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等覚院供養塔(伝 藤原高房供養塔)

2024-08-10 23:32:34 | 史跡・文化財
等覚院供養塔(とうがくいんくようとう)。伝 藤原高房供養塔(でん ふじわらのたかふさくようとう)。
場所:茨城県筑西市泉356。国道294号線(常総バイパス)「中館西」交差点から北へ約1kmで左折(西へ)、約1.3km進んで「←泉」という案内板がでているところで左折(南へ)(この先、道路が狭いので注意。)、約350mで突き当りを左折(東へ)、道なりに約180m進むと「等覚院(廃寺)」境内。駐車スペースあり。
伝承によれば、延喜元年(901年)、左大臣・藤原時平の讒言により、右大臣・菅原道真が九州「大宰府」の大宰権帥に左遷されたとき、中納言・藤原高房も常陸国伊佐荘に流された。高房は延長2年(924年)に当地で亡くなり、法名を東岳院殿秋山道融大居士として葬られた。また、高房の子孫である平安時代後期~鎌倉時代初期の御家人で伊達氏宗家の初代当主・伊達朝宗が、主君・源頼朝の法名を清国院殿前柳営譲与崇和大居士として、その供養塔を高房のものと並べて建てたという。「東岳院」はその後、天台宗「弥勒山 等覚院」と称し、「施無畏山 延命院 観音寺」(前項)の末寺であったという。現在も大型の五輪塔(石塔)2基のほか、小型の塔や五輪塔の一部などが10数基残っていて、最も大きな塔(高房の供養塔とされるもの)が鎌倉時代末期頃に造られたと推定されている。
ただし、史実(「日本文徳天皇実録」など)によれば、藤原高房は、藤原北家魚名流の貴族で、天長4年(827年)に従五位下・美濃介に任じられて現地に下向、善政を行って評判が高く、その後も備後守・肥後守・越前守を歴任したが、最終的な官位は正五位下に留まり(三位以上が「公卿」で、五位は下~中級クラス)、仁寿2年(852年)に背中の悪性腫瘍により58歳で亡くなったとされる。よって、上記伝承とは時代も異なり、常陸国に流されたということもない。では、何故ここに高房の供養塔とされるものがあるのか、というと、供養塔の前に建てられた「伊達氏供養塔」石碑に関係があるらしい。戦国大名・伊達政宗で有名な奥州伊達氏は、平安時代末頃から当地(常陸国伊佐郡)の領主であった伊佐氏から起こっている。そして、伊佐氏は、天永2年(1111年)、藤原北家山蔭流の藤原定任の長男・実宗が常陸介に任じられて常陸国伊佐郡に居住し、伊佐氏を称したことに始まるとされる。その山蔭の父が高房であるので、伊達氏の祖先というのは誤りではない。ただ、何故、高房なのか、という疑問はある(因みに、山蔭は仁和2年(886年)に従三位・中納言に任じられている。)。また、高房や頼朝の供養塔でないとすると、誰の供養塔なのか。五輪塔としても中々の優品とみられるし、周囲の五輪塔の数などからみても、あるいは伊佐氏一族の供養塔群かもしれない。
蛇足:茨城県や千葉県に「高房神社」という名の神社がいくつかある。これらの祭神は殆ど武甕槌神(常陸国一宮「鹿島神宮」祭神)か建葉槌神(同二宮「靜神社」祭神)で、これは「鹿島神宮」の摂社「高房社」に関連するもののようである。一方、現・栃木県日光市湯西川に鎮座する「高房神社」は祭神を高房大明神とするが、古くは藤原高房霊としていた。下野国(現・栃木県)は、平将門を討った功績により下野守などに任じられた藤原秀郷(俵藤太)以来、藤原氏の勢力が強く、その先祖で評判の高い高房を祀ったといわれている。ただし、最近では、湯西川温泉を「平家落人の里」として宣伝しているためか、高房というのは、平重盛の六男・忠房の子、あるいは落ちのびた家臣団の長の平高房であり、温泉を発見したことなどもあって、死後に神として祀られたという話になっている。


写真1:「等覚院(跡)」境内入口


写真2:同上、入口正面奥にある「伝 藤原高房供養塔」


写真3:同上、玉垣の前に「伊達氏供養塔」石碑が建てられている。昭和9年に伊達氏の遠孫という人物が建てたものらしい。


写真4:同上、向かって右が藤原高房、左が源頼朝の供養塔とされているようである。


写真5:「等覚院(跡)」から北西約70m(直線距離)にある「泉古墳」(場所:筑西市泉326)。直接関係はないと思われるが、近いので、訪問した。方墳?、墳頂に「稲荷神社」がある。


写真6:同上、「稲荷神社」鳥居


写真7:同上、「稲荷神社」社殿

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