notation

本【海と毒薬】

2004-11-11 00:51:42 | 本読み
海と毒薬
1958
遠藤周作


中学生くらいの時に課題図書かなんかで読んだ気がします。まるっきり忘れてました。
あんまり中学生に勧めるものじゃないですよ。多分。
今更読んでる私もイタイですか?

とてもグロテスクでした。
あまりにもリアル。リアルなのかどうかも分かりませんが、本来、自分で感じていても言葉にすることが難しいであろう感情・状態すらも浮き出ています。淡々とした描写と方言混じりの話し言葉。絶妙。で、それに呑まれてしまう。私なんかがコメントするのもおこがましいのですが。

「こんなこと、しちゃいけない。ダメ、ゼッタイ。」というレベルの善悪の判断すらつかず、流されていく登場人物たち。戦時中ってこうなんでしょうか。
ある程度の価値基準が決められてしまっている中では個人的な判断が通じない場合って場合はあります。
そして、罪が重ねられていく、と。

こんな風に活字で表現されないと分からないこと、気付けないことがあります。
活字=情報って認識はやめたいです。情報を発信するって事も表現であることに違いはありませんが、多すぎるとそれを追っていくだけになってしまいますし。
新聞とテレビニュースでは伝えているものが違うってことでしょうか。

少なくとも、日曜日の昼間にビールでも飲みながら読む本ではありませんでした。まして、月曜日の朝の通勤電車で読む本でもありません。おかげで今週前半は随分ヤラレ気味でした。

もう、救いようがない人たちの話。救いがたい。で、これが神(カトリック)に繋がるそうです。解説読んで知りました。遠藤周作自体がそういう作家なのだそうです。知りませんでした。

その苦行も神のそれ。そして、その運命から押し出してくれるのも神。
物語はそれを願う(多分叶わず)で終わっています。

「運」程勝率の高い五分五分の賭ではなく、相当好転する見込みの低い場合に神頼み。大方駄目ですけど。努力不足でって理由は除外です。その場合もこれも神の思し召しってことにもなります。考えようによっては便利ですが。


もの凄く個人的なことで、勝ち目の薄い勝負に出ようとしています。どうなることか。