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映画【東京ゴッドファーザーズ】

2007-08-02 21:45:02 | 映画
東京ゴッドファーザーズ
2003
今敏


「クリスマスから元旦にかけてホームレスに拾われた生まれたばかりの赤ん坊が起こす小さな奇跡の連続」を描いたであろう本作。
この解釈はちょっと違うかもしれませんが、そういう映画だと思っています。

イヤラシイ目で見れば、伏線はバレバレだし、キャラクターにもそんなに深みはない。
けれども、良い映画です。
素直に奇跡が起こる、その奇跡を疑わない。そのイメージを描くためにメインキャラクターに付属品の少ないホームレスを主人公に据えたのは凄い着眼です。
ホームレスのキャラクター特性として、過去を背負って生きているというパブリックイメージがあります。そして現在の複雑な人間関係が無い。
既にどん底だからそれ以下がない。
その人間からの説教に全く説得力がない。嘘をついても許される。
これが普通の大人3人が赤ちゃんを拾うというお話だったらこうはならなかったでしょう。

脚本が良いんですね。
このクオリティまでくると、アニメとか実写とか関係ありません。
奇跡とか、偶然とか、のスペシャルな非現実を描くときには、やはりアニメーションの方が良いかな、と思います。

アニメーションと言うと、ロボットとか美少女を描くだけという先入観がどうしてもあるとはもうのですが、余計な情報が少ないくデフォルメが激しい分、物語を忠実に描くことが可能なアニメーションはもっと評価されるべきだと思います。
アニメーションは、もう少しも特殊な方法では無いですね。
むしろ、本当に描きたい何かがある場合はアニメーションの方が響くのではないでしょうか。人によるのかもしれませんが。

今敏監督の描く世界は、所謂美少女とかゴリゴリのロボットなんかがあまり出てきません。設定もSFというよりは現実からちょっとはみ出した幻想といった趣。
むしろ、よりリアルに世界を描くためのアニメーション。
夢で見る現実以上に鮮やかでデフォルメされたな世界観に近いのかもしれません。



実写映画の場合、やはり劇場への動員の引きは役者になります。誰かが出てるから、とか。
監督で選ぶ人は少数でしょう。
アニメーション映画も同じく(と言うかよりキャラ重視)で、ドラえもんとかワンピースなんかは外しようがないくらいに入ります。
先日観た「ブレイブ ストーリー」もゲームありきでボチボチの動員。

映画を観る人が何を求めて劇場へ行くのか。
直接的な理由はデートとか暇だからとかいろいろあるかもしれませんが、その根本的な衝動はもっと別なところにあると思います。
わざわざ1800円払ってテレビにさんざん出ているタレントを見に行く訳でもあるまいし。
一部の文学作品ファンを除いて、人が本質的に映画に求めているものって何なんでしょうか。
まさか「娯楽」だけでは無いでしょう。