早速 メディア各社から新政権の支持率調査の結果が発表された__59% から 65%まで差があるが、概ね6割の国民が指示していることになる。 先の衆院選では 自民党得票率4割、議席獲得率7割だったから、自民党に投票した4割の国民に加えて、自民党に投票しなかった国民からも安倍政権を期待している人たちが2割増えたということだろう。
既に円相場や株式市場が、”円安と株価上昇” となって 市場も新政権を期待している様子がうかがえる。 逆にいうと 民主党政権では、行き過ぎた円高と景気対策ができなかったことを示しているのではないだろうか?
官僚を意図的に外して、政治主導で日本を動かそうとしたが、それでは日本も外国もソッポを向いてしまったのではないか。 日本の政治経済外交を実際に動かしているのは、官僚組織なのだ。 ただ 官僚というのは、組織を守るのと継続は得意だが、変革は得意ではない。 変革は政治家がすべきものだ。 だから、上手に官僚と渡り合い、変革すべきところは変革していくのが賢い政治家だろう。
安倍首相は過去に1年で辞めて、政権を唐突に投げ出した印象があるが、今度は学習効果が効いているのだろうか、以前の ”お友達内閣”ではなく、”オール自民党内閣” のようだ。 その実績が国民に受け入れられるかどうかは、半年後の参院選にかかっている__
2007年参院選で自民党獲得議席数 37議席に対し、民主党は 60議席を獲得し、参議院で第一党となった。 この自民参院選敗退で安倍首相は責任を取った形で秋に辞任した (実際は健康問題だった?)。 10年参院選では、逆に民主党獲得議席数 44議席に対し、自民党 51議席となり、現在の参院は 民主 106議席、自民 84議席となり、民主+国民新党計で 109、自民+公明で 103となり拮抗して、民主は少数与党となった。
安倍第2次内閣は取りあえずは “安全運転” で、行き過ぎた円高を是正し、景気を上向かせることができるか、いや ぜひやってもらいたい。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
「安倍内閣支持 65%、景気回復に期待」(12月28日 読売新聞)
「安倍内閣、支持62%」(12月28日 日経新聞)
「安倍内閣支持 65% 」(12月28日 日本テレビ系)
「第2次安倍内閣、支持率 59%」(12月27日 朝日新聞デジタル)
「安倍内閣支持 52% 生活変わらぬ 62%」(12月27日 毎日新聞)
「投資家が、安倍政権批判を始めるとき__円安、株高はどこかで終わる」(12月25日 小幡 績 :慶應義塾大学准教授/東洋経済) _ ※追加1へ
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以上
※追加1_ 安倍自民党の衆議院選挙大勝後も、円安/株高が続いていたが、少し落ち着いてきた。 今後 円安/株高はどこまで進むだろうか。
ここで 最も注意しなければいけないのは、日本の有権者も世界の投資家も同じだということだ。
● 有権者も投資家も飽きっぽい ●
すなわち 両者ともに飽きっぽい。
政治においては 民主党に愛想をつかした有権者が、そのほか つまり、自民党や日本維新の会へ流れた。 しかし有権者は、政治批判をして、政治を動かすことにより、自己の権力行使をした実感を得て満足しているから、数カ月後の参議院選挙では、与党となった自民党へ攻撃の矛先を向けるだろう。 だから安倍新政権は、一つのミスも許されず、サッカーでいえば 今回の選挙はホームゲームでも、次はアウェイのような戦いとなる。
同様に世界の投資家は、次々と新しい材料を求める。 材料とは、相場を動かす材料だ。一部のヘッジファンドは空売りを得意とするが、それ以外の多くの投資家は、売りよりも買いが中心だから、基本的には買い材料を歓迎する。 だから安倍政権誕生による、財政拡大、金融緩和の加速への期待の高まりを大歓迎し、その期待の高まりをさらに煽るように、相場上昇を加速させたのだ。
しかし次には、さらに過激な材料を求めるようになる。 金融政策に限って議論を進めよう。 投資家たちは、インフレターゲット導入 2% への目標設定 日銀法改正、今まではこの主張を歓迎し、この主張をした党首の勝利を歓迎し、それも3分2の圧勝で参議院のねじれ制約を越えたことを歓迎してきた。 そして次には、これら政策の実現を歓迎する動きを見せるはずだ。
したがって投資家たちの期待に沿っていくならば、政策をすべて実現していかないといけない。 だが実現には大きなハードルがある。 それは国会の制約でも、自民党内の動きでもなく、投資家自身の移り気にあるからだ。
まず 利食い圧力がある。 日本株に関しては、出遅れた多くの外国人投資家が買い上げてきたから、勢いは止まらなかった。 だが 12月20日の日銀の金融政策決定会合で追加緩和、次回の決定会合でのインフレターゲットを議題に設定することを表明したことから、物理的に13年1月後半までは、明確な形をとった動き、材料がないからだ。 ここで いったん、日本株を利益確定の「売り」でポジションを落としておくのがセオリーだからだ。
ただ 円安/株高の流れは、世界的なリスクオンの動きに沿ったものであり、安倍自民党の動きは、いわばそれにレバレッジをかけたものに過ぎない。 それゆえ 米国の「財政の崖」などの議論がある中でも、円安がさらに進めば、それによる株高はありうるので (実際 これまではその流れであったので)、利益確定売りが反転という形で、明確化されるかどうかは微妙である。
● 日銀に待ちかまえる複数の関門 ●
しかし より重要なのは、利益確定後の動きだ。 今後も 円安/株高がトレンドとして継続することを投資家自身が求め、それを政策への要求として圧力をかけてくるだろう。 それは いわゆる催促相場となり、中期的には、まず 次の日銀の政策決定会合で、インフレターゲットが導入されるかどうかが第一関門となる。
インフレターゲットの導入には、私個人の意見としては反対だが、もうこうなったら入れるしかない。 日銀としても ここで入れないのは大きな摩擦となり、市場は混乱するだろう。 もし 私が審議委員だったら、意見を翻して賛成に回る。
なぜなら インフレターゲット導入は望ましくない、という結論に至った場合、投資家 (およびトレーダー) と政治の圧力は、手に手を取って日銀へ向かってくるからだ。
つまり 両者が日銀の政策を非難し、そして 投資家の非難は、政治家とメディアの日銀非難を正当化するから、相乗効果で 日銀は一気に追い詰められると予想するからだ。
問題は次の第二関門にある。 2% というインフレ率をどう受け入れるか、ということだ。 目途をターゲットに変え、日銀に責任を持たせるのは構わない。 もともと日本経済に責任はあるし、物価のコントロールが仕事だから、インフレターゲットが存在し、それに沿った金融政策を行うのは理解できる。
だから その拡大解釈版として、インフレ率が高まることを促すことは、許容範囲だ (本来の解釈は、インフレターゲット 2% といった場合には、インフレ率を 2% にすることが目標ではない。 インフレ率が 2% になるまでは、心置きなく金融緩和が許される、ということだ。 だからターゲットは良いが、達成するための目標、しかも最優先の目標となるのはおかしいし、経済にはマイナスだ)。
● 2% のインフレ率実現は極めて困難 ●
しかし その目標が 2% となると、これはかなり難しい。 なぜなら、2% のインフレ率が現在の日本で実現することは、極めて困難であるからだ。 仮に実現するシナリオがあるとすると、極端な円安による輸入インフレしか考えられず、その状態になった場合には、日本経済は極端に悪い状況となるからだ。 経常収支は極端に悪化し、名目金利が上昇し、銀行は危機に陥り、財政が行き詰るというシナリオが予想される。
その最悪のシナリオが実現するには、円が 100円 を超えるような流れになる必要があり、実現はしないだろう。 そうなるとインフレ率 2% は、無理だ。 日本でインフレ率が 2% に近づいたのは、バブル期以降では、円安が 140円 台まで進んだ1997年の 1.76%、原油が 1バレル 147ドル など資源価格が急騰した2008年の 1.38% しかない。 だから、 2% にはどうあがいてもならない。
この状況にどう対応するか。 日銀としては インフレターゲットを設定したとしても、それは 1%~2% の範囲を目指すなど、レンジに余裕を持たせ、同時にインフレ率だけが唯一の目標ではなく、経済全体の状況とのバランスを見ながら、という留保条件をつけることになるだろう (それが唯一の妥当な道だ)。
日銀としては、これは政治に圧力を受けたからではない。 安倍次期総理から、検討を依頼されたことがきっかけではあるが、これまでの市場や国民との対話として考えると、説明不足による不十分な理解が存在していたのは事実だ。 よって 誤解を解くために、日銀の政策スタンスをよりわかりやすいものにするために導入した。 こういう説明をすることになるだろう。
こうした日銀の対応に対する、投資家の反応の予測は難しい。 今の期待感から行くと、これでは物足りない。 現状と本質的には変わらない、という解釈が可能だからだ。 逆にいえば だからこそ、日銀としても導入が可能なインフレターゲットなのだ。 これは進むも地獄、戻るも地獄の世界だ。
● 投資家が政権批判を始めるリスクも ●
もしインフレ率を 2% とし、これを何が何でも実現する、となると 名目金利を無理やり上昇させ、極端な円安を進めるしかない。 しかし それでは国債暴落で、銀行危機、財政危機になってしまう。 そうなるとターゲットを設定しても、2% は実現できない、ということになる。 このときに日銀法改正が大きな意味を持ってくる。
2% を目指しますと宣言するのは良いが、これが2年たっても実現できない、実現できる見込みが立たないとなると、政治の側としては、問題視せざるを得ない。 長期的にも 2% が実現する見込みがない、となるとそれは日銀の姿勢の問題だ、やる気がない、ということになる。
その場合は日銀総裁を解任するという行為が必要になる。 ところが今の日銀法では、これはできない。 そうなると このような状況を回避するために、今 日銀法も改正しておくべきだ、という議論になる。
この議論は、13年1月の日銀の金融政策決定会合でインフレターゲットが導入されなければ、直ちに加速する。 また導入されたとしても、政治サイドから見て中途半端 (妥当な金融政策を考える立場からは許容範囲ぎりぎり) のものになると、以下のような議論が力を持つことになるだろう。
つまり やはり日銀を完全には信頼できない、将来の解雇を担保しておく必要がある、それは万が一のためだから、日銀が妥当な政策を取り続けた場合には問題にならないのだから、日銀法改正自体は問題はないはずだ、というものだ。
こうなると投資家の反応は難しい。 現在は、日銀法改正に賛成というムードが、外資系ストラテジストを中心に広がっているが、これは 海外の日本経済の実態を理解していない日本株投資家の意向の圧力を受けて展開されている (それに迎合している) と私は見ているが、今後は疑問を呈する投資家が増えてくると思われる。
なぜなら もう少し、日本株が上昇し、円安も進めば、徐々に手じまう投資家が増えていくから、今の上昇モメンタムが何が何でも続いて欲しいという投資家の割合が低下していくからだ。 そうなると今度は下落方向で動かす方が、モメンタムの余地が大きくなり、チャンスが増えるとなり、反転に流れを作ろうとする投資家が増えてくる。
そして問題は、国債のトレーダーだ。 トレーダーは 為替、国債、株で、すべて異なった人々となっているが、彼らの行動パターンやキャラクターも大きく異なる。 株式は上昇トレンドで基本的に儲け、下げトレンドなら、仕方なく空売りをする投資家が多数派だ。
だが国債では、買い持ちの長期投資家 (生保、年金など) と、短期の売買で利益を出すトレーダーとは、まったく違う行動パターンを取る。
一方 為替は、常に短期の乱高下あるいは小さな動きで儲けるトレーダーがほとんどだ。まず 為替トレーダーが円高方向の乱高下にシフトすれば、次はこれまで鳴りをひそめていた国債トレーダーが大きく売りから入ってくる可能性がある。 こうなると流れが変わり、国債暴落シナリオを騒ぎ立てて、トレンドを作るほうが有利になってくる。 こうなったときが、180度の変化が訪れるとき、つまり日銀への圧力がやりすぎだと非難が高まるようになる、潮目が変わるときなのだ。
こうなると 銀行関係者は政権批判を痛烈に始める。 国債を持ちすぎているから、空売りで対処しようがないから、国債の下落を抑えてもらうしかないからだ。 株を空売りする投資家たちも 政権批判の方が、短期には下落が加速するから、批判を強める。 だから政権はやりすぎ、ということで、投資家 (政治家やメディアの好きな言葉でいえば市場だが、それは誤りだ。 市場圧力というものは存在しない。 その背後には投資家の塊がいるだけだ) 全体から攻撃を受けるだろう。
したがって夏の参議院選挙までに、有権者にも投資家にも見放されないために、安倍政権は政権成立後は、慎重なミスのない、アウェイゲームが求めらることになる。
以上
既に円相場や株式市場が、”円安と株価上昇” となって 市場も新政権を期待している様子がうかがえる。 逆にいうと 民主党政権では、行き過ぎた円高と景気対策ができなかったことを示しているのではないだろうか?
官僚を意図的に外して、政治主導で日本を動かそうとしたが、それでは日本も外国もソッポを向いてしまったのではないか。 日本の政治経済外交を実際に動かしているのは、官僚組織なのだ。 ただ 官僚というのは、組織を守るのと継続は得意だが、変革は得意ではない。 変革は政治家がすべきものだ。 だから、上手に官僚と渡り合い、変革すべきところは変革していくのが賢い政治家だろう。
安倍首相は過去に1年で辞めて、政権を唐突に投げ出した印象があるが、今度は学習効果が効いているのだろうか、以前の ”お友達内閣”ではなく、”オール自民党内閣” のようだ。 その実績が国民に受け入れられるかどうかは、半年後の参院選にかかっている__
2007年参院選で自民党獲得議席数 37議席に対し、民主党は 60議席を獲得し、参議院で第一党となった。 この自民参院選敗退で安倍首相は責任を取った形で秋に辞任した (実際は健康問題だった?)。 10年参院選では、逆に民主党獲得議席数 44議席に対し、自民党 51議席となり、現在の参院は 民主 106議席、自民 84議席となり、民主+国民新党計で 109、自民+公明で 103となり拮抗して、民主は少数与党となった。
安倍第2次内閣は取りあえずは “安全運転” で、行き過ぎた円高を是正し、景気を上向かせることができるか、いや ぜひやってもらいたい。
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「安倍内閣支持 65%、景気回復に期待」(12月28日 読売新聞)
「安倍内閣、支持62%」(12月28日 日経新聞)
「安倍内閣支持 65% 」(12月28日 日本テレビ系)
「第2次安倍内閣、支持率 59%」(12月27日 朝日新聞デジタル)
「安倍内閣支持 52% 生活変わらぬ 62%」(12月27日 毎日新聞)
「投資家が、安倍政権批判を始めるとき__円安、株高はどこかで終わる」(12月25日 小幡 績 :慶應義塾大学准教授/東洋経済) _ ※追加1へ
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※追加1_ 安倍自民党の衆議院選挙大勝後も、円安/株高が続いていたが、少し落ち着いてきた。 今後 円安/株高はどこまで進むだろうか。
ここで 最も注意しなければいけないのは、日本の有権者も世界の投資家も同じだということだ。
● 有権者も投資家も飽きっぽい ●
すなわち 両者ともに飽きっぽい。
政治においては 民主党に愛想をつかした有権者が、そのほか つまり、自民党や日本維新の会へ流れた。 しかし有権者は、政治批判をして、政治を動かすことにより、自己の権力行使をした実感を得て満足しているから、数カ月後の参議院選挙では、与党となった自民党へ攻撃の矛先を向けるだろう。 だから安倍新政権は、一つのミスも許されず、サッカーでいえば 今回の選挙はホームゲームでも、次はアウェイのような戦いとなる。
同様に世界の投資家は、次々と新しい材料を求める。 材料とは、相場を動かす材料だ。一部のヘッジファンドは空売りを得意とするが、それ以外の多くの投資家は、売りよりも買いが中心だから、基本的には買い材料を歓迎する。 だから安倍政権誕生による、財政拡大、金融緩和の加速への期待の高まりを大歓迎し、その期待の高まりをさらに煽るように、相場上昇を加速させたのだ。
しかし次には、さらに過激な材料を求めるようになる。 金融政策に限って議論を進めよう。 投資家たちは、インフレターゲット導入 2% への目標設定 日銀法改正、今まではこの主張を歓迎し、この主張をした党首の勝利を歓迎し、それも3分2の圧勝で参議院のねじれ制約を越えたことを歓迎してきた。 そして次には、これら政策の実現を歓迎する動きを見せるはずだ。
したがって投資家たちの期待に沿っていくならば、政策をすべて実現していかないといけない。 だが実現には大きなハードルがある。 それは国会の制約でも、自民党内の動きでもなく、投資家自身の移り気にあるからだ。
まず 利食い圧力がある。 日本株に関しては、出遅れた多くの外国人投資家が買い上げてきたから、勢いは止まらなかった。 だが 12月20日の日銀の金融政策決定会合で追加緩和、次回の決定会合でのインフレターゲットを議題に設定することを表明したことから、物理的に13年1月後半までは、明確な形をとった動き、材料がないからだ。 ここで いったん、日本株を利益確定の「売り」でポジションを落としておくのがセオリーだからだ。
ただ 円安/株高の流れは、世界的なリスクオンの動きに沿ったものであり、安倍自民党の動きは、いわばそれにレバレッジをかけたものに過ぎない。 それゆえ 米国の「財政の崖」などの議論がある中でも、円安がさらに進めば、それによる株高はありうるので (実際 これまではその流れであったので)、利益確定売りが反転という形で、明確化されるかどうかは微妙である。
● 日銀に待ちかまえる複数の関門 ●
しかし より重要なのは、利益確定後の動きだ。 今後も 円安/株高がトレンドとして継続することを投資家自身が求め、それを政策への要求として圧力をかけてくるだろう。 それは いわゆる催促相場となり、中期的には、まず 次の日銀の政策決定会合で、インフレターゲットが導入されるかどうかが第一関門となる。
インフレターゲットの導入には、私個人の意見としては反対だが、もうこうなったら入れるしかない。 日銀としても ここで入れないのは大きな摩擦となり、市場は混乱するだろう。 もし 私が審議委員だったら、意見を翻して賛成に回る。
なぜなら インフレターゲット導入は望ましくない、という結論に至った場合、投資家 (およびトレーダー) と政治の圧力は、手に手を取って日銀へ向かってくるからだ。
つまり 両者が日銀の政策を非難し、そして 投資家の非難は、政治家とメディアの日銀非難を正当化するから、相乗効果で 日銀は一気に追い詰められると予想するからだ。
問題は次の第二関門にある。 2% というインフレ率をどう受け入れるか、ということだ。 目途をターゲットに変え、日銀に責任を持たせるのは構わない。 もともと日本経済に責任はあるし、物価のコントロールが仕事だから、インフレターゲットが存在し、それに沿った金融政策を行うのは理解できる。
だから その拡大解釈版として、インフレ率が高まることを促すことは、許容範囲だ (本来の解釈は、インフレターゲット 2% といった場合には、インフレ率を 2% にすることが目標ではない。 インフレ率が 2% になるまでは、心置きなく金融緩和が許される、ということだ。 だからターゲットは良いが、達成するための目標、しかも最優先の目標となるのはおかしいし、経済にはマイナスだ)。
● 2% のインフレ率実現は極めて困難 ●
しかし その目標が 2% となると、これはかなり難しい。 なぜなら、2% のインフレ率が現在の日本で実現することは、極めて困難であるからだ。 仮に実現するシナリオがあるとすると、極端な円安による輸入インフレしか考えられず、その状態になった場合には、日本経済は極端に悪い状況となるからだ。 経常収支は極端に悪化し、名目金利が上昇し、銀行は危機に陥り、財政が行き詰るというシナリオが予想される。
その最悪のシナリオが実現するには、円が 100円 を超えるような流れになる必要があり、実現はしないだろう。 そうなるとインフレ率 2% は、無理だ。 日本でインフレ率が 2% に近づいたのは、バブル期以降では、円安が 140円 台まで進んだ1997年の 1.76%、原油が 1バレル 147ドル など資源価格が急騰した2008年の 1.38% しかない。 だから、 2% にはどうあがいてもならない。
この状況にどう対応するか。 日銀としては インフレターゲットを設定したとしても、それは 1%~2% の範囲を目指すなど、レンジに余裕を持たせ、同時にインフレ率だけが唯一の目標ではなく、経済全体の状況とのバランスを見ながら、という留保条件をつけることになるだろう (それが唯一の妥当な道だ)。
日銀としては、これは政治に圧力を受けたからではない。 安倍次期総理から、検討を依頼されたことがきっかけではあるが、これまでの市場や国民との対話として考えると、説明不足による不十分な理解が存在していたのは事実だ。 よって 誤解を解くために、日銀の政策スタンスをよりわかりやすいものにするために導入した。 こういう説明をすることになるだろう。
こうした日銀の対応に対する、投資家の反応の予測は難しい。 今の期待感から行くと、これでは物足りない。 現状と本質的には変わらない、という解釈が可能だからだ。 逆にいえば だからこそ、日銀としても導入が可能なインフレターゲットなのだ。 これは進むも地獄、戻るも地獄の世界だ。
● 投資家が政権批判を始めるリスクも ●
もしインフレ率を 2% とし、これを何が何でも実現する、となると 名目金利を無理やり上昇させ、極端な円安を進めるしかない。 しかし それでは国債暴落で、銀行危機、財政危機になってしまう。 そうなるとターゲットを設定しても、2% は実現できない、ということになる。 このときに日銀法改正が大きな意味を持ってくる。
2% を目指しますと宣言するのは良いが、これが2年たっても実現できない、実現できる見込みが立たないとなると、政治の側としては、問題視せざるを得ない。 長期的にも 2% が実現する見込みがない、となるとそれは日銀の姿勢の問題だ、やる気がない、ということになる。
その場合は日銀総裁を解任するという行為が必要になる。 ところが今の日銀法では、これはできない。 そうなると このような状況を回避するために、今 日銀法も改正しておくべきだ、という議論になる。
この議論は、13年1月の日銀の金融政策決定会合でインフレターゲットが導入されなければ、直ちに加速する。 また導入されたとしても、政治サイドから見て中途半端 (妥当な金融政策を考える立場からは許容範囲ぎりぎり) のものになると、以下のような議論が力を持つことになるだろう。
つまり やはり日銀を完全には信頼できない、将来の解雇を担保しておく必要がある、それは万が一のためだから、日銀が妥当な政策を取り続けた場合には問題にならないのだから、日銀法改正自体は問題はないはずだ、というものだ。
こうなると投資家の反応は難しい。 現在は、日銀法改正に賛成というムードが、外資系ストラテジストを中心に広がっているが、これは 海外の日本経済の実態を理解していない日本株投資家の意向の圧力を受けて展開されている (それに迎合している) と私は見ているが、今後は疑問を呈する投資家が増えてくると思われる。
なぜなら もう少し、日本株が上昇し、円安も進めば、徐々に手じまう投資家が増えていくから、今の上昇モメンタムが何が何でも続いて欲しいという投資家の割合が低下していくからだ。 そうなると今度は下落方向で動かす方が、モメンタムの余地が大きくなり、チャンスが増えるとなり、反転に流れを作ろうとする投資家が増えてくる。
そして問題は、国債のトレーダーだ。 トレーダーは 為替、国債、株で、すべて異なった人々となっているが、彼らの行動パターンやキャラクターも大きく異なる。 株式は上昇トレンドで基本的に儲け、下げトレンドなら、仕方なく空売りをする投資家が多数派だ。
だが国債では、買い持ちの長期投資家 (生保、年金など) と、短期の売買で利益を出すトレーダーとは、まったく違う行動パターンを取る。
一方 為替は、常に短期の乱高下あるいは小さな動きで儲けるトレーダーがほとんどだ。まず 為替トレーダーが円高方向の乱高下にシフトすれば、次はこれまで鳴りをひそめていた国債トレーダーが大きく売りから入ってくる可能性がある。 こうなると流れが変わり、国債暴落シナリオを騒ぎ立てて、トレンドを作るほうが有利になってくる。 こうなったときが、180度の変化が訪れるとき、つまり日銀への圧力がやりすぎだと非難が高まるようになる、潮目が変わるときなのだ。
こうなると 銀行関係者は政権批判を痛烈に始める。 国債を持ちすぎているから、空売りで対処しようがないから、国債の下落を抑えてもらうしかないからだ。 株を空売りする投資家たちも 政権批判の方が、短期には下落が加速するから、批判を強める。 だから政権はやりすぎ、ということで、投資家 (政治家やメディアの好きな言葉でいえば市場だが、それは誤りだ。 市場圧力というものは存在しない。 その背後には投資家の塊がいるだけだ) 全体から攻撃を受けるだろう。
したがって夏の参議院選挙までに、有権者にも投資家にも見放されないために、安倍政権は政権成立後は、慎重なミスのない、アウェイゲームが求めらることになる。
以上