かちこのアメリカ奮闘記その後

アメリカの大学院での登録栄養士(RD)を取得、帰国して日本の病院でNST奮闘中

アメリカでの子供の肥満予防対策

2011年12月09日 | RD(アメリカの管理栄養士)

先日、サンフランシスコで新しい子供の肥満予防のための法律ができました!

ファーストフードの子供用のセットミールで所定の栄養基準を満たしていないと

おまけのおもちゃをつけられないというものです

ただ、親(子供)がどうしてもというようであれば10セント出しておまけだけを購入できます。

基準は一食あたり

・カロリーが600kcal以下

・脂肪が全カロリーの35%以下

・1/2カップ分の果物

・3/4カップ分の野菜

・ナトリウム640mmg以下

・トランス脂肪酸0.5g以下

というもの。

ちなみにマクドナルドのハッピーミールは果物と野菜の基準を満たせないため

サンフランシスコではおまけがついてこないということです

マクドナルドの売り上げが落ちることは必須な気がするけど、これでどれだけ

子供の肥満に歯止めがかかるのか、

かなり向こう見ずな法律だと思うんですが・・・。

アメリカは各州が法を持っていて、かなり独自の法律をつくってしまうことが多々あります。

自動車の運転の規則だって微妙に州によって違ったりするぐらいなんです。

肥満対策で有名な法律は他にソーダタックス(炭酸飲料に上乗せされる税金)など。

でもそんなことに時間を費やす暇があったらもう少し教育に力入れようよと

思ってしまうのですが・・・。

学校の義務教育に栄養学や調理学を入れるべきだと思うんだけどな・・・


ダイエットの患者さん

2011年11月14日 | RD(アメリカの管理栄養士)

実は今ウェイトマネージメントの授業をとっています(要は体重を落とす、ダイエット。)

その中で、自分で患者さんを探してきて

栄養指導をしないといけないというプロジェクトがあります。

前にも書いたけど、アメリカは学生の頃から実践実践!

就職したら初日からいっちょ前に仕事するのが求められるので

学生のうちにじゃんじゃん経験を積まされます。

私の患者さんはBMI26くらいの男性

肥満の知り合いがいなかったので、「誰か職場に体重を落としたいひといない?」って聞いたら

「僕がやりたい!」と言ってくれたのでお願いすることになりました。

一回目のセッションはプロジェクトの説明(私がまだ学生だということや、情報をクラスで共有させてもらうことなど)を中心に、

そして患者さんの生い立ちや今の仕事、生活、食生活、食事の好み、運動、家族の病歴(もちろん本人の病歴も)や

サプリメント、薬摂取の有無など一時間かけてたっぷり聞きました

そして第二回目のセッションまでに5日間の食事(食べ物飲み物すべて)の記録をとるよようお願いします。

さらに食べる前後の気分、食べた時間や、食べるのにかけた時間、場所などすべてを記録してもらいます。

そしてその記録をもらってから、じっくりそれを読み込み、

栄養価計算ソフトでどのくらいのカロリー、栄養素をとっているか計算し、

二回目のセッションに備えるわけです。

栄養指導は二回目のセッションから。

二回目のセッションで本人の食事を一緒に見て、栄養価をどのくらいとっているか、

どのくらいのカロリーを多くとりすぎているか、

食事のタイミングや量のバランスの問題点などをわかりやすく説明していきます。

そして、本人と相談しながら今後どうやって体重を落としていくか、プランを練ります。

ここで大切なのは本人ができそうな、そして本人がやりたくなるプランをつくること。

それはこれまでの生い立ちや、考え方、生活のリズムなどにあっていなければ長続きしないからです。

この患者さんの場合はフルタイムで働きながら、夜は大学院生をし、さらにインターンシップも週一回やっているという

超ハードスケジュールなので、相談した結果以下の目標をたてることにしました。

 

・カロリーの摂取を125kcal減らし、運動で125kcal消費する。(これで合計250kcalのマイナス)

・食事を地中海式の食事(Mediterranean Diet)にする

 

一つ目の目標については125kcalへらすにはどうしたらいいか、減らす食品のリストをつくり、わたしました。

(例:ビールを飲まない。間食にしていたピザをやめてヨーグルトとフレッシュフルーツにするなど)

運動についても125kcal燃焼させるための運動のリストをわたしました。

具体的には今後一週間

・昼休みに職場の近所を20分間ウォーキング(ちょっと息が切れるくらい早いスピード)

・間食を甘いお菓子やジャンクフードからビタミンやミネラル、食物繊維の多い、満腹感のある健康的な間食にする

ということになりました。

また、食事の記録から、昼ごはんから夜ご飯までの時間がとても長くあいてしまうことや

それが原因で夕食でドカ食いをして一日の半分以上のカロリーを夕食で摂取していることなどがわかったため

・昼ごはんの時間を一時間遅らせる

・昼ごはんと夕食の間の間食をやや満腹感のあるものにする

・夕食を軽めに食べるようにこころがける(油少な目)

・朝ごはんをしっかり食べる

といった感じです。

また、万歩計をもっているということだったので久々に万歩計をつけてみることになりました。

 

あれから2週間。

昨日メールが届き、プランは順調とのこと。

万歩計も最初の週は4000歩が平均だったので次の週は一日6000歩を目標にしたところ、

結果として9000歩歩いていてびっくりしたこと、

毎日お酒を飲んでいたのに、休肝日を一日つくることにしたこと、

食事もばっちり計画どおりということで、

この新しい生活様式を楽しんでいるということでした

 

すごい!やる気満々の患者さん。

このやる気がずっと続いてくれるといいな。

また2週間後に進捗を聞くのが楽しみです。

ちなみに患者さんに刺激されて私も昨日から万歩計復活!

昨日はお休みだったので友達とセントラルパークに紅葉を見に行きました。

とってもきれいな紅葉で楽しんだうえ、17000歩以上歩いて大満足!

ウォーキングの秋ですね・・・


RD合格!

2011年10月21日 | RD(アメリカの管理栄養士)

今日RD(登録栄養士)試験に合格しました!!!

思えばおじいちゃんの病気がきっかけで日本の医療に疑問を持ち出してから

アメリカで栄養の勉強をし直そうと決めるまで数年、

アメリカに行くと決めてから渡米するまで約3年。

アメリカに来てから今まで2年。その間予定外の転学あり、いろいろあり、よくここまで来たという感じです

これもそれもいろいろな人たちの支えなくしてはできませんでした。

本当に感慨深い・・・

ありがとうございます(ぺこり)

 

RDの試験は国家試験で、所定の大学で所定の科目を終了した人が

所定の機関で1200時間以上のインターンシップを終了した後、

インターンシッププログラムのダイレクターを通じて協会での手続きを行って

はじめて試験を受けることができます。

私の場合はインターンシップのためのプログラムに入るためにロサンゼルスの大学院で必要科目を終了し、

その後のインターンシップのプログラムはNew York University(NYU)でやり、

NYUを通して Memorial Sloan-Kettering Cancer Centerで臨床栄養の実習を行い、

WICとHeadstart で公衆栄養の実習を行いました。

その後書類を提出して受験許可を待つも待つも一向に連絡が来ない!

普通は2週間で受験の手続きを始められると聞いていたのに1か月たっても音沙汰がないので

大学に問い合わせたけど「もうちょっとまってみて」と言われてさらに待つこと2週間。

さすがにしびれを切らせて再度担当の教授に聞いてみたら、協会に電話で問い合わせてくれ、

手続きがなぜか始まっていなかったことが判明!!!

私と一緒に2名のクラスメイトがそんな目にあっていました。

というわけで9月の終わりになんとか受けようと思って始めた受験勉強もなんだか間延びし、

9月の終わりに友達が遊びに来たり、大学院の授業が始まったり、

10月に入ってからは中間試験や課題に追われる始末・・・。

なのでようやく試験を受けられて、合格できてほっとしました!

 

ちなみに試験の感じは日本の管理栄養士の試験に少しだけ似ている感じです。

日本の管理栄養士は試験対策問題集や講座がいろいろありますが、

アメリカの場合もいろいろな受験勉強対策講座やテキストなどがあります。

今回私は3種類の教材を使いました。

2つは友人に貸してもらったもの。1つは自分購入。(一つが1万円~5万円ほどする。結構高い!

なんといっても2年間かけて勉強したことの総まとめの試験で

一から教科書読み直して勉強するなんて量ではないので

うまくまとまっている教材や問題集をこなしながら2年間かけて勉強したことの

ポイントポイントを再度頭に叩き込む感じです

実際に当日の試験問題は125問から145問。時間は2時間半。

(チュートリアルを含めると3時間)

GREやTOEFLのように試験センターでのコンピューター試験

4択問題で、回答を選択すると次の質問が出てくるようになっていて

一度次の問題に進むと二度と前の質問には戻れません。

いろいろな計算問題(経管栄養の量や速度、栄養素量、調理の在庫管理の仕方や価格決定、利益の計算などなど)もあり、

受験者はテストセンターで渡されるメモ用のホワイトボードとマジック、計算機を手にパソコンに向かいます。

分野ごとの正答率が基準より上だった場合に合格が出るということで、総合得点25以上で合格です。

この点数、どうやって計算しているのか不明。

 

それにしても今日試験を受けて思ったことは、

教材3種類もやったのに一度もでてこなかったコンセプトや事柄がたくさんあった~ってこと。

日本ほどそういう教材が発達してないのかな・・・。

しかも2010年の栄養基準勉強したのに、試験で出てきたのは2005年度版のやつだった...。

まあ更新する時間がなかったってことか・・・。

というわけであんなに時間があって、3つも教材やったのに知らない問題があってあせったけど

そんな問題は他の受験生だってきっとわかんないよ~と開き直って受けたのがよかったのか、

合格は合格

この週末はひさびさに勉強をしないでのんびりしたいと思います

資格とったことだし、今後パートタイムで栄養士の仕事を探せたらいいな~。

もし仕事ゲットできたらまたご報告しますね。

ではではおやすみなさい・・・


アメリカと日本の栄養摂取基準改定(インターンシップ2日目)

2011年02月01日 | RD(アメリカの管理栄養士)

今日はインターンシップ2日目。

今日のランチは

白身魚(barramundi)のレモン風味ハーブソテー・インゲン豆のバターソテー・

マッシュポテトのグレービーソース掛け

でした

Barramundiという魚は大型の白身魚で、オーストラリア周辺や東南アジアでよく捕れる魚のようで、

アメリカでは近年養殖に成功したらしく「今料理界で熱い!食材」らしいんです。

病院では明日VIPな方々の来客があるらしく、

そこの食事としてこの魚を提供するけど、

まだ一般の人にはあまり知られていないので、

わかりやすい特徴をタグにしてメインをサーブするテーブルに表示をつくっておいておきたい、

ということで、ちょっと手があいたときに特徴について調べてみました。

健康に良いといわれているオメガ3脂肪酸がとても多く含まれている上、

味はリッチなバター風味。身は柔らかくほんのり甘い。

さらに養殖の際に環境に害を与えることが全くない、

ということで今まさに注目の魚。

食べてみたらてとてもやわらかい白身魚といった感じでした。

味付けはあっさりハーブの香りの塩ベース・付け合せのマッシュポテトが一緒に食べるととってもおいしかったです。

 

ところで、昨日、アメリカでは5年ぶりに栄養摂取基準が発行されました

名前が2010年版となっているので、

2010年中に出したかったけど、押してしまって2011年になってしまったという感じかな?

何十ページにもわたる大作なので、仕事の合間と家に帰ってからぼちぼち読んでいるんですが、

今回のアメリカの栄養摂取基準はこれまでのものと違って、

健康な人のみを対象にしたものではなく、

肥満や生活習慣病の人、生活習慣病予備軍の人たちへ向けても発信しています。

前書きによると、今アメリカの人口の2/3以上が肥満(obese)または太りすぎ(overweight)に分類されるほど

体重が多すぎるらしく、

この人たちを国の栄養摂取基準に織り込まなくてどうする!?といったことらしい。

というわけで、多くのページをカロリーの過剰摂取と運動不足について述べています。

ところで、先ほど家に帰ってから、日本の栄養摂取基準についても調べてみたんですが、

日本の栄養摂取基準も2010年に改訂になってますね。

しかも、まだ序文しか読んでないんですが、こちらも成人病予備軍を考慮に入れたり、

カロリーや栄養の過剰摂取について触れたり、栄養バランスの考え方の記述についても、

「これ同じ文章を訳したんじゃ???」というほど似通っている箇所がありました。

日本の塩分の摂取目標も今回でぐっと減って、アメリカの基準に近づいたし・・・。

どうなってるんだ?

まあ同じ人間の栄養についてなので、似てくる部分があるのは否めないが、

お互い意識しあってつくってるのかな?それとも検討会のメンバーが一部かぶってるのかな???

不思議不思議。

もうちょっと読み進めてみておもしろい内容があったらアップしていきますね


アメリカの栄養サポート3

2011年01月28日 | RD(アメリカの管理栄養士)

今日はA先輩にアメリカの緩和ケアについて少しお話を伺うことができました

私のずっと疑問に感じていた祖父へのTPN。

最近、一番近くで介護をしていた母からその時の状況を教えてもらいました。

どうやら祖父は胆のう癌を取る際にその他の部分も切って、

小腸を胃につなぐ手術もしていたらしい。(Whipple procedure みたいな感じかな???)

そのため、術後は食べたものがちゃんと流れる道筋をつくっていたはいたんだけど

結局その流れがうまく流れず、口から食べられないし、

ENもできないってことになったようです。

A先輩に聞いたら腸が細くなってうまく流れなくなることもあるって。

そういうことだったのか・・・。

手術の説明を聞いたときのメモとかは日本においてきてしまったので、

今確認することはできませんが、

今更、そういう経緯でTPNだったのね・・・。

と納得しました

ただ、祖父のケースがアメリカだったらどうなっていたのか、

癌をすべて切除できなかった上、CTもRTも今更効果ないしってなって、

緩和ケアにすることになったんだけど、

アメリカでは緩和ケアに栄養ポートは一般的に行わないって教科書にも書いてあるし・・・。

 

告知するかしないか・・・。ここにアメリカと日本の医療の大きな違いがあるようです。

日本は癌の告知をするしないって、よくドラマにもなっちゃうぐらいだけど、

告知をしないことにする家族も多いと思います。

アメリカは本人が知る権利があるってことで、告知するのが当たり前。

むしろ本人に本人の病状隠してたら訴えられる???

というわけで、緩和ケアにするかどうか、そして栄養サポートをするかどうかも

本人や家族、医師や、緩和ケア専門の医師や看護婦も交えて十分に話し合って決めるらしいんです

私の祖父の場合は本人に告知はしたけど、

最後の手術で全て取りきれなかったという説明をしてなかった場合、

本人に栄養サポートをするか、どうやって最後の時を迎えたいか、

しっかり話あうってことができないんですね。

これって、なんとも日本ぽい文化なのかもって今振り返ってみて思います。

私だったら癌だったら告知してほしいけど、

もう完治する見込みがなくなった場合に

口から食べ物も食べれなくなって、栄養サポートもせず、

最後の時を迎えたいって言えるかな?

そんな判断、したくないかな~。

しかも祖父のようにTPNしながら2か月くらい暮らしなれた家で家族とともに過ごせた、

そんな時間の価値は家族にとっても本人にとってもすごい貴重な時間だったと思うから

ほんとに人それぞれ、価値観も状況も病状も、家族の考え方もみんな違う。

医療に従事してると、普段接してても見えない、踏み込まない部分に

入っていかないといけない状況がたくさん出てくるんだろうな。

アメリカでの実習は、チーム医療を体験するだけでなく、

いろんな国のいろんな人たちの文化と生き方を垣間見ることのできる

貴重な機会

医療従事者として、知識だけではなく、人としても成長していきたいですね