由。ストーリーはあってもなくてもOKです。
誰がどうやって漕いでいるのか、本人が見ている景色はどんなのか
周囲からどう見えているのか、時間帯はいつで、場所はどんなところか
どんなブランコなのか、何のために乗ったのか、等々。
情景を描写するのは、第三者に伝えるために特に大切ですので
頑張って書いてください。

提出は、次回15日の授業時にお願いします。
出席出来ない方は郵送でも受け付けますので、よろしくお願いします。








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