
ネットから拾った『インテリ五右エ門』の画像2つと、「おれは石松だ」扉絵。
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コミック作家 桑田次郎は、冒険もの・SF もの・変身ものをシャープな線で描き、その質の高さは定評がありました。 いわゆる “少年ヒーローもの” のコミックを得意とし、代表作の「エイトマン」(1963~65 週刊少年マガジン) その他数々あります。
その彼が全編コメディものに挑戦して書いたのが、『インテリ五右エ門』(1969 週刊少年マガジン) で、連載をチラッと見て見事な “失敗作” だと感じました。
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なぜ 失敗作かというと、”シャープな線がコメディに不向き” なのです。 内容がコメディでも、コメディものの描写は丸い線・デフォルメされた人物で描かれるものが多く、雰囲気的にシャープな線・細かい描写がどうにもマッチしないのです。
しかも 最初は主人公を5~6頭身で描き (冒頭の左)、途中から4頭身ほど (冒頭の中央) に変更してますが、絵のタッチは変わりません。 「エイトマン」後の桑田は写実的な画風となり、劇画に近くなっています。
だから余計コメディには見えなかったのです。
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けれど その前に書いていた「まぼろし探偵」 (1957~61 少年画報) の頃は、かなり “丸まっちい描写” で、その中にあったコメディを読んで、これはうまく描いていたなと感心しました。 次のサンプル画です。

「まぼろし探偵3・クラーク東郷」(リム出版 1991) から抜粋ページをスキャンしました。 本の内側がボケてますが ご容赦を。
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この時代の桑田は、シャープな線で描く「エイトマン」の前の時期で、どちらかというと 手塚治虫に近い4~5頭身の丸い描写が多かったのです。 これだと コメディものとしての場面にも合っていると思います。
同様に「おれは石松だ」(1971~72 旺文社) も、まるで画風と合っていませんでした。 中学生むけのギャグ漫画だったらしいです。
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そうした意味で 『ゴルゴ13』劇画で有名な、さいとうたかおのコメディものなんて想像もできません。 ハードボイルド (hardboiled かたゆで) で、銃撃戦・格闘技が多い内容ですから、コメディが入り込む余地なんてないんですね。

ネットから拾った「ゴルゴ13・銀翼の花嫁」から。
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私が思うに 画風それぞれに合うジャンルがあって、画風と内容がマッチすると読者に受け、マッチしなければ読者に受けないのでしょう。
内容ごとに画風を変えるなんて、器用な描き方ができる作家は稀ですから、その作家ごとに得意なジャンルが自ずと決まっていくものと想像します。
これは映画監督や俳優、小説家などにも通じると思います。 シリアスもの向きだった加藤剛がコメディやったら おかしいですよ。 人間はそうそうオールマイティ (almighty 全能の) じゃないんですね。
今日はここまでです。