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医学と統計(73)

2011-11-22 12:15:23 | 日記・エッセイ・コラム

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医学と統計(73)

ANOVAの平方和 Type について(その1)

SPSSなどの商用統計分析ソフトで二元配置分散分析をおこなうと、出力結果の分散分析表に「TypeⅢ平方和 」と出力されます.
エクセルの分析ツールでは、単に「平方和」となっています.
この違いをインターネットで検索しても良く分からない人のために、今回は、
二元配置分散分析での平方和 Type について簡単な例題で説明したいと思います.

図1はベクトル心電図の水平面を表したシェーマです.

図1 Horizontal Plane での Schema
Qrstblack 

普通、病院などでは12誘導心電図(スカラー心電図)を録りますが、精密検査などでベクトル心電図を録る場合もあります.
このベクトル心電図を表1 の例題で二元配置分散分析をおこなってみましょう.

例題は「Metabolic」、「Angina」、「P.emphsema」の被験者について運動前後のベクトル心電図のQRS-T angle を調べたものです.(出典:ベーシックプログラムによる医学統計手法、同文書院、1983年)

ここでの分析では「対応あり、なし」を問わず、簡易化のためにファクターを「A1,A2,A3」と
「B1,B2」として説明します.もちろん、この様なデータであれば他のデータでも適用出来るでしょう.

表1 疾患別被験者の運動前後のQRS-T angle 
Sqrtdata

表1 のデータを見ると、チョットへんですネ!
データが不揃い(データ数が同じでない)なのです.だから、エクセルの分析ツールを利用できないのでダミーデータによる回帰分析を使わなくてはなりませんが、それはチョット後回しにして表2 の分析結果の分散分析表を見て下さい.

表2 TypeⅠの平方和による分散分析表
Type1a1b

Type1a とType1b の違いは factor A を主とするか、factor B を主とするかの違いですが、
TypeⅡの説明のために両方を記載しておきます.
さて、
それでは平方和 TypeⅡ をTypeⅠ から計算してみますが、TypeⅠ とTypeⅡ の違いは何でしょうか.平易に言うと、
 ・TypeⅠは交互作用がなくデータが揃った(データ数がキッチリ 同じ)ものに用います.
 ・TypeⅡは交互作用があってデータが不揃いのものに用います.

交互作用があるとかないとかは、多くの場合、事前に分からないので TypeⅡ を用いるべきだとの説もあります.

TypeⅡ ではデータ数が同じではありませんので交互作用で平方和を計算しないと言うことです。それでは、TypeⅠからTypeⅡ を計算する手順を説明します.手順は表3 の様に行います.

表3 TypeⅡの計算手順
Type2calc

表3 の説明
 ・calc-1 の計算:表2 の(Type-1a の T)-(Type-1a の Sa )-(Type-1a の Sb)
 ・calc-2 の計算:表2 の(Type-1b の T)-(Type-1b の Sb )
 ・calc-3 の計算:表2 の(Type-1a の T)-(Type-1a の Sb )
 ・calc-4 の計算:表2 の(Type-1a の Residuals)

表3 の計算から、
平方和TypeⅡ の分散分析表は表4 の様になります.

表4 平方和TypeⅡ の分散分析表
Type2anova

すなわち、
 ・Sa=( calc-2 )-( calc-1 )
 ・Sb=( calc-3 )-( calc-1 )
 ・Sab=( calc-1 )-( calc-4 )
 ・Residuals=( calc-4 )

次回は、
平方和TypeⅢを取り上げたいと思います。