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シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

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SACD 化された “指輪” の素性は?

2018年11月30日 | オーディオの今は
ショルティ指揮ウィーン・フィルによる『指輪』各種。 上段は STEREO SOUND 社による『ラインの黄金』〜『神々の黄昏』(SACD 2枚・3枚・3枚・4枚組)。 下左はエソテリック社の SACD・CD ハイブリッド盤。 下中央は DECCA 社の Blu-ray オーディオ盤。 下右はライナー指揮シカゴ響の「ツァラトゥストラかく語りき・英雄の生涯」SACD。
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有楽町 国際フォーラムで開催された「オーディオ・フェア」に18日 行ってきました。 受付で登録を済ませ、受付横にある売店を覗くと、なんと DECCA 名盤の『神々の黄昏』LP 大のものが置いてあります (冒頭上右)。 LP 5〜6枚にしては厚みが薄いかなと手にとって見ると、係り員は SACD 盤だといい、ファクトリー・シールを解いてあるサンプル品を見せてくれました。

ギッシリと日本語説明・対訳が何ページもあり、最後のページのプラスチック板に SACD 4枚がはまっています。 付属解説書に多くのコストを掛けているようですから、2万円超えも納得の価格と思え、全シリーズで税込 7.5万円にもなる超豪華版です。
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日本の発売元は最初 LP 単売だったものを1968年に “全4話 LP 19枚セット1箱を 4万円” で発売、70年代にはオープンテープでも4話を単売、85年 CD 15枚で4話を単売、97年1箱14枚セット (J. ロック・リマスター版 後述※) を 2.8万円で発売、2009年にはエソテリック社が SACD ハイブリッド盤で限定 1,000セット 5.5万円で発売 (冒頭下左)、さらに2013年 英 DECCA 社が限定 7000部を4作収録した Blu-ray オーディオ1枚 (14枚の CD 付き 下中央) で発売するなど、手を変え品を変え 再発売を繰り返してきました。
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再発売の度に リマスター (化粧直し) し、新たな解説本やモチーフ集、録音記録ビデオなど 関連する希少な特典を付け加えるのは、すでに所有しているマニア心をくすぐって買い増しさせる販売サイドの常套手段です。 逆にそうした付加価値品がないと売れない可能性が強いのです。

私は『ヴァルキューレ』『ジークフリート』『神々の黄昏』を1970年代にオープンテープで買い求め、『ラインの黄金』はずっと後になって86年に CD で購入し、結局4話分で 4万円強投入しました。 長いワーグナー物は安くなく、かつては1作 1万円前後という感覚でしたね。
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この英 DECCA が録音した『指輪』は、その優秀録音と当時考えられる限りのワーグナー歌手を揃えた事で評判を呼び、(必ずしも知名度の高くなかった?) ショルティが一躍注目されるようになったほどです。 その直後の60年代後半に作られた御大 カラヤン指揮ベルリン・フィルによる DG 盤その他が霞んでしまい、いまだに これを超える『指輪』が出たとは聞きません。

帰宅して ネットで調べると、オーディオ・フェアで見かけたのは全くのニセモノではないのですが、英 DECCA が SACD 化した音源ではない事が判明しました。 オーディオ雑誌社の STEREO SOUND のストア・ページを見ると __
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本商品はアナログ・マスターテープの音声をほぼ無加工でデジタル化したものです。 超低域のカットはおろか、音を聴きやすくするためのイコライジングやマスターテープに起因するノイズカットおよびドロップアウト等の補正処理を行なっていません。

SACD に採用したマスターは、緊急用のセイフティ・アナログ・マスターテープです。 LP レコード・プレス用のメタルマスターに不備があった場合に備えての緊急用として、1/4幅のオリジナル・アナログ・マスターテープから一対一のダビングによってつくられたものでした。

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__ という説明があります。 CD 化される前のマスターテープとどう違うのでしょうか。 これは次の説明を読まないと分かりません。
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英 DECCA が「ニーベルングの指環」のマスターとしているのは、ジェイムズ・ロックによってノイズカットやイコライジング処理の施されたデジタル・マスター (PCM) です。 1997年以降に正規発売されたデジタル・ディスクおよびデジタル・ファイルは、この J. ロック・リマスターが元となっています。

そのため 本作はこのリマスタリング処理が施される前段階の貴重なマスター音源を元にデジタル化を行なった、世界初にして唯一の SACD となります。

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つまり 英 DECCA が1997年以降 世界中で販売しているのは J. ロック・リマスター版であって (前述※)、STEREO SOUND 社が今年 SACD 化したのは、そのリマスター前のオリジナル・アナログ・マスターテープのアナログ・コピー版なのです。

これは確かにオリジナル・マスターに近いものといえるでしょうが、アナログ・コピーした事により “テープ・ノイズが加わっている” 事実も否定できないのです。 J. ロック・リマスター版とどう違うのか、どちらが優秀な音質なのかは実際に聴き比べてみないと 分からないでしょう。

そうするには 再度買い直してじっくりと聴き比べないと判別できません。 それをするのは “相当のヒマ人” というか、熱烈なワーグナー・ショルティ・ファンです。 我々一般リスナーは音楽を楽しむのが目的ですから、そうした比較はオタク族に任せた方が賢明です。 暫くしたら そのヒマ人からネットに “比較レポート” が上がるはずです。 それを待ちましょう。
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私が1970年代にオープンテープで『ラインの黄金』を入手しなかったのは、録音が1958年と古く、優秀録音という評価を疑問視したからです。 実は この一連のシリーズ録音前の1957年 DECCA は、「ヴァルキューレ第3幕」をプロデューサーを E. スミス/ J. カルショーと指揮ショルティで、「1幕」を E. スミスと指揮クナッパーツブッシュで録音しました。

どちらもウィーン・フィルと20世紀前半を代表するワーグナー歌手 キルステン・フラグスタートが参加していますが、CD を聴くと現在の水準からして “音質が相当に聴き劣りする” のは明らかです。 1958年録音の『ラインの黄金』にもフラグスタートがフリッカ役で参加しています。 

DECCA があえて録音したのは、1953年以降 舞台からは引退していた稀代のワーグナー歌手 フラグスタートが “黄昏れかけていた” ので、録音を急いだものと私は推理します。

1952年 英 EMI は「トリスタンとイゾルデ」を、フルトヴェングラー指揮フィルハーモニア管、フラグスタートのイゾルデで録音、これも名盤の誉れが高いのですが、第2幕で ある高音の箇所だけを若いシュヴァルツコップが歌い、衰えたフラグスタートを “カバーした” と逸話が漏れたのも有名です (1954年に死去したフルヴェンも ある意味 間に合ったともいえます)。
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私のこれまでの試聴経験で録音品質が良くなるのは、1960年以降だと認識しています。 その理由は何なのか こうと明確に断定できませんが、テープ・マイク・テープレコーダー・ミキサーなど あらゆる “録音機材の諸性能が良くなった” ことが重なった結果だろうと推理しています。

10年ほど前 購入したステレオ初期の1954年録音のライナー指揮シカゴ響「ツァラトゥストラかく語りき・英雄の生涯」1枚物 SACD (米 RCA 盤 冒頭下右) では、冒頭でサァーッと “テープノイズ” が聴こえました。 “おや 懐かしい” との感慨が湧くと同時に、この CD 会社はテープノイズのカット処理をせずにデジタル・マスターを作って SACD 化したと理解しました。

STEREO SOUND の SACD 版『指輪』シリーズは “このようなもの” じゃないかと想像しているんですが、さて __ 生まれ素性は正統ですが、育ちが異なる子供はどんな素顔を見せているのでしょうか?
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それで 肝心要のオーディオ・フェアはどうだったかというと、全ては回りきれなかったのですが、いい音で再生しているブースが幾つもありました。 何箇所かではレコード LP を再生して聴衆に聴かせていましたが、意外と良かったです … 単品コンポがおしなべて百万以上もする機器がほとんどですけど。

それらを聴いて 私の車を何台も買う積りでないと、つまり 1千万位掛けないと ああいう極上の再生音は無理かなと思いました。 そこまで投資する価値があるかどうか、それは個々の価値観との “相談事” ですね (中には “鬼妻” との闘争という人も …)。

今日はここまでです。

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