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映画【河童のクゥと夏休み】

2007-09-21 23:57:35 | 映画
河童のクゥと夏休み
2007
原恵一


「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲」で一気にファンになった原恵一監督作品です。

本作、正直言って相当良いですよ。
「E.T.」を日本流にモディファイした作品とでも言いましょうか。
しかし、パクリではありません。

クレヨンしんちゃんもそうでしたが、本が素晴らしい。
本線は言うまでもなく、本線と関係ないところでもグッと来させる。むしろ、本作ではサブキャラにもちゃんと血が通っていて、飽きさせるどころか、モクモクと登場人物の気持ちが伝わってきます。
主人公の一人舞台ではなく、舞台全てがちゃんと世界を作っています。
河童と少年が主人公ではありますが、実は小学生を中心とした家族のお話。割とスモールサークルで展開します。

児童文学が原作ですが、現代向けアニメにリファインされていて少々のえぐみもあり、ただの勧善懲悪のお話ではありません。
道徳の授業のような堅苦しい表現はなく、生活の中で起こりうる悪意もきっちり表現されています。
しかし、本作の最も優れているのは悪を悪として断罪することはせず、それ以上の「誰かを想う気持ち」で作品を包み込んでいるところでしょう。
グイグイ来ます。

やや子ども向けに制作されている故に本質的なことをきっちり表現しています。
善意とか、わがままとかを一方通行で是か非かを決定するのではなく、受け手に一旦ゆだねた上で跳ね返ってきた答えだと思います。
本作のキャッチコピーは下記の2つです。
「なあ、こういち。オメエにあえてよかった。」
「人間の友達ができちまった」
これは河童のクゥの言葉ですが、クゥから一方的に出た言葉でもないし、一瞬の想いでもない。
クゥがあの後(※本作をご覧下さい)に継続して思い続け、何度も反芻した言葉ではないでしょうか。



特殊なCGI表現を殆ど行わず、アニメーションも「本当にこのキャラで大丈夫なのか?」と思わせる程の一般的なアニメキャラ。どこかのレクチャーアニメに出てきそうなテイストです。
作品があるべき姿である「本で楽しませる」ということができています。お手本の様な作品。

「アイアン・ジャイアント」と近いテイストです。
また、ジブリ作品(ゲド除く)とは違う表現ですが、ベクトルとしては近い。
多くを語って初見の方の衝撃を薄めたくないのでこのあたりに。


上映以来あまり聞こえては来ない作品ですが、埋もれてしまうにはもったいない。私もギリギリで観たんですが。
胎教にどうぞ。


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