かちこのアメリカ奮闘記その後

アメリカの大学院での登録栄養士(RD)を取得、帰国して日本の病院でNST奮闘中

誤嚥性肺炎の入院治療は食べられない患者をつくる?!

2016年09月09日 | 日本の病院での奮闘記

高齢の誤嚥性肺炎の患者さんで

肺炎は治ったけれど

寝たきり

食事も食べられなくなったために自宅に帰れない・・・

そんな患者さんを最近よく見かけませんか?

 

先日都内で勉強会があり

とても興味深い内容だったので書き留めておくことにしました

食べ物を飲み込む力は年齢を重ねるごとに徐々に低下してきますが

飲み込みの機能の低下は加齢の他に

低栄養と全身の筋力低下(サルコペニア)と

関係があることがわかってきました

特に入院患者ではベット上安静によって筋力が落ち

食事を食べさせてもらえないことと

不十分な点滴からの栄養投与によって

栄養状態が悪くなりがちです

 

飲み込むという一連の動作は

舌や、喉の筋肉の複雑な連携によって成り立っていますが

食事を食べないことによりそれらの筋力も急速に低下します

 

ある研究では、

入院前は食事を摂れていたが入院時に禁食にされていた誤嚥性肺炎患者

6万6000人超のうち

41.0%が30日後に経口摂取(3食)を摂れなかった、

ということがわかりました

 

講演者の前田先生(玉名地域保健医療センターNSTチェアマン)は

食べる能力を保ちたい患者であれば

酸素マスクを使っている患者以外は原則禁食にしていない

と話していました

少量のゼリーでも、飲料でも

経口摂取を継続することが

嚥下機能の低下を防ぐと実感しているというのです

また、少量ではあっても経口摂取を続けることで

不足する点滴からの栄養量を補充することができます

近年では

・「舌の厚みは上腕筋量と相関している

・「舌の力は骨格筋量と相関している

・「咀嚼力はサルコペニアと関連している

などといわれています

早期に全身を動かし

栄養を充足させることが重要です

安易なベット上安静と禁食は避ける!

このことが

高齢の誤嚥性肺炎患者を(食事で)自宅に帰すことにつながるのです

 

とはいっても食べさせることにリスクがあったり

意識レベルが安定しない患者さんが多いのも事実

 

禁食になってしまったら

他にできることはないのでしょうか?

 

禁食中でもできること

・口腔内の清掃(誤嚥からの肺炎を防ぐ)

・口腔内の刺激や、口や舌を動かす体操

・しゃべる、歌う

・車いすに乗せる、ベットアップすることにより、首の筋力を保つ

 頭の重さが3kgの場合、首へかかる力は 

 ①伏臥:0kg ②30度ベットアップ:1.5kg ③60度ベットアップ:2.6kg

・さらなる低栄養を防ぐ

 

口から食べて、自宅で最期を迎える

昔は当たり前だったことが

近年はとても難しくなってきていると感じます

今後ますます増えると考えられる高齢者の誤嚥性肺炎

そしてその原因となるサルコペニア

これに立ち向かうためには

医師、看護師、リハビリ(嚥下、全身)、薬剤師、栄養士

他のコメディカル

全ての職種による協力と連携が求められているのではないでしょうか

 

栄養士だけではできることはほんの少し

いろいろな職種の人と協力して

患者さんに寄り添う医療ができたらいいなと思います