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ヴァイブレータ
2003
廣木隆一


大森南朋の出演映画です。この人好きです。
多分主演を張るよりも助演して映画を盛り上げることができる人ですね。主演と助演がどっちが偉いのか知りませんが、そんなもんに上下はありません。
多分、ある目的を持って撮られた映画では特にそう。多分、この助演が大森南朋ではなくて、寺島進だったら「空の穴」になってしまうし、加瀬亮だったら「FROG RIVER」になってしまうかもしれません。キャスト変われば本変わる。

ストーリー自体は31歳の浮遊している女の妄想で綴るトラックロードームービー。
長距離トラックが舞台というのが面白かった。日常的に見るけれども、その中身は全く知らない。
住宅の窓の明かりだけではなく、トラックのアイドリングにも人生有り。

高校生の頃、運送会社でバイトしていたことがあるのですが、その時に出会った運ちゃんたちはおしなべて面倒見の良い人達。コーヒーとタバコをよく奢って貰いました。説教臭かったですけど、鬱陶しい程ではなく。
休憩時間の30分くらいだけ話して、二度と会わない。立ち去り際の潔さの格好良さは今でも憧れます。

その時は、単純に「いい人ただなぁ」で終わっていたのですが、この歳になってみて思うのは、彼らには多分もの凄く複雑な理由があってそれを職業としているということとでしょうか。誰でもいろんな理由があってその仕事をしていると思うのです。多分、子供の頃からトラックドライバーになりたくてなった人はそれほどいないでしょう。事情の積み重ねでなるべくしてなったのかもしれません。
ただの希望だけで突き進んでいない。刹那が似合う。というか刹那で生きている。

本作ではその刹那の部分がものすごくフィーチャーされ過ぎていましたけど、そのおかげで思い出しました。

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双生児~GEMINI~
1999
塚本晋也


こないだ観た乱歩地獄と同じく江戸川乱歩原作の本作。監督は違いますが、割と似た世界観。
昭和じゃない、割とコテコテの近代な感じ。
またも原作を読んでいないのでこれが忠実なのかは分かりませんが、それはどうでも良いとして、終盤にかけての恐怖は伝わります。
あと、泥まみれのモックンの顔の涙の跡。このカットが、この映画の全てかもしれません。

金持ちの家に生まれた双子。
片方は医者として立派に育ち、片方は災いをもたらすと生まれてすぐ捨てられる。昔は良くあったんですかね。割と良く聞く話しです。地下とか土蔵とかで人目に付かぬように育てられるって話し。
で、その片方は貧民街で育ち、悪として復讐に来る。
復讐される立派な方の片割れは復讐によって悪を植え付けられてしまい、双子の要素が混然入り交じる一人の人間として出来上がる。

けっこうややこしいかも知れないお話ですが、映画は凄く良くまとまっています。エッセンスの抽出の仕方がバツグン何じゃないでしょうか。
下手な説明っぽいシーンもないし。


惜しいのは、音のミックスが甘い。ドロドロしてるBGMとセリフがカブってしまうシーンが多々あり、ただでさえ少ないセリフが聞こえない。
BGMがやたらデカイ。ピンポイントでSEがデカイ。訴えたいのは分かるんですが、そこまで前に出してしまうと他の音との質が違いすぎて気持ち悪いです。

良く思うのですが、日本映画って割と音に対して大雑把ですね。音の位置とかバランスが無茶苦茶なこと多いです。カメラの位置(視聴者の視点)とマイクの位置が違いすぎ。マイク突っ込みすぎ。マイクの指向性良すぎ。
セリフ自体があまり声を張ってのものが少ないウィスパリングヴォイスが多いせいでしょうか。それを無理矢理聞かそうとする。
音のミックスは、単館系の方が良くできていたりします。監督の思いが音にも表れる。

音について言えばヨーロッパモノは凄く自然。昔の映画でモノラルでもこなれていて聞きやすい。
アメリカは懲りすぎ。英語聞き取れないんですけど、凄くちゃんと聞こえる。
SF映画なんかの爆発音で良くある「ズドゥシューン」みたいな現実に無い音、アレはアレで好きです。アレばっかりだと辛いですけど。

映画は光と音だけで他の感覚を補って成立しているモノなので、音もきっちりやって欲しいところです。
ナメられて怒っている日本映画たちはこの辺が甘い。
いい音はいちいち気にならないんです。経験で知っている音がそのシーンで流れれば脳内で勝手にシナプスたちが記憶を繋いでくれる便利な脳。あんまり特殊な音を使わない映画、多分好きです。

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ダメだ・・・、RICOHのGR DIGITALを買ってしまいそうだ・・・。
もう、発売から1年も経つというのに。
先日、友人が買ったばかりのGR Digitalをひとしきり触らせて思ったことです。


写真のアガリを見ないでこの感想。完全にカメラオタクです。
しかし、持って楽しくないカメラなんて何の価値があるのか。ATのTVRに乗って誰が喜ぶか。クォーツのスピードマスターを誰が欲しがるか。

唯一気になったのはレリーズタイムラグ(シャッターボタンを絞ってからシャッターが切れるまでのタイムラグ)がどうしてもコンデジ(コンパクトデジタルカメラの略)。体感で0.5秒はあるんじゃないかしら。
大学生くらいから今までは殆ど一眼でしか撮っていないのでもの凄い違和感を覚えます。
でも慣れれば、体で覚えれば。
シャッターボタンの軽さは改良できるとのこと。知らなかった。これで一気に火が付きました。

はっきり言ってしまえば実用的ではないGR Digital。
今まで「デジカメ何買えば良い?」という相談に対してもGR Digitalとはなるべく答えないようにしていました。なぜなら28mm単焦点は下手すると「写ルンです」写真。特にブツ録りをする友人には絶対勧めません。それは今でも同じく。レンズ交換ができない単焦点は相当惚れ込まないと買えません。
暫く借りて使っていたミノルタのTC-1も結局買わなかったなぁ。あれはレンズのキレが良すぎたし、ネガで撮ってもリバーサルかと思うほどのキツさ。派手な写真が出来上がりました。
今では回り回ってソニーに吸収されてしまっています。「ソニー TC-1 Digital」なんて出ても買わん。買わん?出たらもの凄く欲しくなりそうですが。


デジタル一眼(内角全般)で安打を量産し、フィルムカメラでもF3(外角低め)で長打を狙い、とポラロイド690(内角高め)を使ってホームランを狙う身としてコンデジは外角高め。とりあえず振っておいて損はない被写体。長打は狙えないかもしれないモノの振らなければ当たらない。

今までに持っていたコンデジは8年くらい前に買ったIXY Digital。アレは当時ろくなルックスのデジカメがなかったのでやむを得ず、でした。しかし、デジカメ市場のルックス度外視は何なのか。単純に企業としてののセンスが悪いのかどうかは知りませんが、ろくなデザインのものがありませんね。
意外とPanasonicが頑張ってます。ライカがOEMするだけはありますが、デザインはマシでも操作性が無茶苦茶。何を考えてあのインターフェースなのかしら。

私は現在Nikon D70というデジタル一眼をメインで使用していますが、さすがに毎日は持ち歩けない。重いしデカイ。
冬になり、ポケットに余裕ができた今こそコンデジ。オマエでプラス0.7補正で昼過ぎの第三京浜を順光で撮りてぇ。



この感覚、たとえて言えば、
『隣のグラウンドで練習している部活のマネージャー。凄く可愛いわけでもないけど嫌いじゃない。たまに大したことでもない軽口を聞いたりして、あまり深くは知らないけど気の置けない関係。特に気にしていなかったけれども、ある日のある瞬間の横顔を観た時からもの凄く気になってしまい、それがだんだん恋心らしきものに発展するも、その思いを自分で認めない。でも、その娘を観る視線を友人から「オマエ、あの娘のこと好きなんだろ?」と言われて初めて認識するも、フラれたら今までの関係が壊れてしまうことを恐れて一歩を踏み出せない』そんなハチミツとクローバー。

カメラに対しての例えとしては適切ではないかも知れませんが、こういう感じです。
多分、私変態ですね。

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100%の女の子/パン屋襲撃
1982
山川直人


村上春樹原作の短編を映像化した作品です。
ブックオフで1000円だったから買ってみた次第です。

これは読者である監督さんの一つの解釈だと信じたいです。なんか違う。
完全に自主制作な8mm。
観ていてちょっと照れてしまう。自分の学生時代の作品を思い出します。
あまりに原作に忠実すぎる台詞回し。もうちょっと意訳しても良かったのでは。

先日観た、同じく村上春樹原作の「トニー滝谷」とは全く違うベクトル。まぁ、金のかけ方が違うというのもあるのですが、出発点がどうも違う。
どちらかというと私の春樹ビジョンは「トニー滝谷」側です。せっかく映像化するのであれば、時代性を無視してもっとエッセンスだけを抽出したものにして欲しかった。

私は1982年にこの作品を読んでいないし、その時代にいた私はまるでガキで空気なんて物は理解していない。
その時代の空気を理解している人がこの作品を映像化するとこうなるのかもしれないです。
こういう作品に対してまず疑ってかかってしまうという、商業に飲み込まれまくってるなという感じもある。それはそれでやむを得ない。その筋で飯食ってるので。


この「100%の女の子」の原作は「4月のある晴れた日に100パーセントの女の子に出会うことについて」。短編集「カンガルー日和」に収録されています。大好きな短編です。

こう言っちゃ悪いけれども、その100%の女の子が室井滋というのはちょっと・・・。

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