かちこのアメリカ奮闘記その後

アメリカの大学院での登録栄養士(RD)を取得、帰国して日本の病院でNST奮闘中

管理栄養士の学びの場

2021年01月04日 | 日本の病院での奮闘記

2021年明けちゃいました

昨年の1月に祖母が亡くなったときの投稿から早一年

あっという間の一年でした

 

コロナやらやら、いろいろ大変なことがある中で、

心がわくわくする出来事がありました

それは、アメリカでRDを取得した日本人の管理栄養士さんや、

アメリカで栄養学の研究をしている方たち

日本で栄養学を意欲的に学んで実践している方たちがFacebook でつながったこと

東京に住んでいたときは月1回、思いを同じくする仲間と勉強していたため、

困った症例などは相談する場がありました

でも、現在の場所に引っ越してからはなかなか切磋琢磨できる仲間が近くにおらず、

いろいろな疑問や臨床上の悩みについては

子供を寝かしつけた深夜に

もんもんとネットで検索したりして論文を読んでみたり、

どこにあるかわからない答えを一人で探す日々

やりたかった研究もなかなか進まず行き詰っておりました

そこへ、このグループ

グループの仲間に入れていただいてからは

素朴な疑問について投げかければ

仲間からいろいろな反応や、参考になる文献がおすすめされてきたり・・・

読む論文が多くてアップアップのときもありました

嬉しい悲鳴です

また、コロナ関連の臨床事情や栄養管理の実践的な内容が日本ではあまりないため、

既に感染が爆発的に広がっているアメリカでの

情報やガイドラインをこのグループを通じて得ることができました

 

まだまだ子育てに多くの時間を割いていますが、

限られた時間で思う存分、知らないことを知る楽しみ、

わくわくを満喫していきたいと思います

2021年、始まったばかりですが、

コロナでどうなるかわからない世の中ですが、

実りの多い一年になりますように・・・

ブログ、今の私にできるペースで更新していきたいと思います

見に来てくださった方々、ありがとう

 


大好きな職場、仲間との別れ~新たな出発

2017年02月23日 | 日本の病院での奮闘記

2017年 今年もよろしくお願いします

2015年に子供を出産し、その後半年で復帰

ようやく復帰から一年経とうとしています

 

1歳にならない子供を保育園に預けながら職場復帰することについては

「子供がさみしい思いをするのではないか?

「復帰しても職場に迷惑をかけるのではないか?

と迷いの気持ちもありました

 

でも復帰してわかったことは

「私は病院で患者さんに接する管理栄養士の仕事が好きで好きでたまらない

ということ

「子供のことも好きで好きでたまらない

ということ

そしてその対極にあるようなこの気持ちが

共存できるということです

復帰して約一年、仕事が面白くて仕方ありませんでしたが、

仕事が充実すると、帰り道は子供と会いたくて会いたくて仕方ない

子供がかわいくて仕方ない(←親バカです

患者さんの栄養管理についてはまだまだ勉強しなきゃいけないことが山積みだと感じつつ、

とても充実した幸せな一年でした

 

でもその職場とも、今日がお別れ

家庭の事情で遠くに引っ越すことになったためです

 

担当した職場の看護師さんや薬剤師さん、

お世話になった先生方とお別れをしてきました

先生の処方する薬や点滴に対しても

「栄養的な面からみると○○にした方がいいのでは?

という提案をして

見方によっては”職域を超えてでしゃばっている”

ととれるようなことも発言してきました

でも、コミュニケーションがうまくとれてくると

「○○さんの点滴、○△×という条件で処方提案してくれない?」とか

「経腸を始めたいんだけど、点滴から経腸に移行していくプランを点滴の処方も含めて提案してくれない?」とか

食事以外のことでも電話がかかってくるようになり

やりがいも増していく日々でした

辞めるにあたってそんな先生方から

「すごく真摯に患者さんに向き合ってもらって、僕はずいぶん楽をさせてもらいました」

「いなくなるなんて、残念!」と言われ

がんばってきてよかったなあ~と心から思いました

 

今日で仕事を辞め

新たな地で一から仕事探しが始まります

子育てをしながら、初めての場所での新生活

一筋縄ではいかないかもしれませんが

私の大好きな仕事を続けることを模索しながら

子育ても楽しみたいと思います

次の仕事が見つかるまでの間

時間をみつけて

論文を読んだり

ガイドラインを勉強したり

学んだことをブログにアップしたり

今までできなかったことに時間を使えればいいなと思っています

 

まずは引っ越しの準備!

 

引っ越した後にブログ更新していこうと思っているので

そのときはどうかお付き合いくださいませ

 

 

今夜は

子育てと仕事を両立してきた自分に乾杯!

新しい門出に乾杯!

そして新しい地で素敵な出会いに恵まれますように・・・

 

 


誤嚥性肺炎の入院治療は食べられない患者をつくる?!

2016年09月09日 | 日本の病院での奮闘記

高齢の誤嚥性肺炎の患者さんで

肺炎は治ったけれど

寝たきり

食事も食べられなくなったために自宅に帰れない・・・

そんな患者さんを最近よく見かけませんか?

 

先日都内で勉強会があり

とても興味深い内容だったので書き留めておくことにしました

食べ物を飲み込む力は年齢を重ねるごとに徐々に低下してきますが

飲み込みの機能の低下は加齢の他に

低栄養と全身の筋力低下(サルコペニア)と

関係があることがわかってきました

特に入院患者ではベット上安静によって筋力が落ち

食事を食べさせてもらえないことと

不十分な点滴からの栄養投与によって

栄養状態が悪くなりがちです

 

飲み込むという一連の動作は

舌や、喉の筋肉の複雑な連携によって成り立っていますが

食事を食べないことによりそれらの筋力も急速に低下します

 

ある研究では、

入院前は食事を摂れていたが入院時に禁食にされていた誤嚥性肺炎患者

6万6000人超のうち

41.0%が30日後に経口摂取(3食)を摂れなかった、

ということがわかりました

 

講演者の前田先生(玉名地域保健医療センターNSTチェアマン)は

食べる能力を保ちたい患者であれば

酸素マスクを使っている患者以外は原則禁食にしていない

と話していました

少量のゼリーでも、飲料でも

経口摂取を継続することが

嚥下機能の低下を防ぐと実感しているというのです

また、少量ではあっても経口摂取を続けることで

不足する点滴からの栄養量を補充することができます

近年では

・「舌の厚みは上腕筋量と相関している

・「舌の力は骨格筋量と相関している

・「咀嚼力はサルコペニアと関連している

などといわれています

早期に全身を動かし

栄養を充足させることが重要です

安易なベット上安静と禁食は避ける!

このことが

高齢の誤嚥性肺炎患者を(食事で)自宅に帰すことにつながるのです

 

とはいっても食べさせることにリスクがあったり

意識レベルが安定しない患者さんが多いのも事実

 

禁食になってしまったら

他にできることはないのでしょうか?

 

禁食中でもできること

・口腔内の清掃(誤嚥からの肺炎を防ぐ)

・口腔内の刺激や、口や舌を動かす体操

・しゃべる、歌う

・車いすに乗せる、ベットアップすることにより、首の筋力を保つ

 頭の重さが3kgの場合、首へかかる力は 

 ①伏臥:0kg ②30度ベットアップ:1.5kg ③60度ベットアップ:2.6kg

・さらなる低栄養を防ぐ

 

口から食べて、自宅で最期を迎える

昔は当たり前だったことが

近年はとても難しくなってきていると感じます

今後ますます増えると考えられる高齢者の誤嚥性肺炎

そしてその原因となるサルコペニア

これに立ち向かうためには

医師、看護師、リハビリ(嚥下、全身)、薬剤師、栄養士

他のコメディカル

全ての職種による協力と連携が求められているのではないでしょうか

 

栄養士だけではできることはほんの少し

いろいろな職種の人と協力して

患者さんに寄り添う医療ができたらいいなと思います

 

 


終末期の医療~動物と人間の違い~

2016年08月16日 | 日本の病院での奮闘記

ここ一週間子供が風邪やら胃腸炎やらでお仕事をお休みして

看病に明け暮れていましたが、

動物病院で看護師をしている友人が会いに来てくれたので

旦那様に子供をお願いしていろいろ話をすることができました

その中で、ちょっと心に留まった内容を備忘録として書き留めておくことにしました

 

友人が勤務しているのは動物の高度医療の病院

基本的には紹介患者(動物って患者と呼ぶのかわかりませんが)のみ、

一般の動物病院では難しい手術などをすることが多いようです

その中には、急性期を乗り切っても体力が落ちてしまい、

食欲も落ち、十分に食べられるまで回復しない動物たちもいるとのこと

人間と一緒ですね

私の勤務する病院でも高齢の患者さんが増え、

手術や薬などで病気の治療が終わったあとも

食事が食べられずに、点滴をやめることができない方たちがたくさんいます

その場合どうするか・・・

 

点滴または胃瘻

 

議論の余地もなく点滴を延々と続け、退院できない患者さんたち

認知症があったり、弱りすぎて、意思疎通ができない方たちもたくさんいます

ただただ毎日天井を見つめ、または目もあけずに

点滴につながれたまま、ただ時間だけが過ぎていく・・・

それって幸せなのかな?

死なないでそこに存在するってことが幸せなのか、

そこに存在するってことが家族の幸せにつながっているのか・・・

点滴からその人に必要なエネルギーや蛋白を導き出して

主治医を説得して、

過不足なく栄養を入れることが私の役割ではあるのですが、

それは本当に患者さんのためになっているのか、

自問自答することも少なくありません。

 

友人の話では、動物が口から十分に食べられなくなったとき選択肢は3つ

①いつか食べられるようになることを期待して病院に入院して抹消の点滴を続ける

②胃瘻をつくって家に帰る

③何もせずに家で看取る

①は金銭的な負担も大きく、それほど長くは続けられないし、

②もなかなか介護が大変

というわけで③の、住み慣れた家へ戻って自然な流れで看取るということが多いようです

 

人間では、

ずっと生きていけるだけの十分な栄養を

中心静脈栄養で入れながら長期療養型の病院で生きていく

または老人ホームなどで胃瘻から延々と栄養を入れ続ける患者さんが多く、

③のように家で最期をむかえる患者さんはほとんどいないのが現状です

 

でも、患者さんはどれが幸せなのでしょうか。

私がペットを飼っていて、もし食べられない状況になったら③を選択すると思います。

それが自分の親だったら・・・

意識がなくて食事が食べられなくて、ずっと眠ったような状態のままだったら・・・

どんな選択をするのが本人にとって一番なのか、

家族はどの選択をしたら納得がいくのか・・・

 

動物なら迷わず③を選択するだろうなと思った私が

それが親だったら選択に迷いが生じると感じたことにもびっくりしました

 

 

人間だと医療保険や介護保険で家族の金銭的な負担が少ないため

食事がとれなくなって

意識がなくなって

全く反応がなくなっても

点滴で栄養を補給し

延々と入院している患者さんたち・・・

 

患者さん本人はそんな風に生き永らえることを本当に望んでいるのか?

膨大に膨れ上がって問題になっている医療費を、

このような点滴につぎ込んでしまっていいのか?

限りある病院のベットを、

限りある人的資源を、

このような患者さんたちに費やしてしまっていいのか?

答えは簡単には出ませんが

動物の終末期の現状の方がより「人間としての最期」

に近いと感じるのは私だけでしょうか

 

動物の医療と人間の医療。

遠いようで、すごく多くのことが共通していて、、

医療者や患者の家族の葛藤も共通していることを知り、

いろいろ考えさせられた一日でした


心に残る経腸栄養の患者たち~その後~

2016年04月12日 | 日本の病院での奮闘記

今日はびっくりぽん!なことがありました

近所のスーパーで夕飯の献立を考えながらぼーっと棚を見ていると

ベビーカーの私の子供をのぞき込む初老の男性

「かわいいですね~」と言いながら私の方に顔を向けたその顔に見覚えが・・・

しばしその方の顔を真顔で じ~っ と見てしまいました

・・・そして、私の担当していた、あの患者さんの旦那様だ~!!!

と気づいたのです!

「もしかしてもしかして、〇〇病院(私の勤務先)に前に入院されていた方の旦那様ですか?」

すると

「そうです。・・・あなたは???」と。

そう、実はこの方の奥様は、私にとって忘れられない患者様だったのです

詳しくは昨年出版になった「心に残る経腸栄養の患者たち」に

掲載されていますが

この方の奥様は私の担当した経腸栄養の患者さんだったのです。

私の病院に転院してこられたときは

目を開けるのがやっとで、自分で体を動かすことも、

息をすることもできなかった、

骨と皮だけにやせ細った、

人工呼吸器でかろうじて命をつなぎとめているだけの

初老の女性だったのです

なんとか命だけはとりとめたものの、

あまりの低栄養と全身状態の悪化により、

身体の筋肉がほとんどなくなってしまい、

自分のつばさえ飲み込むことができない状態でした

その患者さんが胃瘻をつくり、いつか自分の口から食べられるようになることを目標に

経腸栄養を始めました

結局一か月以上私の病院にいらっしゃいましたが、

療養型の病院に転院されるまで

ずっと嚥下(飲み込み)の訓練を続けていました

あまりの嚥下機能の低下のために

食べ物は食べられない状態でした

でも経腸栄養で十分に栄養を入れることで

全身状態はかなり改善し、体重もやや増えてきたところでの転院でした

入院されたときは声も出せなかったのに

「大きな声をたくさん出すと嚥下の訓練にもなりますよ」という私の言葉に

よく病室で歌を歌われていた患者さん。

その方にいつも付き添われていたのが今日偶然お会いした旦那様だったのです

食べ物は食べられないまま転院されたこの患者さんですが、

節目節目で私の病院にいらっしゃり、

その後胃瘻の交換、

最終的には

胃瘻の抜去

最後にお会いした時には普通食(ふつうのごはんにふつうのおかず)を

お出しし、持病の糖尿病の栄養指導までさせていただいた患者さん、の旦那様だったのです

 

聞くと奥様はお元気で

旦那様は奥様の飲むビールがなかったので買いに来たとのこと。

歩けるしなんでも食べれるんですよ~ととっても嬉しそうにお話ししてくださいました

「食べるための胃瘻」

一時的に胃に穴をあけ、そこへ栄養剤を直接入れることで

腸を動かし

全身の栄養状態を改善することで

病気を改善し

リハビリを後押しし

最終的には再び自分の口から食べられるようにする

 

「食べるための胃瘻」

 

あるテレビ番組の影響で胃瘻をつくることがいけないことのような風潮がありましたが

「栄養剤で生きる屍を増やす」のではなく

再び食べられるようになるために胃瘻を作って

最終的に食べられるようになった患者さん

たまたま胃瘻を交換するのも抜去するのも私の病院に来てくださったために

胃瘻造設から抜去まで全ての段階を

垣間見ることができました

その感動から2年ほど。

完全に普通の生活を楽しみ

夕食にはビールを飲んじゃう患者さんの様子を垣間見ることができました

 

ちなみに、私の家のご近所に住んでいることが発覚。

「今度赤ちゃんを連れて遊びにきてください」と

うれしい言葉をかけていただきました

 

管理栄養士をしていてよかった・・・と心底思えた一日でした