
独・スペインの二つの音楽作品 シューベルトの歌曲集『美しき水車小屋の娘』(Die schöne Müllerin) とファリャの『三角帽子 El sombrero de tres picos 』(『代官と粉屋の女房 El Corregidor y La Molinera 』) を比べると、面白いことに気付きます。
なぜ この二つの音楽作品を並べるかというと、 Müllerin (水車小屋の娘) と Molinera (粉屋の女房) がそれぞれの言語で同じ意味だろうに、日本語にすると随分と違うイメージになってしまうなと感心するからです。
英語でも Miller という名前は多く、コーヒーミルのミルからきたもので、語源は「粉を挽く人」です。 要するに、小麦を挽いて粉にすることを職業にしていた人達が Miller / Müller だったのですね。 ドイツ語名称+in は、女性形ですから、 Müllerin は「粉を挽く女性」となります。
これが「水車小屋の娘」になぜ変身するのか? それは、昔の水車の軸は「水車小屋」の中のきねを持ち上げて、うすの小麦をついて、粉にしていたのです。 ですから、「粉を挽く人」も「水車小屋の人」も同義語で Miller / Müller になるのです。
これらから意訳せずに、Die schöne Müllerin (きれいな粉屋の女房) と、El Corregidor y La Molinera (代官と水車小屋の娘) としても全く間違いじゃない筈です。 ただ、それでは題名のイメージが内容に全く合わず、「ピカソの絵」の中の女の顔 (?) みたくなっちゃいますからね。 ちょっと無理無理 結びつけてしまいました。
今日はここまでです。
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ウィキペディアから … 歌曲集『美しき水車小屋の娘』(Die schöne Müllerin) 作品25、D795 は、フランツ・シューベルトが作曲した全20曲からなる歌曲集。 一般に「冬の旅」・「白鳥の歌」と並び「シューベルト3大歌曲集」の一つと称される。 一部では「美しき水車屋の娘」と呼ばれることもある。
この歌曲集は「修業の旅に出た粉職人の若者が、美しい水車小屋の娘に恋をするが、狩人が現れて彼女を奪っていき、悲しく立ち去る若者は小川に語りかけ、永遠の眠りにつく」という物語からなり、20曲の歌によって語られる。 作曲が開始されたのは1823年5月から11月にかけて行われ、友人の家で ふと目にしたミュラーの詩集を手にしたことでこの曲を作曲したという。
「この詩集を持って帰った翌日にはもう3曲も作曲していた」というエピソードがあるように、シューベルトはここに描かれている若者の姿に大きな共感を抱いていたと思われ、音楽にそれが十分に表れている。 物語性を持たず、嘆きと諦めに満ちた男の心象風景を描いた歌曲集「冬の旅」に対して、4年前に書かれたこの「美しき水車小屋の娘」は、希望に胸を膨らませて旅に出かけた若者が、恋によって次第に変化してゆく姿が生き生きと描かれたいわば「青春の歌」といえる。
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「三角帽子 El sombrero de tres picos 」は、ペドロ・アントニオ・デ・アラルコンの短編小説、またはこれを元にしてマヌエル・デ・ファリャが1917年に作曲したバレエ、もしくは後に抜粋された2つの組曲。 以下バレエ音楽を中心に記述する。
バレエ・リュスの主宰であるセルゲイ・ディアギレフが依頼。 ディアギレフは最初『スペインの庭園の夜』をバレエ化したいと考えていたが、これにファリャが熱心でなく、スペイン・アンダルシアの民話を元にしたアラルコンの小説『三角帽子』を元にした『代官と粉屋の女房 El Corregidor y La Molinera 』の再構成を提案した。 ディアギレフはこれに同意し、振付にレオニード・マシーンを、さらに舞台・衣装デザインにパブロ・ピカソを起用した。
代官 (この代官のかぶっている帽子が三角帽子)、粉屋、粉屋の妻の三人による三角関係のドタバタ劇。
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今日はここまでです。