Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

今日の思い出を振り返ってみる

2019-07-27 12:29:30 | 日記
 
土筆(140)

   祖父の独り言でしたが、光君はその言葉を否定しました。「否、あそこで待っていても、彼等は僕等に追いついて来るよ。」あの世界と僕等が別物な様に、迎えに来る奴らも、僕らの世......
 


 もう、7月最後の週末です。蒸し暑いですが、雨になる様なので、日差しが隠れた分涼しいのかも。


うの華 21

2019-07-26 09:41:38 | 日記

 『うつる?すると祖父は病気なのか。風邪だな。』

しかし…。妙だなと、私は思った。

 昨夕迄は、目立った目の下の紅色のたるみ以外は、特に祖父の身に何かの異変は無いようだった。身体的には健康そのものだった祖父である。私は風邪しかうつる病気を知らなかった。故にうつると聞くと、その病気は風邪ぐらいしか想像出来ない。しかし、風邪ならそれなりに兆候がある事を私は経験上知っていた。それは咳や喉の痛み等の症状だ。風邪を引くと、大抵寝込む前に周りの人間にそういった事を訴える物だ。昨日の祖父にはそれが無かったでは無いか。この点を私は訝しく思った。

 私は祖父の病気を確認したくて、祖父達の部屋へ行こうと決心した。自分の目で見ないと納得出来なかったのだ。それで祖母の様子を窺って見ると、祖母は2階の父の様子を窺いつつ、私の方へも横目を向けて注意を払っているのが分かる。そんな注意怠りない祖母の目を盗んで、私が祖父母の寝所へ近付く事は到底出来そうになかった。『駄目だな。』この時点で私は自身の目で直接祖父の病状を確かめる事を断念した。

 祖母に呼ばれた父は静かにゆっくりと階段を下りて来た。そんな父の浮かない顔が階段に見えて来た。父はまた自分の母から何かしらの苦情か文句を聞くと思った様だ。そんな彼に、居間にいた私の姿が目についたらしい、彼はちらりと私を見た。きっと自分の子供に対しての母からの苦情の話が始まるのだ、と彼は明らかに察知した感じだった。ほうっと溜息を吐いて階下に降り立った。

 「また智の事かい。」

そんな事を父は祖母に言ったので、父のこの言葉が聞こえた私は内心不愉快になって眉をしかめた。

「違う、お父さんの事だよ。」

何だい溜め息なんかついて、そう祖母が父に聞くと、父は小声で何かぼそぼそ言っていた。私の苦情はうんざりだとでもいったようだ。そこで祖母も声を低めて何やら言っていたが、はっしと、今回は違うという様な言葉が聞こえた。

 彼女は両手で口を覆うと、父の耳に自分の顔を近付けるようにしてぼそぼそと内緒話を始めた。「何だ父さんの事か。」そんな言葉を呟いて、父は最初気乗りなさそうに祖母の話にうんうんと耳を傾けていたが、一瞬ハッと目を見開いたようになると、「そんなに!」と大きな声を出した。そして自分の母の顔を正面から見て、彼女の言葉に注意して耳を傾けていたが、

「大袈裟だなぁ。」

心配させようと思って言ってる?、本当はそんなじゃないんじゃないか。等と、自分の母をしげしげと見詰めて言った。そして母を探るようにその顔色を窺っている。

 「本当なんだよ。」

祖母は父に言った。「全然大袈裟じゃないんだよ。」そう言うと、祖母は「本当に酷いんだよ。」と息子にしんみりと言い項垂れた。疑うんなら自分の目てみると言い。彼女そう言って目を伏せた。

 父は何やら嫌な顔をしていたが、それならと歩き出そうとした。祖母はそれを、「やはり止したら。」と引き止めていたが、ほらやっぱりねと父に疑いの目を向けられると、

 「本当に真実なんだよ。」

だから、ね、お前驚くと思うから、それでも何とか感情を抑えて、ね、お父さんにはそう酷く驚いたお前の顔を見せないようにしておくれ。ね、頼むから。後生だからと両手を合わせて祖母はそう息子である私の父に頼んでいた。

 私はその母子の遣り取りする光景を物珍しく不思議に思って見詰めていた。それにしても、私は思った。何時もよく出来る子、お前はよい子だ、等と持て囃されていた私なのに、祖母は父に向けて、何かしらの文句なりをあの様によく言っているのだろうか?あの父の言葉と様子ではそうらしい。と察知した私は、不愉快な感情に襲われて眉根に皺を寄せ祖母を見詰めた。

 それにしても、祖父が病気なら早くお医者さんに行かなくていいのだろうか?、私は首を傾げながら考えた。病院に行くにしろ、医師に往診してもらうにしろ、家の誰かが早く何かしらの行動を起こさなくてよいのだろうか? 


今日の思い出を振り返ってみる

2019-07-26 09:39:24 | 日記
 
土筆(139)

 「それは残念な事だったなぁ。お前寂しい事だろう。」祖父は機転を利かせると孫の光君を慰める為にそう言葉を掛けました。光君も「うん」と言葉少なです。今回は彼もあの何時もの嫌味っぽ......
 

 梅雨明けすると暑いです。


今日の思い出を振り返ってみる

2019-07-24 23:02:53 | 日記
 
土筆(138)

 自分でもどうにかしたらいいと思うがなぁ。と祖父は溜息交じりで呟きました。   さて、次の世界への道すがら、2人は今まで居た世界の事について話し出しました。「あんな世界もあ......
 

 今日はこちらは梅雨明けしました。暑さに負けてお休み予定でしたが、涼しくなったので今日の分をアップしました。


うの華 20

2019-07-22 10:23:35 | 日記

 本当の異変は翌日起こった。1日前の私の危惧が杞憂に終わらなかったのだ。昔物語が祖父の身に現実に起こる結果になった。後に祖母も言っていたが、「昔物語は大袈裟だと馬鹿にできない物だ。現実にもある事を示唆している。用心に越した事はない。」である。

 その日、朝食の膳に祖父の姿が無かった。私はてっきり自分が寝坊して祖父と顔を合せなかっただけだと思っていたが、ご馳走様の後、御膳には未だ伏せられた儘の状態で残っている茶碗が有ったので、不思議に思って母に問い掛けた。

 「これは?。」

「お義父さんのよ。」

つまり祖父の茶碗だという。私は母の答えにえっ!と驚いた。祖父母はかなり朝が早く、常なら朝食は私が一番遅いのだ。私の食事が済むのを待って、後に母は待ってましたとばかりに御膳をパタパタと畳んでしまうのだ。

「お祖父ちゃんが、まだ寝ておられるのよ。」

と続けて母が言う物だから、『変だ。』と私は思った。子供の事、一晩寝て祖父の身への危惧が薄らいでいたが、再び不安に駆られ始めた。私は朝食後の座った状態の儘、耳を澄ませて祖父母の寝所の気配を伺った。

 「お父さん、もう起きられては?」

そう祖父を起こす祖母の声が聞こえて来た。云と答えた祖父は、未だ布団に臥せっているらしい。何だか調子が思わしくない、とか、気分がすぐれない、とか聞こえていたが、祖母の、まぁ、お父さん、駄々っ子みたいに等々、その後は暫く小声でぼそぼそやり取りする気配だけが伝わって来ていたが、

「ひゃっ!」

と祖母の悲鳴のような、妙な驚愕の一声が上がったと思うと、部屋は不穏な空気に包まれたようになった。

 やや置いて後、祖母が控えめな調子で言う「お父さん、そのまま寝ててください。」そう言う声が聞こえて来た。後は何やら室内でぱたぱた人が移動している気配がした。後に考えるとそれは部屋で祖母が一人あたふたと何かをしていた気配だったのだろう。そして、私が見ている前に祖母が現れた。心配して見詰める私の目には、祖母の顔は何時もの祖母のそれに見えた。

「四郎は?。」

祖母は私と目が合うと呟くように父の名を言った。お父さん?そう祖母の声に釣られて私も呟いたが、ああ、祖母は父を探しているのだと気が付くと、私は父は2階だと答えた。2階は私達親子の寝所になっていた。そこへ、朝、私を起こしに来た父はそのまま残り、今迄、未だ下りて来ていない事をこの時の私は把握していた。

「2階。…」

心此処に非ずで、気の抜けたように同じ言葉を2回程繰り返して、祖母はハッとした顔になると、慌てたように階段の下に駆け寄り上に向かって息子の名を呼んだ。声が妙に上ずっていた。

「四郎、四郎、お前、来ておくれ。」

私はポカンとして目の前で起こる祖母の光景を眺めていた。訳が分からなかった。

 祖父母の寝所から出て来たばかりの祖母は普通に見えた。それで私は安心していたのだが、今の祖母は様子が変だ。私はやはり祖父の身に何か起こったのではないかと、2人の寝所にしている目の前の部屋の障子戸を見詰めた。目を凝らし、耳を澄ませて中の気配を窺って見る。しかし何も、外から見詰めるだけでは何も中の様子は分からなかった。

 私は思い立ち、正座していた畳から立ち上がると、祖父母の部屋に入り寝ているらしい祖父の様子を見て来ようと考えた。私が2、3歩足を進めると、私の気配を察した祖母がいち早くその行動を制した。

「あ、駄目よ。」

「お祖父ちゃん、そう。具合が悪いから。移ると困るからね。」