かちこのアメリカ奮闘記その後

アメリカの大学院での登録栄養士(RD)を取得、帰国して日本の病院でNST奮闘中

アメリカの肥満防止政策

2012年01月05日 | RD(アメリカの管理栄養士)

アメリカは世界で一番の肥満大国です

日本では肥満の子供の割合が1割程度なのに対して

アメリカでは過去40年間で子供(12-19才)の肥満者の割合が

3倍に膨れ上がっています。

2010年のデータによると72%の男性、

68%の女性が肥満(obese)またはオーバーウェイト(overweight)で

2-19歳の子供では32%が肥満またはオーバーウェイトとされています。

この肥満の増加に対して政府などはさまざまな政策をつくって改善を試みていますが、

なかなか効果が上がらないのが現状です。

もっとも、いろいろな政策があったからこそこのような数字ですんでいて、

それらがなかったらもっと悲惨な状況になっていた可能性は否めませんが・・・。

肥満は糖尿病、高血圧、心臓病、脳梗塞、一部の癌など、さまざまな病気の原因になるとして

アメリカでは肥満防止は医療費の削減につながるという考え方が主流です。

そのため、肥満防止対策が国の緊急課題となっているのです。

また、特に子供のころの肥満は将来の健康を害するだけでなく、

・自分に自信がもてない

・友達が少ない

・成績が悪い

などの影響が出ることもわかってきています。

アメリカは日本と違って、

国の政策以外に州の政策や法律が大きくそこに住む人に影響を及ぼします。

また、州の政策はかなり簡単に成立してしまいます。

そのため各州ごとに特徴のある政策がとられており、

それぞれに論文などでそれらの効果が発表されています。

いくつかの取り組みをあげると

国全体の取り組み

・Let's move!

(ミッシェル・オバマが始めたキャンペーンバランスのとれた食生活に加えて

 子供の運動を増やすことに焦点がおかれている)★1

州や市単位の取り組み

・最近始まったレストランでのカロリー表示義務

 (ニューヨークでは始まったばかりで効果はまだ評価されていない)★2

・一部の公立の学校で取り組まれている学校給食の低脂肪乳

 または無脂肪乳しか提供しない取り組み★3

・カリフォルニアでいち早く取り入れられた、

 学校の自動販売機ではペットボトルの水しか提供しない取り組み

 (ほとんどの学校はジュースやスポーツドリンク、

 お菓子などを購入できる自動販売機が設置されている)

・ニューヨーク市で取り入れられている、

 一定の栄養価をクリアしないと学校では販売できない政策

 (カロリーや脂肪の割合などで、学校では販売してはいけないという基準が

 設けられている)

・ソーダ税

(一部の州ではソーダに特に多くの税金が課せられている。

 日本でたばこに税がたくさんかけられているのと似たような感じで、

 体に悪いんだから税金を特別高くかけてあまり買わないようにさせる狙いがある。

 しかも税金収入が増えるので国や州としては一挙両得)

 

その他もろもろ、マクドナルドのおまけもそうですが、

小さいものから大きいものまでいろいろな政策が作られているんです。

以下は上記にあげた例の出典です。参考まで。

でも私としては日本のようにバランスのとれた給食と、

家庭科などでされる栄養教育が重要なんじゃないかと思うんですが・・・。

ただ、日本の子供たちもどんどん欧米化してきて肥満が増えているらしく、

世界的な問題ですね。

私も日本の子供たちの尿酸値がとっても高いとか、

肥満の割合が増えていると聞くと、

何かできることはないかと焦る気持ちでいっぱいです。

日本に帰国した暁には子供の栄養教育をしている人たちの取り組みに

協力したいなと思っています。

★1 http://www.letsmove.gov/learn-facts/epidemic-childhood-obesity

★2 Elbel B, Kersh R, Brescoll VL, Dixon LB. Calorie labeling and food choices: A first look at the effects on low-income people in New York City. Health Aff. 2009;28(6):w1110-1121

★3 http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5903a2.htm