先日NYに遊びに行ったときにNYPという病院では
RDが栄養失調の診断をすることで病院に収入をもたらしていると書きましたが、
詳細な論文を手に入れました
http://ncp.sagepub.com/content/early/2013/10/30/0884533613508788
内容読みましたが、やっぱり画期的です。
これによるとアメリカの医療保険制度では入院患者の医療費は主病名と病院の位置づけで大まかに決められます。
さらに主病名以外の合併症や共存する病態(MCC,CC)が治療に影響を及ぼしたり、
入院期間が長くなったり、ケアの必要性が上がるなどする場合は
先に述べた主病名と病院の位置づけによって決定される医療費が割り増しになります。
合併症と共存する病態は、MCC(major complication or comorbidity)
と CC(complication or comorbidity)のどちらかですが、
MCCはCCより重いと考えるのがいいかと思います
どれほどの医療費の違いになるかというと
たとえば脳血管疾患が主病名の場合
①脳血管疾患のみで合併症や共存する病態がない場合 基本の医療費×RW(0.7506)
②脳血管疾患に合併症や共存する病態(CC)がある場合 基本の医療費×RW(1.0174)
③脳血管疾患に重い合併症や共存する病態(MCC)がある場合 基本の医療費×RW(1.7056)
もし基本の医療費が10万円とすると、①の場合 75,060円
②の場合 101,740円
③の場合170,560円
というわけでMCCがない場合と比べてMCCがあると保険会社から病院に医療費が倍ほど出るというわけです
栄養失調もMCCやCCに該当することになっており、
ASPEN(アメリカ静脈経腸栄養学会)がNYPと共同でエビデンスある栄養失調の診断について論文を発表しています
それらの指標にのっとって、しっかり根拠のある栄養失調と診断がつけばMCCやCCとしてカウントできるわけです。
とはいっても、主病名の他に採用できるMCCやCCはひとつだけ
どんなMCCやCCかによって支払われるお金は異なるため、
その人に最も多く支払われるMCCやCCを選択する必要があります。
そのため、多くの人は主病名と、付随する疾患でお金のとれるものをMCCやCCとしてあげ、
栄養失調がMCCやCCとして取り上げられる頻度は
それほど多くはありません。
しかし、入院患者の半数以上が栄養失調といわれる現代、
主病名でしか保険での医療費が下りてなかった人で
栄養失調があれば合併症として挙げ、
それに対する治療、医療費が支払われるのです!
画期的ですね!
もし他の合併症が多く保険が出るとして栄養失調にお金が支払われなかったとしても、
患者さんの疾患名として栄養失調があげられ、それに対する治療として
栄養介入が計画され、モニタリングされるということは
本当に大切なこと。
お金が取れなかったとしても意味のあることです。
医者は栄養に関することはRDにまかせっきりということですが、
治療プランの一部として栄養改善が入ってくるため、
主治医や医療チームと話したり、栄養に関するコンサルトが来ることも増えたのだとか。
病院としても栄養士が積極的に患者のアセスメントや治療を行うことでお金が入ってくるとなれば
採用する人数を増やしたりする可能性も出てきます
ああ、アメリカのRDは日本の管理栄養士よりも20年くらい進んでると思うけど、
日本にそんな時代がくるんだろうか・・・。
ブログ読んでくれている栄養士さんたち、がんばりましょう!