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双生児~GEMINI~
1999
塚本晋也


こないだ観た乱歩地獄と同じく江戸川乱歩原作の本作。監督は違いますが、割と似た世界観。
昭和じゃない、割とコテコテの近代な感じ。
またも原作を読んでいないのでこれが忠実なのかは分かりませんが、それはどうでも良いとして、終盤にかけての恐怖は伝わります。
あと、泥まみれのモックンの顔の涙の跡。このカットが、この映画の全てかもしれません。

金持ちの家に生まれた双子。
片方は医者として立派に育ち、片方は災いをもたらすと生まれてすぐ捨てられる。昔は良くあったんですかね。割と良く聞く話しです。地下とか土蔵とかで人目に付かぬように育てられるって話し。
で、その片方は貧民街で育ち、悪として復讐に来る。
復讐される立派な方の片割れは復讐によって悪を植え付けられてしまい、双子の要素が混然入り交じる一人の人間として出来上がる。

けっこうややこしいかも知れないお話ですが、映画は凄く良くまとまっています。エッセンスの抽出の仕方がバツグン何じゃないでしょうか。
下手な説明っぽいシーンもないし。


惜しいのは、音のミックスが甘い。ドロドロしてるBGMとセリフがカブってしまうシーンが多々あり、ただでさえ少ないセリフが聞こえない。
BGMがやたらデカイ。ピンポイントでSEがデカイ。訴えたいのは分かるんですが、そこまで前に出してしまうと他の音との質が違いすぎて気持ち悪いです。

良く思うのですが、日本映画って割と音に対して大雑把ですね。音の位置とかバランスが無茶苦茶なこと多いです。カメラの位置(視聴者の視点)とマイクの位置が違いすぎ。マイク突っ込みすぎ。マイクの指向性良すぎ。
セリフ自体があまり声を張ってのものが少ないウィスパリングヴォイスが多いせいでしょうか。それを無理矢理聞かそうとする。
音のミックスは、単館系の方が良くできていたりします。監督の思いが音にも表れる。

音について言えばヨーロッパモノは凄く自然。昔の映画でモノラルでもこなれていて聞きやすい。
アメリカは懲りすぎ。英語聞き取れないんですけど、凄くちゃんと聞こえる。
SF映画なんかの爆発音で良くある「ズドゥシューン」みたいな現実に無い音、アレはアレで好きです。アレばっかりだと辛いですけど。

映画は光と音だけで他の感覚を補って成立しているモノなので、音もきっちりやって欲しいところです。
ナメられて怒っている日本映画たちはこの辺が甘い。
いい音はいちいち気にならないんです。経験で知っている音がそのシーンで流れれば脳内で勝手にシナプスたちが記憶を繋いでくれる便利な脳。あんまり特殊な音を使わない映画、多分好きです。

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